第18話絶望のNTR

今日は、和田さんとデートだ。



恋愛映画を観て僕たちは、2人で会話をしている。


暗い映画館で迫力あるアクションシーンの後の主人公とヒロインのキスシーンを今釘付けで観ている。


「ヒロイン可愛いね。」


和田さんがスクリーンを見て言う。


確かに可愛い。あ…和田さんも可愛いって言うアレかな?

うーそれはキザすぎて無理だわ。


でも素直にヒロイン可愛いって言うのも?

どうすべきだ〜。


そうだ! ヒロインも、和田さんも褒めればいいのでは?


「和田さんも可愛いし、ヒロインも可愛いから、来てよかったな。」

無難かな?


「ありがとう。私も来てよかったよ。」

笑顔で答えてくれた。


「和田さんの笑顔も可愛い。なんて、映画の敵も結構かっこいいよね。渋くて。」


僕は悪役にも触れた。


ポップコーンを頬張りながら、彼女はニコッと僕に微笑みかけてくれた。


「敵役にもそう言う意見言えるの、西条君って偉いな。」

和田さんは、甘い声で言った。


「ありがとう和田さんなんか照れるな。」


はぁー幸せ。これが普通だよな。お互いが褒め合うって素晴らしいな。


それから僕たちは、映画デートを楽しんだ後、レストランに向かった。


テーブルがとてもオシャレだ。白いテーブルクロスの上には、綺麗な花が置かれていた。


少し無理してきた甲斐があったな。


かなり良い雰囲気のお店だ。



2人で赤茶色の椅子に座り、メニューを見つめた。


注文が決まり僕は、店員を呼び注文した。




「美味しい。西条君と食べれて楽しいよ。こんなに美味しく感じるんだね。」


フォークでビーフを刺して食べてる姿は、本当に美味しそうで、彼女の幸せそうな表情を見て、僕も、嬉しくなる。



「うん、僕も楽しくて、美味しく感じる。料理も見栄えが良いね。どれも優雅で、こだわりがありそう。」


僕は感想を交えて、彼女に言った。



「そうだね。私たちをもてなしてくれてる。そんな感じがするね。」


和田さんが、ムードを楽しむかの様に言った。


僕も料理に手をつけた。フォークで口に運び、ビーフを口に入れると、とろけるような柔らかさと肉汁が、口に広がり唸らせるほどの美味しさを感じた。ジャガイモの甘さがとてもビーフと良く合う。



それからデザートのイチゴアイスが、テーブルに運ばれた。


そのほんのりと匂う苺が、甘酸っぱい香りをさせて、彼女と2人で顔を見合わせ、お互い和やかな雰囲気にさせた。



アイスの甘さが彼女との甘いひとときを僕に与えて、彼女の優しい微笑みが、夢のような感覚に浸してくれた。


それから2人で話をして、食事を終え、レストランを出た。


「デート楽しかったー。」

彼女が手を上に伸ばして、身体でめいいっぱいそのことを表現した。


「西条君と付き合ったばっかりだけど、このままま…クリスマスみでまだまだだけど、一緒に過ごせたら良いな。」


彼女が優しく微笑んで言った。


「本当にそうだね。大丈夫、クリスマスどころか来年だって、ずっと一緒に過ごせるよ。」

僕は彼女にそう思いを伝えた。


彼女が小指を伸ばして、僕も小指を出して彼女の指に重ねた。


指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲すぞー。

ふふ、約束ね。


彼女の仕草に僕は、頬が暖かくなるのを感じた。


それから僕たちは、デートを何度か重ねた。そして夏休みに突入した。


和田早苗の視点


私は夏休みに、バスケの練習をしていた。


「張り切ってるね。」

憧れの先輩がそう声をかけてくれた。


「はい! 試合で、彼氏に良いところ見せたくて。」


そう私は笑顔で返した。


「彼氏ね…」

先輩が暗い表情で言う。


「どうかしたんですか?」

私は不思議に思い聞いた。


「…俺、早苗が彼氏出来たって聞いてさ、その凄いなんて言うか…嫉妬て言うか、俺早苗のことが好きなんだなって。今更だよな。」


木村先輩が頬をかきながら、照れくさそうに言う。



「はぁ〜、ほんとに今更ですね。私彼氏出来たんですよ。全く、先輩たら、揶揄ってるんですか?」



私は彼に呆れて言った。



「分かってる、でもそれで早苗に対する気持ちを自覚したんだ。」


「早苗好きだ。彼氏と別れて俺と付き合ってくれ。」

木村先輩が真剣な表情で言った。



先輩最低だ。私を振った癖に、そんなこと…今更…でも何故だろう? その告白を受けた私の目から、涙がとめどなく溢れてくる。



これは…嬉し泣きだ。ずっと…ずっと片想いしていた先輩に告白された、心の底に眠っていた先輩への深い愛情が、これってなに?  




ああ、分かった。これって先輩に対する未練だ。彼に対する感情が…この気持ちは、止められない。


「早苗ごめん。」そう言って彼が私を抱きしめて、頭を撫でてくれた。


先輩の目を見つめて、目を瞑った。


木村先輩の唇が私に重なるのを感じた。


私は先輩にそのまま抱き抱えられて、ゆっくりと寝かされた。


「彼と別れる?」 彼が小悪魔的に悪戯ぽく私に触れながら言う。


「うーんでも、ご飯とか西条君に奢って貰おうかと。その浮いた分、先輩のデート代に使います。

先輩ここでするんですか?」


これは、先輩が私に彼氏がいないと、離れると思ったから言った。

西条君との関係がなくなると、先輩は、また離れるのではと、危惧したからでた発言だ。



「ああ、誰も来ないよ、今はね。」


「なら、私処女なので、優しくして下さいね。」


「ああ、もちろん。」




「それにしてもさっきの言葉、早苗ちゃんも悪い子だな〜。」


「彼氏持ちの私に手を出した先輩ほどじゃないですよ?」


「そうだね。ふふ」


「木村先輩愛してます。」


「早苗ちゃん僕も。」


「多分私ちょい悪な人がタイプなのかも。西条君ってちょっと優し過ぎてつまらないかも。」

私は彼に西条君の愚痴を言った。


自分って最低だなと、罪悪感を感じつつ、先輩が好き過ぎて、私を悪女にさせた。

そう自分に言い訳をした。


先輩の存在が私の中でどれほど大きいか、今更ながら痛感する。


その一方で西条君への感謝や彼の優しさを思い出すたび、罪悪感感が心を刺す。彼は何も悪くないのに、私は彼を利用している。



でも、西条君の過剰な優しさが私を窮屈にさせていた。いつも私のことを第一に考える彼の態度がどこか私を苦しめていた。



それを木村先輩といると、その苦しみから解放されるような気がする。彼は刺激的で、何をするか、予測出来ない。


そのスリルが私を惹きつける。西条君の安全過ぎる愛より、予測不能な彼の愛の方が私を魅了する。



コートの地面の冷たさと先輩の体の温かさが交互に私の体に、興奮を与えた。





西条の視点


僕は、和田さんの練習頑張ってる姿を見たくて、彼女に黙って来た。

サプライズ的に飲み物をプレゼントしようと思って…それが。



なんだよこれ? 夢だよな?  

僕の体が震えてきた。額に汗が噴き出る。

和田さんの浮気が、あゆみの浮気を見た時のフラッシュバックを、僕の頭に与えた。


僕はその光景に絶望を覚え、どうしようもない吐き気と眩暈に襲われて、彼女の浮気を咎められず、トイレに駆け込んだ。



幸せだったはずだ。なのに何故? 彼女との楽しかった思い出が蘇ってくる。


うぅ、僕は泣きながら、彼女との楽しかったデートを想像した。



これから、彼女に浮気を咎めるのか? 何故こうも僕は、浮気現場を見なければ行けないんだろう。


最悪だ。そう思うとまた吐き気が襲ってきた。  


彼女と思い描いた、クリスマスの楽しむ未来への、計画。


約束したじゃないか…それが全て崩れていく虚しさに僕は、泣きながら、何度も手を振り上げて、悔しさを表現した。

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