七、創作について
君たちは、今までの人生で自ら創作をしたことはあるだろうか。
恐らくほとんどの人はあまり多くないのではないだろうか。創作について思うことがある。これは創作への恋文である。
創作が何なのかとか、そう言った深くて具体的なことは創作自体で示すものでわざわざ説明するようなものでもないと思うから、思うこととしては創作のプレゼンのような、創作が何に繋がるのかを語ろうと思う。
創作は、私にとって思想や考えの整理に繋がる。
言語化という作業がどれだけ大切か、色々な偉い人達が語っているから、君たちも聞いたことはあるだろう。
言葉を連ねていくうちに思わぬ自分の考えも見えてくるもので、わかりやすいところで言うと例えば数学の問題を解く時、数学が苦手な多くの人はまず手を動かすということが出来ない。
たとえ解答への道筋が見えなくとも、まずは頭に浮かんだことを言葉や数式にして書かなければ分かるものも分からない。何も浮かばなくても、知っていることを書き出してみるだけできっと頭が整理される。
私は別に、恒久的な考えを確立させろと言っている訳では無い。考えや思想なんてものはその時その時で良いし、傍から見て理論が破綻していても、どこかで矛盾していても構わない。
ただ自分の思っていることがはっきりと文字にして分かって、そこから思考を重ねていければこれは素晴らしいことである。
たったこれだけが出来るだけで変わることは多くあるだろう。
特にこの「紅葉のにしき」作品群の第一作である「我の随に」は、鬱の初めに自分の考えを整理するために書いたものである。
実際、効果があったかは分からないが、少なくとも言語化することには成功したし自分の考えにより強い確信は持つことが出来た。ストレス発散にもなった。
逆に「思うこと」が特にない場合、私は本当に創作ができない。きっかけは突然やってくるもので、たいていの場合は普通に暮らしているだけでいつかやってくるのだが(特にほかの創作物に触れた時)そう簡単にいかないこともある。
それが顕著だったのはちょうど一年前、初めて恋人ができて当時最も幸福感を得ていた時だ。
「我の随に」でも「創作」というタイトルでその時のことについて詩を書いた。
これが悪いことなのかは分からないし、創作好きだから思うことはあるが、そうでなければ「整理するほど悩みがない」とも捉えられる。
とにかく、この窮屈な世界で言語化して考えを整理することは自身の成長に繋がるということだ。
さて、自分の考えを整理するのが創作であるのだから、もちろん私の作品では私の価値観が前面に出ている。これは全ての創作者に言えることではなく、周りを見る限り私ほど顕著なのは稀らしい。
価値観が全面に出るということはなんというか、「生き恥を晒す」ということでもある。
受け入れられるか分からず、もしかしたら吊し上げられてバカにされ、場合によっては糾弾されるかもしれない。
創作をする上で、それを恐れてはいけないと思う。私の基準として「親に見せられて初めて創作」ということがある。
これもまた私のことを何も知らないくせに口のうるさい者が「親に支配されている」とか喚くかもしれないが、そうではない。
親はたかだか齢二十年の私にとっては最も近い他人である。私のほとんどを知っているその人に対して、見せられないということは自分の価値観に恥を感じているということで、これは創作において邪魔でしかない。
出来の悪い作品でも、生み出したのは私なのだ。
そこに自信を持てない限り、作品がそれ以上良くなることはないだろう。
創作をする自分の中での意義は考えの整理と説明出来るかもしれないが、では外に出す意義なんだろうか。
考えの整理だけが創作の目的なのであれば公開する必要は無いように思える。
これもまた前書きと内容が被るのだが、私はやはり「共感者の代わり」となることが意義だと思う。
考えを連ねる以上糾弾される可能性もあると言ったが、逆に共感を呼ぶことだってある。類は友を呼ぶとはよく言ったもので、私の周りでは結構私の考えに共感してくれる者が多い(お世辞かもしれないが)。
嬉しいことに私の周りにはクリエイターや創作をする者が多いため、自分を太くしっかりと持つものが多い。そのせいで忘れることもしばしばあるが、ほとんどの人は自分の考えを言語化した経験はあまりないだろう。
そう言ったものたちが、例えば映画とか、音楽とか、漫画とか、小説とかに触れて感化されるのは共感がその根底にあるからだ。
もちろん、共感できる思想ばかりに触れていれば暴走する可能性もあり危険極まりないが、自分を考え直すきっかけやさらに深みを持たせるという意味では共感できるものに触れるのは大変重要である。
それに、自分自身で気付けなかったような自分にも気づくきっかけになれるだろう。整理されて、考えが改まって、楽になる者もいるかもしれない。
私は創作に苦しむと同時に同じくらい救われた。もしこのただのエゴが、いつか誰かを少しでも楽にできるのならば、それは願ってもない幸福である。
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