第5話 転生者ヨミ(ヨミ視点)
前世は高校教師だった。地理が専門。だが北海道の僻地の高校の教師だったので、日本史や世界史も教えていた。
ピロイ。この町の高校を希望したのは、日高山脈があるからだ。俺の趣味は山登り。高校、大学と山岳部に熱中していた。日高山脈は俺のお気に入りの山だった。
生まれも育ちも埼玉県だが、北海道大学に進学して、日高山脈に出会った。そして魅了された。俺は山で死んだのだろうか。記憶はない。女神にも会わなかった。
気が付いたら、異世界でダンジョンコアだった。最初に与えられたDPは2000。100DPで最安のモンスター、キツネ火を購入した。ダンジョントレードの使い方はなぜか知っていた。
生き延びるためには、冒険者をダンジョンに誘い込んで殺せばいい。何もしないでいたら、俺は消滅する。でも人を殺すことは俺にはできない。
モンスターでもいいって?
俺にはできそうもない。
ガーディアンモンスターは買わなければならない。なぜかそれは分かった。そしてダンジョントレードという仕組みでモンスターを選んだ。最弱モンスターを選ぶと、詰むというのは分かっていた。
ゴブリンを購入し、スライムを誘い込んで殺し、DPを貯める。そしてダンジョンを大きくして、いつかは人間を殺す。それしか生き延びる道がない。しかしおれは最弱のキツネ火を選んだ。その時、俺は異世界で静かに消滅することを選んだのだ。
キラキラと名付けた。火はなごむ。スライムすら殺せないキツネ火。キラキラは少女のように純粋で、愛くるしかった。俺と一緒に消滅させるのは可哀そうだったが、運命と思ってあきらめてくれ、そう思っていた。
女神と会うこともなく、異世界に放置された俺は、ただ戸惑うだけだった。どこか分からない森のなかに隠れ場所を見つけた。それがドミニカという女盗賊の第2拠点だったというわけだ。
前世の俺は25歳まで生きた記憶がある。女性と付き合ったことはない。山岳部に女性はいたが、女と意識したことはなかった。教師となった高校は共学だったから、女子高生もいたが、生徒を女性としてみることはできなかった。
そんな童貞の俺が異世界まできて、魅せられた女性がいる。ぼっちだった俺は、いつも最高の美女に片思いしていた。どうせ実現しないなら、最高の相手を選ぶ。陰キャとは、そういうものである。
その俺が異世界に来て、ダンジョンコアになって、消滅を待っている時、最高の美女にあた。俺が密かに楽しみにしていた女性は、ドミニカだった。
ここで着替えることも多く、つい覗いてしまっていた。肌は色白で、明るい金髪。目は薄い青。鍛えられた体はアスリートのように美しかった。覗きは悪いことだとは思っている。しかしドミニカはダンジョンコアに着替えを見られても、気になんかしないだろう。
俺のダンジョンに最初に取り込んだのがドミニカの死体だった。俺は泣いた。心の底から悲しかった。自分が訳も分からず異世界転生したことより、もうドミニカと会えないことが悲しかった。
おれはその日、消滅の危機だった。何もしないで隠れているうちにDP3にまで減っていた。明後日には消滅。そのはずだったがジガリという少年が現れ、俺の運命は大きく転換した。
ドミニカを吸収したのが俺だというのは何かの運命だったと思う。その時、俺は異世界で生きる決心をした。ジガリという少年をマスターとするダンジョンコアでも構わない。おれはもうドミニカの生まれ変わりだから。どっか間違っている気がするが、でも構わない。
心配なことが1つだけある。ジガリが俺を人化させ、性奴隷にすることだ。今はまだ9歳だから、その心配はないだろうが、性に目覚める日も近い。
実際、俺は可愛い女性に人化することを求められてしまった。男としての意識がある俺が、男性と性交渉するのは心理的に受け入れられない。何とかキラキラにその役割を担ってもらいたい。
さて将来のことはあとで考えることにして、今はできることをしよう。俺はドミニカの死によって生まれ変わって、前向きに生きると決めたのだ。
新しいダンジョンは採石場の遺跡の中にあった。2つの大きな岩の隙間から入る。人一人が通れる狭い隙間が3メートルくらい続くと、広い石室があり、その奥にいくつかの部屋があった。
俺がまずしたことは害虫駆除だ。キラキラに頼んで石室内の虫や小害獣をすべて駆除した。ジガリの体内にいた寄生虫も駆除してやった。これで栄養状態も良くなるはずだ。それに俺のDPもわずかに増える。
クリーンを何回も繰り返し、マスタールームの階層を作った。ドミニカの使っていた豪華なベッドをその部屋に移動する。
俺がジガリからもらったDPは20万DP。1DPは1チコリ。1チコリはほぼ1円なので、けっこう使い出がある。
ダンジョントレードでは、自分のイメージできるものを買うことができる。だから俺なら日本のものも買うことができる。制約はある。この世界で創造できるものに限られるし、価格はこの世界で調達する難易度によるらしい。
ジガリには結構高級なマットレスを買ってやった。照明は照度調節のついた魔道具。夜は静かだし、よく眠れると思う。ジガリは寝る前にすべてのMPとHPの半分を提供してくれることになっている。
ジガリは気を失って寝る。朝にはすべて回復して目覚める。俺が得をするだけではない。MPをすべて消費すると、MP上限が上昇する。ジガリにも悪いことではない。
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