二、努力について

 君たちは何か努力したことはあるだろうか。

 私は、大学受験のため直前に二ヶ月受験勉強を頑張った記憶があるが、果たしてそれが努力なのかどうかは自分では判別が難しいし、他に何か努力したことがあるかと聞かれるとすぐには思いつかない。

 そもそも、私は努力だとか頑張りだとか、根性だとかの言葉が嫌いである。

 確かに幼少期からエレクトーンを習ったりスイミングスクールに通ったり、数ヶ月だけテニスのスクールやアカペラの教室に通ったりとまあ人並みには習い事をしてきたつもりではある。

 高校から大学にかけては勉強や小説、それから映像(筆者はMVをつくる映像クリエイターでもある)などもやった。

 しかしながらエレクトーンは中学二年生で辞めたし、水泳も部活は中学までで大学からもう一度始めようとは思ったものの数ヶ月で辞めてしまった。勉強、小説、映像は元々好きであるから特に「頑張った」記憶はない。好きな時に好きなだけやっていただけであって、もしそれが他と比べて量が多かったとしても努力を褒められるのは見当違いである。

 故に、私は努力をしたことがない。それを悔やむとか恥ずべきとかも思わないし、これからなにか見つけて努力をしようという気もない。


 繰り返すことになるが、私は「努力」という言葉が嫌いである。

 それはどんな形であれ、追い詰めることに繋がるからである。

 もちろん人によって責任の捉え方は違うし、努力という言葉が重みにならない人だっていると思う。

 しかし、個人的に努力という言葉はどうも好きになれない。

 「追い詰める」というのは、努力が盲目になることに近いからである。

 例えば広辞苑を引くと、努力とは「目標実現のため、心身を労してつとめること」とある。労すると入っている時点で既に嫌悪感を抱く。苦労をしてつとめることは褒められるべきことなのだろうか。私はそうは思わない。

 ひたむきに努力をして鬱になったり病気になったり、やりたいことをやれなくなった人たちを何人か知っている。

 がむしゃらに頑張って、全力を出して、それでも報われず大きすぎる挫折をした人も、いつの間にか道から逸れた人も。

 世間では、報われた努力しかフォーカスが当たらない。報われない努力がどれだけの人生を狂わせたかは知られない。

 努力も挫折も経験と言うかもしれない。

 あまりにも清々しい綺麗事である。

 全員が経験しなければいけないのなら、歴史は何のために学ぶのか。

 今まで積み上げてきたものを擬似的に体験し、知識として得て考え、自分なりに改善し、失敗を繰り返さないようにして、またさらに積み上げていく。それこそが人類が今まで行ってきたことでは無いのか。


 少々飛躍してしまったので話を戻そうと思う。

 努力すること、頑張ること、それ自体は称賛されるところなどこれっぽっちもありはしない。

 遺すべきは結果だけであって、過程が重要であったとしてもそれに努力が伴っているかどうかはどうでも良いことなのである。

 努力している人を否定していると私を貶すだろうか。好きにするといい。

 努力だけして満足するならそれはそれでその人の人生なのだと私は思う。

 これを聞いてまだ頭に来るようなら、ぜひ前書きを読み直し後書きを読み、それでもまだ熱が冷めないのなら読むことを止めるべきではないだろうか。

 世間様は「努力したことを褒めろ」だとか言う。だが、努力するだけならはっきり言ってそこまで大変なことでもない。

 私の勉強や創作に対する姿勢は周囲から見れば「努力」に見えたらしい。勉強は好きだったとはいえ、受験勉強は辛いことも多くあったから努力と言えなくもないかもしれない。

 そういった小さな経験則と人から見聞きしたことからしか言えないが、あながち間違えてはいないと思う。

 大変なのはそこから結果を生み出すことなのだ。

 言ってしまえば、結果を残せれば努力や頑張りの有無に関わらず良いと思うし、私のように結果を残したいとも思わなければ心の底からただ生きたいように生きればいいと思う。

 やりたいことをやりたいときに。流れに身を任せて。

 今日やるべきことは今日やる。明日できることは明日でもいい。今日やれたら素晴らしい。私はそう思う。

 まあもちろん、努力しないべきとか極端な考えは持たないが。

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