追憶のあの子たち(1)


 猫との接し方に戸惑い、苦手だった私を変えたのは、一匹の外猫ちゃんだった。


 名前をTまちゃんと言う。


 Tまちゃんは元々、歩いて5分の友人宅の近所で飼われていた家猫ちゃんだったらしいが、その一家が犬を飼い始めた途端に外に出されてしまったらしい。


 でもTまちゃんはとにかく人懐っこくて可愛かったから、ご近所さんたちにたいそう可愛がられて、Tまちゃんのお家までご用意したお家もあった。


 お庭にパトロールに来ればおやつももらえるし、実際友人宅でもごはんをあげたりしていた。Tまちゃんのためにカリカリ用意されてたもんね。


 そんなTまちゃんとの交流は友人宅に遊びに行った時からなのだが、友人母が「ほら、猫来たよー、Tまちゃん来たよー」と教えてくれて、カリカリを手にベランダに出る。


 「Tまちゃん」と親しみを込めて呼んでいるのにもかかわらず、なぜか突然カリカリをあげながら「猫! このやろう!」と言葉遣いだけ豹変する友人母。


 友人母はちょっとひょうきんな人なのであった。


 そんなTまちゃんはその後、友人宅近くのバス停からバスに乗る時はお見送りに来てくれることもあったし、なんなら一緒にバスに乗ろうとして慌てて降ろしたこともある。


 足元にスリスリしていくから、バス待ちの人からも人気だったTまちゃん。


 何年かして、姿を消しちゃったけど、可愛かったな。


 あ、やばい泣きそう。


 ありがとうね。

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