第6話揺れる心、迷いの中で

僕は、中島さんから、彼氏を紹介したいと言われ、廊下に出た。


「この人。」手を指して中島さんが言った。


「大川律です、よろしくお願いします。」彼が自己紹介した。


「あ、西条祐樹です。よろしくお願いします。」

僕は言った。


「彼、ここの生徒じゃないんだけど、同じ演劇部だから、ちょっと演技見てもらおうと思って、来てもらったの。」


「特別に学校に許可貰ってね。」



「そうなんだ。同じ部活か。」

僕は言った。



中島さんに…彼氏。僕は胸がムカムカして来た。なんだろう…この感情は…僕には、あゆみがいるのに。


でも…これは、この感情…大川さんに嫉妬している。


「ふふ、西条さん、どうしたのかな? 緊張しちゃった? なんか表情が変だよ?」

中島さんが顔を覗き込みながら言った。



いや、近いよ中島さん。緊張じゃなくて…この気持ちは…僕には、あゆみがいるのに…こんな気持ちになったら駄目だ。


「ちょっと、レイナ近いって、彼氏の目の前でさ。」


大川さんが嫉妬する様に、中島さんに注意した。


「ごめんね、彼に注意されちゃった。それじゃまたね。」

中島さんが言った。



去り際に僕の方を見て、ウインクした。


…どう言うつもりだろう? それは、僕を誘惑している様にも見えた。



それから数日経った。


教室の窓を見て、僕は黄昏ていた。


「おいおい、西条、浮気現場の証拠取れたよ。」

佐野が嬉し気に言った。



「はっ? 浮気現場って…もしかして、僕と中島さんが距離近いやつか?」

僕はドキッとした。



「見ろよ。これ! お前の彼女が別の男に抱きついている証拠写真。」


「…は? 僕じゃなくて、あゆみの? へ…嘘だろ。」

僕は目を疑って、何度も目を擦った。



「そんなことしても、写真映像変わらんぞ。明らか泣いて抱きついてるよな。」

佐野がむかつく感じで言った。


「…知らないやつだ。」

僕は呟いてよく見た。


でもこれ? 他の人も写ってないか? なんか変な写真だ。明らかに2人きりではない。



「これよく見ろよ。あゆみとその写真の人と2人きりじゃないぞ。浮気なら、2人きりなはずだろ?」

あのあゆみが浮気なんて…ないよな。いや…最近連絡が減った気がする。まさか…な。



「本当だ。確かに2人きりじゃない。王様ゲームかもしれんな。」佐野が言った。


あーその発想はなかった。


もう一度見ると、料理が少し写っているけど、具体的な場所までは分からない。 



「王様ゲームでやらされて泣いてるのかも? 謎が解けたね。全く、くだらない写真見せんなよ。」

僕は腹を立てて言う。



「分かった、なら、調査継続だな。」佐野が答えた。



「無駄なことお疲れ。」

僕は笑って言った。


あゆみの視点


私は今、自宅で、深夜の窓を寂しく見ていた。

綺麗ね…けど見てると、虚しく儚い気持ちにさせる。


はぁ…彼から連絡が減った…そして気まずくなって、話も最近あんまりしてない。



相談したいことあるのに。本当にまずい事になった。でも…なんて言えばいいの。



言える訳ない。きっと彼は、私のこと軽蔑する。


合コンなんて開くんじゃなかった。けど、中島に彼氏が出来たのは良かった。


でも…その彼氏が上手くいってないって嘆いていた。


なんとか別れないよう説得しなきゃ。どんな手を使っても。



そうだ、説得する時に、彼に力になってもらうか。確か…桜井が大川と友達って言ってたわね。


はぁ…寂しぃ。西条に構ってもらうためなら…このままじゃ、自然消滅しちゃうんじゃ? 



嫌だ…助けて…誰か。


死ぬ…死んでしまう…


誰かに…相談したい。泣きたい。


ってかつらくてもう泣いてるし。


精神的にやばい。


これは、優しくされたら…コロっといっちゃいそう。




西条の視点に戻る

放課後の夕方


「おーい、またゲットしたよ。浮気現場の写真。今度は本物だぞ。」

佐野がニヤニヤして言った。


そんなに僕を彼女無しにしたいのか。酷いやつだ。そう思った。


「あんまり大きい声だすなよ。周りに聞こえるだろ?」

僕は注意して言った。



確かに最近僕とあゆみは…上手くいってない。だからといって、あゆみに飽きたとかじゃない。


あゆみのことは、むしろどんどん好きになっていってる。罵詈雑言が止んで、優しくなって、甘えてくる。


付き合い始めの頃のドキドキしていた時と一緒だ。けど僕は、見てしまった。あゆみが…ゴムに穴を開けているのを…僕はそれ以来彼女の事が怖くなった。



それで気まずい雰囲気になったのは、彼女は知らない。


「なんだ、写真また撮ってきたのか?」

青木が自分の席から歩いてきて、近くに寄って言う。


「ああ、今度は、間違いない。ほら見ろ、カフェでこの前の写真の男といる現場だ。」

佐野がスマホに写ってる写真を見せてきた。


2人で対面で座って、飲み物が置いてある。

表情を見た。楽しそうにしてれば、浮気かも…はは…あゆみちょっと困ってる表情だぞ。



男の方は…対象的に楽しそうだ。



しかし…あゆみが男と2人きりでいるなんて、僕が女子と2人きりなら、浮気だって騒ぐくせに。


「分かった。今度あゆみの後つけてみる。」

僕は2人に言った。



「修羅場になりそうだな、これは。」佐野が言った。



「なぁ、もし…浮気だったらどうする? 別れるのか?」

青木が表情を曇らせて言う。



「…別れる以外ないと思うけど?」

僕はむっとして言った。


「そうか。なら、別れたらさ、俺の妹と付き合わないか?」

青木が気まずそうに言う。



「円香ちゃん? それは…あゆみよりやばい子じゃないか。お兄さんの前で言うのもあれだが。」



僕は円香ちゃんとは、子供の頃から知っている。かなり…一途な子だ。


「おい、大事な会話に入るようで悪いが、お前に妹いるなんて、初耳だぞ。しかも、青木円香?」

佐野は、驚いた表情で言う。



「隠してたからな。どうだろう? 俺の妹なら、浮気は絶対にしないぞ。俺が保証する。」

青木が鼻息荒くして言った。



「待てよ、俺に紹介しろよ。青木円香って言ったら、この学校1の美少女で、スタイルも、頭も良いって、有名じゃないか。」

佐野がお願いするように拝んで言った。



「無理だ。お前じゃ相手にしてもらえない。」青木がはっきりと言った。


くっそと佐野が呟いた。


「円香ちゃんは、だいぶ会ってないと言うか、避けて来たけど、今は、まともな子になってたりする?」

もしちゃんとした子になってたら、考えようかなと思った。



「いや…俺が言うのもなんだが、まともではないな。妹の部屋、お前の写真がいっぱい飾ってある。」

青木が恐ろしいことを言った。


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