第12話 ひたすら走る一本の矢(キラキラ視点)
なんか夢を見ているような気がする。あんまり変化が激しすぎるから。
ヨミのダンジョンに買われてきたのが秋だったかな。ガーディアンモンスターにしてもらえたのはうれしかった。だけどほかのモンスターがいないからだとすぐわかった。
最低1体はガーディアンを置かなければいけない。私はダンジョンコアを守るラスボスになった。
ヨミはスライムよりも安いからキツネ火の私を買ったんだ。100チコリだったの。私。そして他に仲間はいない。スライムに侵入されても死ぬ。絶望的状況だった。
ヨミは何もしないで消滅するつもりらしかったわ。木の洞に引きこもって、じっとしているだけ。歯がゆかったが私には何もできなかった。毎夜泣いていた。怖くて怖くて。
ある時少年が一人で木の洞に泊まった。この少年はドミニカが一度連れて来たことがある。
ドミニカは怖い人だった。多分ダンジョンが木の洞に隠れていることに気づいていた。ヨミが着替えを覗いていることも知っていた。知っていて放置していた。
少年の2回目の訪問の日、春のある日、その日から私の運命は変わった。ジガリは私にとって神だ。
先走りすぎたかな。あの日、ジガリがダンジョンの偽装を見破って、突入してきた。私は見えないところから、火弾となって少年を打った。ぶつかって自爆したら、殺せるかもしれなかった。
あの時の私には攻撃手段が少なかった。火弾を1回打てた。ファイアーバレットだ。攻撃力は低い。あとは密着して自爆。それ以外はただ体当たりするしかない。
私はそのすべてを使って、美しい少年の命を奪おうとした。美しいのは外見だけではない。その心の清潔さが、私にはわかっていた。美しいものを殺して私も死にたかった。そしたら私も物語の端役になれるような気がした。
失敗。殺せなかった。15分後復活できた私は失敗に安堵していた。そして自分の消滅を待った。ダンジョンは放置していれば明日消滅だった。こんな風に消えていくダンジョンが大多数だ。
信じられないことが起きた。そのあと少年、ジガリがダンジョンマスターになってくれた。私とヨミは生きながらえた。ドミニカの死体を吸収したからだ。死体は10000DP以上になったらしい。
ヨミが生き返った。ダンジョンコアがよみがえれば、モンスターも生きながらえる。私はジガリに本当に感謝した。ドミニカの死体を吸収させてくれたのはジガリだからね。当たり前だ。
でもヨミが崇拝したのはなぜかドミニカだった。ヨミは異世界人で、前世は男だったらしい。その男の部分がドミニカに魅了されてしまっていた。ドミニカの死体を吸収して、性的快感を得たのかもしれない。
「男って、本当にバカ」
ドミニカはいい臭いをさせていたが、その香油の臭いは魅了の魔法だった。ドミニカが殺すのは大多数が男だから、多分モンスターも、闘う前に魅了にやられてしまう。
私はモンスターだけど、属性は女。ドミニカの魔性が分かっていた。この人、ただの盗賊じゃないと分かっていた。相当悪いこと、それともいいことかもしれないが、ともかく相当のことをしてきた人だった。
私はジガリ。私にとっての神はジガリだ。私はジガリの矢になりたい。矢になってジガリの敵の胸を刺す。刺し殺す。私にできることはそれしかないから。
今の私の力は人間で言えば6歳児くらい。でもドミニカの武器庫からサソリの小弓をもらっている。新しいマジックアローのスキルも得たのよ。
マジックアローに火属性を付けることも今はできるの。強くなってジガリを守りたい。ジガリの敵にひたすら走る、私は一本の矢になりたいの。
私はまだ弱い。強くなりたいけど、ジガリと一緒に狩りをするときは、経験値をジガリに多く分配している。
ジガリ9、私が1。ジガリに私の経験値をあげるのはうれしい。できるのは私だけだから。ヨミは支援してもDPを稼ぐだけで、経験値は発生しないらしいの。人化したら変わると思うけどね。
私が強くなるのは夜。ジガリが寝ている間。ジガリは1日の終わりに、精神集中を2時間する。寝る前にその時持っているMP全部と、HPの半分をダンジョンに寄付してくれる。合わせて60くらいだけど、気持ちが尊いと思う。
私はジガリが寝ると、モンスターを狩りまくる。約7時間。その時の姿をジガリが見ることはないのが救いだ。まるで悪霊みたいだと自分でも思う。
狩りの場所はヨミが決めてくれる。拠点の近く、川の上流の今度探検に行く場所、ヤマンという都市へ向かう裏街道の周辺など様々だ。
ヨミはダンジョンコアを私に渡す。それがあれば仮想ダンジョンにできるから。そうなれば私は不死になる。
そして遠くへ行くときは、そこにダンジョンコアを置きっぱなしにするように言われる。もしそこを仮想ダンジョンではなく、支配ダンジョンにすれば、いつでもそこに転移することができる。そう思うと少し私も楽しい。
ジガリのテリトリーを広げることができる。
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