第020話 ミクちゃんズ
「……誉サン? 見知らぬ男を、勝手にチームメイト扱いしないでくださる? それともあなたが嫌いな多数決で、わたくしを黙らせる気ですの?」
「違うよ、アオサちゃん。アオサちゃんはいま、チーム名を論拠に反対してる」
「それが……なにか?」
「
誉さんが後ろ手で、俺へと向けて宙で「
「……なのにアオサちゃんは、牝馬の要素だけ強調して未来ちゃんを責めてる。これは不公平。ズルっこ」
「ぐ……」
「そして
「
「
後ろ手で俺へとルビつきで難読名字を書きながら、前方にいるアオサさんを理屈で諫め、沈んでいる未来さんを温和な雰囲気で励ましてる……。
この子……誉さん……。
子どもっぽく見えるけれど、配慮と冷静さに満ちた大人メンタルだっ!
「姓に月を持つ千里ちゃんが抜けたあと、桂馬ちゃんが入ってきた。
「姫騎馬隊に男がいるのは、不自然ではなくて?」
「そこはほら、姫を護る王子様…………じゃなくって、
……なぜ、王子様言い直したし。
なぜ俺をチラ見してから言い直したし。
「で……ですがッ! 未来が千里をキックしたのは、まぎれもない事実ッ! ほら見なさいな! 千里のプロフィールには、チームを追放されたレッテル……キックマークが表示されていますわッ!」
──フォンッ♪
アオサさんがスクリーンを宙に展開。
愛嬌ある丸眼鏡をかけた前髪ぱっつん女子が映るそこには、月出里千里の名前と、ブーツの形をした黄色いアイコンが見える。
「キックマークはチームを追放された証で一定期間つく。一般的にマナーが悪いユーザーのレッテル」……と、誉さんが俺へのフォローの説明書き。
「千里ちゃんがそういう計算高い子だって、アオサちゃんもわかってるんでしょ?」
「……どういう意味かしら?」
「キックマークは害悪ユーザーのレッテルだけれど、かわいい女の子がつけてる場合だと、『かわいそうだね、酷いチームだったんだね』って、男が群がってくるって。千里ちゃんがリーダーに自分のキックを要求するの、十分ありえるって」
「…………」
「バリア持ちの千里ちゃん、一進一退続いてたうちのチームに不満持ってたもんね。バリア戦法のチームへ、移りたがってたもんね」
「……………………」
「これ以上はやめとくけど、未来ちゃんに八つ当たりするのはもう終わり。それに、女所帯へ男の子入れたくないっていうホマレちゃんの気持ち、誉もとってもわかる。癒乃ちゃんも、そして……スカウトした未来ちゃん本人も、そうなんじゃないかな? だけどもう、そうも言ってられない戦況でしょ?」
「…………フン」
先ほどから静観を決め込んでいた癒乃さんが、無言でこくこくと頷き。
未来さんはそっと俺へとポニテを向けて、隠すように頭を下げる。
そっか……そうだよな。
女の子ばかりのところへ野郎が転がり込んだら、一悶着あって当然……だ。
「……そこで、誉に折衷案があるんだけど。リーダーのキック権解除まで、きょうも含めてあと四日間。それまで桂馬ちゃんは、チームメイト見習い。そのお試し期間中に、アオサちゃんが桂馬くんを認めたら正式加入。ノーなら未来ちゃんキック炸裂ってことで! どうかな、ミクちゃんズ?」
「「……………………」」
またも癒乃さんが、瞳を伏せてこくこくと頷き。
二人のミクが複雑な表情を浮かべて、顔を見合わせる────。
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