美少女はモブを思う
「むふふ〜今日は多々良くんはいい反応していたな〜」
私、柏雪はお気に入りのぬいぐるみを抱きながら今日のことを振り返っていた。最近できた友達の多々良伊月のことを。
「自分のことをモブだと思っているけど全然モブに見えないよね……」
多々良くんの容姿のことはもちろんだが、それ以外でもモブには見えない。
長く伸びた前髪で顔が隠れているが時折見えるその顔はまるで男優みたいにかっこよく、性格は優しい。多々良くんが言っていたモブというものではなくもはや主人公という方が正しい。
最初は髪が長いな、と思っていたのに話してみると意外と反応が良くていじりがいがあった。
柏雪は思った。もし、彼のことを名前呼びで呼び出したらどうなるんだろうか?照れてすごい動揺して『ど、どうしたんだよ柏さん!? な、ななな、なんで俺の下の名前を!!???』という感じの反応しそうだ。
そんなことを考えて私はくすっと笑った。最近はいつもこんな感じで彼のことばかり考えてしまう。多々良くんは何が好きなのか、趣味は、家族構成は、好きな……
「えへへ〜明日は多々良くんと何して遊ぼうかな〜」
不意にドアからコツンと音がしてそちらを見ると……
「か、母さん……雪が……!! いつもは無表情の雪が……!! 笑っているぞ……!!!」
「そうね、好きな男の子ができたのかしら?」
そこには父と母が覗いていたようだ。
「な、ななななななぁぁっっっ!!!???な、なんでここにいるのっっっっ!!???」
「あら、気づかれちゃったわ」
「そ、そんなことより母さん!!?? 好きな男の子って!!??」
さっきまでつぶやいていたことが二人が聞いていたとは……!! まず、年頃の娘の部屋を覗いているのはどういうことなんだろうか。
「あ、雪」
「な、何!?」
「お風呂できたわよ。早く入ってきちゃいなさい、出たら教えてね」
「お、教えるって何を!!??」
この母は恋バナが結構好きなのだろうか……というか私は多々良くんのことなんか好きじゃ……す、好きじゃ……
「っっっ!!」
否定をしていても頭にはずっと多々良くんが浮かんできて、顔が熱くなってくる。これはきっと暑いから、夏は暑いからそのせいだ、そうに違いない!!
「お風呂入ってくるっっ!!」
「はーい、いってらっしゃい」
お風呂で冷水を浴びたのに体の熱は下がらずにむしろ上がっているようにも感じる。
「もしかして、私……」
これがネットでちらっと見た『恋』というものなんだろうか?詳しくはわからない、初恋は今回が初めてであり、私は経験したことがないような気持ちが溢れてくる。
「……明日は多々良くんとしっかり話せるかな………?」
そんな心配をして寝ようとしても気持ちが高揚している。そんな時にある考えが浮かんできた。
「もし、多々良くんが他の女の子にかっこいいのを気づかれたら……」
そんな事になったら多々良くんと話せなくなっちゃう……
多々良くんが私以外の女の子と話しているのを想像すると心がキュッと苦しくなる。
「なんでこんなに苦しいんだろう……??」
多々良くんのことを考えると彼のことが欲しくなってしまった。手をつなぎたい、名前で呼びたい呼ばれたい、ぎゅっと抱きしめたい、キスをしたい、それからそれから……
そんなことを考えていたら2時間経過していた。
あとがき
女の子目線ってすごい難しいですよね。主人公目線でも表現が難しいのに……
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