美少女はモブが愛おしい

あれからも柏からの猛攻は続く。それを俺はしのぎ、やっと放課後になる。


「伊月く〜ん、帰ろ〜?」

「ごめん、今日は用事があるから」

「はい、ダウト。伊月くんは今日は用事がないって私知ってるよ」

「なんでんなこと知ってんだよっ!!??」


こんなにもグイグイと来る柏が怖いためとっさに言い訳をするが、何故か彼女は俺の状況を知っている。怖すぎる…


そのあとは押し切られて結局一緒に帰ることになった。ここで珍事件が起きる。


「柏雪さん!前から好きでした、付き合ってください!」


柏への告白イベントである。なんと俺が隣にいるにも関わらずその男子は柏に告白したのだ。メンタルが強すぎる。俺には無茶なことだわ。


「ごめんなさい、私には……チラ……気になる人が……チラチラ」


おい、こっちをチラチラするな。名の知らぬ男子からすごい目で見られているだろ。この後、この男子になんか言われそうだよ……それを考えると気持ちが重くなる。


「柏さんが好きなのは隣にいる人のことですか……??」


不安そうに柏に聞く男子に俺はなぜか申し訳無さが芽生えてきた。すると柏は笑顔でその言葉を待っていたとばかりに口を開いた。


「実はそうなんだ!もうあんなことやこんなことや……きゃっ!言っちゃった〜!!」

「そ、そうなんですか……あはは……」

「それでね? 伊月くんはさ?」


柏からあらぬことを告げられた男子は白目を向いて倒れてしまった。俺には何もできないのでとりあえず祈っておいた。


「柏さ? 嘘は良くないよ?」

「嘘?なんのことかな、本当のことでしょ?」


キョトンとよくわからなそうに小首をかしげる柏。こいつマジか……ストレスか何かのせいでついに現実と妄想の区別がつかなくなったのだろうか?


「だって……私にプレゼントしてくれたじゃない!!あれは愛じゃないの!!??」

「ただ奢ってあげただけじゃねえか!!プレゼントじゃねえわ!」

「そ、そんな……プロポーズじゃなかったの!?私とは遊びだったってこと!?」


悲劇のヒロイン(笑)の柏はそう大声で言うので周りの生徒からの視線が俺に槍のように突き刺さる。


「ここだとまずいから一旦外に出るぞ」

「ま、まさか、その後に暗がりに私を連れ込んでそのまま……も〜伊月くんったら〜、す・け・べ♡」

「だまれ」


まさかこんなに頭が逝っているのはストレスが限界突破してしまったからだろう……俺は柏の腕をつかんで無理やり歩かせ、学校から出る。


「それで?柏は前よりも様子がおかしいんだ?ストレスか?」

「ストレス?何言ってるのかわからないけど、私はただ伊月くんが好きなだけだよ」

「なるほど、幻覚まで見え始めて……柏、病院行こう」


どうやら柏はついに頭が逝ったのか俺のことを好きといい始めた。ヒロインが好意を寄せるのは主人公だろ、俺みたいなモブじゃなくて。


「好きって俺よりもいい人がいるだろ?」

「いないもん!!伊月くん以上にいい人なんていない!!」

「そうか……??」

「信じてないって顔してる!!じゃあこれからもずっと好きでいるから!!」


柏は怒ったのか頬を膨らませ、早足になる。


「だから伊月くん……覚悟しててね!!君には私のことを好きになってもらうから!!」

「だから意味がわからない……!!」

「意味はわからなくていいの!!ただ君は私のことを好きになればいいだけ。君がいつも言ってるモブとかなんとかは恋愛には必要ないの、好きって言う気持ちが大切なの!」

「……」

「伊月くんは私のこと好き?」

「そ、それは……」


柏はふっと笑って俺に笑顔を向ける。その顔を見るとなぜか愛おしく見えてしまう。


「……まだ、返事はいいよ。伊月くんは私が好きになってないででしょ?なら、私は……待ってるから」


そう言って柏は駆けて行く。その柏を見て俺はこの気持ちがわからない。だけどいつかその気持ちがわかるのだろうか? いつかこの気持ちがわかるときが来たらそのときには―――――――



あとがき

これにて『モブとして生活していたら学校一の美少女に好かれてしまった件』は完結です。今回の話はモブと思っている多々良伊月と学校一の美少女の柏雪のラブコメですが、結構ありきたりな感じでしたね。少し読み返してみると今まで書いてたやつと似てて、少しうーんと考えてしまいましたね。まあ、私は経験とか知識が少ないんでこれからも増やして、自分が満足できるような小説を書けるように頑張っていきます。

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モブとして生活していたら学校一の美少女に好かれてしまった件 御霊 @Alps2324

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