第035話 VS とんこつQUINTET!(4)

「────みんな、38秒っ!」


 未来さんが叫ぶ。

 それを受けて俺たちは、初期配置へと駆け足。

 40秒強で、両サイドの近接攻撃持ち二人のチャージが完了。

 さらに45秒時には、センターの星光のチャージも完了。

 癒乃さんは、この三人が一斉に仕掛けてくると読んでいる──。


『45秒過ぎの相手の動きで、向こうがこちらをどう見ているかがわかるだろう。もしも、こちらの火力を脅威と感じていたなら……。センターの星光がチャージ完了すると同時に、リーダースキルでこちらの動きを止め、一気に戦力を削ぎにくるはず』


 とりあえずは、初期配置に復帰。

 俺は自陣右隅、前方に盾役のアオサさん。

 自陣左隅に未来さん、盾役は癒乃さん。

 そして自陣中央最前線に誉さん。

 ……あっ……来るっ!

 敵のリーダー、美郷が動いたっ!

 大きく息を吸い込んだっ!

 敵のボンバー……リーダースキルの発動ワードを発するっ!


「すううぅ…………とおおぉおおぉおおぉおおっ!」


 ──ビリビリビリビリッ!


 空気が震えるほどの勢いある発声、大声。

 それを受けて俺の体が……硬直。

 意識はあれど、全身が動かなくなる。

 当然、声も出せないし、ショットも発射できない。

 相手チーム全員を一定時間硬直させる、美郷のリーダースキル……。

 未来さんのリーダースキルに近い性質だが、与ダメージが皆無なのが不幸中の幸い……だ。

 いや、本当の危機はここから……。


 ──ダッ!

 ──ザッ!

 ──タッ!


 近接攻撃スキル持ちの3人が、一気に突っ込んでくる。

 あれに耐えられなければ……俺たちに勝機はないっ!


 ──ザシュッ!

 ──ザシュッ!

 ──ギンッ!


 流紗の西洋剣を受けたアオサさん。

 天音の日本刀を受けた癒乃さん。

 そして……広範囲へ絶大なダメージを与える、星光の死神の鎌デスサイス──。

 それを俺と誉さんが……被弾。

 目の前で巨大な鎌の刃が、勢いよく水平に振られ……。

 青白い光の筋が、俺の胸元を真横に通過────!


「ぐうっ……!」


 一気に多量の被弾を受けたような、足先から脳天への激しい振動……!

 痛みはないとは言え……受けたダメージの大きさが五感でわかるっ!

 いままでに経験のない被ダメっ……!

 でも…………。

 …………生きてるっ!

 ロストしてないっ!

 俺も…………だれもっ!

 俺とアオサさんのライフはもう15%切ってるけれど……ともかく耐えきった!

 そして……硬直も解けたっ!


「反撃ですわっ! このガサツ女がっ!」


 硬直解除後、真っ先に動いたのがアオサさん。

 自陣へと戻る流紗を、拡散弾が一発でも多く当たる位置取りで追う。

 急ぎ俺も加勢し、貫通弾を重ねる。

 既に25%を切っていた流紗のライフゲージが、みるみる短くなっていく──。


「チイッ! おい星光っ! おまえはこの高飛車と野郎を斬るべきだったろ!?」


「跳躍弾使いが予想以上に厄介と判断。そちらへの与ダメを優先しました。莉麦も同じ判断です」


「へっ! まーたオレが初っ端ロスト役かよ……ったく。莉麦、あとは頼んだっ!」


 ──ドゥウウゥンッ!


 西洋剣の流紗のライフゲージが消え、ロスト。

 辛くも、一歩有利……。

 ……とは言えないのが、相手チーム「とんこつQUINTET!」。

 ロストした仲間を復帰させるという厄介スキル持ちの莉麦が、すぐにそれを発動。

 武器として握っている筆で、宙に人物画を描くような挙動を見せる──。


「……エクステンドっ!」


 莉麦の発声とともに、ロストさせたばかりの流紗が復活。

 円筒状の青白い光に包まれながら、自軍フィールド内の空きスペースに現れる。

 その頭上のライフゲージは50%……。

 さすがに全回復状態ってわけじゃあないんだな。

 とはいえこの、とんこつラーメンの替え玉みたいにロストした仲間を復帰させられるチーム相手に……勝てるの、癒乃さん?


『開始45秒時点で、向こうがリーダースキルを発動。かつ、こちらにロストが一人も出ない……。この状態になったならば、アタシたちに勝機が生まれるはず。その後まずは、集中砲火で天音と莉麦以外のだれかを一人、一度ロストさせ────』

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