第5話合コン:秘密の計画
合コン当日。
焼肉店。
あゆみの視点
私達は先に、それぞれ横に、黒いベンチシートに座った。
対面式での合コン。時間が経てば、席を入れ替える事にしてある。
勿論、男どもがね。私はそんな面倒なことしたくないから。
男たちが来た。
へー揃いも揃って、モデルみたいね。よくもまぁここまでかっこいい人達を、連れて来れたわね。でも…みんな遊んでそう…軽薄そうな連中ね。
ふふ、これなら、中島が口説き落とされても、不思議じゃない。よくやったわ、桜。
それぞれ自己紹介が始まった。
一応趣味を言わないといけないみたいね。
「滝川あゆみです。」
「趣味は、彼氏です。」
私は、適当に答えた。
周りの反応…笑いの渦が起こった様だ。
「中島レイナです。」
「趣味は、演技することと、物語を考えたり、書いたりする事です。」
おーという歓声が起こった。
「ふーん。真面目に答えたわね。」
「綾瀬桜です。」
「趣味は、お笑い見たりする事です。」
お笑いか、初耳ね。
他の人の趣味は興味ないわね。特にコメントすることもないな。
「桜井圭佑です。」
「趣味は、レジャーとか、主にスノボーです。」
あっそ。
「大川律です。」
「趣味は、演技する事です。」
んー、中島と被ったわね。これは…良い情報ね。
「立花昇です。」
「趣味は、漫画と、アニメです。」
合コンで正直過ぎでしょ。これじゃオタクです。って言ってる様なもんじゃない。
注文を男達に頼んでやらせた。全員先輩だから、一応は、失礼のない様にしないと。
同じ学校ではないけど。
「あゆみちゃーん。よろしく。」桜井が明るく言った。
何こいつ、いきなり下の名前で呼んで、馴れ馴れしいわね。
「あゆみです、よろしくお願いします。」
一応場の空気を読まなきゃね。
「あゆみちゃんって学校で噂なるぐらい、可愛いよね。彼氏とはどう? 上手くいってる?
グイグイくるわね。私じゃなくて、中島狙ってよ。
「…まぁ、上手くいってるのかな…でも最近連絡しても、あんまり返してくれなくて。」
私は、空気を読んで言った。
「それは、あゆみちゃん、可哀想。こんなに可愛い子から連絡きたら、俺ならすぐ返すのになぁ。」
ふふーん。そうきたか。
「本当に? いっぱいきても?」
「そんなの当たり前だよ。彼女が大事ならすぐ返すよ。」
桜井が頷いて言った。
…そうよねぇ。確かに当たり前よね。
カルビ、ロース、ハラミが運ばれて来た。早速、男達が、我先にと、焼肉をグレーのステンレス製のトングで取り、焼いた。
ジューという音が、お腹を空かせた私達の耳に、心地よく響いた。
見ると、本当に美味しそうに焼けて、カルビが甘くて、香ばしい匂いをしていた。
焼けて来て、男達が、先にどんどん取ってと、言ってきた。
レイナ〜醤油取ってー。
は〜い。
中島が返事をして醤油差しを渡した。そのやりとりは、まるで姉妹の様。
私は疑問を感じてすぐに聞いた。
ちょっと、あなた、中島さんのこと知らないって言ってたじゃない。まるで親友の様に仲良さそうじゃない。
そう言うと、彼女は、顔面蒼白になり固まった。
「ああ、ちょっと話して凄い仲良くなったの。」
中島が代わりに返事をした。
ちょっと? なんだか、怪しいわね。数日で仲良くなり過ぎじゃない?
「あの、私、ごめんなさい。私好きな人がいて、それで友達から誘われて来たので。」
中島が男達に、牽制する様に言った。駄目よ。好きな人って私の彼氏でしょ? 許さないから。
「そうなんだ、レイナさんその気持ちは大切にした方が良いよ。でも、好きな人がいるなら、ここに来ちゃ駄目かな。その人が可哀想だよ。」
あら〜真摯な人ね。こんな人もいたのね。
「そうですよね。けど、その人…私の片想いで、彼女もいて、なので来ても問題ないから。」
そうそう問題ないから。今日は、楽しみなさいよ。
「片想いか。それで、彼女がいる人なら、つらいね。その人と友達として、一緒に仲良くやっていければいいかもね。その彼女妬んだりは、しない様にね。」
全くその通り。私を妬まないでよ。まぁどっちでも良いけど。
「ありがとうございます。そうですよね。その彼女さんとは、今友達になれたので、妬んだりは、しないです。」
友達ね…一応そうね。
「レイナさんは、偉いね。ちゃんと、上手くやってるんだ。中々出来ることじゃないから。」
大川が中島を褒めた。
「そうだ、レイナさん演技が趣味って僕と被ったよね。僕役者になりたくて、演劇部で頑張ってるんだけど。演技って楽しいよね。」
「はい、本当に楽しいです。楽しくて夢中になってしまいます。」
中島が笑顔で答えた。けど、私には、作り笑いにしか見えない。大嫌いなあの笑顔。けど、西条といた時の笑顔は、本当の…だからこそ、彼女から西条を守らなきゃ。
「だねー。レイナさんは、演劇部とか入ってたりする? もし入ってたら、演技始めたきっかけとか教えて欲しいな。」
大川が根掘り葉掘り聞いている。いいわ、どんどん口説いて。そう私は願った。
「演劇部入ってます。演技始めたのは、やっぱり好きな人のためかな。彼に彼女いるので、本音を見せない様にして、それで演技始めたんですよね。」
ふーん、本音ねぇ。
「本当に好きなんだね、その人。羨ましいね。」
「でも…その人には、やっぱり振り向いてもらえなさそう。大川さんなら、彼のこと忘れさせてくれますか?」
私の耳が、彼女の台詞に反応した。やったー。作戦成功。心でガッツポーズを決めた。
「レイナさん、勿論。でも忘れる必要はないよ。その気持ち、僕が上書きするよ。」
寒い台詞ねぇ。
「ねぇ、あゆみちゃん、彼氏は、浮気とかされてたりはしない? 連絡減るってその可能性があるからさ。」
桜井がとんでもないことを言う。
「…浮気はされたことあるけど…今はないよ。そんな訳ない。」
私は必死になって否定した。
「されたことあるんだ。酷いね。俺なら浮気しないのに、でも彼を許してあげたんだね。つらかったでしょ?」
桜井は言った。
「…つらかった。」
そう言って私は泣いてしまった。
「ヨシヨシ大丈夫だよ。ごめんね、つらいこと思い出させて。」
桜井が私を抱きしめて言う。
私は涙が止まらなくて、彼の胸に体を預けた。
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