第17話 『ウェルテルタウンでやすらかに』 【小説】

 オーディブルで聞いた小説2作品目。


西尾維新 『ウェルテルタウンでやすらかに』講談社 2023

https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000373366


オーディブル ナレーター 鈴木健一

https://x.gd/kPU0I


 前回初のオーディブルで『ハンチバック』を聞いたときに、ナレーターで選ぶこともできると知り、目に留まった作品である。


 ちなみに、西尾維新の作品を最初に読んだ経験は、2006年発売の『DEATH NOTE アナザーノート ロサンゼルスBB連続殺人事件』だった。当時、映画の『L change the WorLd』(2008)にドはまりして、その流れで手に取ったと思われる。


 アニメ『刀語』が面白くて一気に見た後、『物語シリーズ』を知人からお勧めされ、小説も一冊読んだ。一人称の作品だったけれど、なるほどラノベと呼ばれるジャンルに入るのかな? と思ったが、今回オーディブルで耳で聞くとさらにこの方の作品は、音声との相性がとても良いことがわかった。


 わが子に読ませたいと思ったのが、とにかく語彙が豊富に出てくる点だ。語彙が乏しいというか、よくわからない独自用語を使い始めた小3に、頭を抱えながら何かいい方法はないかと考えていた。


 繰り返し、何度でも畳みかけるように出てくる類語のオンパレード。これがとてもリズムよく朗読されるとハマる、はずだ。


 とはいえこの『ウェルテルタウンでやすらかに』は小学生に読ませるには若干早い。というか、中学生くらいまで待ってほしい。なにせテーマが「自殺」なので、多感な中学生以上であれば読んで面白がれるだろうけれど、おそらくまだうちの子は「なにこれ?」と感じてしまうことだろう。もしくは「怖いからヤダ」のどちらかだ。


 それでもこうやってちょっとずつ、もう少ししたら読ませたい/見せたいという作品がたまっていくのはいいことかもしれない。


 ともあれ、鈴木健一さんの達者な人物分けになんだかんだと聞き続けられた。とにかく面白い。胡散臭い中年男性から、キュートなカリスマ歌手まで変幻自在。そしてアニメを知っていると、より西尾維新ワールドにどっぷりつかれるのだ。


 豊富な語彙力から、普段耳にすることもない単語がわんさか出てくるので、頭の体操にもなる。知らない単語はすかさず調べたくなるのも巧さによるので、文字の面白さ、音としての言葉のリズムを体感できる。


 『ハンチバック』でも感じたが、今後の小説はもはやオーディブル化は避けられないだろう。それは読書バリアフリーの観点からでもあり、さらに声優さんや俳優さんたちの新たな仕事場としての意味合いもある。


 アメリカほど車社会ではない日本では、通勤時に運転しながら聞くものとしてのニーズは少ないかもしれない。けれど今やタイムパフォーマンス的に音声化した作品を、2倍速で聞くという文化が定着しつつあるとか。


 それで先日は声優さんへのクレームめいたやり取りがあり、面白い議論の展開があったのだけれど、それはまた別の機会にしよう。


 最後に、なぜ西尾維新は西尾維新と呼び捨てにしてしまうのか。さん付けしようとしたのだけれど、しっくりこなくて諦めた。西尾維新は西尾さんでも維新さんでもなく、「西尾維新」という一つの単語として自分の中に定着しているのかもしれない。

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