ep4.アレクシア3歳の苦悩

■後神暦 1308年 / 春の月 / 黄昏の日 pm 00:00


生まれ変わってもう3年も経つのね。

身の回りのこともある程度自分で出来るくらいには成長したわ。


わたしが今後の為にやらなければならないことは…

・刺客どもとの出会いの回避

・学園の入学回避、及び自立する為の何らか技能の獲得

・魔法の習得


エラルドには不本意ながら繋がりが出来てしまったので、次善策として親密にならない、ご近所さんの関係をキープし続ける、これだわ。

他の刺客どもは事前情報がほとんどないから神頼みにはなるけれど、こっちも能動的に情報を集めて会わないように努めるしかないわ。


と言うか主要キャラクターの過去くらいもう少し詳しく設定して情報流せよ開発。


次に学園だけど、これはパパンに全力でお願いすれば通るはずだわ、全肯定パパンは伊達じゃないのよ。問題はママをどう説得するか…

コンビニバイトしか経験のないわたしにあるアドバンテージは前世の知識だけど、まだ近所しか出歩いていない今はアイデアが浮かばないから一旦保留ね。


最後、これが最優先で最重要、魔法の習得だ。

パパンやママは”生活魔法”と言われる魔法を日頃から使っているけれど、わたしが思っているものとは似ても似つかない、本当に生活の為だけに存在する魔法。


でもそれすら使えない今のわたしには、きっとアレクシアの奇跡のような魔法なんて使えるはずがない。ステップを踏む為にもまずは生活魔法の習得からね!!


「かんがえることがおおいわね」


思わず呟きながら窓から外の景色をぼんやりと眺めていると、窓の淵に子供の手が見えた。それは淵を掴み次に金髪の男の子の顔が下からせり上がってくる、エラルドだ。


「アリー!! あそぼうぜ!!」


「ごめんねエラルド、おるすばんだから、あそべないの」


本当は「わたしはお前と遊びたくない、さっさと失せろ」くらいは言ってやりたいけど、辛辣な言葉で悦に入られたら困る。今のところエラルドは異性から受ける痛みや意地悪は”よく分からないけど気持ちいい”、程度の認識でいる。


これ以上、症状を悪化させるワケにはいかないわ。

もし目覚めてしまってもそれを与える役割は別の誰かにお願いしたい。


「えー!! いいだろ!! いこうよいこうよいこうよ!!」


「あーもう!! うるさい!!」


しまった!!クソガキムーブに思わず本音が出てしまった……


「でもオレ、アリーとあそびたいんだもん(悦)」


止めろエラルド、そんな表情かおするな。

くそっ…わたしだってショタは嫌いじゃない、でもアナタの本性を知ってるから嫌なのよ、なんなのこの二律背反にりつはいはんは!!


「アリーさ、ほんよみたいっていってただろ? オレ、さがしてきたんだ」


「え? ほうとう?」


「うん、きょうかいあるだろ? シスターがきょうかいのほん、よんでいいっていってた」


わたしの為にわざわざ探してくれたの?良いとこあるじゃない。

…いやいやいやいや、相手はエラルド相手はエラルド相手はエラルド、

わたしはチョロインじゃない、わたしはチョロインじゃない、わたしはチョロインじゃない。


落ち着け、それでも文字の習得は魔法の習得に役に立つはず、少しでも早く触れておきたい。


「わかった、もうすぐママがかえってくるから、そのあとでいい?」


「うん、じゃあまたあとで!」


窓を閉め、ママの帰りを待った。

思ってたよりも早く帰ってきたので事情を話すと教会まで送ってくれると言ってくれた、エラルドと二人きりになるのは避けたいから助かったわ。


ママとエラルドママに教会まで連れていってもらい、夕方にまた迎えに来るまで本を読む時間ができた。

しかし、文字の勉強はしたつもりだったが、女神エストの聖典や、この国の歴史に関する本は解らない単語が多過ぎる。


「なぁアリー、これみろよ!」


「シスター、このことば、なんてよむんですか?」


「なぁアリー、そといこうぜ!」


「シスター、このことば、どんないみですか?」


「…………」


ごめんねエラルド、悪いけどわたしは文字や言葉を覚えたいの、アナタに構ってあげる時間はないわ。

それからお迎えが来るまで、歴史や地理に関する本をシスターに質問しながら必死に読んだ。


教会に置いてある本はこの国で一般的な、割りとカジュアルな内容の本らしく、国営の図書館にはもっと専門的な本があることを教えてくれた。

もしかしたら、わたしの魔法に関する本もあるかもしれない。


それにしても、紙があるのは家にいても分かってたけれど、本が一般流通してるってことは製紙技術とか印刷技術があるってことよね?

建物から受ける時代の印象とは随分ズレてるわ…まぁあのクソゲーの時代設定も滅茶苦茶だったし、これくらい当たり前なのかもしれないわね。


――帰り道


「エラルド、ごめんね、ほんにむちゅうになっちゃった」


「ううん、オレもなんか、むしされて、たのしかった(悦)」


「…………」


わたしは言葉を失い、家に帰るなり崩れ落ちた。

見落としていた、失態だ、「無視」もエラルドには悦びに繋がるのか…


なるべく関わりたくない、でも無視もできないなんて…


「どうすればいいのよーーーーー!!!!」


わたしは渾身の力で叫んだ、しかし床に反響し、わたしに返ってくるだけだった。


【アレクシア(3歳) イメージ】

https://cdn-static.kakuyomu.jp/image/ZVCCbA8k


【エラルド(3歳) イメージ】

https://cdn-static.kakuyomu.jp/image/El71cbFd

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