※ちょっとした設定紹介


■――設定

○統一歴1300年代における知識。



○魔力

 太古の昔から存在する力で、体内や大気を漂う不思議な粒子。

 生物の意思に反応し、半物質的な霊質という形態を取る。

 通常大気の中を漂っているが、時に液体のようにまとまることもあれば、地中では結晶化し魔水晶と呼べる形態をとるなど、その性質に関して現在でも多くのことはわかっていない。大気中では散逸し、安定した水や土の中では引き合うような動きを取ることが多いが、時にそれに反した動きを見せることもあって現在も多くの研究者を悩ませている。

 少なくとも物質に干渉、分解、生成する力があるように見え、しかしこれに関しても詳しい原理は解明されていない。

 研究者の中にはこれが重なり合った別世界から滲み出た力であると語るものや、世界そのものが魔力によって形作られているとの仮説を語るものが存在しているが、どれもその性質から見た推論の域を出ていない。

 天極によって大気中の魔力濃度が増大、クラインメール時代に多くの研究が行われており、集合無意識における影響が魔力や刻印、世界そのものに影響を与えている説が提唱されているが、魔力そのものに対する理解はそれほど進んでいない。




○術式刻印

 魔力によって空間、物質に干渉するための手段として持ちいられるもの。

 特定の紋様を刻むことで効果を発揮する世界への命令文と呼ばれ、魔術師が魔術や魔法を扱う際の基本となるもの。

 力学的運動エネルギーを発生させ、万象を操るための術式を魔力に刻印することで、様々な効果を発揮させる。

 現在は五代目アルベリネア(この発見によりアルベリネアの称号を得る)が発見した術式体系、地水火風の四大刻印に静動の二元刻印を組み合わせたものが基本となっており、アルベリネアやそれまでの魔術師が用いた始原刻印は魔導機械の製作や研究にしか用いられる事がない。

 理論上無限の記述、干渉を可能とするとされた術式刻印には、刻印限界と呼ばれるものが存在していたことも大きく、一定範囲を超えた刻印記述は術式に制御不能な乱れを生むことから、膨大な刻印を必要とする始原刻印は大規模な魔力行使に用いられなくなっている。

 アルベリネアや彼女から学んだ天才エルゲインストが刻んだ魔水晶の術式が極めて精緻かつ微細なことから、当時からこの問題は存在していたと考えられ、大陸中の手記に残る『天変の大法』を除いて大規模な魔法が行使された例も存在しない。

 その後大々的な見直しが行われた結果、四象二元の刻印発見に到った。

 現象としての火が組み込まれていることや、始原刻印と比較した際の著しい効率の上昇から、物理現象や魔術師に無理解な人々の信仰が集合無意識として法則に影響を与えたと一部では考えられており、ただでさえ不可解な魔力というエネルギーへの謎が深まった。




○根源

 学者達の一部が唱える架空の存在。

 世界の深奥には莫大な魔力の塊があり、そこから溢れた飛沫が我々の世界に滲み出ているのではないかと語られているが、証明はされていない。




○魂

 信仰の一種。

 生まれ変わりや楽園に到る生物の本質と語られており、多くの研究者がその究明を目指していたが、実在が証明できず、魔力ですら捉えられない非科学的な信仰に過ぎないと語られている。




○魔力保有者

 魔力を体内に持たない生物はいないが、その中でも肉体が変質するほどの魔力を帯びた生物をこう定義する。基本的には人間を示すが、広義の意味では魔力を帯びた獣、魔獣もここに含める。

 魔力保有者と呼ばれる生物は前述の通り肉体が変質しており、体内では魔力による霊質の内臓が存在していると言われている。これが体内に入った食事や老廃物を魔力に分解、変換し――その結果彼等の体は排泄行為が行なわれなくなることなど、一般的な生物からは肉体的な変化がある。

 魔力が肉体に与える影響は大きく、基本的に老化は緩やか。彼等の肉体は青年期に成長が一度止まり、30を超えてから緩やかに老化していくことが多い。ただ個人差も大きく、時には50を超えても変わらぬ姿の人間もいたとされる。

 また病にも罹りにくく毒物や酒精にも耐性があるなど、魔力保有者は通常の個体に比べ強靱な肉体を持つ者が多く、基本的には通常個体と比べれば生物として優れた存在であるという見方が強い。

 反面その代償と言うべきか、基本的に魔力保有者はそうでないものに比べ不妊を患うことが多く、ほとんどが魔力保有者となる貴族の出生率は低くなる傾向がある。

 片方が魔力保有者でない場合この傾向は弱まるが、特に貴族の魔力保有者は老化が早く排泄を必要とする彼等に生理的な嫌悪を抱く場合が多く、このような婚姻は基本的に好まれない。

 周囲の魔力濃度が魔力保有者の誕生に与える影響は確実なものと考えられており、天極設置、天変の大法以降、魔力保有者の比率が大きく増えたことが文献から明らかになっている。

 特に天極から生じた世界樹の周囲で生まれる魔力保有者の比率が極めて高く、クラインメール中期から末期に掛けて生じた魔術師至上主義――魔力保有者を進化した人類として考えた思想の原因と語る学者も多い。

 事実として魔力保有者は子孫を残す能力を除いて、非魔力保有者を上回る能力を持っており、声高には騒がぬまでも非魔力保有者を獣と変わらないとする魔力保有者は現在も存在している。

 



○魔水晶

 魔力が地中で結晶化し生まれたと言われる、水晶に酷似した結晶体。

 物理的性質は水晶に近いが、この水晶の内側では体内のように魔力を扱うことができ、ここに魔術式と呼ばれる紋様を刻み込むことで魔力による様々な物理干渉を可能とする。

 光源となり、熱を発し、あるいは冷やし、水を引き寄せ――場合によればエネルギーを放射し物体を燃焼、破壊することも出来るなど用途は様々であるが、魔力効率の面から武器として活用されることはあまりない。

 過去には大々的な研究がなされていたが、軍事転用が効率の面で難しく、現在は魔術師と呼ばれる一部の研究者達が個人研究で新たな術式を発明、考案するに留まっている。

 彼等は生活用品としての魔水晶作成を専門とした魔導技師としての側面も強く、現在では魔術師と魔導技師は混同されることが多い。

 体内や魔水晶以外の場所で魔力を操作、作用させる技術――『魔法』が発明され、相対的に価値は下がったが、現在においても術式の記録媒体として多用され、純度の高い大型の魔水晶は高値で取引される。

 純度の高い人工魔水晶も存在するが、大量生産は出来ず、大きさによって値段が跳ね上がるため、大型の魔水晶は採掘の天然品が用いられる事が多い。




○アルベリネア

 始原法術師として語られる魔法刻印者――魔導師の祖。

 エルゲインスト=ラミルは彼女の残した様々な魔水晶から魔法の存在を見いだし、研究を重ね、その技術によって千年の安定を大陸に築いた。

 クラインメールにおいてアルベリネアは偉大なる魔術師の象徴であり、魔術史上に残る多大なる功績によってアルベリネアを名乗ることが許される。クラインメール時代、この名自体に何らかの権力が与えられていた訳ではないが、慣習的に全ての魔術師達の頂点に立つ存在として敬意を向けられ、結果的に高位の地位に就くことが多かった。

 クラインメール崩壊後の現在、アルベリネアは魔導学院の頂点、その時代最高の法術師に与えられる称号となっている。




○魔術師

 魔力を操るものの総称。

 魔導学院ではクラインメールからの区分けを取り入れ、魔導学院より認定された一定の実力を示す人間を魔術師と呼ぶ。かつては魔水晶ではなく、魔法刻印を行えるものとの間で魔術師、魔導師と区分けされていたが、魔法刻印自体が一般的になったことで、どちらも単に魔術師と呼ばれている。

 そしてそれを教え導く力量を持ったものを導師、そして導師の中でも国家の力関係を左右するほどの力量を持ったものを大魔導。法術師はその頂点であり、アルベリネアの称号と共に与えられる。

 魔導学院の格付けは導師や大魔導の数で行われることが多く、アルベナリア魔導学院が現在、最高位の魔導学院として連合から認定され、非常に多くの導師と大魔導が同時に在籍することを許可されている。




○仮想筋肉

 魔力保有者が用いることの出来る魔術の一種。

 肉体拡張とも言われ、魔力による身体能力強化を示す。

 霊質の肉体を自身に重ね合わせるよう構築することで、体を操り、筋力を増幅させ高い身体能力を手に入れる技術であり、魔力保有者であれば無意識に扱うこともあるなどこれ自体はそれほど高度な技術というわけではない。ただ、これを意識的に使いこなそうとすればするほどに高い集中力と精神の安定が必要となり、難易度が格段に跳ね上がる。

 場合によればその高い身体能力を御しきれず、その反動が自らを傷つけるなど諸刃の剣にもなり得るだろう。特に戦闘という極限状態でこれを自在に操ることは熟練の魔力保有者であっても難しく、これの操作技術こそが魔力保有者としての価値を決めると言っても過言ではない。

 戦場に立つ魔力保有者は肉体を鍛え上げ筋肉の鎧を纏うことが多いが、その理由の大半はこうした反動を受け止め、過剰な力を制御するため。時にはその安定のため常人では身につけられないような重量の甲冑を身につけることも多いが、むしろこれらの努力がその身を理想から遠ざけているのではないかと見る武人も多い。

 現在においては原始的魔術としてそれほど主流でなく、魔力操作の基礎として学ぶ他は、自衛手段の一つとして一部の魔力保有者が学ぶ程度のものとなっている。

 



○魔獣

 魔力保有者の獣。

 多くは現存の生物が魔力を持って生まれたもので、基本的には元となった獣と比べ大型のものが多く、その体色は青味を帯びる傾向にある。

 彼等は例外なく魔力を操る術に長け、その体躯と合わせ生まれる身体能力は人間の魔力保有者とは比べものにならず、魔獣は世界的にも恐怖の存在として、あるいは土着の神として畏れられることが多い。

 人間の魔力保有者が大型化しない理由は不明であるが、意思が魔力に影響し、それを無意識に抑えたのではないかと考える研究者がおり、その見方が比較的一般的なものとされている。

 魔獣は例によって長寿と思われるが、その危険性から検証はなされていない。

 虎、狼、鷹、猪など、比較的山や森に生息する獣の魔獣が多いが、それ以外の例も散見され、あらゆる獣から魔獣が生まれる可能性がある。

 海路での事故に関しても魔獣によるものがあり、その対策には多くの海洋国家が力を注いでいる。




○幻想界

 民間信仰において語られる世界の一つ。

 レイネの天国などもこの一種であり、この世とは異なる別世界であるとされている。基本的に架空のものであり、実在を信じるものはいない。



○竜

 古竜、聖霊とも呼ぶことがある。

 かつて世界を支配したとされる知恵ある獣であり、特筆すべきはその膨大な魔力と巨体であろう。城砦が如しと言われる体躯に鉱石の如き鱗、その魔力は魔獣などとは比べものにならないと言われ、竜の咆哮は地形を変えると古い記録に残されている。

 遥か過去に起きたとされる竜達の縄張り争い――竜戦争では無数の竜が暴れまわり、それに巻き込まれて多くの文明が滅んだと伝えられており、かつて栄華を極めながらも竜の怒りを買い滅ぼされたルシェラン帝国の名は有名だろう。

 しかしこの数百年空を飛び回る竜の姿を見たという記録はないため、竜に関する逸話は単なる寓話の一つとして見られることも多く、一部地域では今なお信仰の対象とされているがその実在や能力に関しては疑念を抱くものもいる。

 その血肉には強い力が宿るとされ、それを食らった人間が強い力を得たという伝承が多く残されており、その体は一種の霊薬として扱われる。

 クラインメールの竜狩りによって二頭が狩られたが、その後の逆襲による被害は甚大で、竜の恐ろしさを再び知らしめた。

 狩られた竜の血肉の多くは魔力と化して霧散し、魔術的に保管された一部が不老不死の研究などに消費されたが、その過程で多くのものが死に、その研究に成功し不老に到ったとされる六代目アルベリネアも竜の狂信者、『聖霊教団』に暗殺されたことでその秘術は失われた。

 絶大なる力を持った四代目アルベリネアが就任から三十年でクシェナラースを前に呆気なく命を落とし、四象二元の刻印を発見した五代目アルベリネアも結果的に五十年足らずで死に、偉大なるアルベリネアを立て続けに二人失った魔術師の中では、竜に関わることへの恐れが生まれ、その研究には少し消極的になった。

 その後、彼等と同じく寿命が存在しないとされる魔獣の研究による不老を目指し、後に亜人を生み出す事になる。



――以下すごいネタバレなので注意。




















































●ベリーの脳内メモ。

●魔力

 根源と呼ばれるエネルギーから生じたもの。

 多次元を不規則に揺らめく根源の飛沫。物質世界はこれが生みだしたものと見られ、永遠と呼ぶべき時間の中で、根源が不規則に生み出す飛沫によって様々な偶然が重なった結果、物質の時空、物質世界が生まれたと考えられる。

 奇跡に奇跡を重ねるが如き偶然とはいえ、可能性がある限り、無限の試行回数を重ねれば必然になり得るもの。当たらずとも遠からずだろう。

 世界は根源の飛沫から作られたもので、そして魔力とは根源の飛沫である。

 そうであるが故、魔力はあらゆる次元を移動し、あらゆるものを変容させてしまう力を持つと考えれば、色々としっくり来る。

 魔力自体には緩やかに引き合い、密集しすぎると弾ける以外にこれと言って法則は存在せず、物理的な時間を止めても根源世界からの影響を遮断しない限り、完全な静止状態に置くことは出来ない。

 一般的に不可解とされるその軌道は、無意識の影響や物質世界ではなく根源世界の魔力との間で引力や斥力が働いているためで、根源世界を観測できなければその法則を完全に理解することは不可能――魔術師達が難儀する訳である。




●術式刻印

 魔力による世界改竄を行うための法則文。

 魔力によって形作られる世界に挿入、書き換える式であり、理論上考え得る限りの全てを自在に改変することが出来る。

 魔水晶に頼らない魔法の発明とその後の発展、竜狩りの問題から、今後人類が加速度的にこれを発展させることが間違いなく、惑星崩壊に繋がる恐れから、当時魔術師の一部で唱えられていた四大元素論を元にした簡略刻印の導入が決定された。

 世界全体を書き換え、術式刻印に限界を設けるものであり、一定の範囲を超えた大規模な記述に対し術式の乱れを生じさせ、抑制。

 特定の刻印により本質世界から効率的な空間、物質への干渉を補完する自動簡略化機構『ふよぴた』(クリシェ様らしい命名である。響きが可愛い)を構築することで術式刻印を制御、同時に根源に到る次元干渉を事前に封鎖している。

 現在、もしも悪い宇宙人がいても大変なことをできないようにと『世界の果てまで安心ふよぴた網計画』が進行中であり、夥しい仮想頭脳が根源世界の彼方へ自動増殖、ふよぴた網を広げている。

 宇宙人がいたりするのでしょうか、といつぞや自分が語ったせいだろう。クリシェ様の前ではあまり滅多なことを言ってはいけないと改めて思った。




●根源

 根源世界と呼ばれる領域に存在する莫大な魔力塊。

 元となったものがどうして生まれたかは不明ながらも、この根源さえ元々は更に巨大な根源――『始まりの根源』の飛沫やその一部であると考えられる。

 その始まりの根源がどのように生まれたかについては今も分からないままだが、きっとこの先も分かることはなく、それで良いのだろう。

 『世界の果てまで安心ふよぴた網計画』によって、その規模や状態に差異あれど他にも根源の存在が確認されている。物質世界においては月や太陽のような各天体と繋がりがあるらしいが、物質世界の理屈しか分からない自分には、根源世界の構造や法則については難しく、理解が出来ていない。

 紙の上の住人には、紙の上のことしか分かるまい。非常に難解で、多分理解が出来るのはクリシェ様とクレシェンタ様くらいのものだろう。

 このことについて気になり尋ねると、クレシェンタ様に馬鹿を連呼されても言い返せないのが少し悔しく、なるべく尋ねないことにしている。

 ともあれ、ふよぴた網は各根源から魔力を補給しつつ、その途方もない目的のため、今日も元気に根源世界の彼方へとその網を伸ばしているらしい。




●魂

 生物の本質。

 偶然ジャレィア=ガシェアが出来上がるような途方もない試行の果てに、根源の飛沫から誕生したのが魂という存在でないかと考えられる。

 その一部が物質世界に滲み出て生物を形作り、あるいは生物に入り、捕食と自己複製を繰り返しながら進化。根源と物質世界における『魂の循環』が確立し、複雑化し、結果的に人間を生みだしたのではないか――と思うが詳しい事は分からない。

 少なくとも生物が自在に魔力を掌握、操作することが出来るのは、根源世界で生じた魂という存在が、それを前提に進化したためであろう。

 基本的には物質的な器となる生物と重なり合った状態で存在するものであり、肉体の魔力比率が高い魔力保有者においては特に、その意識や思考を脳ではなく、魂が主体で司る場合もあるようだ。

 肉体的な死を迎えると根源に引き寄せられ、一体化。基本的に器がないと不安定だが、その意思の強弱によっては魂を保ったまま根源の飛沫として弾き出されて、いわゆる『生まれ変わり』に繋がる場合もあるらしい。

 ただ、その仕組みに関しては神秘のままで良いと思え、その解明は特に行わないことを彼女達と決めた。

 未知を知ることは楽しいことだが、それが愚かで無知な楽しみに勝るとは限らない。




●魔力保有者

 生物として通常の物質、霊質の比重に対し、霊質が優勢を取った場合に生まれると考えられる生物。魔獣もここに含め、魔力濃度の高い幻想界では非常に多い。

 魂そのものの密度や大きさも影響にあると思われるが、前述の通りその解明は行っていない。

 霊質の比重が高いため、魔力との親和性も高く、理論上は肉体の完全な魔力的掌握により不老で過ごすことも可能である。消えるまでの自身の肉体も竜の血でより霊質に近づいていたと思われるため、上手くそれを処理して生き残ったならば、自分はそのまま老いることもなかった可能性が高いだろうと語るとお嬢さまに怒られた。少し理不尽に思う。

 現在の肉体も単に霊質の比重が完全になったものであり、それほど離れた存在ではない。クリシェ様の意図もあって、以前と変わらず欲求が存在し、暑さや寒さを感じ、五感も確か。日々の生活も変わらない。

 その気になれば睡眠の必要がない体に出来るだろうに、眠気を飛ばせるだろうに、相変わらず朝には不機嫌に文句を口にするクレシェンタ様を見ると、その不便な体で送る日常を心の底から愛しているのだと思えて微笑ましい。

 何もかもを自由に出来る彼女達はきっと、その不自由さの中にこそ幸せを見いだしたのだ。

 


●魔水晶

 魔力が反発することなく、緩やかに結合し、安定した結晶体。

 人の意思に干渉される魔力の性質上、人里から離れた土地や地中で生成されることが多い。竜の咆哮などの莫大な魔力の残滓が結晶化することもある。

 普段過ごす屋敷周辺には魔力の乱れもあって生えないものの、基本的に幻想界では非常に結晶化しやすい――というより、地面に生えやすい。何度かお嬢さまが建てた小屋や別荘を貫き倒壊させたことから、定期的に床下を確認する仕事が増えた。

 ぐるるんは魔力の結晶と言える魔水晶が中々好きであるらしく、おやつ代わりに与えるとすごく嬉しそうにかみ砕いて飲み込む。味はしないが、何かの料理にでも使えるだろうか。




●アルベリネア

 クリシェ様の事。天剣――本来は戦士の爵位であるが、現在は魔術師の名誉称号となっているらしい。ミーデリアリーゼ様の話を聞く限り魔術師における神様のような評価であるが、クリシェ様ならばある意味、必然であるかも知れない。

 現在は平和に、魔導学院なる魔術や魔法を学ぶ学校で一番偉い人がアルベリネアを名乗っているらしい。とても良いことだ。




●魔術師

 現在は魔術を操るものの総称と言うべきだろう。広義では魔力保有者自体そのように魔術師と呼ばれることもあるらしい。

 狭義では魔水晶に術式を刻印できる、最も下位に位置する階級。魔法を操る事が出来れば魔導師、特に優れた魔導師を法術師と呼ぶそうだ。

 色々とあるようだが、地方や地域によって呼び名は変わるようで、あまり詳しくは調べていない。

 魔法は昔の想像通り、凄まじい力を個人に与えた。

 そのためアルベナリア魔導学院のような大きな魔導学院は一国家ではなく大陸連合が所有し、各国から才能ある魔術師を集め、教育、分散させることで国家間のパワーバランスを守る役割を担っているようで、現在の均衡はこれによって上手く成り立っているようだ。

 なるべく関心を持たず、関わらないことを決めているとは言え、争いが起きているよりは平和な方がずっと良い。

 人は競うもの。この先、争いが消えてなくなることなどないのかも知れない。

 けれどこのような平和のための試みが、長く続けば良いといつも思う。




●仮想筋肉

 流石に体の一部となっており、使っていることも忘れていることが多い。

 



●魔獣

 魔力保有者の獣や人々の無意識から生み出された存在。

 人間の想像したものかどうかはともかく、竜も広義の意味ではここに入るだろう。

 地上では竜が最大と言えるが、海の中には島のような大きさの魔獣もおり、深海観光旅行は奇妙な生物を見られることもあって楽しみの一つとなっている。

 知能の上では基本的に同種のそれより賢く、中には念話によって簡単に意思を伝えるものも存在する。とはいえ本能に生きるものの方が多く、巨大化するのも基本的には自己防衛本能と捕食に由来するものと考えられる。

 人間が巨大化しないのは当時から語られていたとおりであると思われるが、魔力保有者の武人は大柄な人物が多く、その影響は多少あるのかも知れない。

 分からない振りをしつつ、こちらの言葉を大体理解している様子のぐるるんは、これ以上大きくなったら餌を減らすと告げられてからぴたりと成長が止まった。

 やはり願望による要素は中々に大きいのだろう、と考えると面白いもの。

 もしかすると自分やクリシェ様が随分若く成長を止めた理由の一端もそこにあったのかも知れない。自分は色々口にしながらも姉に甘えられる妹でありたがったし、クリシェ様もそうだろう。もしかすると、クレシェンタ様も。

 背伸びをしながらも、人間どこかで追い越したくないものはある。

 そんなことを考えると、色々なことに色々な事情が想像できて、少し楽しい。




●幻想界

 物質世界と異なる位相に作られた世界。

 コインの表と裏と言うべきか、コインの内側と言うべきか。あるいは金のコインを青に捉えるものと言うべきか、絵画に被せられた薄いヴェールの世界と言うべきか。物質世界との関係はそのようなもので、ズレた隙間に作られた場所と言える。

 根源に近いがあくまで物質世界であり、単純に語るならば物質世界より魔力密度が非常に濃く、その影響を強く受けやすい世界だろうか。

 この体に全員慣れた今はともかく、不老不死を叶える半霊質の肉体は物質として安定した肉体ではなく、魂による掌握がなされていなければ崩れやすいもの。それを補助するため、魔力が濃く、意思の影響が強い世界として作られたもので――クリシェ様やクレシェンタ様のような、肉体を魔力で完全掌握する術を自分達に学ばせる場所として考えられたのが始まりらしい。

 最初の数年ほどはクリシェ様が体のことをあれこれ心配していたことは今も覚えている。慣れた後は特に問題なく、物質世界にも出歩けるようになった。

 異なる位相の存在であるためか、あちらではこちらが意識しない限り気にされず、認識されにくい。例えば挨拶しても、挨拶をされたとあちらの人は感じるが、その相手がどのような人間であったか印象に残らず、中々思い出せもしないらしい。

 さながら夢の中の住人のようなものだろうか。

 ぐるるんが街中を荷馬車を引いて歩けば誰もが避けるように脇に寄るが、あの巨体が見えているはずなのに誰もその存在を意識しないのだからすごいもの。

 ただ、人間でなく勘の鋭い動物などの一部は他との違いが分かるようで、猫や犬に威嚇されることがある。後は死に近い人達や精神的に極限の状態にある人にも分かることがあるようで、山の頂上や海の上、砂漠などを旅行したり宴を開いていると、時折そういう人に出くわすことがある。大抵遭難者や修行者で、神様や何かのように扱われることが多く心苦しいのだが、言い訳としては便利で良い。実際、クリシェ様やクレシェンタ様はそのような存在に近いと言える。

 幻想界そのものに入ってくるのは魔獣くらいのものだが、クリシェ様のお知り合いという方が一度訪れたことがある。何でもアルベラン王国の後――今では千年帝国と呼ばれるクラインメールを作った人だと言うのだから驚きだった。

 もう一度クリシェに会って褒めてもらいたかっただけらしいです、とクリシェ様は仰っていたが、思いついて容易く来られるような場所ではない。

 彼にもきっと色々な想いがあったのだと思う。ただ、話を聞く限りとても幸せそうで、その些細なやりとりだけで良かったのだろう。

 屋敷の近くには、今も彼の墓がある。




●竜

 恐らくは精霊や一部の魔獣と同じく形なく生み出された存在で、その神と呼ぶべき絶大な力はまさしく、竜が神として作られた存在だからではないかと考えられる。

 生物としてはあまりにその枠を超えているように思え、天変地異を引き起こす自然への畏怖が根源の大きな飛沫で形になったものと考えるのがしっくりと来ると思えた。仮にそれが人でなくとも、死への恐怖は獣にも共通するもの。

 問われた時に考え答えてみたが、反応はなく、次に来た時には別の話をされ、しかし三十年ほど経った後、唐突に悪くない答えであると真名を許された。

 竜の時間感覚は今も良く分からないが、少なくとも納得がいったのだろう。

 瞬間的な思考速度自体は意外に人とそれほど変わらず、大きく異なる点はクリシェ様やクレシェンタ様のような飛び抜けた記憶能力にあると言える。

 些細な事でも忘れることがなく、随分と過去のこともつい先ほどのことのように覚えており、三百年前のちょっとした話の続きを昨日の話の続きと言わんばかりに口にされた(喉から発声する訳ではないが)時には流石について行けなかった。

 その場その時の欲求に忠実なクリシェ様達(時々犬っぽい)とは異なり、動物的な欲求が存在しない(実際目を閉じても眠っている訳でもないらしい)せいで過去と現在が曖昧であるのかも知れない。

 気まぐれに見える思考は恐らく、そうした記憶能力の高さからくるもので、竜の中では特に問題視されておらず、普通のことなのだろう。

 その関係から盤上遊戯などでも時間を掛けて楽しむことが多く、まともに付き合うと信じられないほどの長考が繰り返される。リナセラ様は特に長いが、そういうものとして諦めて見れば、ある意味気楽に思えてきた。

 ただ、毎回自分で考案、数多の定石を手にした新しい複雑な遊戯を使って勝とうとするのはちょっとずるい。

 しかしそうして複雑になっていくほど、長考するリナセラ様では一日の思考時間が短く、むしろ自分の首を絞めていくことには気付いていないらしい。複雑化させるほどこちらに不利と上手く誘導できれば、いつになるか分からない最終戦を自分の勝利で気持ちよく終えることが出来るだろう。

 物事の過程は大事だが、勝負はやはり勝つ方が気持ちいい。











↓強さに関する質問結構多いので適当に比較表。苦手な方は見ない方が良いかも知れません。






































■強さ比較

わりと雑なふわっとしたものなので目安程度。

殺傷前提。初見。距離二十間。遮蔽物無し。完全武装前提。魔法除外。逃走不可。お爺ちゃん勢は登場時。

○>○は大体6:4くらい。

階級が違うと一対一ではまず勝てない。

ただ、同級ならどれだけ離れていても勝機はゼロではない(場の雰囲気で勝てる


1,クリシェ(とてもクリシェ)

※今年のクリシェ>※去年のクリシェ>※一昨年のクリシェ>※その前の(


2,怪物(戦場無双)

※初陣クリシェ>※剣聖もしゃ>お屋敷セレネ・※シェルナ>にゃん>ギルギル・ぴよ・ザルヴァーグ・アルフマーズ>わん・※アレハ・ゲイン>ワルツァ(両腕)・※レド・※統一カルア・ヴィンスリール・ボーガン・ニトリアス>カーネザルド・ヴェルヴァス・キルレア>※村クリシェ


3,超人(翠虎とまともにやり合える)

ナキルス・ダグレーン>フェルワース・オールガン・バズラー>ベーギル・エルカール・トーバ・リンカーラ>統一セレネ・※ガイコツ>※翠虎>テックレア>ワルツァ(義手)・五大国レド・五大国カルア>ダグリス>グラン・ビーナル・ガル


4,猛者(猛者って呼ばれる)

ボーガン(始まり)>ノーザン(始まり)・内戦カルア>内戦セレネ>ゲルツ・クラレ・テリウス(将軍中央付近)>※クレシェンタ(剣習得)>アルゴーシュ・ハゲワシ>キリク(くろふよ・百人隊トップ層・軍団長中央付近)>カルシェリア>>>※ガーレン(非魔力保有者の怪物)・※ベリー(自称嗜み程度)


5,魔力保有者(戦闘訓練受けた魔力保有者)

※初期クレシェンタ>バド>ラヌ(非魔力保有者最上位)>くろふよ中堅(大隊長中央付近)>黒の百人隊中堅(百人隊長中堅)>巫女姫(嗜み程度)>ミア(くろふよ下位)>ヴェーゼの狩猟隊中堅・ザール(訓練教官中央付近)>初登場セレネ


6,腕自慢(戦闘訓練受けてない魔力保有者)

軽装歩兵>エルヴェナ(センスある素人魔力保有者)>>王国一般兵>ペル・他国一般兵>ミーデリアリーゼ(センスない素人魔力保有者)


※は特に技巧や経験、思考能力的に初見殺し属性。

総合的能力に勝る相手からも油断を誘って勝ちを拾いやすいがもちろん強弱有り。

同階級で初見ならば大体優位に立てるが、油断を一切しないタイプ(にゃんにゃん等)には実力相応。ただ、そういう人間は稀。

一時期本気でロランドを殺すため鍛えてたベリーは普通に強かったりする(暗殺者ベリー

グランメルド、ナキルス、エルカールなどは対集団戦に特化してるので条件的にはちょっと不利な評価。軽装の人も基本的に不利。

翠虎の強さは野生動物としての潜伏性や速度を活かした奇襲能力にあり、怪物クラスも普通に狩れるが本体能力としてはこの辺り。


ランク付け的に怪物はやっぱり怪物で超人は超人。

一般的には3のグループに入るような人間は類い希な素質の持ち主か、運に恵まれ莫大な経験を積んだ人。

大体の人間は血の滲むような努力して4のグループが普通というか、ここに入る人間は一般軍人的には相当やばい(一兵卒から叩き上げの将軍でさえここ)のだが、お話の都合上名前持ちキャラは2,3がわりと多い。

こういうものは物語的な偏りというべきか。

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