カールもショーン

 「よし、準備は整った!フジナミの国を魔の手から守れっ!全員の健闘を祈る。次に会うのは、魔物から解放されたフジナミの城だ!」

 オォォーーーーー!

 ミカデの鼓舞に第2師団の兵が応える。


 「カール、ショーン頼んだぞ」

 『お任せください』


 怒号と共に第2師団の進軍が始まった。

 本隊とは離れて、我々は目立たぬよう側面の茂みに身を隠しながら速力を上げてジャネスがいる後方へまわり込むように進んだ。


 速度を落とさず、枝葉を掻き分け周りに置いていかれぬよう、僕はなんとか手綱を操った。以前は原付の免許は持っていて何度か運転もした事もあるが、馬の方が断然難しい。揺れる。激しい。

 線で地面を捉えるバイクに比べて、点で地面を蹴り上げる馬の・・・・・・。

 

 !? アッ まずい・・・・・・。


 馬に集中しないでくだらない事を考えているからだ。

 体がフワッと浮いた瞬間に手の力が緩みそのまま馬から落ちてしまった。


 やってしまった・・・・・・。


 馬は、主人が落ちたことにも気付かないようで、そのまま駆けて行ってしまう。

 

 僕の落馬に周りは誰も気がついていないようだ。

 

 幸い落ちたのは土の上、痛めた所もなく、すぐに立つ事ができた。


 こんな勇者がいるのかよー。背負った光の剣が邪魔くさいが、とりあえず前へ走って向かうことにした。



 フジナミ城の周りでは、後方から突如現れた軍隊に魔物たちの動きが止まった。

 カールとショーンは作戦通り、東西に分かれ魔物を牽制しつつ城の南方、ジャネス本隊と城の間に集結し始めた。

 カールとショーンの呼吸はぴったりと合って順調だ。カールがジャネス本隊に向かうように陣を構えると、ちょうど反対にはショーンが城の北門に向かうように陣を構えた。


 両軍しばらく睨み合うと動かない。


 ジャネス本隊に動きはない。

 

 イディアフ王子からの狼煙はまだ上がっていない。

 まさか、どこかで捕まったのか。ショーンは突撃号令のタイミングを測っていた。しばらく待って狼煙が上がらなければ、自分たちだけで突撃するつもりだ。

 

期を逃して、先に魔物側から仕掛けてこられると厄介だ。ここまでと手を振り上げた時、城壁の向こうから青い狼煙がしっかりと確認出来た。


 よしっ!いまだ。

 「突撃ーーー」

 ショーンの掛け声に兵が呼応し、魔物群がる北門へ突撃が始まった。

 後ろの状況を把握した、カールも声を上げる。

 「敵将ジャネスを討ち取るぞ!突撃ーーー」

 カールの兵も大きく呼応し構えをとる。

 ドッドっドッ

 わざと地面を強く蹴り、地響きや砂煙を起こすようにその場で足踏みを始める。


 地響きが響き渡ると、ジァネス本隊にも動きがあった。不恰好ながら、正面に兵が横一列に並び、カールの部隊を討つべく前進を始めたのだった。


 んー、よしっ!見た目にも200や300ではない、500体近くは動いている。あとはどこまで深く誘い出せるかだ。カールは益々、足踏みに力を込めて敵を威嚇した。


 ショーンの部隊と魔物達がぶつかった。

 数の上では魔物の方が多いが、ショーン自ら先頭に立ち、先の尖った三角の錐行の陣を敷いた部隊は、勢いそのまま突っ込み敵を蹴散らした。巨大な魔物には縄を掛け動きを止めてから大剣や槍で一気に仕留める。魔法を使う魔物には、大きな盾を構えて魔法を防ぎ隙を見て一気に倒す。魔物と戦った経験値が桁違いなのだろう。素早く効率的にバッタバッタと倒す倒す。

 

 オォォーーーーー!!!


 フジナミ城の南門が勢いよく開くと、イディアフ王子を先頭に騎兵隊が勢いよく飛び出して来た。ショーンの部隊を警戒していた魔物達は、背後からの奇襲に面食らった。背中から狩られもう大混乱である。


 一方、カールの部隊もジャネスから離れ約500体の敵部隊と正面からぶつかった。数はカールの部隊が多いが、ジャネス本隊の兵士とあって、一体一体が強い。破壊力のある物理攻撃から、範囲の広い魔法攻撃まで、それぞれの魔物が個性的でオリジナリティのある攻撃を仕掛けてくるので、経験豊富な第2師団の兵でもなかなか対応し切れない。

 苦戦しながらも、カールは自分の役目を怠らない。部隊を薄く横に伸ばして、敵を包み込むように部隊を展開していった。

 これもジャネスを討つ別働隊の動きに合わせたものだった。

 「こちらはなんとかしますので、頼みましたよ。ミカデ師団長」

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