第14話 突入!ミノタウロスダンジョン
3つ目の支流。川沿いの、少し高くなったとこをさかのぼっていた。目印になりそうな大きな木を過ぎた。
朝のまだ早い時間だった。その木の陰に踏み込んだとき、ぼくの心に警報が鳴る。空気が違う。景色が違う。
草原ではなくなった。荒廃した古代都市の廃墟に景色は変っている。土は乾いて草は生えていな。立ち止まって気配を探る。ヨミとキラキラの緊張が、僕と強く響きあっている。
仲間って、いいかもしれない。ぼくは知らない人は苦手だけど、この二人、というかダンジョンコアとモンスターだけど、信頼できると感じた。
音はしない。崩れた建物の石の壁。その後ろから1体のモンスターが現れる。ヒト型。身長はぼくと同じくらい。
ゴブリンとは色が違う。表面の感じが木の様だ。でも気配が自然の生き物ではなかった。人工のモンスター?少し怖い。
「ヨミ、あいつはなに?」
ヨミの見積スキルは、モンスターの名前と販売したらいくらになるかを教えてくれる。ダンジョントレード用のスキルなので、販売価格が出るのが笑える。
「ウッドゴーレム。ゴーレムの中では最弱。でもゴブリンよりは強い」
ヨミはもうすでにここを仮想ダンジョン化している。これでここはジガリダンジョンの一部でもある。キラキラは死んでも15分後にリポップする。二重ダンジョンだ。
ヨミが支援魔法、バフがかけてくれたのが分かる。体の中に力が湧いてくる。
「やる!」
そう念話で叫ぶ。ぼくは木の人形と正面から向かい合い、レイピアを抜く。ゴーレムの動きは鈍い。もともと敏捷は低いのだろう。さらにヨミがデバフをかけてくれている。
ウッドゴーレムは近づいて、右腕で僕の顔を狙って来る。武器は持っていない。
レイピアを持つ僕の戦い方は、ヒットアンドアウェイ。攻撃したらバックステップですぐ離れる。敏捷を生かす戦い方だ。動きの鈍いゴーレムとは相性がいい。
問題は僕の一激が弱いこと。確実に当たっているが、効きが弱い。ゴーレムのHPは高いから、少しずつ減らしていては時間がかかりすぎる。
キラキラがマジックアローで攻撃する。上手に同じポイントを攻撃している。黒く焦げ始めて、4回目で火が付いた。木製だから火魔法が有効らしい。ぼくには魔法はないから、キラキラに頼るしかない。
ぼくが足止めをして、キラキラが燃やす。小さな魔石とドロップが落ちて死骸は消える。ドロップはHPポーションだ。どちらもダンジョントレードで売れる。
6体ぐらいの群れを倒すのに1時間かかった。次の群れを探すのに30分。6回の戦闘で40体弱のウッドゴーレムを倒すことができた。
6回目が終わったところに、ポータブルダンジョンコアを置く。これでいつでもここへ来ることができる。そのまま一瞬で拠点に移動。ミノタウロスのダンジョンに入ったら、野営は終わりだ。
採石場の拠点、そこの僕の部屋に帰ると落ち着く。今日は遅くなったので、ダンジョントレードで夕食を買う。
牛肉のホワイトシチューと柔らかいパン。ダンジョントレードは本当に便利。夕食後はいつもの精神集中をして、気配を探る訓練を2時間。ヨミにすべてのMPと半分のHPをあげて、気を失うように寝る。
20日経った。ウッドゴーレムの弱点がわかって、僕も一人で倒せるようになった。魔石のある心臓をレイピアで攻撃すると、そのショックでウッドゴーレムは死ぬ。キラキラとぼく、二人で倒せるようになって、効率は上がった。
このダンジョンには、罠が仕掛けられていた。落とし穴か毒矢のトラップ。ヨミが仮想ダンジョン化して、すべて発見してくれた。ぼくも罠を感知できるように頑張った。
もう一つシーフ的な訓練は、ダンジョン地図の作成。階層のない廃墟の町の地図ができた。長方形の大きな城壁に囲まれた街だった。城壁はもうほとんど壊れている。北側に宮殿があるようだ。
21日目。身長2メートルはあるボスウッドゴーレムを倒すと、宝箱が現れた。銀箱である。ヨミの見積スキルでは、ミミックなどの罠はない。
出てきたのは3つ。一つは鬼足という防具だ。僕にぴったりかもしれない。靴を履くと力が入らないから裸足でいいと思っていた。
鬼足を装備すると、裸足の感覚はそのまま大地の感触を維持してくれる。必要な時は爪を出せるようになっていて、土にがっちり爪を食い込ませて力を出せる。
足音がしなくなった。肉球ではないが、柔らかい何かが足の裏全体に出てくる。これで動物やモンスターに気づかれにくくなる。
もう一つはサモン・サーバントというスキルスクロールだった。手助けしてくれる仲間を呼び出すスキルらしい。でもぼくにはもう二人の仲間がいる。これ以上の仲間を増やすのは嫌なので、これは使わないことにぼくが決めた。
まだある。なぜかHPポーションのレシピが出た。ぼくたちに薬師はいないので、これは無駄になるのかもしれない。
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