第6話 暗雲の二歩目



 お昼になりました。


 たくさんお仕事すると、お腹がぐーぐーなってしまいますねっ。


 そういう時は他の先輩さん達からお菓子をもらうんですが、私は鉄の意志でお断りしていますっ。


 お仕事中にそういうのは駄目ですもんねっもぐもぐ。


 それはさておき。

 

 ご主人様の、お食事の時間がやってきました!

 給仕係の人は食堂に集合ですっ!


 私も係なので集まりますよ!


 毎日のようにお皿を割りそうになってる私は「ドジっ子配膳係」の汚名を返上すべく、新たなる試みに挑戦中。


 ふふふ、ご主人様の驚く顔が目に浮かぶようですっ!





 そういうわけで、お食事を以てご主人様のお部屋へゴーです!


「それで、それなのか」


 ご主人様が視線を向けるのは、金属製のポット。


 でも、こころなしか、半目になっているような?


 私はポットを置いて、胸をはります。


 オウトツができるほど山なんてないですけどっ

 

「落としても大丈夫な物を運ぶ事にしました!」


 陶器やガラスだとどうしても割ってしまいますからねっ!


 どや顔してたら、ご主人様はなぜか苦笑。


 お食事中ですがっ!


 お貴族様らしい優雅な仕草。

 様になってるなー、絵画みたいだなー、なんて見てたらおっと手元が!


「あわわわっ」


 ガシャーン。

 落とした瞬間に飛び散った中身の液体が足について、とっても熱いです。


「あつっ! あついですっ!」


 ご主人様がやれやれと肩をすくめながら、私をひょいとかつぎあげます。

 行先は、救急箱のある手当てのための医務室。


「まったく解決しとらん事に気が付いてないお前のその様子が一周して愛らしいな」


 ううっ、ふがいないです。恥ずかしいです。


 ご主人様に運ばれるメイドさん、ここに誕生。


 なんて事ですかっ!


 お世話するはずが、お世話されてしまってますっ!


「まったくやれやれだ」


 ごっ、ごめんなさい~。


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