朝露を舞い飛ぶ蝶はモナリザを一目見たくて画材の端へ

右耳に人差し指を差し入れて貫き通せば出て来る不安


ほうき星降って来たよと伝えると降らせているのと腕時計鳴る


朝露を舞い飛ぶ蝶はモナリザを一目見たくて画材の端へ 

 

目が止まる過去の日付の新聞紙過去に逃げ込みうつつに背く

 

闇囲うホームに降りて見渡せば帰還兵たち最終電車


軒下で稲揺らす風感じつつ猫撫でながら一日が終わる


童心で水面の魚影追いかけて流水に浸す爛れた心


かあさんとあんなにあった稲もなく今日も一人で月見て歩く


嫁と義母尽きることない座談会物言わぬ義父微笑んでいる


秋風と夏の日差しがせめぎ合い庭の老婆が勝敗決める


トランペット月の尻尾を震わせる肩揺らしつつ仮面達ゆく


海底のサンダルつつく魚たち陸の悲劇を露とも知らず


進むべき道を示すはまっすぐに次々伸びる飛行機雲さ


命など生きてるうちに使い切れうつつ黄泉路よみじおれにはおなじ


まぶたがねあそび疲れた寝ろ寝ろとわたしに言うのそう告げ寝息


切れかけた蛍光灯のストロボが映すの影徐々にこちらへ


夕暮れに約束はなく期待だけその角から君が来たなら


悔しいのねぇ悲しいの私のうえで全てぶつけて尽き果てなさい


ゆかり無き地にてたゆたふ湯の中で離人思いてため息一つ


風冷めてえり寄せ合わす過の夏に流した汗が実る秋かな

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