魔法のカリカリに負ける
ある夜。今日はNたろうちゃんに会えるかなーと思いながらバスを降りると、少し離れたところにあるベンチにひとりのおばさんが座っていた。背を向けているのでよく見えない。
いつもはNたろうちゃんのいる駐車場の方から帰るのだが、その日は同じ方向に向かう人がちょっと嫌だな、と思った人だったので(すんません、夜なんで)、仕方なくおばさんが座っている方から帰ることにした。こっちの方が人は多いけど暗いのよ。
足早におばさんの横をすり抜け、帰路を急ぐ……。じゃ……お?
Nたろうちゃん! おばさんに抱っこされてる!
ええ待って待って、2m近付いたら逃げるんじゃないんかい!
それともやっぱり飼い猫なのか? その人が飼い主さん? にしても羨ましいーーーーー!
そんな思考がずっと頭の中をぐるぐるする。
それからまた別の夜。この日はもう、バスを降りて少し歩いた時点でNたろうちゃんがいることを認識していたので、ワクワクしながら近付いていた。
トトトトっと軽い足取りで道路を渡り、駐車場へ向かうNたろうちゃんの姿を見ていたからだ。
今日はNたろうちゃんに会えるよー。歩くNたろうちゃんも可愛いよぉ。おお……。
んんん?
誰? Nたろうちゃん、その人誰?
見れば、Nたろうちゃんは必死に誰かの後を追っている。追い抜き、振り返り、その人にまた追い抜かれれば追いかける。
あの時のおばさんだ。
何でだよぉ、2mどころか自分から近付いてるじゃんよぉ!
言い様もない悲しみにうちひしがれていると、ふと頭にあのお弁当カップのカリカリが甦ってくる。
ハッ!
あの人か……。あの人がエサをやってる人なんだ……。一粒のカリカリでこんなにもファンサが違うのかクソぅ。
そうだよね……、エサをくれる人には懐くよね……、そうだよね……。
は い ぼ く。
そりゃ、チュールというチート武器もありますよ。それ装備すれば無敵になれるのは分かってますよ。
でもさ、その後の面倒は見れないんだもん。エサあげるのは簡単だけどさ。
そんなわけで、私は今日も声掛けと、猫じゃらしの初期装備で頑張るわけである。
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