第15話 チュートリアル
ミノタウロスダンジョンは、ドミニカが用意したチュートリアルダンジョン。それがダンジョンコアのヨミの考えだ。
チュートリアルというのは、本番で通用するように知識や能力を、段階的に身につけさせるものらしい。
ウッドゴーレムは、ゴブリンより少し強いだけだった。ぼくでもがんばればなんとかなるモンスターだった。ドミニカはぼくの強さ?弱さを良く知っていた。そして僕に合わせてくれたんだと思う。
ミノタウロスダンジョンは、ぼく専用のチュートリアルダンジョンなのだ。ドミニカからぼくにプレゼントされたもの?
なんかドミニカらしくない。ドミニカはそんな優しい人じゃないのだ。
ドミニカが何を狙って、こんなものを作ったのか。それはぼくには分からない。わかるのはこのダンジョンを攻略したら、一人前になれることだ。
それにぼくはもうすぐ10歳になるはず。そしたらギフトをもらえる。成人は15歳だけど、平民は10歳になって、ギフトを受けたらもう子供ではない。
ぼくはそれに加えて、ダンジョン攻略という、ドミニカから与えられた大きな試練がある。今が人生の節目なんだと思った。
次はクレイゴーレムの群れが出る湿地だった。クレイゴーレムの素材は泥だ。キラキラの火のマジックアローでは燃えない。
クレイゴーレムは、ウッドゴーレムよりHP上限が高い。しかも弱点は、火ではなくて水らしい。
「ヨミ。ぼくが水魔法を身に付ければいいのかな。ダンジョントレードでスキルを買って」
「シーフになりたいんだったら、余計なことはしないほうが良い。10歳のギフトには、それまで何を頑張ったかが反映されるようなんだ」
「水魔法のスキルを買って、水魔法で攻撃しまくったら、10歳のギフトで水の魔導士になるっていうこと?」
「はっきりとわかっているわけではないけどね」
「それは嫌だ」
「もしクレイゴーレムにてこずるようだったら、サモン・サーバントで仲間を増やすのも考えるべきだ。仲間は5種類のモンスターから3体。好きなのを選べるみたいなんだけど」
「仲間が増えるのも嫌だ。ぼくたちでがんばろう」
キラキラはヒトダマなので、水魔法との相性が悪い。キラキラはフラッシュというスキルを購入して使い始めた。キラキラの合図で、ぼくは目をつぶる。1拍おいて強い発光が来る。
クレイゴーレムはしばらく目が見えなくなっている。その隙にぼくが背後にまわり、膝裏から関節を破壊し、動きを奪う。
3体出てきても動きを封じれば、あとは攻撃し放題だ。不思議なことに3体以上は出てこない。心臓を狙ってぼくはレイピアをふるい、キラキラは属性のないマジックアローで攻撃。
夜は拠点に帰るから、完全に疲れは取れる。朝仕事に出て、夜帰る生活。ぼくはこういう生活が好きだ。農民ではないが、畑で一日働いて、暗くなると帰るのに似ている。
ヨミとキラキラはモンスターだから、夜は寝ていないそうだ。知らなかった。感謝しかない。
10日ぐらいかかったが、何とか普通に倒せるようになった。ドロップは薬草。癒し草と呼ばれている、HPポーションの素材となる草だ。
ヨミの分解スキルで薬功成分を取り出し、統合スキルで純水と魔力をそれに統合する。レシピをもらったので、ヨミがHPポーションを作れるようになった。
ここでもぼくは地図を作る。ボスがいるのは湿地帯の中心部。大きな神殿の廃墟だと思う。
ウッドゴーレムのいた町は長方形だった。今のクレイゴーレムの町は、半分水没した円形の迷路の街。
しかも罠が多い。落とし穴、毒矢トラップに加えて、上から毒水がかけられたり、宝箱に偽装したミミックがいたりする。目を凝らし、気配を探り、魔力を感知しようと頑張る。
ヨミとキラキラの助けを借りて、湿地の円形迷路の地図を作り上げた。キラキラは飛べるので、平面迷路は意味がない。上から見れば一目で迷路が見渡せる。
でもぼくは地道に方位を確認し、目測したり、歩測して距離を測り、目印との角度を測って、正統的な方法で地図を作る。三角測量だ。
そしてできた地図を、キラキラの映像記憶、ヨミの仮想ダンジョンの映像と答え合わせをする。ぼくの地図なんて、本当は攻略にはいらないのだ。
地図を使って、ボス部屋に到達。クレイゴーレムジェネラル。大きくて力が強いが、倒し方は同じだ。フラッシュアンドアタック。
ここで得た宝箱は木箱。1つはMPポーションのレシピ。もう一つは鬼手という防具で、皮手袋だ。手のひらの感覚が遮られない。手袋なんてしていないみたいだ。そして鬼足と同じように爪を出すことができる。
武器がなくとも、爪で攻撃することができる。いらないときは、爪をしまっておけるので便利である。
これはドミニカのメッセージだろうか。ぼくに剣や槍などの武器はまだ早いのかな。ぼくが今攻略に欲しいのは、武技スキルや攻撃魔法スキルだ。
ドミニカはぼくに待てと言っているのだろうか。攻撃力を強くするのはまだ早いってことなの?
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