(ボツ)五、夢と目標について
君たちは夢を持っているだろうか。持っていない人は、目標についてはどうだろうか。どれだけ簡素なものでもいい。持っているだろうか。
逆に、夢を持っている人で目標を定めていない人はいるだろうか。
私はどちらも持っていない。
多くの人は大きな夢を持ち、それに対して現実的で緻密な目標を定めていることが最もよいと評価するかもしれない。
だが私はどちらも設定していない。あえて。
まず夢についてだが、持っていないと言ったのには少し語弊がある。実際には周りから見れば夢と呼べるようなものは持っている。
だがそれをあえて夢と呼ばないようにしている。人前では分かりやすいように夢と言うが。
それは私がその「夢」を叶えることを義務だと思っているからである。
「叶ったらいいな」「できたらいいな」「いつか、その内」と言っているうちは夢が叶うことは無いだろうし、部分的に叶ったとしてもきっと過去に後悔が残ると思う。
あの時もう少し早く動いていたら。もっと頑張っていたら。
なんてくだらないことが頭を支配するだろう。
私のように夢を義務として見て、それに確信を持てれば、いま何をするべきかは自ずと見えてくる。夢に対して幻想を見ることも無くなるだろう。
つまりやっと現実味を帯びてくるのだ。
現実味が帯びてくると、今度は諦めがつくようになる。
悪いことのように聞こえるかもしれないが、私は決して諦めるという行為が悪いものとは思わない。
想像が容易くなり、何をすべきかどうなるべきかが明確になった時、夢は違った姿に見えてくるだろう。より現実味を帯びた姿に。
その時点で再考すれば、夢に対して盲目になっていたことに気が付くかもしれない。道の過酷さを再確認するかもしれない。はるか遠い未来に絶望するかもしれない。
それでもまだ夢に確信を持てれば素晴らしいことである。
しかし、そこで迷いが生まれることだってあるだろう。よく考え何度も考え、考えに考えを重ねて、答えが出てもまだ考え、そして諦めるべきだと気づくことだってあるだろう。
一度掲げたなりたい姿を下ろしてはいけないなんて過酷すぎるルールはこの世にはない。ましてや自ら課す必要だって。
なりたい姿への道が過酷でやりたいと思えなかった時、迂回ルートをまず探してみる。見つかってそれがわくわくする道であるならそこを進めばよい。
どのルートも見つからない。いくら考えても誰に聞いても過酷で辛いルートしか見つからない。
それなら諦めることを検討してみるべきではないだろうか。
少なくとも私はそうしてきたし、後悔もない。
なぜなら考えたから。
諦めることはその道に捕らわれないことも意味する。
本当にやりたいことが他に見つかるかもしれない。その可能性すら潰してしまうのだ。
夢が夢のままではこのことすらままならないのではないだろうか。
私は夢と同様に目標も持たない。
理由は簡単である。辛くて楽しくないからだ。
目標はよく大きな目標と小さな目標に分けて掲げて少しずつ辛くない範囲で進んでいこう、なんて言われる。
残念ながら私には向かない。
モチベーションの維持と、遅れたとき取り返すことが難しいからだ。
私は小学生の頃から課題に対しては計画的に進める人間だった。一度だって夏休みの宿題を最終日に残したことは無い。
だがそれは別に毎日目標を設定してコツコツやってきたからではない。
ただ指標を用意して、やりたい日にやりたい分やっていただけである。
例えば九十ページのワークを四十日ある夏休みで終わらせることを計画してみよう。
夏休みだから旅行にもいくだろうし、イベントがたくさんあるだろう。
それを加味して三十日かけるとする。すると一日三ページ。
だが宿題はもちろんワーク一つではない。教科ごとに出ているだろうし、自由研究のような大きめの課題も出ているだろう。
全て目標を設定して地道にやっていくことを考えてみよう。
どうだろうか。既に嫌気がさしてきた。
一日三ページの目標を立てたからには、それを達成できなかったとき追う必要のない焦燥感を抱いてしまう。
今日達成できなかった分を、未来の自分が尻拭いしなくてはならない。それはあまりに辛い。
だから私は一日三ページを目標ではなくただの指標としておくことにした。
三ページやれたらやろう。終わってもっとできそうならもっとやろう。ただ昨日新しいゲームを買ったばかりだから三ページで終わりにして良いか。
三ページできなかったが過去に多めにやった分があるから今日は気負うことは無いか。
この方法が万人にあっているなんて全く思わない。むしろ破綻する人は多いだろう。
だが私の場合これがよく合った。
努力についてでも言ったが、「今日やるべきことは今日やる。明日やるべきことは明日やる。今日出来たら素晴らしい」という心持は精神に良いと思う。
ある程度漠然と、なるべき姿に向けて道筋を立てたらあとは目の前にあるやりたいことをやる。
どうしてもしなきゃいけないけれど少し難しいかもしれないと思ったら強制的にしなくてはならない空間に身を置けばいい。それで辛いなら、先ほども言ったが諦めよう。
寄り道しながら、未来と過去の安心に包まれてただ今楽しい道を突き進みたい。
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