第17話トラウマ
中島の視点
私は、桜と誰もいない教室で大川律をどう止めるか話し合っていた。
「大変なことになっちゃたね。桜どうする?」
私は、後悔して言う。
「大丈夫、実は対策はしてるのよね。私。」
桜が自信ありそうなことを言った。
「対策?」
「合コンでさ、立花昇って人いたでしょ?」
桜が言ったけど、すぐには、思い出せなかった。
その人確か…合コンでおとなしくて、なんで参加したのかと思っていた。
「その人がどうかしたの?」
私は不思議だと思って聞いた。
「その人3人のリーダー格でね、実は2人を見張る役をやってたの。2人が暴走して時用のために。」
桜が説明した。
「そうなんだ、滝川さんのこと結構心配してたんだね?」
私は、桜が意外に優しいんだなと思った。
「まっさか、レイナのためだよ。万が一あの2人があゆみじゃなくて、レイナにストーカーしたら大変だから。
その時に抑え込める人いないとね。」
桜が得意気に言った。私は何も聞いてない。私はそれを聞いて、彼女に不信感が宿った。
どうして言ってくれなかったのだろうと。
「その人はまともな人なんだね。桜が信用するくらいだから。」
大川さんより、信用度は高いのだろうと考えた。
「あはは、まともな人が頼りになる訳ないよ。おっかない人だよ。元ストーカーだから。ストーカーには、元ストーカーで抑え込む的な?」
笑って桜が言った。
「大丈夫なのそれ? 元ストーカーって、私の知ってる人じゃないでしょうね?」
頼りになるけど、さすがに知り合いをストーカーしてた人には、頼りたくない。
「もちろん、レイナが知ってる人。そっから知り合ってさ、あ…こいつ使えるかもって思って、仲良くなっておいたの。ねぇ、誰をストーカーしてたと思う?」
彼女の表情が不気味に見えた。一体なにを…使える? 意味が分からない。
「分からないよ。私の仲良しの子なら、辞めてね。そんな人に協力して欲しくない。」
私は桜に強く言った。
「ふふ、仲良くないから安心して。実はさ、レイナが西条キツく振ったら、当然円香が出てくるでしょ? その時に立花昇を出せば、彼女もレイナには、手を出しづらいだろうと。」
「いわば防波堤かな。」
桜が天井を見上気て言った。
青木円香…その名前を聞くと、トラウマが蘇る。私には…この世で最も恐ろしい存在だ。
確かに、桜の言う通り、円香ちゃんが出てくる。そしたら、私は失神してしまうかも。
そこまで考えてくれてた…そう思いたいけど、そうじゃない。
それなら私にきちんと説明していたはず。それをしない…私たちに友情は存在するのだろうか?
多分そうだ…私の姉ため。ただそれだけ。
姉が私のこと、大事にしていたから、桜もそうしているだけ。
それは桜がレズで、姉を愛していたからでは?
滝川さんも、彼女がレズであるから、アドバイスに従ったり、合コンに参加したのだ。
でなければ、彼女のことだ、西条に密告すると疑って参加しなかったろう。
私は桜の友達? それとも?
「それさ、正直良くないよ。確かに私は円香ちゃんが怖い。でもだからって、円香ちゃんにストーカーしてた人から守って欲しくない。」
「更生してるんだろうけど、円香ちゃんだって怖いと思う。それを利用するなんて女の子の敵だよ。その考え。」
私は桜のその考えに心底軽蔑した。
「…毒を持って毒を制すだよ。実際大川律だってあゆみとくっつけるはずだったけど、大川が裏切るかもしれない。」
「その時のためだったけど、今大川を抑え込めるのはこの方法じゃん。円香だって…はぁ…レイナの意見も一理あるか。」
言いながら彼女は、ため息をついた。自分でも、良くないと気がついた様に見えた。
「その毒が私たちにも回ってこないとは限らないじゃん。2人でさ、別の方法考えよう。」
私は諭す様に言った。
桜は早速、桜井圭佑に電話をした。スピーカー設定にして、私にも聞こえるようにした。
「あー多分、大川の父親がさ、あゆみの父親にリストラされて、それを恨みに思ってるのは、話したけど。」
「そのせいで、母親が大川の父親と、大川捨てたんだよね。そのくせ、大川の兄貴と妹は連れて行ったから、なんで自分だけ? ってトラウマのせいかもしれない。」
桜井先輩は、丁寧に説明してくれた。
ならそのトラウマを解消してあげれば良いのかも。
母親に話を聞くべきか。
「その母親ってどこにいるか分かる?」
桜が聞いた。
「知らないよ。さすがに仲良くても、そんなことまで分からないよ。本人は、アレだから、父親なら、知ってるかもね。」
桜井先輩がアドバイスをくれた。
「そっか、そりゃそうだ。尋ねてみようかな。ありがとう。」
桜がお礼を言った。
「いや、そんなのほっとけば? そこまでするほど仲良い子じゃないでしょ? どうなってもよくね?」
桜井先輩は、気を遣って言ったのだろう。
「しょうがないよ。私たちが蒔いた種だから、刈り取る感じかな。」
桜が答えた。
「お疲れさん、聞いた話しだと、あゆみって子も悪いし、お互い様だと思う。だから、桜が気にすることねーんじゃって感じ。」
桜井先輩が言った。
「でもそれで滝川さんに何かあったら? その考えは、いい加減だと思うよ?」
私はむっとして桜井先輩に言った。
「知らねーし。何かあったら、大川とあゆみの問題でしょ? 議論する気ないから、切るわ、じゃ。」
桜井さんが、憮然として言った。
桜井さんと私たちは違う。必ず解決してやる。私はそう決意した。
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