第5話 癒しのラピス。

「旦那様~~ラピスは眠いです~~」


 俺は寝坊助のラピスを起こし、髪に手ぐしを入れ寝ぐせをなおした。ラピスは頭を撫でられてると思ったのか、にへっと笑って俺の胸に埋もれた。正直寒くて仕方ない。


 大聖女の朝飯のお誘いをお断りしたものの、どうしたものか。


 この世界ではまだ全然生活力がない。小銭すらない。


 俺一人なら我慢するが幼女がいる。教皇様が行動の自由を許してくれた。日払いの仕事でも探してみるか。


 いや、働いている間ラピスはどいしたらいい? 大聖女が面倒みてくれるとは思えない。


 そんなヤツにお金貸してとは言えない。借りて返せないなんてなったらあの大斧で……そんな震えあがるような想像をしていた俺は声を掛けられた。


「すまねぇなぁ……命拾いしたぜ」


 さっきの打ち首待ったなしの衛兵。いや棒たたき10回か。どうやら罰を受けた後のようで尻を押さえてふらふらだ。


 ***



「かあちゃん、帰ったぞ」


 俺は助けた衛兵に連れられ衛兵の自宅にラピスと行った。お礼に朝食をご馳走してくれるらしい。


「あんた、どうしたんだい⁉ また喧嘩かい?」


 肝っ玉母さん風の奥さんが、お玉を手にあきれた感じで出てきたところを見るとこの中年の衛兵が喧嘩っ早いのは折り紙つきのようだ。


「違ぇよ。今朝ヘマやらかして、危うく打ち首になるところを、このあんちゃんと嬢ちゃんに助けてもらったんだ。なんか食わせてやってくれ。きのうからロクなもん食ってねぇ」


「そうなのかい? 悪いねぇ~~面倒かけたんだろ?」


「いえ、俺はその……それよりご主人を」


「大丈夫だよ、ちょっとやそっとじゃ壊れないっての!」


 そう言って「ガハハハッ」と笑ったが、木の棒で尻を10回も殴られて平気なわけがない。


 ガラにもなく心配そうな顔をしてるとラピスか「ツンツン」と俺の足をつつく。


「どうした。ラピス?」


「旦那様、わたしね。出来るよ『アクア・キュア』なら」


「アクア?」


 小首を傾げる俺をよそに衛兵の夫婦は大声で笑った。


「嬢ちゃん、ありがとな! だけどいくら何でもそれは無理ってことよ! 治癒魔法なんて、魔法学校出ても習得出来ない奴がいるくらいなんだからな! 気持ちだけで十分だ!」


「優しい子だね~~お名前は?」


 奥さんに頭を撫でられながら「ラピス」と答えた声に少し不満がこもっていた。


 小さな声で「出来るもん」とふくれる。それで不貞ふてくされてるんだ。


 そう言えば昨夜話が途中だったが、水竜ブルードラゴンの時に足に刺さっていた長剣のケガを治癒魔法で治していた。


「ラピス。見たいなぁ。見せてくれないか? 治癒魔法」


「旦那様、見たいの⁉ ラピス。がんばるね!」


 衛兵の夫婦はまるで孫娘でも見守るように、にこやか顔をした。ごっこ遊びに付き合う感じなのだろう。だけどラピスは真剣だ。


「彼の者の傷を癒せアクア・キュア‼」


 細かな水の粒子がラピスの手を離れ衛兵を包みゆっくりとはじけた。


「どうだ?」


「えっ? ん? 痛くない……嬢ちゃん、まさかホントに治癒魔法使えるのか⁉ こいつは驚いた……嬢ちゃん、何か好きなもんないか? 食べたいものとか?」


「ラピス。お魚好き」


「魚な! よし、かあちゃん何かないか?」


「なんかって……干し魚くらいならあるけど……ラピスちゃん食べるかい?」


「うん! 食べたい‼ 旦那様、いい?」


 にへら~~とした顔にダメとは言えない。元々言う気はないけど。俺はラピスを抱え上げた。


 ***


「ごちそうさまでした! おばちゃん、お魚おいしかったよ! ありがと」


 ペコりんと頭を下げるラピスに衛兵の奥さんが照れる。


 照れながら、ふといい事思いついたみたいな顔をして席を立った「ちょっとおばちゃんとおいで!」とラピスの手を引き2階に消えた。


 俺は衛兵の親父と話をする。彼の同僚たちがきのう俺が倒したドレイクを解体屋に持ち込んでくれたらしい。


「ワシを助けてくれたお礼だとよ、何せドレイクだ。素材の宝庫! 皮で防具が作れるし、骨は武器にもなる。極めつけは肉もうまい! 物入りだろ? 勇者パーティに付いて行かないとなら、それなりの装備がいる。嬢ちゃんにもあったけぇ恰好させてやりたいだろ?」


「ありがとう、助かる。その……まったく手持ちがないから」


「召喚されたてだからしょうがねぇよ、でも、ドレイク倒したんだから自分の稼ぎだ。お前さんのおかげで拾った命だし、それに嬢ちゃんに治してもらったからな、仕事も休まずいけるってもんよ!」


 衛兵の親父は夜勤明けなので朝から一杯酒が入って上機嫌だ。そこに更に上機嫌なラピスが戻って来た。


「旦那様! おばちゃんにもらったの!」


 生成りのワンピースを着せてもらい上機嫌だ。奥さんの手には暖かそうな靴が。


「娘がね、昔着てたもんなんだ。寒い時期には向かないだろうけど家の中とかなら着れるだろ。よかったら持ってお行きよ」と言ってくれた。


 そんな感じで朝のひと時を過ごしていたのだが……


『ばぁぁぁぁんん‼』


 扉が吹き飛びそうな勢いで蹴り開けられた。砂塵が舞い上がる入り口を目を凝らしてみる。


「大聖女……さま?」


「いたわね、ユウト! 来なさい! 教皇庁が大変なの‼」


「大変?」


「そう、あなたたちが出てすぐワイバーンの群れが現れたの‼ 説明は移動しながらします! とにかく、来なさい! 教皇庁始まって以来の危機なの!」


 □□□次回投稿昼12:02です□□□


 □□□作者よりのお願い□□□

 読み進めていただきありがとうございます!


「次回投稿が楽しみ!」

「ラピスちゃんに癒されたい!」

「早く続きが読みたい!」


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