銀髪を得るほど過ぎたとき思い逢えるともせず乞うても逢えぬ

薄月の暁降あかときくたちほどく指なごり惜しくも言葉にできず


銀髪を得るほど過ぎたとき思い逢えるともせず乞うても逢えぬ


夏に死に秋に産まれ肥え冬を耐え春にほどこし両親を思う


潮騒しおさいと共によせたる青泡せいほうや波打つさまは夢の最果て


歩道から見かけたすき家満面の笑顔で向き合う君に苦しい


月下がり太陽昇り霧晴れる粟立つ腕決戦のとき


逢えずとも触れ合わずとも伝えずとも愛のかたちに誤りはない


別れ浮き月満ちている盃を寂しさ含み吞み干した夜


あばら家で老いた犬猫飼いながら共に老いつつそのときを待ち


季を知って急ぎ色づく銀杏の木目下もっかこの道染めてやらいでか


正義感捨ててしまえよ世のためだ人の純真煮詰めれば悪


「君」と書き心に揺れるその影は老いることなくその日のままよ


くらみち一筋白く先人が作りし轍迷わずけよ


野々原の春は気まぐれ雪舞わせ春は気まぐれむくろに花を


愛してる?ねぇ愛してる?アイラブユーその言葉イヤ母国語にして


春来たり口無きものや雄弁に色彩放ち覇を誇るとき


湯に映る光の姿揺蕩たゆたえばうつつも同じみなおぼろかな


ふるさとの川岸に柿実ってる見送る君の雲知らぬ雨


傍らに積み上げてある未読本私を守る城壁である


鏡台にこびりついてる垢一つ生きた証がこれだけとはね

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