人物紹介――王国以外 ※ネタバレ含む


・属性

秩序――規則と規律、普遍的概念を重んじ、整えられた社会と法を重視する。

混沌――個人とその感情思考を重んじ、社会的規律、道徳よりも意志を重視する。

中立――中間。


善――利他的気質。自身の利益よりも自分の信じる道徳を重要視し、それに殉じる。

悪――利己的気質。自身の利益を重要視し、そのために他者を蹴落とすことを厭わない。

中立――どちらにも振れない中庸の気質。



・王国貴族の名前の見方

例:1,ギルダンスタイン=2,カルナロス=3,ヴェル=4,サーカリネア=5,アルベラン

1,名前:ギルダンスタイン

2,管理する地域の中で最も大きな土地:カルナロス。

本来は管理地域全てが入るため非常に長く、簡略化される。

3,王位継承権を持つ男性の王族はヴェル、女性の王族はヴェラ

4,名誉爵位:サーカリネア

5,姓:アルベラン


正式には4と5の間に元帥や将軍などといった軍階級、宰相など王宮での役職を示す言葉が入ったり姓の後に大公爵などといった爵位を示す言葉が入ったりします。

ただ、既に横文字が長くて目が滑るので、文中ではわかりやすさ重視でその都度必要な階級役職を末尾につけ漢字表記しています。


基本的に姓以外は必ずしも子供に継承されるものではないですが、特に問題ない限り慣習的にその嫡子が土地や爵位を引き継ぐことが多いです。

ただ、戦士としての武功を示す4の名誉爵位だけは引き継がれません。


姓を持たない人間がネア=準騎士の略式叙勲を受けた場合、大抵は出身地を名乗る場合が多いです。

(例)ガーレン=ネア=カルカ。


・プロフィールの身長ワード

男性平均175cm前後、女性平均160cm前後くらいな設定です。

無記入:平均的身長

中肉中背:平均的身長

長身、大柄:平均より10cm程度高い。男性の場合六尺と書かれれば180超え。

小柄:平均より10cm前後低い。

比較的:平均値から見て長身/小柄は下振れ。

非常に:平均値から見て長身/小柄は上振れ。


・身長   大体   曖昧な想像

クリシェ 140後半 147

ベリー  150前半 152

セレネ  150後半 159

クレシ( 140後半(ま、まだ成長は終わってないですわ!) 

カルア  160後半 168~9

ミア   150後半 158

エルヴェナ160前半 161~2

アーネ  >160< >160<

リラ   150後半 157

ミーデリ(150半ば 156

カルシェ(160前半 163






○終章終わりまで生存

●終章終わりまでに死亡



■――クレィシャラナ

●アルキーレンス=シャラナ 『中立・善』

聖霊大好きな族長系男子。クレィシャラナ族長。

かつてはクレィシャラナ戦士長の地位にあった豪傑で、先代族長にして長老、ビーキルスによって族長に指名され、族長となる。

腕も当然ながら人格者であった彼が族長になることは他の戦士にも異論はなかったようで、その座を賭けての決闘を挑まれることなく順当な出世であった。

狩りのため自ら槍を振るう立場からは退いたが、今なおクレィシャラナでは最上位の武人であり、まともに槍を交わすことができる人間は限られている。

里の将来についてを常々考えており、クレィシャラナでは融和派。

現在の形でこの先クレィシャラナが存続していくことは不可能であると考えており、これまでの慣習を重んじながらも新たな道を模索している人物。

そのため族長となってからはアーナとの関係向上に努めており、ビーキルスを除いた保守派の人間からはあまり好ましくは思われていないところもある。


個を高めることを重視するクレィシャラナの慣習が本当に良いものであるのならば、強制せずとも未来に残っていくもの。

そのように考えており、生き方を束縛する現在の在り方については以前からあまり良く思っていなかったが、驕り虚飾に塗れたはずの王国に生まれながら誰より個として優れるクリシェの来訪。

そこに新たな風を感じると、彼は王国との断交を解くことを決意し、新たな未来へと舵を切り始めた。


クリシェの語る永遠を危うい思想であるとしながら、生まれ変わりが本当に存在することを知り、先だった妻のことを思い浮かべた。

願わくばいつか、彼女と再び出会えるように。

そして今生で別れた彼女に胸を張って旅立てるよう、王国との交渉を続け、集落とリラの決心を見守り続けた。


△歴史上

五百年の断交を解いたクレィシャラナ族長として伝わる。

アルベランの文化に対する抵抗を見せる長老達に、聖霊はあるがままを眺め、誰も憎まないと語り、憎悪を受け継がせ語り継がせることへの愚かさを説いたとされ、最後の聖霊巫女として自身の娘、リラ=シャラナの望みを認めさせた。


★戦闘指揮

長年の経験から獅子鷲騎兵の強みと弱みを理解しており、優位な状況から一方的に相手を打ち倒す術に長けている。

危険を避け、一方的に相手の命を狙う用兵術は面白味にこそ欠けるが、彼等にとって戦いとは狩り。楽しむべきものではなく、狩人はどこまでも冷静であるべきという考えを重んじており、それを実行出来る冷徹さこそが彼の強みと言えるだろう。


外見:剃り上げた頭。茶の瞳。筋肉質。深い皺の寄った顔。白い豊かな髭。

鎧:革の胸甲、手甲、脚甲。腿の膨らんだズボン。

→クリシェ:人の身にて聖霊に至った武人。クレィシャラナが理想の体現。失言しか吐き出さない恐ろしい少女。

得意:グリフィンの操作。槍。投槍。体術。

好き:蜂蜜。鍛練。

嫌い:怠惰。

悩みごと:クレィシャラナとリラの未来。




●ヴィンスリール=シャラナ 『中立・善』

武人大好きな求道者系男子。クレィシャラナ戦士長。

戦士長候補はその実力や人格を認められた戦士達の中から推薦によって選ばれた十二人からなり、その中で武技を競い頂点となったものが戦士長となる。

現族長アルキーレンスの息子でクレィシャラナ戦士長の地位にはあるが、それは決して世襲ではなく実力あってのこと。

名実共にクレィシャラナ一の戦士と言え、戦士達からは尊敬の対象となっている。

美人で器量よしな恋人がおり、今回の戦いが終われば結婚することを約束して出てきたため、その父親には当然ながら、娘を不幸にすれば死んでいても必ず殺すと繰り返し脅されている。

アルキーレンスの下で育ったこともあり、クレィシャラナに関しては同様の考えを持っており、王国との国交回復によって新たな未来が見えないかと期待している。

わりとシスコン気味。

クリシェが作る一方的に過ぎる戦争を目の当たりにし、理想との大きな乖離を感じたが、彼女の理屈と心情を察し、協力することを改めて決意し、戦後は多くの者に祝福されながら無事恋人と結婚し、家庭を築いて二児を儲けた。


若くして人としての一生を聖霊に捧げた妹が、最後の巫女になると希望を伝えた際には反発し、それを思い留まらせようとした。

家庭を持ち、その幸福を知った彼には、その上私心なきことを証明するため人との関わりを断ち、禁域にて一人過ごす妹があまりに不憫に思え、クレィシャラナの戦士長ではなく、ただ兄として説得するも聞くことはなく。

その意志の前に最終的にはそれを認めることに決め、訪れたクリシェに個人として頭を下げると、孤独で過ごした妹がその先で、人として真っ当な幸福を得られるようにと彼女に託した。


そしてそれだけの覚悟を決めた妹のため、自身もクレィシャラナの将来のため、その生涯を捧げることに改めて誓う。


△歴史上

クレィシャラナ族長。

クレィシャラナと平地の境、山の際に集落を築いた人物。

集落や王国の人間が自由に移り住むことが出来る場所として、そこではクレィシャラナの掟を守る必要がないと認められ、王国との交易中継地として発展する。

平地の文化を学び、過ごせる場所として作られたここへの移民は少数であったが、クラインメール時代、ヤゲルナウスが消えた事を切っ掛けに次第に増え、クレィシャラナの集落そのものよりも大きくなっていく。

最終的にはクレィシャラナそのものが、その教えを守り伝える形なき信仰の場所へと変わり、その内に寺院が建てられることになった。

クレィシャラナの人間に新たな居場所を作り、民族としてのクレィシャラナと信仰としてのクレィシャラナを切り離した偉大な人物として彼は名を残し、今もなお各地から修行者がここへ訪れ、かつてのクレィシャラナにおける信仰を繋いでいる。


★戦闘指揮

瞬発的な判断力に長け、三次元的な獅子鷲騎兵の運用を得意とする。

時には囮を使い、背後を取って相手を討ち取るなどアルキーレンスに比べれば積極的な用兵によって無数の翠虎を討ち取ってきた。

アルキーレンスを狩人とするなら彼の思考は軍人のそれに近く、グリフィンという獣に頼り切ることをせず、むしろそれを布石として扱うことが多い。


外見:黒髪短髪。茶の瞳。長身筋肉質。目鼻立ち整った顔。

鎧:革の胸甲、手甲、脚甲。腿の膨らんだズボン。

→クリシェ:聖霊の認めた武人。目指すべき頂点。色々適当な少女。

得意:グリフィンの操作。槍。投槍。剣術。

好き:決闘。鍛練。妹。

嫌い:割れていない腹筋。

悩みごと:リラ。




●ヴェルヴァス 『中立・中立』

俺こそが戦士系男子。クレィシャラナ守手長。

アルキーレンスの族長就任に伴い、戦士長候補として選ばれた武人。

一時は戦士長間違いなしと呼ばれた戦士であったが、ヴィンスリールとの決闘に敗れ守手長となった。

クレィシャラナ一の戦士が戦士長であれば、それに次ぐ戦士が守手長。

聖霊への道、その門番となる名誉ある役職であり、決闘の結果ということもあって不満を抱いてはおらず、今ではヴィンスリールとは公私共の付き合い。

職務を除けば砕けた口調で肩を叩き合う間柄。

ただそんな付き合いもあってか、溺愛する彼の愛娘がヴィンスリールに恋慕の情を抱いてしまい、娘を自分から奪おうとする盗人として最近は何かと突っかかっていることが多い。

娘を奪ったヴィンスリールが憎いが、クレィシャラナには珍しく早くも子宝に恵まれ幸せそうな娘が嬉しく、何とも言えない。


聖霊巫女としてのリラの在り方に敬意を向け、同時に親友の妹である彼女を強く心配する。

私心なきことを証明するからと言って野宿までする必要はないと、彼女のためヴィンスリール達と小屋を作り、空からの巡回の度、周囲に魔獣がいないかを注視して気を払い、時折落としたという建前で、村の作物を小屋の前に置いていった。

小屋を作った後は謁見を除いて直接会うことはなく、会ってもそのことについて触れることはなく。

ただリラは彼に会うといつも苦笑して、静かに頭を下げた。

彼が亡くなった後は次の守手がそれを引き継ぎ、リラがいなくなった後も小屋は社に、誰かが訪れる度、花や木の実が捧げられた。


△歴史上

クレィシャラナの戦士。禁域の守手。

族長と戦士長、禁域の守手は偉大なる戦士として、死後その名が石に刻まれている。


★戦闘指揮

アルキーレンスと同様、グリフィンの飛行特性を何より重視した運用を行ない、腕比べではなく純粋な勝利のみを見つめる冷徹さを有する。

本人は正々堂々たる戦いを好むが、立場上負けることが許されない立ち位置であることもあり、勝つべくして勝つことを重視し、冒険はしない。

指揮能力には飛び抜けたところがないものの、個人としての力量は高く、少数同士の戦いであればその強みを活かして終始優位に立ち回ることが出来るだろう。


外見:黒髪短髪。茶の瞳。大柄筋肉質。無骨ながらも整った顔。頬に傷。

鎧:革の胸甲、手甲、脚甲。腿の膨らんだズボン。

→クリシェ:偉大なる武人。自身が足元にも及ばぬ超越者。不思議な少女。

得意:グリフィンの操作。槍。体術。弓術。

好き:腕比べ。鍛練。武人。娘。

嫌い:悪い虫。

悩みごと:母体ともに無事で初孫が生まれること。






■――アーナ皇国

●姫見(巫女姫) 『秩序・中立』

分厚い衣装で覆い隠した系女子。元アーナ皇国指導者。巫女姫の相談役。

在位四十年になるアーナ皇国の実質的指導者であり、神官の長。

皇国は古竜ヤゲルナウスを崇める信仰が何よりも尊ばれており、十五で巫女姫となった彼女はその時点で名を捨て、巫女姫という役割を担う存在となっている。

クレシェンタから数え先々代のアルベラン王とも付き合いがあり、親王国派の筆頭。

皇国では王国よりも北の島国との関係を深め発展を目指すべきとする北方派と王国派が分かれているが、彼女は調和と安定を何より重んじており、彼女の治世となってからの皇国は王国寄りに方針を定め、非常に安定している。

王国における内戦をクレシェンタが引き起こしたのではないかと疑っていたが、それ自体を重要視してはおらず、彼女が皇国の利益になるかどうかをただ見極めようとしていた。


自身の老いもあり、次代の後継者を見いだすと、巫女姫を継承。巫女姫から姫見に。

その教育係兼相談役として過ごす。

五大国戦争を切り抜けた時点でアルベランが歴史上でも最高の発展を見せることが間違いないと見て取り、巫女姫には王国との友好関係を保ち続けることを重視するよう伝えた。

アルベランの大陸統一後、クレシェンタの性格と性質からあり得そうだと考えたアーナ併合を恐れたがそれはなく、その後の議会制定という謎めいた改革を見て、巫女姫に言葉を残すとこの世を去った。

この先はアルベランではなくクレシェンタに注視し、その後の時勢に従うように、と。


狡猾なるアルベランの女王。権力を求めた忌み子。

誰よりも恐れ、注視したクレシェンタ。

彼女が何を考え、何を求めているのかは分からず、しかし全てを手に入れながらその権力を手放すかのような行動は、不思議とどこかしっくりと来た。

――彼女の求めた権力はただの手段であり、単なる過程でありはしないかと。


△歴史上

アーナ皇国の名君として語られる。

大陸を統一するほどの力を持ったアルベランに対し、おもねることなく国体を維持し続け、長きに渡り姫見として皇国に助言した。

クラインメール建国にも飲み込まれず、クラインメール中期の竜狩りまでアーナが存続出来たのは、彼女が巫女姫に受け継がせた様々な教えが大きかったとされている。

――アーナは水に漂う木の葉の如く。

小国の指導者達は大国ではなく、アーナ皇国の外交にこそ多くを学んだとされる。


外見:黒く長い髪。切れ長の青い瞳。長身細身。泣きぼくろ。秀麗。

→クリシェ:クレシェンタと同じ忌み子。一度会ってみたい。

得意:魔水晶の術式刻印。建前。礼儀作法。

好き:太陽を浴びること。花の手入れ。

嫌い:皇国の調和を乱すもの。

悩みごと:クレシェンタが心の底より望むもの。




●ザーナリベア 『秩序・善』

意外とはちみつ大好き系男子。アーナ皇国大神官。

齢九十を超える老人で、四人の大神官の中では最高齢。

巫女姫からの信頼が最も厚い人格者であり、親王国派の人物。

皇国は古竜ヤゲルナウスを崇める信仰が何よりも尊ばれており、神官となった際に家名を捨て、神官として皇国に身を捧げている。

長く国政に携わってきており、王国への使者として出向くことも多く、クレシェンタとも以前に会ったことがある。

ただ彼女の本質は見抜けておらず、交渉では主導権を握られる形となった。

大の甘党で、味覚の好みはクリシェやクレシェンタに近い。

ベリーとの関係から、クレシェンタは忌み子ではあっても悪い方のそれではないと考えている。

魔水晶関連の関税緩和が想定以上に大きな問題であったことに気付き、関連技術に関する交渉に王都と皇国を走り回った。


五大国戦争の後、王都に向かう馬車の中で倒れ、その最期をアルベランで過ごす。

ベリーのクッキーを口にしながら、見舞いに来たクレシェンタに対して変わらず、自分が死ぬ前にと病床で外交交渉を行い、「わたくし、ザーナリベア様のような方は嫌いじゃないですわ」とクレシェンタを笑わせた。


△歴史上

アーナ皇国大神官。

アルベラン末期に両国の外交に奔走した人物とされる。

その最期はアルベランで倒れ、病床で女王クレシェンタと交渉を行ったとされ、魔術研究院への魔術師派遣、アルベランの魔導兵器生産に関する協力関係を結んだ。

その後、アーナ海軍にも輸入、一部配備されることになったピシューネは大陸統一戦争の海戦、上陸戦においてその圧倒的強さを見せつけ、アーナの経済の柱であった海上貿易を支えた。


独占すべき最先端の魔導技術や魔導兵器をアーナに極一部とはいえ許可した理由は、大陸防衛のため、アーナの優れた職人の技術的協力を求めたためとも言われているが、アーナから多大の対価は支払われたとはいえ、結果的、総合的に見ればアーナに有利な取引と言えるだろう。

対外交渉で常に優位を取った彼女らしくないこの取引は、彼女からザーナリベア個人に対する『はなむけ』であったのではないかとも語られている。


外見:後ろに撫で付けた白髪。茶の瞳。痩せ身。深い皺の寄った顔。

→クリシェ:無理を押し通す力を感じさせる少女。甘党。可憐な忌み子。息を吸うように天才的発明を繰り返すどうしようもない存在。

得意:交渉。外交。礼儀作法。

好き:紅茶。はちみつ。クッキー。

嫌い:苦いもの。

悩みごと:なし。アルベラン最期のクッキーはようやく心から楽しめた。






■――ガルシャーン共和国

●オールガン 『中立・中立』

フォーマルな格好が絶望的に似合わない系男子その2。ガルシャーン共和国副議長。元王族。ガルシャーニア。

ガルシャーン王家の生まれであったが、広がる貧富の格差と贅に溺れる王家の姿に嫌悪を抱いた彼は民衆のため立ち上がり反乱を主導、共和制を打ち立てた。

王族としての地位と権力を捨て民衆のために戦ったオールガンは、ガルシャーンの英雄としてあらゆるものを手に出来る力を手にしていたが、王族であった自身が最高位にあっては当初の志を失うとして、議長就任の話を蹴った。

その言葉は半分事実であったが正しくもなく、彼自身が単に権力に縛られることを嫌った部分が強い。

戦士達がその誇りを賭けて戦う戦場を何よりも好んでおり、彼が戦争狂であると知る彼の部下達は戦場に出られなくなるのが嫌で議長就任を蹴ったと考えている。


王国南部の将軍ダグレーンは彼の好敵手であるが、共感を覚えるこれまでの生い立ちやその性格から馬が合い、小競り合いを繰り返す度に酒を飲む友人のような間柄でもある。

しかし戦争狂同士、一度戦いとなれば笑って殺し合う狂った関係。

圧倒的なクリシェ=クリシュタンドの力を見て憑き物が落ち、アルベランとガルシャーン、その交渉の成り行きを見守っていた。


平民出身者がほとんどを占めるガルシャーン議会にクレシェンタへ食らいつけるほどの政治的才覚を有するものはおらず、戦争への大敗、周囲の小国による軍事行動から不利な交渉が続き、いずれガルシャーン自体が併合される未来が見えていた。

敗戦により謹慎中であったオールガンは議長達から内々に相談されることが増え、数年後謹慎を解かれ、議長として返り咲くことになる。とはいえオールガンにも彼等の外交的敗北は痛く、一時臣従に近い軍事同盟を結ぶことを選ぶことで国体を保った。

その後アルベランを見習った市民小学制度を提案、導入し、ガルシャーンの将来を見据えた人材育成にその力の全てを注ぐ。

面倒が多いとザルヴァーグやダグレーンに愚痴を言いながらも、新たな時代のため、彼等を導くように。


大陸統一戦争を最後の戦と、ダグレーンと肩を組んで暴れまわった後は、軍を完全にザルヴァーグに任せ政治に専念。自らも勉強会を開き、多くの若手議員達に政治を学ばせ、後世のために多くの本を記した。

そして好き勝手に遊んで自分の国で客死した迷惑な友を笑うと、その数年後、彼も眠りにつく。

ガルシャーンの乾いた大地に、新たな実りが芽吹くのを夢見て。


△歴史上

ガルシャーンに共和制を打ち立てた人物。

戦のみならず政治の手腕にも長け、ガルシャーンのその後の発展に大きく貢献した。

ダグレーン=ガーカに翻弄されることが多かったこと、アルベリネアに対する大敗からその戦略家、戦術家としての実力に関しては意見が分かれるも、当時のアルベリネアは比類なき戦の天才であり、ダグレーン=ガーカもまた大陸有数の将軍であった。

ガルシャーン内戦やエルスレン解体戦争、統一戦争の手腕から、彼もまた名将と呼ばれるべき実力者であったと語る戦史家も多く、ダグレーン=ガーカも自身が仕留められなかった対等なる好敵手と語っている。


アルベリネアへの大敗からしばらく、議長に返り咲いた彼はアルベランに対し、ガルシャーンが弱り切る前に自ら臣従する道を取った。

五大国戦争でのアルベラン圧勝。そしてその後クレシェンタに打ちのめされた議員達の批判は小さかったが、民衆からは『勇猛なるオールガンはアルベリネアに牙を折られた』と大きく失望されたことが記されている。

しかし後のエルスレン解体戦争、統一戦争で自ら手柄を挙げ、それによってアルベランに対し交渉を行いガルシャーンの外交的地位を引き上げたことで、民衆達も自分達の愚かさ詫びて掌を返し、『嵐に身を伏せ、実りを掴む』とその手腕を褒め称えた。

そして再び名実共に英雄として返り咲いた彼を当時信仰された拝雨教の体現者であると、『強き雨の長』ガルシャーニアと呼び慕ったとされ、彼を讃える多くの手記や書物が現在も残されている。


彼の教えは時勢を見極める強かさをガルシャーンへと身につけさせ、クラインメール建国時にもアルベランに見切りをつけると、その後クラインメールの同盟国として繁栄することになる。

クラインメール末期、彼等の魔術師至上主義によって袂を分かち、連合側で参戦したことで結果的に滅ぼされることになるが、それまでガルシャーンが国体を維持し続けたことは彼の功績が大きいとされ、現在も共和制ガルシャーンの父として語られる。


★戦闘指揮

象をはじめ、軍においては獣兵を使いこなす名将。

戦象によって敵戦列を崩壊させての豪快な真正面突破を何より好むが、それが通用しない相手には奇襲や伏撃、あらゆる手段を用いて勝利をもぎ取ろうとする。

戦は勝利するために行なうもの、という考えから、あらゆる戦術を利用し敵を追い詰めるが、だまし討ちの類は好まない。

ガルシャーンにおける英雄であり、彼の軍勢は徴集兵であっても極めて高い士気を維持する。


外見:硬い黒髪。焦茶の瞳。六尺足らずの筋肉質な体躯。髭面。毛深い。汗っかき。日焼けした肌。

鎧:獅子彫刻のプレートメイル。

→クリシェ:全てを押し流す嵐の具現。時代の変革者。振られた。

得意:大曲刀術。獣兵運用。

好き:酒。戦。一騎打ち。強者。

嫌い:だまし討ち。

悩みごと:降らした雨の実り。




●ザルヴァーグ 『中立・中立』

大変な上司を持った苦労人系男子。ガルシャーン共和国武官長。元靴屋。

元はしがない靴屋の倅であったが、貴族に幼い妹を殺されたことで復讐を誓い、反乱軍に参加。

それまで剣を握ったこともなかった彼は戦場でその天才的な剣の才能に目覚め、最前線でガルシャーン王国軍、その指揮官の首級を無数に挙げることとなり、その才能をオールガンに認められたことで一気に彼の腹心へと成り上がった。

平民から出たガルシャーン一の剣士として、ガルシャーンではオールガンの剣と呼ばれている。


性格は温厚で荒事を好まないが、当時の王家と貴族に対し反旗を翻し、それを打ち破ったオールガンには心からの忠誠を誓っており、戦後もそれまで同様オールガンを補佐するために働いている。

見た目は平凡で華はないが、頭脳も優れており母国語となるシャーン語以外に四つの言葉を使い分けることが出来る。


オールガンが動けない間、彼の復帰のため様々な根回しを行い、結果として彼の議長就任を補佐。彼と共に機会を待ち、エルスレン解体戦争と統一戦争に同行し多くの武勲を挙げ、ガルシャーンの再起に貢献する。

その後は民衆や政治家の育成に励むオールガンに代わり、アルベランを見習いガルシャーンに作られた軍学校を巡りつつ、軍事改革、軍事教練を行った。

客死したダグレーンにうんざりしつつも、事情説明に走り回ったりと最後まで苦労しつつ、オールガンの後を追うようにして眠りにつく。

妹に誇れる国を彼と共に作れただろうかと、そんなことを考えながら。


△歴史上

ガルシャーン武官長、後に軍総司令。

オールガンの右腕であったとされる人物で、オールガンは自身を上回る軍才の持ち主として常に側に置いたとされる。

大将であったオールガンと違い、彼の謹慎は早々に解かれ、オールガンの政治復帰のため根回しを行い大きな貢献をおこなった。

個人としての逸話が多く、一兵士として革命軍に参加しながらも、武器を選ばず千人以上を切り裂いた豪傑であると語られ、そうでありながら多様な言語を使いこなす文武両道の天才と知られている。

元の出自は靴屋であったとされ、それにちなんだザルヴァーグという靴屋がいくつか存在する。


★戦闘指揮

大軍指揮官としてよりも百人隊規模の指揮官としての才が高いものの、一軍を指揮運用するには十分な力量を有する。

通常はオールガンの補佐兼護衛として過ごすことが多い分視野は広い。

兵を無駄死にさせることを嫌い、性質としては慎重派だが、自ら隊を率いて行動する際には人が変わったような攻撃性を見せる。


外見:黒髪。焦茶の瞳。長身細身。髭面。薄い顔。

鎧:獅子彫刻のハーフプレート。

→クリシェ:狂った絶対者。触れ得ざる強者。

得意:曲刀術。靴の手入れ。

好き:甘味。自己鍛錬。

嫌い:権力によって弱者を踏みにじるもの

悩みごと:妹は許してくれるだろうか。





●ガル=ビルケース 『秩序・善』

経験豊富な常識的指揮官系男子。ガルシャーン共和国本軍、地竜騎兵隊隊長。

ガルシャーン王国時代には代々、ガルシャーンの精鋭たる地竜騎兵を輩出する貴族の家に生まれ、何不自由のない生活を送っていたが、王家と貴族の腐敗に耐えられず、民衆のためオールガンの傘下に加わった高潔な武人。

反乱軍における地竜騎兵隊長として名を馳せ、過去の内戦では王国の地竜騎兵隊長であった実兄を手ずから討ち取った。

その活躍や人柄から支配階級、旧貴族の地位にあったにも関わらず平民主体の軍人からも尊敬の対象となっており、貴族の正統として尊敬を集めている。


不運にもアルベラン戦でコルキスとアレハに遭遇、コルキスの攻撃を回避したところをアレハに首を斬り落とされた。


△歴史上

ガルシャーン王国の貴族出身者でありながら、民衆のために革命軍に参加。

貴族中の貴族として平民達からも尊敬を集めたが、五大国戦争で戦死する。


★戦闘指揮

地竜騎兵運用に対する造詣が深く、機転が利き思考の柔軟性が高い。

数千人規模の軍運用は不得手であるが、前線指揮官としては非常に優秀で、その勇猛さから部下の信頼も厚く、100の力を120に変える能力を持つ。

高価な地竜騎兵を指揮するため、基本的には無理を避け戦力維持に努めるが、むしろその指揮性質は攻撃に適性があり、一見無謀にも思える突撃を成功させるなど力業も得意とする。


外見:黒髪。焦茶の瞳。中肉中背。浅黒い肌。顎髭。彫りの深い顔。

鎧:口を開いた竜を象るプレートメイル。

→クリシェ:常理の外にある超越者。怪物中の怪物。

得意:騎兵槍術。曲刀術。

好き:砂蜥蜴の鱗磨き。刀剣コレクション。

嫌い:臆病者。権力に驕るもの。

悩みごと:怪物揃いだった。




●エルカール 『中立・善』

豪快な禿頭巨人系男子。ガルシャーン共和国一級武官。将軍。

小さな町で大工の一人息子として生まれたが、超人的な体格に恵まれながらも不器用で父親と喧嘩別れし商隊護衛に。

数年をそうして過ごしていたが、怒りも次第に消え、自分以外の跡取りがいないことを気にして実家へ戻った。

しかし戻ったときには税の支払い滞りが原因で町は見せしめに焼かれており、それを切っ掛けにオールガンの革命軍へ。

その体格と剛腕を活かして頭角を現し、革命軍の中でも不動の地位を手にした。

劣勢には必ず兵達の先頭に立ち、大鉄槌を振り回す姿はガルシャーン王国軍から恐れられ、味方から敬意を勝ち取り、血濡れの巨人エルカールと渾名される。

頭に血が昇りやすいが、理不尽に相手を咎めるようなことはせず、豪快だが嫌味がないさっぱりとした性格。

キルレアとは無二の親友で、隊商護衛時代からの付き合い。

オールガンやザルヴァーグとも仲が良く、何かと理由をつけて宴から逃げ出そうとするザルヴァーグを無理矢理付き合わせていた。

早くから薄くなってしまった頭髪を気にして剃り上げており、これ見よがしに髪を伸ばすキルレアによくからかわれていた。

コルキスとアレハ、黒旗特務を相手に勇戦したが、最終的に討ち取られる。


△歴史上

ガルシャーン共和国将軍。

巨人と渾名される超人的体格の持ち主であり、革命軍時代からオールガンの腹心として戦った。

ジャレィア=ガシェアの突撃によって戦列を崩壊させられ、コルキス=アーグランドに胸を貫かれ討ち取られている。


★戦闘指揮

かつては武勇一辺倒の人間であったが、ガルシャーン内戦における多くの経験から学び、知略を手にしたことで将軍として完成されている。

元々の気性や性格もあって正攻法を至上とするが、士気を高揚させる術に長け、象兵を用いた真正面突破においては右に出る者がいない。

ガルシャーン共和国軍では最も精強なる兵を率いており、ガルシャーンの盾とも呼ばれる。


外見:剃り上げた頭。焦茶の瞳。七尺の超人的体格。浅黒い肌。大作りな顔。

鎧:象を模るフルプレート。

→クリシェ:理解を超えた女戦士。

得意:我流の鉄槌術。象の運用。

好き:日曜大工。小物作り(下手)。酒。

嫌い:臆病者と呼ばれること。

悩みごと:最期の言葉がオールガン達に伝わったかどうか。




●キルレア 『混沌・中立』

ちょっとお茶目な剣豪系男子。ガルシャーン共和国一級武官。将軍。

シャーン人ではなく、更に東――エルスレン属国の小国家出身者。貴族の末子として生まれ、軍事的圧力を受け押さえつけられる母国では立身出世を望めないと知り出奔。隊商護衛として剣を磨く旅に出てガルシャーン東の砂漠を渡り歩いていた。

砂賊との戦いで多くを学び、一流の剣客となった頃エルカールと出会う。

エルカールよりは少し年上で戦いの師ではあるが、数年を過ごし交流を深める内にエルカールの上下関係を気にせぬ人柄もあってか、いつの間にか無二の親友となっていた。

自身の出奔に若干の後悔があり、エルカールに故郷へ戻るよう勧めたが、彼の故郷が焼かれたことを知り、共にオールガンの革命軍へ。

鍛え上げた剣腕でエルカールと共に武勲を挙げ続け、兵達からは剣豪キルレアと呼ばれ敬意を勝ち取っている。

求道者の性格で自身の剣技に対しての自負心が強く、どこか高慢な部分があったが、ザルヴァーグという天才を目にしたことで憑き物が落ち、後進の育成に力を注いでいた。

クリシェの降下奇襲を受け死亡した。


△歴史上

ガルシャーン共和国将軍。

エルカールと同じくオールガンの腹心であったが、アルベリネアによるグリフィンを用いた降下奇襲を受け、彼女に討ち取られる。

ガルシャーン一の剣豪と知られていたが、アルベリネアの前に為す術もなく首を裂かれたと語られ、アルベリネアの他を圧倒する剣腕を示す逸話の一つとなった。


★戦闘指揮

長年の隊商護衛経験もあり、咄嗟の判断能力に長け、視野の広い将軍。

綿密な作戦、高度な戦術を好み、獣兵全般の運用にも長けるが、プライド高く神経質な面が有り、常に最悪の展開を想像――敵に出し抜かれることを過度に嫌う。

頭脳に優れるが不測の事態に対する備えを厚くし過ぎる面が有り、知将相手には優れた戦いを見せるが単純明快な相手に対しては後れを取ることも多い。

ただ、その剣腕は見事の一言で、少数精鋭で敵陣に斬り込む様は勇猛果敢。戦術的な誤りの生んだ窮地をその実力でねじ伏せてきたこともあり、やはり名将の一人と数えられて不足のない人物。


外見:白髪交じりの黒髪。焦茶の瞳。手足の長い細身。浅黒い肌。皺の深い顔。

鎧:無骨なハーフプレート。

→クリシェ:理解を超えた女戦士。

得意:我流剣術。剣の手入れ

好き:酒。エルカールをからかうこと。腕比べ。鍛練。

嫌い:自身の実力を侮る者。

悩みごと:最期に自らの名誉を穢す敗北。





●アルカザーリス 『中立・中立』

殺されるために出てきた怪物系女子。象の魔獣。

ガルシャーンで行なわれていた象の繁殖、その過程で偶然生まれた象の魔獣。

かつてガルシャーン王国における内戦で反乱軍側が用いた魔獣で、反乱軍側の勝利の一因となった怪物。

戦列を踏みにじり、圧壊するその姿から『全てを蹂躙せしもの』アルカザーリスと名付けられ、戦後はその繁殖のため後方で穏やかに暮らしていた。

相手となる牡の象のため、種付け用に専用の台座を作ったり吊り上げたりと涙ぐましい試行錯誤がなされたが、しかしその巨体のせいもあって繁殖は上手く行かず、怒りを買って死んだ象は7頭、巻き込まれた死者も数十に及んでいる。

そうした被害もあり、王国との決戦にこれを温存する理由もないとするオールガンの命により前線に引っ張り出されたが、クリシェの投槍で即死。

クリシェのいない戦いであれば中々の活躍を見せたはずの怪物であったが、竜を相手に互するクリシェを前にしては大きいだけの不憫な獣であった。


△歴史上

革命軍を勝利に導いた怪物。象の魔獣。

城壁を歩いて跨ぐほどの巨大さであったとされ、現在も保管されるその骨はその記述が誇張でないことを物語っている。

アルベリネアが投槍によって一里の先から仕留めたとする逸話は有名であり、破損した分厚い頭骨を用いて、魔法が使われていたのではないかと検証が行われた。

しかしいくら調べても魔力の痕跡はなく、頭骨破損の状況から、極めて高速の飛翔体が衝突した物理的損傷であることが判明。

戦列崩し、大型投石機、城壁の破壊等、数々の逸話が誇張ではなく、肉体拡張による単純な投槍の結果であることを知った学者達は顔を見合わせたとされる。


外見:翠の瞳。深い青灰色の外皮。二階建ての屋敷を超える巨体。長い牙と鼻。

→クリシェ:知らない。

得意:後ろ蹴り。踏みつぶし。

好き:食事。

嫌い:交尾。

悩みごと:なんか飛んで来――。






■――エルスレン神聖帝国

●バズラー=エルメンド=エルスラン=シュインデル=ルーカザーン 『秩序・悪』

権力はこうやって使うもの系男子。エルスレン神聖帝国大公。

帝位継承権を持つ三大公家の一つ、ルーカザーン家当主であり、エルスレンという怪物国家にあって、その五本の指に入る存在。

幼少から権謀術数に長け、ルーカザーン家の末弟に産まれながらも三人の兄を政治的に抹消、あるいは殺害し、当主の座につく。

政治と権力というものを熟知しており、諜報網構築にも長け、エルスレンにおいては決して敵に回してはいけない存在の一人とされていた。

アレハとサルシェンカ家に敗戦の責を集中させたのも彼の手によるもの。


政治家としてはこの上ない才覚者であるが、その政治的能力に対して、戦略家、戦術家としての能力は将軍として平凡。

戦士としては極めて優れた能力を持つが、軍を率いる指揮者としての才覚には恵まれず、大抵のことは彼が唯一信頼する相手である副将リンカーラに任せている。

クリシェに首を削がれて殺された。


△歴史上

アルベラン東部進行、五大国戦争におけるエルスレン総大将。

大国エルスレン三大公家の一つ、ルーカザーンの当主であり、エルスレン西部一帯を支配した。

政治的手腕に長け、父や兄のギルダンスタインに対する大敗を利用し、当主の地位を得ると、他の二家をその謀略によって蹴落とし、嫡子を次代皇帝として有力視させるまでにルーカザーン家を成長させている。

しかしアルベラン東部進行に失敗し、五大国戦争で大敗を喫し、彼がアルベリネアに討ち取られたことが切っ掛けとなり没落した。

その影響で西部は乱れ、エルスレン解体戦争にまで響き、結果的にエルスレンの滅亡の引き金となったとされるが、アルベリネアと魔導兵器を擁する当時のアルベランに対しては万全に軍備を整えたエルスレンですら相手にはならなかったと語るものも多い。


★戦闘指揮

怪物と呼ぶべき極めて高い戦闘能力の持ち主。

ただそれは蛮勇を振るう戦士としての能力でしかなく、戦術、戦略的能力には恵まれていない蛮族勇者の如き男。

とはいえ彼の優れた点は己の不得手を理解し、他人を使う支配者としての資質であり、大規模な軍の大将としては一転、極めて優れた能力を持つ。

飴と鞭を使い分け、配下に能力以上の能力を発揮させることに関しては右に出るものはおらず、大公の名に恥じない指揮者とも言える。


外見:金髪オールバック。青の瞳。大柄筋肉質。精悍。整えられた髭。

鎧:雲間の光が彫り込まれた優美なフルプレート。

→クリシェ:アルベランの狂った忌み子。不愉快な化け物

得意:フォルカ式剣術。取引。飴と鞭。利き酒。人使い。

好き:見下すこと。相手の頭を踏みつけること。ワイン。剣のコレクション。

嫌い:舐められること。軽んじられること。

悩みごと:相手にもならず死んだ。



●ビーナル=クレフ=デル=サルシェンカ 『秩序・中立』

出来る弟にカインコンプレックス系男子。エルスレン神聖帝国公爵。アレハの兄。

サルシェンカ家の嫡男として生まれながらもそれに恥じぬ才覚を持ち合わせており、元々は人格優れた優しい気性の持ち主であった。

しかし十ほど離れた弟――アレハが彼を遥かにしのぐ天才であったことが全てを狂わせ、父親の愛が彼に注がれていることを知ると強く嫉妬し、彼を敵視するようになる。

学問においても剣においても、ビーナルが血の滲むような努力の果てに習得した全てを容易く手にしていく姿は恐ろしく、当主の座を継いですぐ、その死を望んでアレハに戦場へ出るよう命じる。

しかしアレハはそこでも多大な戦果を挙げ続け、聖騎士、シュインデルの称号を手にし、ビーナルにとって彼は弟ではなく自身に劣等感を与え続ける存在であった。

彼が失敗を犯した際は一切彼を庇うことなく勘当し、家から放り出したビーナルの安息は僅かな期間――最期には弟の手に掛かり、その生を終えることになる。

アレハの小さな頃のビーナルは、貴族としての理想と言える人物で尊敬すべき優しい兄であり、アレハは今もなおその頃の彼を忘れていない。


貴族達はルーカザーン家の解体に夢中であり、サルシェンカ家は子爵に格下げされ、領地の多くを没収されたが、アレハとビーナルを失い彼等の競争相手ではなくなったこともあって見過ごされる。

借金は見舞金と私財を売り払うことでひとまず解消し、細々とその後を過ごし、娘のレシェルは臆病者と呼ばれていた男爵家の次男と恋に落ち、婿に迎え入れ、一児の母となる。

五大国戦争から二十年弱、エルスレン解体戦争の際には兵士のみを出したが、エルスレン西部防衛軍は初戦に大敗。皇帝より西側全ての領主にその場を死守、時間を稼ぐよう通達され、必然的にレシェルの夫も周辺の小領主と協力、五千に満たない寄せ集めの軍を率いることになる。

しかし二万の軍を率い現れたアルベラン将軍、アレハが青旗を掲げ、聖霊協約に基づく降伏を命じたことで命を救われ、そうして久しぶりに彼女らはアレハと再会を果たすことになり――そこでようやく、保管されていた彼の剣は彼女らへと手渡される。

――兄上はサルシェンカ家当主として、恥じる事なき最期を遂げた。

涙を流す二人へと、そんな言葉が添えられて。


解体戦争後、彼女らの領地にも近いアレハの旧領、クラウゼラにまでがったんごーと網が伸び、後にアルベラン男爵位を授けられたサルシェンカ家もその恩恵を受けた。

そこから再び羽ばたく事こそなかったが、その代わりに細々と末永く、その名は引き継がれることになる。


△歴史上

アレハ=レーミンの生家、サルシェンカ家の当主。

アルベラン東部侵攻の失敗を当時民衆から人気の高かった弟を生け贄に捧げることで生き残ったとされ、政治的失敗がないにも関わらず悪評が多い人物。

五大国戦争にて弟の手に掛かり、その最期を遂げた。


★戦闘指揮

特筆すべき優れた点はないものの、平均と比べれば高い戦闘能力、指揮能力を有する。

総じて優秀の一言で不得手がなく、絶大な戦果を勝ち取ることはないものの、無能による大敗を喫することもない安定した能力を持つ将軍。

やや神経質な部分があり、過剰な準備を行うことがあるが、これは欠点と言うよりある種の美点でもあり、兵士達を決して飢えさせない彼の気配りは彼等からの受けも良い。


外見:金髪オールバック。青の瞳。細身筋肉質。少しやつれて見える整った顔。

鎧:楽園の描かれる優美なフルプレート。

→クリシェ:人の形をした絶望。化け物。

得意:エルカファレスト式剣術、槍術。領地運営。商取引。

好き:子供。ワイン。絵画。

嫌い:優れた弟。

悩みごと:妻や娘のこと。



●バド=キータス 『中立・善』

クリシェから二度も生き延びた豪運系男子。エルスレン神聖帝国伝令兵。

下流貴族生まれの青年で、アレハのかつての副将ダクラーシャ家の分家に当たる家の嫡男。

飛び抜けて優秀というわけではないが、何事もそつなくこなすタイプで目端が利き、優秀な青年。

幼少から剣術には強い関心を持っており、複数の剣術流派を学んでいる。

クリシェの山中指揮所奇襲の際、大怪我を負ったものの運良く殺されずに済んだ。


五大国戦争においてもアーレ=ケインクルス軍の伝令として従軍。

クリシェの誘引撃滅戦術に巻き込まれたが生き延び、将軍アーレを背中に担ぎクリシェと二度目の遭遇をしながらも北壁内から逃げ延びた。だがアーレはクリシェの放った矢で既に絶命しており、自分がまたも運良く見逃されただけに過ぎなかったことを知る。

その後すぐに伝令として大将バズラーの所に向かっており、グランメルドの襲撃を回避、最終的に戦場からも生還した。

故郷に戻ってからはそれまでの経験から立身出世を諦め、領地経営に精を出すことに決めて剣を置くことになる。


アーレの最期に立ち会ったことで、その後不思議と縁の出来たケインクルス家の末妹と結婚し、多少の浮き沈みこそあれど穏やかな生涯を送った。

彼の残した記録は当時の戦争やアルベリネアに関する重要な史料として扱われることになる。


△歴史上

エルスレン神聖帝国の伝令として従軍。

その視点から多くの手記を残しており、現在も当時の戦場についてを知る重要な史料として扱われている。

特にアルベリネアに敵として戦場で二度遭遇、生き残った極めて稀な人物であり、その恐ろしさについてが一兵士としての視点で克明に語られた。

――自分は状況による重要度の低さから単に見逃されたに過ぎず、あくまで天運が味方をしたに過ぎない。恐怖から夜も眠れず、三度目は必ず来ると考え、そしてそれが逃れられぬ自分の死であることを悟り、あれだけ愛した剣を置くことを決めた。

彼はそう当時の心境を振り返ってそう記している。


★戦闘指揮

幼き頃から剣才に恵まれ、十の頃には神聖帝国では二大剣術とされるフォルカ式剣術、エルカファレスト式剣術を一通り身につけていた。

一つを極めるよりも広く知ることを重視した彼はその後も様々な剣術、戦闘術についてを学び、使いこなしている。

とはいえそれも剣達者の域を超えることはなく、一人で戦場の空気を変える怪物達の域には届かぬもの――しかしあるいは、それこそが彼の命を救ったのかも知れない。

少なくとも、クリシェ=クリシュタンドに挑む蛮勇を持たずに済んだのだから。


外見:金髪。青の瞳。細身。精悍。

鎧:革鎧。

→クリシェ:ぎんぱつちょうこわい。

得意:フォルカ式、エルカファレスト式、ロールカ式他二つの剣術。個人戦闘。

好き:剣の訓練。

嫌い:弓。紫色。

悩みごと:紫色の宝石を見るとフラッシュバック。



●リンカーラ=レヴィス=シュインデル=ウォーカル 『秩序・中立』

悪い大公のお目付役系男子。エルスレン神聖帝国公爵。

バズラーが幼い頃からその教育係としてルーカザーン家に仕えていた男で、彼から唯一心からの信頼を受ける人物。

半ば父親から見放され放置されていた彼にとっては父親代わりであり、妻との間に子供が恵まれなかったリンカーラもまた彼を自分の子供のように思っている。

歪んだ彼の性格に対して思うところがないではないが、貴族社会という魔境を真っ直ぐと生き抜くことは難しく、仕方ないことと諦めており、時に諌め役となりながら彼に付き従ってきた。


才覚は平凡ながら戦場経験が非常に豊富で、フェルワースと近しい存在。

ルーカザーン軍において戦略、戦術の立案は基本的に彼が行っており、そう言う意味では彼が五大国戦争におけるエルスレンの大将とも言える。

クリシェに頭蓋を蹴り砕かれ死亡した。


△歴史上

バズラー=ルーカザーンの右腕。

軍事的戦略、戦術の提案に関しては基本的に彼が任されていたとされ、その参謀に近い立ち位置にあったとされる。

反抗を許さない厳しく苛烈なバズラー=ルーカザーンも彼に対してだけは格別の扱いをしたと言われており、唯一強く信頼した人物であると語られた。

五大国戦争にてバズラー=ルーカザーンと共に、アルベリネアに討ち取られている。


★戦闘指揮

武門の家に生まれ、幼き頃から研鑽を重ねてきた老将。

過去には華々しい戦果を挙げており、国内に知らぬものはいないほどの武人である。

剛力無双と謳われた肉体は老いと共に失われたが莫大な経験がその血肉に溶け込んでおり、今なおエルスレンでも一二を争う名将であることに疑いようはない。

老いてからは強引さが失われ慎重さを増し、華々しさこそありはしないが、基本戦術、戦略に忠実な彼の指揮は非常に安定、強引なバズラーの性格と上手く噛み合い、無数の勝利を手にしてきた。

勝つべくして勝ち、負ける戦には手を出さず。

将軍に求められる能力はただそれだけであり、そしてそれを忠実にこなせる将こそが名将と呼ばれる。

戦という盤上遊戯において彼を打ち負かすことは困難であり、その上で彼に勝とうとするならば遊戯そのものを破綻させるような何かが必要となるだろう。


外見:白髪の短髪。青の瞳。細身。皺だらけの顔

鎧:無骨なハーフプレート。

→クリシェ:常軌を逸した才覚者。真正面から戦ってはならぬ化け物。

得意:フォルカ式剣術。戦術、戦略立案。剣の目利き。

好き:戦史研究。鍛冶。軍。

嫌い:政治。貴族社会。

悩みごと:どちらにせよ死ぬならば、全盛期の肉体でクリシェと立ち会ってみたかった。



●アーレ=ヴェインズ=ケインクルス 『秩序・善』

名家のお坊ちゃま系男子。エルスレン神聖帝国公爵。

名家ケインクルス家の若き当主であり、此度の従軍ではバズラー指揮下の将軍。

政治の世界で戦場の手柄もない臆病者と言われた事が切っ掛けとなり、手柄を求めてルーカザーンに大金を支払い、将軍として戦場へ。

エルスレン、ガルシャーン、エルデラント――三国同時攻撃という圧倒的有利な状況。

これは当初勝ち戦であり、お飾りの将軍として家柄ある彼が座ることに異議を申し立てる者はおらず、それが彼の不運であった。


人柄は誠実そのもので、努力を怠らない。

平時においては誰からも愛される良き貴族であり、領民からも愛される希有な人物であったが、しかし極めて戦場には不向きな人間。

それを克服する機会を得ることもなく、逃走中にクリシェの矢で後頭部を射抜かれ死亡する。


△歴史上

エルスレン神聖帝国将軍。

バゥムジェ=イラにより負傷し、バド=ギータスに担がれ逃走している最中、アルベリネアに射殺されたことが記されている。

翠虎に乗り、全力で逃げる魔力保有者に担がれた彼を射抜いた手腕は人間業ではないとバド=ギータスは語った。



●ラヌ=カルード 『中立・悪』

悪い遊牧民コンセプトモデル系男子。カルード族大族長。

エルスレン南部にある平野の遊牧民族出身者であり、その一帯の大族長。

この地の遊牧民族はグラバレイネの時代に征服され、臣従を強いられており、エルスレンとの分裂後はエルスレンの支配下にある。

自治を認められては反乱を繰り返す悪循環を繰り返しており、一カ所に留まることのない遊牧民としての生活や部族制度の色濃い社会もあって、彼らの立場は安定していない。

平野生まれの例に漏れず非魔力保有者であるが、馬術、弓術の天才であり、知恵も回ったことから二十の時に自身の部族の頂点に立ち、周辺部族を併呑。一代で大部族を作り上げた異能者。

残忍かつ冷酷な性格もあり、恐怖政治によって遊牧民達をまとめ上げていた。

欲深く、自治権を得た後は神聖帝国から更なる譲歩を引き出し遊牧民国家を作り上げるつもりであったが、最後には部下に裏切られ寝首を掻かれて殺される。


△歴史上

エルスレンの使った遊牧民の大族長。

空から俯瞰する如くと称される弓騎兵の指揮手腕と残虐な手口で知られたが、五大国戦争で死亡。

一説には部下に殺されたとも語られている。



■――エルデラント王国

▲――ヴェーゼ部族

●レド=ラーニ 『中立・悪』

闇落ち熱血主人公系男子。ラーニ戦士長。ヴェーゼの狩猟隊隊長。

大部族ヴェーゼ傘下の部族ラーニの若き戦士長。

先代戦士長ラーディアの息子で、その剣才を強く受け継ぎ若くして戦士長となった。

ヴェーゼ大族長であり現エルデラント王ゴルキスタと父であるラーディアが友人関係にあったこともあり、ヴェーゼの姫シェルナとは幼なじみの間柄。

将来の結婚を誓い合った仲であり、相思相愛の関係となっている。

無数の部族が争い、内戦の絶えないエルデラントでは幼い頃から戦に巻き込まれ、その凄惨さを目の当たりにしてきた。

それがトラウマとなっており、シェルナと共にエルデラント王国の完全統一という理想を胸に立ち上がり、仲間を集うとヴェーゼの狩猟隊を結成。

シェルナの右腕として多くの武勲を挙げ続けたが、アルベランへの侵攻戦争にてシェルナを含めたほとんどを失うこととなる。

自暴自棄になっていたところを部下達に必死で止められ撤退。

影武者によってクリシェの追撃から命からがら逃げだした北部軍の将軍、トーバ=アーカズ一行に拾われ、エルデラントへと戻った。


復讐のためアーカズと手を結ぶことに決め、エルデラント統一のため剣を振るう。

親友となったトーバ=アーカズに止められ、そして妻に泣きすがられながらも、復讐心を捨てきれず蜂起、ヴェズレア建国を建前にアルベリネアに挑んだ。

フェルワース=キースリトンを討ち取りながらも喜びはなく、時間を奪われ激怒するクリシェに為す術もなく殺され、自分の望みを悟った。


――きっと自分は、彼女と一緒に死にたかったのだ、と。


△歴史上

トーバ=アーカズの右腕であり、ヴェズレアの主導者。

エルデラント統一戦争においてアーカズの将として戦った武人であったが、統一後、意見の不一致から袂を分かち蜂起したとされる。

フェルワース=キースリトンを討ち取るも、戦場で初めて魔法を用いたアルベリネアを前に軍を壊滅させられ、呆気なく首を取られた。

これ以降行使されていない魔法を使った理由は、当時病に伏せる使用人を置いて戦場に引きずり出されたためであると言われており、知らず竜を槍で突いた愚かな人物と語られる。

この間に彼女が愛した使用人、ベリー=アルガンが亡くなったことから、アルベリネアの悲劇として語られ、劇の題材に用いられることも多い。


★戦闘指揮

確かな戦術理論を学んでいる訳ではないが、複雑な森の中での戦いで得た経験とそれに裏打ちされた直感により、非常に優れた瞬間的な判断能力を有する。

無策で敵陣に飛び込み武勲を挙げることを可能にするほどで、ある種の天才と言える才覚者であるが、直情的で頭に血が昇りやすいのが欠点。

他を圧倒する武勲を挙げることもあれば、間の抜けた敗北を重ねることもあり、総じて不安定な指揮官と言える。

戦列に組み込まれると平凡そのものと言え、独自裁量を持たされなければ能力を発揮出来ないなど、やや未熟なところが残る。

戦闘では巨剣の重量と慣性を活かした独特の剣術を扱い、場合によれば格上の相手を斬り殺すこともあり、総合的に波が激しい。


外見:黒髪短髪。茶の瞳。中肉中背。比較的整った顔。

鎧:革鎧。腿の膨らんだズボン。

→クリシェ:シェルナが警戒していた敵将。恐らくシェルナを討った仇。

得意:我流巨剣術。体術。狩り。釣り。水泳。

好き:鍛練。腕比べ。

嫌い:アルベラン。

悩みごと:愚かな自分。



●シェルナ=ヴェーゼ 『中立・悪』

マイルドに頭おかしい系女子。ヴェーゼ第一王女。

エルデラントでは天与の才に恵まれると伝えられる深い藍の瞳、天眼を持って生まれた王女。

幼い頃からその言い伝えに違わぬ優れた才覚を示していたが、自分に手を出そうとした男をあっさり殺して見せたのは七つの頃。

観察するように体を切り開いて臓器を眺めている姿を見られた結果、彼女は人の心を持っていないと恐れられ、狂った王女としての噂が広がり――結果として王の友人が長となる部族、ラーニへと一時その身を預けられた。

そこで顔なじみであったレドと数年を過ごすこととなり、その優しさに触れ関係を深めていく内に彼女は彼を愛するようになり、自身の異常性を疎むようになっていく。

戦場を嫌っているが、彼を守り、彼の望みを叶えることが自分の役目と考えており、エルデラント統一という目標も発端は彼の理想を叶えるため。

彼女の望んだ世界はただ、彼と自分が穏やかに過ごせる、そんな優しい日常だけだった。

アルベラン侵攻戦でクリシェと遭遇、討ち取られた。


△歴史上

五大国戦争におけるエルデラント王国の総大将。ヴェーゼ第一王女。

若くして敵うものなしの剣腕と未来を予知するとまで言われるほどの頭脳を持つと言われており、各部族を文字通り力によって束ねた人物として語られている。

王権を求めた内戦においては幼いながら無数の首級を挙げており、精神的欠陥があったとされるなどアルベリネアのそれと一致する所は多く、彼女に匹敵する才覚の持ち主であったのではないかと語るものも多かった。

しかしアルベリネアの戦略的奇襲により呆気なく討ち取られたことから、幾分誇張があったとするものや、アルベリネアは別格であったと見なすものが現在は主流となっている。


★戦闘指揮

非常に攻撃的な指揮官。

国土の大半を森に覆われたエルデラント出身者であることもあり、伏撃や奇襲による『首狩り戦術』を何より得意とし、戦列を重視しない。

その卓越した思考能力は空から俯瞰するように戦場を捉えることを可能とし、場合によれば数十の小部隊を視界不良の中、指揮運用することも苦にならない。

戦略、戦術に対する思考、推察能力は抜群と言え、他者からは理解出来ず天啓と呼ばれるほどの瞬間的決断も常にその異常な思考能力によって成り立っている。

まさに天才と称して然るべき指揮官であるが、反抗的な部下を恐怖で統制する悪癖があり、信頼関係の構築に失敗することが多く、それが原因となっての失敗が少なくない。

自身が先頭に立つことで容易にその失敗を立て直してきたこともあってか、彼女はこの問題を重く見ていないが、完璧と言うべき彼女の確かな隙となっている。


外見:亜麻色の長い髪。深い藍の瞳。小柄。胸控え目。秀麗。

鎧:古文字彫刻の艶消し胸甲。手甲。

→クリシェ:死を振りまくもの。自分すら相手にならない絶対的な殺戮者。

得意:人殺し。計算。

好き:レド。キス。スキンシップ。花壇弄り。

嫌い:普通でない自分。戦。

悩みごと:もう一度レドと会いたかった。




▲――その他のヴェーゼ部族員

●ズレン 『秩序・中立』

主人公の親友ポジション系男子。ヴェーゼの狩猟隊切り込み隊長。

レドと同じくラーニ出身の戦士で、レドの親友。

レドよりも歳が三つ上で、子供の頃はガキ大将。生意気だったレドとは度々喧嘩をする仲であった。

レドよりも先にシェルナに対して異性としての好意を抱いていたが、時折見せる彼女の歪さに怯え、そして彼女の高貴な生まれに一歩退いてしまうところがあった。

しかしそんな彼女に対しレドだけは彼女を単なる一人の少女と見ており、そしてシェルナもそんな彼に惹かれていることに気付くと、潔く負けを認め、それからは二人を見守り祝福する立場になることを決める。

戦場では勇猛果敢な戦士であり、レドに並ぶ技量の持ち主。

ヴィンスリールによる頭上からの奇襲によって討ち取られた。


●ベズ 『中立・善』

主人公の兄貴分ポジション系男子。ヴェーゼの狩猟隊副官。ラーニ戦士長補佐。

レドの父――先代戦士長の頃から戦士長補佐にある男で、その親友。

かつてはレドの父と並ぶラーニの豪傑で、レドとズレンの戦いの師でもあったが、過去の戦での後遺症から左腕の動きが少し悪い。

それでも望めば異論なく、戦士長就任を認められる実力者であったが、彼はあえてレドに決闘を挑み、剣を交えた。

決闘には勝利するが、際どい戦い。彼はその戦いでレドの成長に満足すると戦士長を辞退しその補佐に就くことを決める。

テックレア本陣での戦いで勇戦するも、敗北。テックレアに戦士として送られる。


●ジーグレット 『混沌・中立』

深き森の老賢者系男子。ヴェーゼ司祭長。

ヴェーゼ出身者であるが、政治に関わらず隠遁生活を送っていた老魔術師。

150年を生きる大賢者で、エルデラント各地を旅しながら魔水晶の研究を行っていた。

元々ヴェーゼの司祭長であった宰相クロルスに頼み込まれる形でヴェーゼの司祭長となるが、天眼を持つシェルナの監視役という面も大きい。

幼き頃とは違い、レドと出会ったことで訪れた彼女の変化を喜んでいる。

攻勢魔術を可能とする魔水晶刻印を可能とする一流の魔術師であり、生涯に七本に及ぶ魔術師の杖を作りだした。

ただしこれらは所詮護身の域を出ないものであるとも考えており、研究の一環。

魔水晶に頼らぬ魔術――魔法を誰より追い求めており、現代魔術の研究者としては五本指に数えられる魔術師。

撤退指揮の最中クリシェに急襲され死亡。その叡智は失われた。


△歴史上

150年を生きたエルデラントの大賢者であり、彼が残した手記の先進性から、アルベリネアを除けば当時最先端を行く魔術師の一人であったと語られる。

しかし五大国戦争に従軍。戦死した。



●アロン=キルス 『秩序・悪』

蛮族汎用モデル系男子。キルス戦士長。

素行が悪いものの剣才に優れる戦士。

力こそ全てと強く教えられるキルスの中で育てられたこともあり、ヴェーゼの人間とは倫理感が大きく異なっているが、キルスの中では真っ当な人間。

合理的で頭が切れ、自分に従うものに対しては情に厚いこともあってか、キルスの人間からは尊敬の対象として見られている。

理想家のレドを強く嫌っており、傲慢なシェルナに対しても不快感を覚えているが、彼の中での道理を理解し、筋を通そうとする相手に対しては甘い。

クリシェとぐるるんの奇襲によって死亡する。


●クロルス 『中立・中立』

頑固で怒りっぽい老人系男子。エルデラント宰相。

頭脳に優れる元ヴェーゼ司祭長であるが、頭に血が昇りやすい。

先日の式典でクレシェンタを目にしてから彼女が非常に危険な存在であると感じており、早期に今代アルベランを潰すことを訴えたエルデラント王国の主戦派。

ガルシャーン、エルスレンとの同盟交渉を推進した。

学者肌で過去の歴史についてを深く学び、アルベランの隆盛と忌み子の関係を誰より理解しており、その幼さから想像出来ぬ知性を見せるクレシェンタをグラバレイネの再来となり得る存在であると危険視している。

ただ攻撃的で目下の反論を許さぬ性格のためか嫌われており、エルデラントでは彼の強い懸念を妄想的と考えるものも多く、重くは受け止められていない。

侵攻決定は彼の発言ではなく、内戦で疲弊し、幼き王女へ王位が移ったタイミングという一般的な情勢判断から来る理由が大きい。


▲――ミークレア

●ゲイン=ミークレア 『中立・悪』

悪い蛮族コンセプトモデル系男子。ミークレア族長。

大部族ミークレアの族長で剛腕無双の怪物。

雑に髭と髪を伸ばし、全身に入れ墨を施した筋骨隆々の姿と胴間声はただあるだけで並の戦士を恐れさせ、長年ミークレアを支配してきた。

超人的な戦士であるがそれだけではなく、頭脳、判断能力にも優れ、どれほどの窮地に追い込まれても瞬時に最適な判断を下す能力があり、性向はどうあれ名将に数えられるべき猛将。

内戦でヴェーゼ族長にしてエルデラント王ゴルキスタと決闘を行い、辛くも敗れたことで掟に従い彼に従っているが、ゴルキスタの病を知り、再び王位を狙っている。

レドが主人公なら恐らく最後の敵であっただろう人。

族長と戦士長に部族内での違いはないが、エルデラントでは王位継承資格を持つ大部族(王以外の他の部族に臣従していない)の長のみが族長を名乗ることを許される。

コルキスの鎧に一刀斬り込むも、その隙を狙われ討ち取られた。


△歴史上

当時のエルデラント王ゴルキスタ=ヴェーゼと争った人物とされ、ミークレアの大族長。

五大国戦争に従軍し、コルキス=アーグランドに討ち取られた。

この際無抵抗なエルデラント兵を躊躇なくアルベリネアが射殺したと言われ、その歪な精神性を示す事例の一つとなっている。

五大国戦争におけるエルスレン戦、エルデラント戦は特に進行側の死傷者の数が凄まじく、アルベリネアによる合法的な虐殺の場であったと語られる場合も多い。


●カーネザルド=ルーライン 『混沌・悪』

悪い蛮族エリート系男子。ルーライン戦士長。

ゲインの片腕である悪い色男。ゲインの弟分。

女遊びを好む非常に不真面目な性格であるが、単独での翠虎狩りを成功させたこともある実力者であり、ミークレア傘下でもゲインに継ぐ腕前の戦士。

ゲインとはお揃いの古文字の入れ墨を施している。

幼少の頃、狼に襲われた際偶然ゲインに助けられたことからの付き合いで、唯一無二の兄貴分として彼に強い忠誠を誓うが、それ以外の慣例や掟に関しては一切無視する無法者の中の無法者。

反抗する相手は皆、その実力によってねじ伏せてきた。

シェルナを口説こうとした過去があり、レドからは非常に嫌われている。

ぐるるんに乗ったクリシェの弓によって二射(諸説あり)で仕留められた。


△歴史上

ゲイン=ミークレアの片腕。

アルベリネアによって二射で討ち取られたと記録上は記されている。

彼女が弓で射殺したとされる戦果は多くあるが、彼だけ射数が記された理由は不明。


▲アーカズ

●トーバ=アーカズ 『中立・善』

悩める親友系男子。アーカズ戦士長。元エルデラント王。エルデラント自治領領主。アルベラン侯爵。

争いの消えぬエルデラントに生まれ、若くして戦士長を継いだ才覚者。

中堅というべき勢力であったアーカズを導き、武力ではなく政治的手腕によって大部族へと作り変えた存在であり、王権を巡る争いに参加しないことで力を蓄え、平和を望む小部族を束ねた。

両親を戦で失った彼が求めるのは平穏であり、そしてエルデラント統一のため牙を研ぎ、そんな折りに訪れた五大国戦争でヴェーゼとミークレアが倒れた事を機に、動き出す。

失意に沈んだレドを拾い、当初は駒とするため、彼が愛したシェルナの夢を叶えるように告げて発破を掛けた。

そしてこれをエルデラントにおける最後の戦にするために全力を尽くし、その後は戦場を共にする内、他人と思えなくなったレドを引き留め、過去に見切りをつけさせ新たな人生を歩ませるために尽力することになる。

しかしそれを止めきれず、行かせてしまった自分を呪った。


五大国戦争から十年とおかず、ヴェズレアの蜂起。

征服は免れないと考えた彼は戦いではなく服従を選んだ。

自らの右腕を切り落とさせ、クレシェンタに謁見を求め、そして彼女の前で跪き、床に額を押しつけると、決して叛意はなく、場合によれば首を捧げると告げ、慈悲を乞うた。

クレシェンタは信用ならないとしながらも、戦士を束ねるエルデラント王が腕を捧げる覚悟は伝わったと語り、玉座を立ち上がり、彼の肩に手を掛ける。

――今後些細な不利益でもあれば、一族もろとも皆殺しですわ。

そして彼にだけ伝わるよう、そう囁いた。


お立ちになって、と微笑む彼女の紫には、得体の知れない暗いものが渦巻いた。

無防備に見えて、隙だらけに見えて。

けれど自身に纏わり付く魔力と、心臓を握られるような悪寒。

彼はその瞬間から、彼女の傀儡と呼ばれようとも彼女に従う事を心に誓う。

王国としての国体を維持することよりも、いずれその名が消えることになろうとも、平穏だけをただ望んだ。

そもそもの格が違ったことを、友に万が一なども存在しなかったことを、その瞬間に理解して。


△歴史上

エルデラントの統一王。

部族連合というべきエルデラントの政治形態を一新、中央集権国家に作り変えようとした人物であるが、ヴェズレア蜂起によって頓挫。

以降はアルベランに臣従し、自治領化。

最終的にはアルベラン領としてその権力を完全にアルベランに明け渡し、アルベラン貴族としてその管理を任された。

傀儡と言うべきその軟弱な姿勢から売国奴と蔑まれ、何度か乱は起きたものの、ヴェズレア蜂起により武闘派で知られる部族の大半は壊滅しており、アルベランの進駐軍の存在もあって危なげなく制圧。

アルベランの文化が浸透し始め、製鉄のため森を大規模伐採。食料問題も交易や森を切り拓いて作られた農地によって解消され始めると、次第に落ち着きを見せ、後のクラインメール時代には製鉄で盛んな豊かな土地となった。

アルベランを恐れたとされるが、当時のアルベランに逆らえる国は存在しない。

結果的には傀儡とはいえ最良の道を選んだとされ、争いの止まぬエルデラントを平和に導いた人物として語られる。


★戦闘指揮

槍の名手であり、高い軍事的才覚を有する。

視界不良な森であっても自在に軍を操ることができ、自ら槍を振るいながら軍全体の状況を把握出来る優れた頭脳の持ち主。

積極的に敵に踏み込むことはないが、機動防御や伏撃を得意とし、全体として攻撃意識の高いエルデラントにおいては無類の強さを発揮する。

逆に踏み込んで来ず、誘いにも乗らない相手に対しては手が出せぬまま膠着状態に陥りやすく、罠を張り巡らせづらい開けた場所での戦闘は不得手。

名将と言えるが限定的で、エルデラント統一は相手を掻き乱すレドの存在が大きかったと言える。

とはいえ、その実力は確かであり、纏まりのない集団に手こずることはなく、片腕を失った後も危なげなく反乱を鎮圧している。


外見:後ろに撫で付けた赤毛。茶の瞳。中肉中背。軽薄に見える整った顔。

鎧:翠虎の毛皮。革鎧。腿の膨らんだズボン。左耳の黒い羽根飾り。

→クリシェ:手を出してはならなかった相手。

得意:槍術。体術。狩り。罠。戦術。

好き:酒。狩り。

嫌い:無謀。

悩みごと:親友を止められなかったこと。



●フェニ=ラーニ 『中立・善』

一途に子育て系女子。トーバの妹。レドの妻

昔から怪我の多い兄の役に立つため、幼い頃から簡単な医療を学んでいた。

レドがアーカズと共に戦うようになり、自暴自棄に無茶をするレドの手当てを繰り返す内、彼が故人のシェルナを今も愛していることを知りつつも恋慕の情を抱くようになってしまう。

トーバから事情を聞かされた際には驚きつつも頷き、彼を引き留めるために妻となり、彼の目が過去ではなく未来を向いてくれるようにと誠心誠意妻として尽くした。

今もシェルナを愛していると拒絶しようとする彼に、それを承知の上で、自分は妻になったのだと。

もし出て行くつもりならば、その間だけでも良いと語って。


彼が戦死したことを知ると、フェニは兄に縁を切らせ、その後も彼の過ごした家でズレンを育てた。

表向き縁を切られたとは言え元王族。直接手出しは出来ずとも、多くの者は彼女と彼の子を蔑んだ。

トーバが片腕を捨て、アルベランへの臣従を決めると一層酷く、彼女らには石が投げられたが、それでも彼女は涙を流すことなく。


息子ズレンはそうして裏切り者の子として蔑まれながらも、一人で自分を必死に育てたそんな母を守るために努力を重ね、捻くれることなく真っ直ぐに成長し、その実力を持って戦士になる。

そして過酷な任務には率先して希望を出し、誰より必死に仕事をこなし――そんな頃にフェニは倒れた。


まだ老いも軽く、しかし病で伏せったフェニは、苦しい思いばかりをさせたとズレンに告げる。

ズレンは笑い、あなたのような母の所に生まれたことを誇りに思います、と返した。


そこは今も母が大切に手入れする、小屋のような小さな家。

蔑まれて泣くズレンを見てから、母は父を愛しているとはそれから一度も口にしなかった。

けれど彼は、誰よりもそれを知っていた。


――そして、そんなあなたに巡り会わせてくれたことだけは、俺も父に感謝しています。

そう続けると彼女は初めて、ズレンの前で涙を流した。


外見:緩く束ねた長い赤毛。茶の瞳。華奢。秀麗。

→クリシェ:夫を苦しみから解放させた人

得意:家事全般。薬草採取。調合。

好き:家事全般。裁縫。子供。小さな家。

嫌い:不出来な自分。戦。

悩みごと:夫を苦しみから救ってあげられなかったこと。






■――ゲルガニク王国

●アルフマーズ=ラシャルシェア=ゲルガニク 『混沌・中立』

魔王に殺される勇者系男子。ゲルガニク王。東の武王。

群雄割拠の大陸東部における最大勢力、ゲルガニク王国の国王。

個人として大陸有数、武勇名高い戦士でありながら、政治軍略、あらゆる才覚を発揮する傑人であり、王の中の王と知られる東の英雄王。

名誉を重んじる武人でありながら徹底したリアリストであり、蛮勇を愚かと断じる冷静さを兼ね備え、常に戦略的優位を得るために外交的、軍事的優位を手にするために全力を尽くす。

中堅国家であったゲルガニクを東部最大勢力まで押し上げた才覚とカリスマ性から、敵国の武人達からも強い敬意を向けられていた。

しかし、反アルベラン同盟の盟主として大陸東部の大小13国を纏め上げるその力量が仇となり、大陸統一戦争における『箒で纏めてちりとり作戦』(クリシェ命名)に利用され、命を落とすことになる。

時代が時代なら東部統一も夢ではなかった人物だが、ただただ相手が悪かった。


△歴史上

大陸統一戦争における東部連合盟主にして総大将。当時有数の戦略家、戦術家。

大陸東部における記録には多くの国家が彼を恐れたことが記されており、今なお残る戦場での記録――多くの会戦を圧勝で終わらせた事実から、アルベリネアに敗北したことを差し引いても、歴史に名を残すべき傑人であったと考えられている。

エルスレン解体戦争勃発からすぐさま東部連合結成のため行動していた様子が見られ、アルベランに対する危機感を早くから覚えていた様子もあり、今なおその評価は高く、当時の名君、その一人に数えられる事が多い。

当時大陸東部の文化発展が遅れていたという訳ではない。

少なくとも兵装や戦術等、魔導兵器を除けば軍事技術において西部に勝るとも劣らぬものであった。

だが、神の子らが巻き起こした時代のうねりには呑み込まれる他なく、彼らはそれに最期まで抗った戦士であり、その最後の犠牲者であったのだと語られる。


★戦闘指揮

武王と呼ぶに相応しい王道、兵力優越による勝利を好む名将。

基本的戦略、戦術を重視しながらも相手の抵抗や奇策、その初動を機敏に把握する高い戦術眼を持ち、相手の行動を封じ込めることによって優位なる戦いを優位のまま、あるいは相手の策を呑み込んで圧倒する。

奇策に頼ることを好まず、逆に相手の奇策を逆手に取って自身の優位を確たるものにするためにのみ利用し、不利な状況においては無理を犯さず時間を稼ぎ、遅滞戦術を徹底するなど蛮勇を嫌う人間。

決闘において無敗、大陸有数の戦士としての力量を持つが、決して蛮勇に頼らぬリアリストであり、緻密な計算によってのみ勝利を手にできると考えられる冷静な指揮官として、大陸有数の軍事的能力を持つ。

ただ、一切の奇策もなく真正面からの平押しと圧倒――己の理想的な戦術をそのままにクリシェにぶつけられた以上、もはや彼に打つ手はなかった。


外見:黒髪。茶の瞳。比較的長身で筋骨隆々。虎髭。精悍。

鎧:剣と盾、戦士の名が無数に刻まれるプレートメイル。

→クリシェ:神の如き戦士。歪んだ少女。

得意:剣。槍。体術。弓。軍略。政治。狩り。乗馬。

好き:武人。決闘。手合わせ。狩り。

嫌い:人の上に立ちながら臆病な者。

悩みごと:打ち合うことすら出来ず首を裂かれた。



■――スクリフ王国

●ベルザーディア=ソレルシア=ニトリアス 『秩序・善』

魔王に殺される勇者の師匠系男子。スクリフ王国大将。

大陸東部では南西にある、小国スクリフにおける軍人の長。

多くの国に囲まれ度重なる侵略を受けながらも、あらゆる劣勢を覆し無敗という常軌を逸した戦績から、東部では戦神と渾名されるほどの武人。

隣国をゲルガニクに呑み込まれ、アルフマーズと二人の決戦を誰もが予想していたが、解体戦争勃発、そして続くであろうアルベランの東部侵略に対し、戦力が失われることを懸念したアルフマーズは版図拡大を中断。

彼から休戦と反アルベラン同盟への協力を持ちかけられ、協力することになる。


精鋭部隊で蛇の魔獣を手ずから討伐するなど、その逸話は数多い。

戦歴の長さから多くの武人の目標として長く君臨し、アルフマーズもその一人。

彼の武勇伝を聞いて育ち、その戦術を学習した。

彼自身もまたアルフマーズという存在を早くから好敵手として認識しており、その戦いの記録を集め来たるべき戦に備えていた。

そうした関係もあり、同盟締結まで会話したことさえもなかったが、出陣前夜はまるで長年の友人のように酒を飲み交わして笑ったという。


△歴史上

大陸統一戦争における東部連合副大将。

戦神と呼ばれるに相応しい輝かしい武勲の数々。アルフマーズと並び、同時代の大陸東部における二大英雄として語られる。

当時のスクリフ周辺にあった険しい森林地帯を活用し、大軍を分散、包囲撃滅するまでの鮮やかな手腕はアルベリネアにさえ匹敵すると語る者もあるほどで、空から不透明な森の戦場を透視するが如き、巧みな戦術眼を持っていたとされる。

地の利を十全に活かした戦いは倍する戦力を打ち負かし、戦神は存在そのものが強固な城郭に等しいと語られ、三倍の戦力を持ってすら挑むは危うい存在と恐れられた。

国力のないスクリフを数々の強国から守り抜いたその戦略、戦術は多くの軍事関連書籍に残されている。


されど城郭に等しき名将も、アルベリネアを前にしては村の柵にもならぬもの。

その輝ける武勲でさえ、全盛期のアルベラン、その強さを計る物差しにさえならなかったのだと歴史書には記された。


★戦闘指揮

鬼才の将軍であり、心理戦に長けた戦略家にして戦術家。

――小国であったスクリフが生き残るためには、正攻法などあり得ない。

そう考えた彼は相手の指揮官の性格を探ることに全力を尽くし、そしてその分析から相手の行動を割り出して虚を突くことにのみ重点を置いた。

一見博打染みた捨て身の軍運用であっても、相手の性格を読んだ上――軍対軍ではなく、己と相手、将軍同士の心理戦によって勝利する彼の戦術に迷いはなく、その大胆な戦術、戦略は数多の敵将を打ち破った。

いかに最強の軍であろうと、指揮する者は同じ人間。

付けいる隙は必ずあると、語るとおりの戦績は戦神という名に相応しいものであったが、心理戦さえ通じぬ戦力差には為す術もなかった。


外見:白髪の短髪。茶の瞳。中肉中背。少し長い髭。鋭い目。

鎧:大蛇を模したプレートメイル。

→クリシェ:少女の姿をした化け物。

得意:剣。槍。軍略。心理戦。

好き:武人。子供。畑仕事。

嫌い:無法者。

悩みごと:時間稼ぎにもならない己。































■――

○ミーデリアリーゼ=ヴァーナシュテル 『中立・中立』

思い込み激しい系女子。アルベナリア魔導学院生徒。

魔術師の最高位、アルベリネアを目指す優秀な少女。

優秀なものしかいないアルベナリア魔導学院においても優秀な成績を示し、一般的には天才カテゴリーに入る才媛であるが、口では強気なことを言いつつ上には上、本当の天才がいることを知っており、アルベリネアは半ば諦めていたりする。

ただ、馬鹿にされるのを何より嫌う性格で意地っ張りなため、一度言い出した目標はまだ変えていない――が、最近はちょっと弱気で古代魔導具の研究者もひとまずの仕事として悪くないなどと口にし始めている。


何かと微妙なドジを踏むことは多いが、努力家で大事なところではあまり失敗せず、卒業は間違いないと言われており、五年後くらいには危なげなく正式に導師となり順風満帆な生活が待っている予定。

ベリーに教えてもらった手法を早速様々な術式に組み込んで、ライバルと言うべき周囲に見せびらかしており、成績を競うライバルに見せてどうするのかとカルシェを呆れさせているが、常のことと口出ししていない。


とても誰かに似ている。


☆戦闘指揮

その気になれば小屋程度はすぐさま破壊でき、術式刻印の速度も非常に早いため、燃費を考えず雑に魔法を使うならば導師クラスの実力。

年齢から考えずとも非常に優秀だが、平和な環境に生まれ育った彼女は殺人に忌避感があり、対物はともかく対人の魔法行使は精神的に難しいのが問題。

運動神経の鈍さもあり、接近戦での魔法行使の訓練となる白兵実習では下から数えた方が早く、基本的に戦闘に向いていない。


外見:金の長い髪。青の瞳。小柄。胸控え目。かわいい。

→クリシェ:すごく可愛い後輩……アルベリネア!?

得意:術式刻印。暗記。努力。寝相と間の悪さ。

好き:アルベリネア。睡眠。風呂。勉強。美人。猫。

嫌い:理不尽。馬鹿にされること。運動。

悩みごと:体を使う白兵実習。




○カルシェリア 『混沌・中立』

さばさばしてるようで面倒見良い系女子。ヴァーナシュテル家令嬢護衛。猫人。

ミーの三つ上で、幼い頃は共に育った姉代わり。

彼女の側仕えとして幼い頃から教育され、肉体拡張や体術他、護衛として必要な訓練を受け、使用人としての作法などあらゆることを叩き込まれている。

魔法の類は学んでいないがそれを察知する術は学んでおり、魔力感覚に優れる猫としても魔力の感知能力、感知精度が非常に高い。

意識しなくとも魔術師かそれ以外かを判断でき、視線に宿る魔力さえ感知する護衛としてはこの上ない逸材であり、年齢不相応に高い実力とミーの希望もあって、アルベナリアに護衛として同行した。

やるときにはやるがやらないときは全くやらないタイプで、不器用な割りに何かと几帳面なミーを怒らせることが多く、大抵怒鳴られているが、何かと気を使う屋敷とは違い、ミーと過ごす学院での生活は気に入っている。


二人と出会ってから、時折『気高き鷹の館にて』を最初から熟読してみようと努力するも、いつも三ページ目辺りの『使用人を志したアーネの奮闘記録』で面倒くさくなり、まともに読んだことはない。


すごく誰かに似ている。


☆戦闘指揮

肉体拡張に長け、猫の中でも特に秀でた天性のバランス感覚を有する。

相手の肉体拡張による魔力の揺らぎを感じ取り、挙動を読めるほどに感覚は鋭敏で、並の達人程度であれば返り討ちに出来る程度の実力者。

魔法を用いる魔導師に対しての対処法を叩き込まれており、前述の魔力感知能力と合わせ、魔導師に対しては非常に強い。

訓練の際、捕らえた賊を殺す精神訓練も受けており、いざとなれば殺傷も視野に入れることが出来る。

うさちゃん流を汲む剣術流派を修めており、個人としては非常に高い戦闘技能者。


外見:黒く長い髪。茶の瞳。標準的な背丈で細身。胸大きめ。秀麗。

→クリシェ:うさちゃん。

得意:体術。護身術。剣術。周辺警戒。逃走。

好き:昼寝。サボり。子供。

嫌い:耳や尻尾を引っ張られること。

悩みごと:添い寝をして欲しがる癖にどうしようもないミーの寝相。

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