人物紹介――クリシュタンドとくろふよ ※ネタバレ含む


・属性

秩序――規則と規律、普遍的概念を重んじ、整えられた社会と法を重視する。

混沌――個人とその感情思考を重んじ、社会的規律、道徳よりも意志を重視する。

中立――中間。


善――利他的気質。自身の利益よりも自分の信じる道徳を重要視し、それに殉じる。

悪――利己的気質。自身の利益を重要視し、そのために他者を蹴落とすことを厭わない。

中立――どちらにも振れない中庸の気質。



・王国貴族の名前の見方

例:1,ギルダンスタイン=2,カルナロス=3,ヴェル=4,サーカリネア=5,アルベラン

1,名前:ギルダンスタイン

2,管理する地域の中で最も大きな土地:カルナロス。

本来は管理地域全てが入るため非常に長く、簡略化される。

3,王位継承権を持つ男性の王族はヴェル、女性の王族はヴェラ

4,名誉爵位:サーカリネア

5,姓:アルベラン


正式には4と5の間に元帥や将軍などといった軍階級、宰相など王宮での役職を示す言葉が入ったり姓の後に大公爵などといった爵位を示す言葉が入ったりします。

ただ、既に横文字が長くて目が滑るので、文中ではわかりやすさ重視でその都度必要な階級役職を末尾につけ漢字表記しています。


基本的に姓以外は必ずしも子供に継承されるものではないですが、特に問題ない限り慣習的にその嫡子が土地や爵位を引き継ぐことが多いです。

ただ、戦士としての武功を示す4の名誉爵位だけは引き継がれません。


姓を持たない人間がネア=準騎士の略式叙勲を受けた場合、大抵は出身地を名乗る場合が多いです。

(例)ガーレン=ネア=カルカ。


・プロフィールの身長ワード

男性平均175cm前後、女性平均160cm前後くらいな設定です。

無記入:平均的身長

中肉中背:平均的身長

長身、大柄:平均より10cm程度高い。男性の場合六尺と書かれれば180超え。

小柄:平均より10cm前後低い。

比較的:平均値から見て長身/小柄は下振れ。

非常に:平均値から見て長身/小柄は上振れ。


・身長   大体   曖昧な想像

クリシェ 140後半 147

ベリー  150前半 152

セレネ  150後半 159

クレシ( 140後半(ま、まだ成長は終わってないですわ!) 

カルア  160後半 168~9

ミア   150後半 158

エルヴェナ160前半 161~2

アーネ  >160< >160<

リラ   150後半 157

ミーデリ(150半ば 156

カルシェ(160前半 163






○終章終わりまで生存

●終章終わりまでに死亡


●ボーガン=アルガリッテ=ヴェズリネア=クリシュタンド 『秩序・中立』

高潔果断な英雄系男子。セレネの実父。ベリーの義兄。故人。『迅雷』。

落ちぶれた男爵家であったクリシュタンド家を一代にて辺境伯の地位に押し上げ、兵長から将軍へ成り上がった王国の英雄。

叩き上げゆえに軍の様々な問題点を知っており、一人の軍団長に対し戦術的頭脳優れた複数の副官を与え処理の分担化を行ない、その能力水準を高めることに成功した。

苛烈な攻撃と段階的な戦術後退、華やかな戦術に定評があるが、クリシュタンドの強みはその場の戦術ではなく、事前準備による情報処理能力の高さにあると考えている。


今でこそ落ち着いているが若い頃はよく無茶を行ない、最前線にて剣を振るうことを好む戦士。

その荒々しい剣技によって無数の敵をなぎ倒し、突き進む姿から兵達に『迅雷のクリシュタンド』と呼ばれていた。

貴族には珍しく死んだ妻に操を立て、妾を取っていない。


王弟ギルダンスタインとの一騎打ちの果て死亡する。


△歴史上

セレネ=クリシュタンドの父であり、参謀部構想の大枠を作った先駆者として知られる存在。

当時の戦争記録や手記に姿を現すことが多く、アルベラン末期における英雄としても有名であり、彼を讃える歌が複数残されていることから、部下や民衆からも非常に人望高い存在であったことが窺え、敵国の人間からも強く恐れられた。

セレネ=クリシュタンドが残した本にも彼について多くの記述があり、決して超えることの出来ない偉大な父として記されるが、彼自身の手記などは発見されていない。

多くの戦場で多大な功績を挙げ、下流貴族から一代にて辺境伯にまで駆け上がり、王国四方、その北部を任せられるに到ったことから稀代の戦術家として有名だが、彼の本当の才覚は軍政にあったと言われている。

実力主義的人事配置と、下士官教育の徹底。

クリシュタンド軍は当時からその練度の高さが大きく評価されている。

将軍位に就いてからは自ら動くことなく方針を下し、戦いそのものは部下達に一任、彼等に大きな裁量を持たせることでその多大な戦果を挙げていった。

――戦場で将が示すべきは武勇ではなく、明確な方針のみであり、それを可能にするための能力を事前の段階で養わせることがその仕事の全てである。

セレネ=クリシュタンドは彼の言葉を多く引用しているが、内戦における父の死も突き詰めれば、その鉄則を守り切れなかったことに由来する、と明確に書き記した。

離反の工作により、竜の顎における戦いでギルダンスタインによって誘い出され、その負傷が原因で最期を迎えている。


クリシュタンド軍にあった部下達は彼の死後、多くが出世し多大な功績を挙げているが、名将ノーザン=ヴェルライヒをはじめ多くのものが史に名を残すべき英雄であるとして、晩年まで変わらず敬意を向けていた。

アルベリネアの才覚が内戦後に戦争を変えてしまったこともあり、大陸統一戦争ではなくアルベランで起きた内戦と彼等の死こそが、英雄の時代における最後の戦いであったと語る歴史家もいる。


★戦闘指揮

元々攻撃的気質の持ち主で優秀な前線指揮官であるが、妻を持ってからはそれを戒め、常に部下達の能力を最大限活かす指揮者であることを重要視。

個々の特質を見極め、彼らを利用した大胆な攻勢、後退により、味方の優位となる戦場の劇的な混乱と変動を生じさせることこそが一軍の将が成すことであると考えている。

それを成すためには各級指揮官の能力底上げが重要であるとし、百人隊長には大隊長の、大隊長には軍団長の視野を持つことが出来るよう、常に配下達へは一階級上の教練を行っていた。

引き際の読みが非常に上手く、不利な状況でも撤退戦で失敗を犯したことがない。


外見:白髪交じりの金髪オールバック。青の瞳。大柄筋肉質。精悍な強面。口ひげ。

鎧:鈍色鷹のプレートメイル。

→クリシェ:類い希なる才能を持つ麒麟児。歪だが優しい娘。

得意:ロールカ式剣術。組織構築。指揮運用。

好き:戦史。酒。娘。

嫌い:政争。過激派。

悩みごと:娘に見合うこれはと思える青年がいないこと。ベリーの貰い手。




●ガーレン=リネア=カルカ 『中立・善』

質実剛健な無愛想系男子。クリシェの義祖父。ボーガンの元上官にしてアルベリネア直轄軍副官。

かつては一兵卒から成り上がった才覚溢れる百人隊長であり、魔力素養を持たぬ身でありながらボーガンと共に数々の武功を挙げた傑物。

部下からの尊敬を集め、将来的に将軍を狙えるほどの実力を持っていたが、上官の命令で村を焼いたことを悔やみ軍を辞した。

その後は故郷であるカルカの村で狩人をしており、娘夫婦、そしてその養女クリシェと共に平穏な日々を送っていたが、賊の襲撃で娘夫婦を失い、結果的にクリシェも村にいられなくなったことで彼女と共に村を出てボーガンの下へ身を寄せ、軍へ戻った。

クリシェがクリシュタンド家で理解者と幸せを見つけられたことを何より喜ぶ苦労人。


周囲に先立たれていく自分に対し思うところがあったが、生き残ったからこその役目があると思い直し、努力を続ける。

最近は不器用なアーネの姿に愛娘の姿を重ねていた。


五大国大戦後も精力的に働いていたが、幸せそうに日々を過ごすクリシェにふと気付き、自分の役目が終わったと悟ると倒れた。

多くの大切な者に先立たれ、己の無力さに後悔を重ねた老人は、誰より大切な孫娘に見守られて旅立つ己の最期に満足し、微笑みながら息を引き取る。

本当は己の無力が許される日が来ることを、自分は望んでいたのだと。


△歴史上

アルベリネアの義祖父であり、ボーガン=クリシュタンドの元上官。

当時有名な百人隊長の一人であったが、上官との折り合いが悪く、それが原因で軍を退役。その後義両親を失ったアルベリネアをクリシュタンド家に養女として預け、クリシュタンド軍副官として現役に復帰した。

異例の出世であり、普通であれば批判されるべき身内人事と言うべきものであったが、クリシュタンド軍内でも敬意を向けられる存在であったとされている。

百人隊という小組織にてクリシュタンド軍の基盤を築いた存在として、セレネ=クリシュタンドも彼を強く評価しており、その柔軟な思考や視野の広さを指し『やはり父の師でありクリシェの祖父である』とその能力を称賛した。

老いた非魔力保有者でありながら、超人と呼ぶべき五人の魔力保有者を弓と小剣で返り討ちにしたという逸話から、優れた思考能力は老人すらを怪物に変えると彼女は語り、それを養うことの重要さを説いている。

アルベリネアもまた彼に対しては常に敬意と愛情を向けていたとされ、いくつかの手記に二人の仲睦まじい姿が関係について語られ、『気高き鷹の館にて』でも、アルベリネアは彼に対しては常に孫娘のようであったと語られている。

『気高き鷹の館にて』では登場回数が少ないにも関わらず、彼に用いられた文字数が異様に多い。試しに数えて見たところ彼女自身とベリー=アルガンの描写に次ぐ三位であったという研究結果が存在しており、彼がアーネ=ギーテルンスのお気に入りであったことはアルベラン研究者の共通認識となっている。


★戦闘指揮

決して無理をせず、深追いもせず。

敵の決定的不利を作り出すまで機会を待つ、狩人の性質を持つ。

撤退、後退、奇襲――狩人生まれの彼は正々堂々という言葉からは真逆、相手の油断や隙を狙った戦術を組み立てるのを好む。

兵を死なさず相手を殺す。

無駄な兵の損失を何より嫌うが、機を見た場合には一転捨て身の攻勢を行なう両極端な指揮者。

視野が広く、乱戦指揮に長ける。


外見:雑に伸ばした白髪。焦げ茶の瞳。筋肉質。無愛想な強面。

鎧:鈍色のハーフプレート。

→クリシェ:人とは少し変わってはいるが、善良で誰より優しい娘。

得意:弓術。指揮運用。森。逆境。自分を見失わないこと。

好き:酒。狩り。道具の手入れ。

嫌い:非道。

悩みごと:なし。



●ラズラ=クリシュタンド 『混沌・善』

鋼の精神力を持った運命論者系女子。クリシュタンド辺境伯夫人。ベリーの姉。

事業の失敗で没落したアルガン家の娘。セレネの母。

ベリーとは正反対の明るい性格で、意志が強く快活な女性。

正しいと自分が感じることであれば社会のルールすら気にせず突き進む破天荒な女性で、必要と感じるならば自分の身を犠牲にしても構わないと考えており、アルガン家没落時には商人や貴族達の悪意から幼いベリーを守るため迷うことなく自分の身を差しだした。

真面目で優しすぎ、自分を追い詰めるベリーに対してはつかず離れず、常に彼女の幸せを一番に考えている。

自分の先がないことを知った後もベリーが自分の後を追わないかを心配しており、セレネを頼んだのは親として子を思う気持ちも当然ながら、彼女に生きる目的を作る意味もあった。

二人目を死産し、その後産褥熱で死亡している。


セレネに似て不器用で、わりと大雑把。


△歴史上

ボーガン=クリシュタンドの妻であり、セレネ=クリシュタンドの母。また、ベリー=アルガンの異母姉。

快活で頭の切れる美女であったとノーザン=ヴェルライヒの手記に書かれている他、記録は残されていない。


外見:赤毛の長髪。茶の瞳。小柄。胸大きめ。秀麗。

→クリシェ:……誰かしら?

得意:屁理屈。論破。ルール破り。

好き:愛や信念などという言葉。運命。姉妹兄弟。

嫌い:金持ち。

悩みごと:セレネに妹や弟を作ってやれなかったこと。ベリーを置いて先に逝くこと。



●ぶるるん 『秩序・悪』

忠実な暴れ馬系男子。馬。

大きくてそこそこ体力がありそうという理由でクリシェに足代わりに選ばれた馬。

元々クリシュタンド軍所有、気性が荒くなんとも扱い辛い軍馬であったが、クリシェに随分と懐いたため現在はクリシュタンド家所有の馬となっている。

気性は乱暴と言うよりむしろ利口で落ち着いた方だが、触られ方や手入れの加減にこだわりがあるらしく繊細で、好き嫌いがとても激しい。

性格的に大雑把なセレネとは相性が非常に悪いが、丁寧に接すれば素直に良く懐くタイプ。

力も強く無尽蔵にも思える体力を持ち、飛ぶように走ること可能な名馬であるが、それが活かされる機会はあまりない。

気性的には軍馬と言うより早馬として用いられる方が適している。

よく世話をし王領内を散歩をさせてくれるベリーやエルヴェナがお気に入り。

毎年春の種付け祭りに出かけていた。


歳を取ってからは特に何事もなく、自分の子供達と散歩を楽しんで過ごし、その内に息を引き取る。彼の子孫は彼に似てよく走り、セレネが馬に乗らなくなると他の貴族達に譲られ、喜ばれた。


△歴史上

内戦時、セレネ=クリシュタンドの窮地にアルベリネアを乗せ、風のように走った名馬として有名。

後にクリシュタンド家が引き取り、飼われたとされているが、現在彼の名を示す記録などは『気高き鷹の館にて』に記されている『ぶるるん』以外に一次史料が残されていない。

クラインメール中期の馬術競技において名を馳せた名馬ベィルラン(古き言葉で疾風の子を示す)はその子孫とされている。

その名前がアルベリネアの名馬に由来するとされていたこと、ジャレィア=ガシェア等、アルベリネアは命名に古語を好んで用いたこと、アルベリネアの名前クリシェ自体が当時から古語であったことから、当時の実態に近いとして劇などではその名前が用いられることが多い。

ぶるるんやぐるるん等、少なくともアーネ=ギーテルンス他、当時の貴族階級にあった人間さえアルベラン前に由来する多くの古語やその発音に不理解であったと見られており、少なくともアルベラン末期では一般的教養の範疇を超えたものであったと考えられている。

現在も彼の血を引くとされる名馬が大陸各地を走り回っている。


外見:大柄な体躯。鹿毛。たてがみ長め。

→クリシェ:触り方をよく分かっている二本足。結構餌をくれたり手入れしてくれたりする。歳を取ってから沢山散歩に付き合ってくれた。

得意:走ること。

好き:散歩。ブラッシング。限界に挑戦すること。

嫌い:雑な二本足。

悩みごと:眠たい。



■――黒旗特務中隊


●ミア=リネア=キルナン 『中立・中立』

優秀なのに扱い不憫系女子。黒旗特務中隊隊長。非正規部隊くろしゅたん隊長。黒旗剣術指南所館長。

王国北部キルナン村の出身。離れてはいるがクリシェの拾われたカルカ村の隣村となる。

当初は出稼ぎ目的、持ち前の腕力と体力を活かし軍で荷物運びなどをさせてもらおうなどと考えてクリシュタンド軍に参加したが、その魔力素養と優秀さを見抜いたクリシェに引き抜かれ、いつの間にか最前線で戦わされている。

学はなく田舎の村娘といった程度の知識しかないが、地の頭は良く回転が速い。

誰に学ぶでもなく魔力による仮想筋肉構築を身につけておりあらゆるセンスに優れる逸材であるが、頑固でやや鈍くさい気質が影響してか、その剣の腕前は黒の百人隊では下から数えた方が早い。


肝心なところでぽかをすることが多い上、つい口答えをしてしまう性格。

要領の良い親友カルアとの対比から何かとやり玉にあげられやすく、理不尽に怒られることが多い。

村では人気者であったが自己評価が低く鈍感で、村の男から告白されたことも何度かあったもののそれと気付かぬまま全てふいにしている。

熱心なアプローチを行なっていた幼なじみに帰郷の際に改めて告白されたが、もう少し段階を踏んだ方が良いというありがたいアドバイスを与えつつ、黒旗特務を優先し断った。

帰郷してから一層黒旗特務への帰属意識が強まり、精力的に訓練に励んでいる。

翠虎襲撃に対処出来たことへ安堵を覚えながらも、カルアがいなければ死んでいたであろう自分の未熟に訓練の必要性を感じていた。


内戦から大陸統一戦争終了までを戦い抜き、その後は黒旗特務中隊再編によりくろしゅたん(注:クリシェの呼称。書類上正式名称はなくアルベリネア私兵)の隊長となり、治安維持を目的とした工作のため、大陸各地の諜報活動を掌握した。

天極による大気中の魔力安定化が進み、クレシェンタ自身による情報監視統制システム『天眼』が確立されるとくろしゅたんが用いられる機会も減っていき、カルアと共に黒旗剣術指南所を王都に建て、その館長として晩年を過ごした。

彼女が生徒に直接指導することはなかったが、カルアが黒旗特務でも自身を上回る超絶剣士として吹聴していたため、門下生から尊敬の眼で見られてしまったことが原因。

剣を持つと相手を殺すまで止まらない二重人格などと他の隊員も悪のりしたため、夢を壊してしまうことを恐れて人前で剣を振れなくなってしまった。


△歴史上

アルベリネアが率いた黒旗特務、その前身である黒の百人隊からの副官として名前が残る。

若年ながらアルベリネアが直接副官に指名したこと、黒旗特務の絶大な戦果からカルアと同じく頭脳優れた天才的な剣士であったのではないかと語られることが多い。

統一後においては諜報工作活動をアルベリネアに任されていたと考えられており、『気高き鷹の館にて』における描写などからもアルベリネアと公私ともに付き合いが深く、実質的な彼女の右腕であったと考えられている。

統一歴十二年に黒旗剣術指南所を設立したことから、そのタイミングが彼女の実質的な退役であり、そこから王国の諜報活動が別な手段によって行われていたのではないかと考えられているため、現在も注目度が高い。

アルベリネアと共に最前線を駆け抜けた黒旗特務隊員による直接指導は話題を呼んだが、クラインメール時代の魔法主義によって徐々に縮小化。クラインメール中期に廃館となったが、今現在においても大本をそことする実戦剣術流派が残っている。

館長でありながら一切剣を振らなかったことから、戦場から離れた後、剣を置いたのではないかという考えが主流。


★戦闘指揮

基本的な戦術については学び、頭も冴えて視野も広く、百人隊長としての能力的には非常に優秀。

魔力保有者で構成された部隊による乱戦指揮を学んでおり、単なる兵士とは違う彼等の能力を十全に操ることが出来る。

ただし常に部隊の兵の質が優位であることを前提としており、隊の優位を失うような同等以上の戦力を有する相手に対しては判断を誤ることが多く、予期せぬ状況に弱い。

兵の能力を活かした連携、連動による安定を重視する。


外見:肩まで伸ばした栗色の髪。青の瞳。平均的身長。起伏なだらか。かわいい。

鎧:黒塗りの革鎧。

→クリシェ:可憐で純粋で怖くて優しい軍団長。賢くて強いがお子様っぽく放っておけない。竜とお友達。

得意:機転。腕力。寝相と間の悪さ。投槍。

好き:睡眠。風呂。美人。黒旗特務。カルア。

嫌い:理不尽。

悩みごと:来世では運動センスに恵まれたい。



●カルア=ニフリネア=ベリュース 『混沌・中立』

さばさばしてるようでわりと押しに弱い系女子。黒旗特務中隊特務班長。非正規部隊くろしゅたん副官。黒旗剣術指南所筆頭師範。黒猫

王国南部のベリュース村出身。村長の娘。

元はお淑やかな村長令嬢。面倒見が良く利発な器量よしと評判の娘で、その気性から村中の者から慕われていた。

村の更なる発展のため縁故ある街の商人に商売を学ぶ予定であったが、末妹が奴隷商に攫われてしまい、彼女はその捜索のために全てを捨て各地を走り回った。

女の一人旅は楽なものではなく、様々な現実に身と心を摩耗させながらも数年に渡って旅を続けたが、力は及ばず手がかりは掴めなかった。

いつしか諦めが心に満ちていることに気付きながらも止まることは出来ず。

彼女は惰性のまま戦うことを選び、多くの奴隷商に通ずるとされる王族――悪名高きギルダンスタインと敵対するクリシュタンド軍に志願した。

面と向かってクリシェをうさちゃんと呼ぶ唯一の人間で、放っておけない子供のような彼女をよく面倒見ている。

攫われたエルヴェナを思っての代償行為の面もあったが、妹を救われたことで今では彼女に対し、心の底からの恩義と忠誠を誓っている。


一人旅での様々な経験から、はすっぱな口調と粗野な態度を好んで使い、男勝りな振る舞いを身につけた。

とはいえ生まれから礼儀作法の類はしっかりと身につけており、望めば淑女のように振る舞うことが出来る。

すれており色恋に興味がないが、わりと押しに弱い。


ミアや他のものと同様、黒旗特務の多大なる戦功によりリネア叙勲を受けた。

翠虎の討伐の褒賞として小さな村の管理権程度はもらうことが出来たが断り、一級市街にある小さな家と褒賞金を受け取り、クリシュタンド家への借金を返済した。


エルスレン解体戦争では多くの首級を挙げ、中隊の特務班長という地位にありながらニフリネアの称号を下賜された。ニフはしなやかなる者、猫を意味し、アルベリネアの黒猫として多くの兵士から尊敬の眼を向けられた。

コルキスと共に戦神ニトリアスを討ち取ったこともあり、黒旗特務でも群を抜いた戦果を挙げているが、戦果は全て隊のものとして、個人的な褒賞一切を戦勝式の場にて辞退、隊員に振り分けることを願い出る。

本来翠虎でもらえたそれ以上に大きな管理領地を受け取るはずであったが、やはり彼女自身が嫌がったこともあり、演出的にも悪くないと内々に決まっていたもの。

黒旗特務隊員には国から多大な特別年金が支給されることになり、彼女らの結束と女王の人柄を示す一つの美談として民衆の間で語られた。

くろしゅたん副官として、基本的には実働部隊の長として謀反人の拘束、確保を主任務として活動。その大陸有数の剣腕によって隊員に犠牲者を出すことなく、くろしゅたん解散までを過ごした。


その後の晩年は黒旗剣術指南所の筆頭師範として剣を教えたが、センスの塊であった彼女がクリシェに学び、戦場で鍛え上げたその技術は門下生のほとんどに理解されず、絶大な尊敬を受けながらもその指導はやや不人気であった。

とはいえ、うさちゃん流剣術と称した彼女の剣の一端を理解出来た才覚者達がその後を継ぎ、黒旗剣術指南所を数百年に渡って続かせ、その血脈を紡いでいる。

ちなみに教えられていたのは総合的な戦闘術というべきもので、魔力保有者である利点を活かした戦い方、あるいは非魔力保有者が魔力保有者に対する戦い方を重点を起いて教えられていた。


△歴史上

黒旗特務中隊でも特に有名な隊員の一人。クリシュタンド家使用人エルヴェナの姉。

アルベリネアの剣として数々の戦果を挙げた生粋の戦士であり、最後まで階級上は下士官という立場にありながら彼女ほどに戦果を挙げた存在もおらず、兵士中の兵士として当時の兵士達から尊敬を集めた。

アルベリネアの黒猫という異名は当時の兵士や民衆の手記に刻まれ、一軍の将でさえ一兵士である彼女に対し敬意を持って接したと言われており、古代からの『戦士の文化』が当時はまだ色濃く残っていたと示す一つの事例となっている。

翠虎を狩り、東の戦神と称されたニトリアスを討ち、無数の首級を挙げ、分かりやすい逸話が多く残されているため、少数ながら彼女を主役とした劇や物語も作られた。

現在においても黒旗特務の隊員と言えば一番に彼女の名が挙がる。

アルベリネアを愛称で呼ぶことを許されるほどの存在であったとされ、型にはまらない特異な天才であったという見方が強い。

彼女自身は手記の類を残してはいないが、黒旗剣術指南所での門下生の手記には彼女から教えられたとされる話がいくつか残っており、当時の戦場やアルベリネア個人に対する重要な歴史的資料の一つとなっている。

アルベリネアを指して『優しいお子様』と語るなど、一般的なアルベリネア像とは異なる見方で彼女を捉えていたと思われ、『気高き鷹の館にて』で語られる彼女の姿と近しい。

アルベリネアは剣術指南所を訪れる度、子供のように彼女に甘える姿を見せ、彼女や隊員達もまたそんなアルベリネアを深く愛したと言われている。

当時剣術指南所に通っていたものの手記から、アルベリネアの人柄については誰もが非常に好意的な印象を持っていた様子が見られ、雲の上の存在ながらそれを感じさせず、どこまでも民衆に近い人間であったと記された。


★戦闘指揮

頭の回転は非常に早く、咄嗟の機転が利き、指揮者としての適性を有する。

ただし自ら剣を振るうことを好み、視野狭窄に陥りがちな面が有るため、その能力を活かすためには最先頭ではなく中央後方に配置しておく必要がある。

個人レベルの連携という点では頭一つ抜けており、咄嗟に指示連携し他の兵と動くことが出来る。

五大国大戦以降その剣腕は磨き抜かれ、コルキスのような戦士とさえ比肩する実力を持つに至った。


外見:腰まで伸ばした黒髪。焦げ茶の瞳。細身で比較的長身。胸大きめ。秀麗。

鎧:黒塗りの革鎧。

→クリシェ:ちょっと頭のおかしい天才少女。優しくて健気な子。無防備すぎて怖い。永遠の忠誠を誓った相手。

得意:我流剣術。逃走。潜伏。

好き:斬り合い。昼寝。子供。

嫌い:奴隷商。

悩みごと:なし。



●ダグラ=リネア=アルカス 『秩序・善』

軍隊生活大好き真面目系男子。黒旗特務中隊長。ハゲワシ。男爵。非正規部隊くろしゅたん参謀。

平民出の魔力保有者。飛び抜けて優れた点はないものの不得手はなく、経験豊富で目端が利き、軍の規律と命令を重んじるクリシェ好みの軍人。

厳格ではあるが常に誠意を持って部下と接する百人隊長としては理想的な人物であり、エルスレン神聖帝国との戦争の際、セレネとクリシェの特別攻撃部隊に百人隊長として参加。

そこでの堅実な活躍を評価され、魔力保有者のみで構成されたクリシェの直轄部隊『黒の百人隊』の隊長として指名される。

クリシェの異常とも言える能力と冷徹さに当初過剰なまでの恐れを抱いていたが、自身に向けられる信頼、自身に与えられた役割の大きさ、そしてクリシェ=クリシュタンドという少女の等身大の姿を知り、彼女へ心からの忠誠を誓った。


真面目で自他問わず厳しく、軍隊組織での生活を何より好む根っからの軍人。

そんな軍人の自分には結婚など縁なきものと考えていたが、友人の娘から熱心に言い寄られ、陥落した過去を持つ一児の父でもある。

禿頭は軍務においても清潔さを保つため毎日剃っているだけであり、特に禿げているわけではなく、鷲鼻が目立つが決して不細工というわけでもない。


自分の健康を気遣い同行を拒否したクリシェの配慮に感服しており、公私問わずクリシェのために命を捨てる覚悟ができている人。

黒旗特務という存在がもはや万の戦の勝敗すらを左右する存在になったことに気付き、クリシェの補佐として、そして中隊長としての責務をより強く感じている。

黒旗特務中隊の多大なる貢献を認められ、男爵位を与えられると同時、王都近郊にある宿場町の管理権を与えられた。


エルスレン解体戦争においても変わらず黒旗特務中隊長として戦い抜いたが、その時点で八十に近く、老いもあって過酷な前線指揮が負担となり、体調を崩すことが多くなった。

クリシェは自分の期待に応えようと無理を続けるダグラに不安を覚え、その後に予定されていた統一戦争ではミアを隊長として、ダグラに訓練教官となることを命じる。

そのことを嬉しく思いながらも、統一戦争こそがクリシェの最後の戦。

ミアに同行許可をもらい、実際の戦闘に加わらぬまでも統一戦争の最後まで黒旗特務中隊員としてクリシェや部下達と行動を共にした。

それが終わった後は、くろしゅたん参謀として一年ほどその走り出しを補佐し、「ハゲワシはよぼよぼのお爺ちゃんになったのでお払い箱です」とクリシェに言われて、笑いながら長い軍人生活に終止符を打った。

『終身名誉くろふよ隊長』という称号と共に、黒旗特務中隊の主隊旗を与えられ、寝室にその最期まで飾られた。

爵位継承はしなかったものの、隊旗は娘夫婦やその子達へと受け継がれる。

そしてクラインメール建国の混乱時に盗まれ、巡り巡って千三百年後、クリシェの前に。

その隊旗は今も変わらず、誇らしげに主君の前に。


△歴史上

絶大なる戦果を挙げた黒旗特務中隊隊長。

アルベリネアが誰より信頼した部下であったとされ、その多大な貢献に主隊旗を与えた人物であることが伝わっている。

そのほとんどが軍務経験のない素人であった、寄せ集めの平民達を世界最高峰の百人隊として仕上げ、隊員達からは父親のように慕われる人格者であったと記された。

セレネ=クリシュタンドは彼を今日までの『軍人アルベリネアの偉業』において必要不可欠な存在であったと語り、周囲を置き去りにする天才であった妹に軍という独特な社会を教え導いた最高の軍人として、彼の貢献の大きさは史に名を残す英雄達にさえ比肩すると褒め称えた。

アルベリネアを主役とした劇では、大抵彼がその部下として姿を現す。

クラインメールの古い劇ではハゲワシという異名で彼女から呼ばれ、現在の劇においてもそれが決まり事となっているが、その由来は伝わっていない。


★戦闘指揮

経験豊富、山中など特殊状況下で運用されることの多い軽装歩兵隊出身であるためどのような状況であっても基本に立ち返り、判断を誤らない。

奇襲、工作、陽動など、数的不利な状況での戦いに慣れており、追い込まれた状況での乱戦であっても十全に指揮能力を発揮する。

ミアと違い魔力保有者部隊での純粋培養ではないため、部隊の扱いにおいては経験に照らし合わせ安全側の選択をすることが多い。

ただその分消耗は少なく、彼の指揮下にある黒旗特務は非常に安定している。


外見:スキンヘッド。焦げ茶の瞳。筋肉質。鷲鼻。

鎧:黒塗りの革鎧。

→クリシェ:敬愛すべき上官であり、命を賭して守り、補佐すべき少女。

得意:山中行動。戦闘指揮。鼓舞。指導。

好き:規律。軍組織。黒の百人隊。

嫌い:規律を乱す者。落伍者。

悩みごと:平時における黒旗特務の今後について。




――――黒旗特務メンバー――――

ここに表記されている人間はほぼリネア=騎士階級に略式叙勲されています。


●コーザ 『秩序・中立』

家庭的でクリシェもニッコリ系男子。黒旗特務中隊弓兵隊長。対空ぴしゅーん隊長。夜明けの三日月料理長。

顔に古傷の目立つ強面であるが、顔に似合わず料理好き。

家庭的で細かいところによく気がつき、家に帰ると嫁以上に家事へ精を出す。

当然ながらクリシェからの評価は高い。

兵士としても優秀で視野も広く、総合力の高さからいざとなれば指揮代行を行なう第二班長を任されている。

内戦の最終戦ではミアと共にナキルスと戦った。

特に弓術の才能があるわけではないが、戦後視野の広さを評価され弓兵指揮官(兵長相当)に命じられる。

翠虎討伐の褒賞金もあり、王都の城下街に家を買った。


五大国戦争の後、設置式魔力投射砲、ぴしゅーんの開発や運用試験に携わり、実際にぴしゅーん運用を魔術師達と共に行っていた。

その関係からくろしゅたんではなく戦後は魔術師達とクリシェの間に入り、ぴしゅーんの改良作業に従事していたが、魔術師達が主体となったこともあって暇を告げ、ベルツと共に食事付き宿『夜明けの三日月』をやり始めた。

戦後における元隊員達の溜まり場となっており、英雄の集まる場所としてその話を聞きたがる者も多く、中々の繁盛を見せた。


●タゲル 『中立・善』

爽やかスポーツマン系男子。黒旗特務中隊百人隊長。パン屋。

ミアと同じく入隊当時から意識的な仮想筋肉を覚えており、優秀な人材。

軍務経験者で頭も良好、剣の腕も良く、人柄も良いと非の打ち所のないタイプの人物で欠点がないことが欠点と言うべき面白味のない男。

熱血漢な面が有り、兵長としては多少未熟な面も残る。

基本的に二班から十班までを指揮することが多い。

内戦の最終戦ではギルダンスタインにセレネと共に立ち向かった。

激戦を生き残ったことで順当に百人隊長に出世している。

家の近所に住んでいたパン屋の娘とリネア叙勲を切っ掛けに結婚した。


長期の従軍で妻を心配させ悲しませたこと、また任務の性質上身内に被害を被る可能性があったため、くろしゅたんには参加せず、嫁の実家を継いで剣を置きパン屋となったが、パンを焼く才能も中々のもので、時折店を訪れるクリシェを喜ばせた。

多くの子宝に恵まれ長生きし、店を長男に譲った後は趣味で絵を描いて過ごしており、かつての思い出を一つ一つ宝石のように描いて切り取り残し。

『聖霊と乙女達』を描いたフィリペーヌは彼の孫に当たる。

鳴かず飛ばずであった長い下積み時代、絵の楽しさを思い出すため、自分に絵を教えた祖父の絵を改めて目にしたことが彼の羽ばたく切っ掛けとなった。

それは決して売り物に出来るほどの完成度ではなかったが、そこに描かれた情景に浮かぶ何かをきっと、己は求めていたのだと。



●コリンツ 『秩序・善』

落ち着きあるベテラン下士官系男子。黒旗特務中隊百人隊長。

元々ダグラの指揮していた百人隊の部下であり、元々兵長の立場にあった。

魔力保有者としての実力はそれほど高くはないものの、乱戦での指揮能力が高く、視野が広い。

どのような状況でも慌てず冷静を保てる精神的な強さがありダグラからの信頼は厚く、タゲルからも兵長の先輩として慕われている。

基本的に十一班から二十班を指揮することが多い。

内戦の最終戦ではミアと共に戦ったが、途中で負傷し休養中。

後遺症などは残らず、復帰後は百人隊長となっている。

子供のために貯蓄中。


ダグラより若年であったが老化は早く、ヴェズレア戦以降は工作班に異動。

ネイガルの補佐として、その豊富な経験を元に魔導兵器の改良に対し様々な意見を述べた。

工作班の魔導兵器改良、生産は徐々に魔術師達に委ねられ、最重要機密のじゃらがしゃを十分な量生産し終わると完全に複製水晶を破棄。その後は主に大陸がったんごーと網計画に従事することになり、彼もそこに参加。

記念すべき第一路線、北部への鉄道が出来上がったのを見届けた所で眠りについた。

眠りにつく彼の耳には、平和になった世界を走り回る車輪の音が、がたんごとんと楽しげに響いて聞こえた。



●ベルツ 『中立・中立』

お料理上手でクリシェもニッコリ系男子。黒旗特務中隊兵長。料理指導役。夜明けの三日月店主。

料理人の家に生まれたが、若い頃親と喧嘩し家出。

元々強面で腕っ節が強かったため、隊商護衛などをしながらその日暮らしをしていた。

その過去から料理というものを嫌っていたが、百人隊に入ってからは料理に重きを置くクリシェの指導もあり改めて料理の面白さに目覚めた。

同じく料理好きなコーザとは話が合い、休みの日にはコーザの家で一緒に料理をする仲となっている。むさくるしい。

内戦の最終戦ではミアと共に戦った。

腕の良さもあって兵長に昇格しているが、同時に料理指導役として黒旗特務の料理指導を行なうようクリシェに命じられている。内心少し嬉しい。

老いて引退した後は城下街に食事付の宿を開こうかと考えており、コーザを誘っている。


統一後くろしゅたんに参加したが、彼の夢である食事付き宿のこともあって、実働部隊ではなく王都勤務を願い出ることになった。

最初はくろしゅたんの情報交換所を兼ねて、と折衷案を考えたが、話し合いの結果、クリシェに「美味しい料理を作るという夢があるなら、そちらを優先するのが良い」と送り出され、コーザと共に『夜明けの三日月』を始めることとなる。

十七回目のクリシェ訪問時、ようやくその味を認められ、クリシュタンドの簡略紋を店に許された際は大の男が眼を潤ませてコーザと二人抱き合った。

『夜明けの三日月』は時代の流れと共に途中で宿をやめ、単なる料理店に形を変えながらもクラインメール中期まで続く名店となったが、クラインメールの魔術師至上主義が強まった事が原因となり廃業することになる。

しかしその後クラインメールが崩壊して落ち着きを見せると、時勢的にも縁起が良いとかつての名店にあやかって『夜明けの三日月』という名の料理店がアルベナリアに復活し、それが現在も続いている。



●ビルザ 『中立・善』

黒の医者とは僕のこと系男子。黒旗特務中隊医療班長。応急医療の父。

薬師の生まれであったが、三男であった彼は家業を継げず畑仕事に精を出す毎日。

そんな折に村へ兵士募集の馬車が立ち寄り、自分の知識が役に立つのではないかと軍に入る。

線の細い青年で争いごとは不得手、剣の扱いはミアと同様下から数えた方が良いものではあるが、薬草知識や簡単な医療技術を持っており、怪我人の治療を担当する。

彼の班には元々戦闘に向かない気質の人間が選ばれており、役割は医療班に近い。

内戦の最終戦ではミアと共に戦ったが、負傷兵の治療に当たっていた。

現在元十七班は黒旗特務の医療班となることが決まり、クリシェから貸与された医学書に齧り付く日々。

最近は王都の医者に弟子入りしており、長期休暇の際は助手としてあちこちを回っている。


統一戦争後は班員と共にくろしゅたんの実働部隊に同行。

その後はそれまでの経験を活かして戦場での応急医療手順を分かりやすくマニュアル化し、軍学校を経由して従軍医ではなく、自身と同じ医療を学んだ兵士育成のために力を注いだ。

黒旗特務隊員として以上にこちらの功績が大きく、戦場という過酷な環境におけるマニュアル化された彼の応急医療手順はその後普及し、多くの兵士の命を救ったことから、偉人の一人として数えられる。

――凡庸な自分を見いだしこの役割を与えたクリシェ様と、戦場で死んだ多くの仲間達が、何の得手もなかった自分に天命を教えてくれたのだ。

彼は自身の残した応急医療手順書の後書きにそう記した。



●キリク 『中立・中立』

手先が器用な職人系男子。黒旗特務中隊護衛班長。クリシュタンド私兵護衛班長。

職人の家に生まれたが経営が上手く行かず、家を兄に任せ出稼ぎをしていた。

元々隊商護衛や用心棒を行なっており、その過程で片目を失っている。

軍務経験はないが隊商護衛としての経験は豊富で、職人の家に生まれたこともあって手先も器用。

馬車の点検や補修などの知識もあり、クレシェンタの馬車護衛に選ばれた。

何度も修羅場をくぐり抜けた剣の腕は確かで、隊でもカルアに次ぐ。

彼の班は職人上がりが多い。

クリシェの信頼出来る兵士として、彼等は基本的に戦争中でも女王クレシェンタの護衛班として行動することが決まっており、戦場に出る可能性は低い。

独り身であるが豪遊はせず、実家の兄の所へ仕送りを続けている。


統一戦争が終わり、老いても変わらず自分を鍛え続け、栄誉ある護衛班長として己の体力を維持し、それが維持出来なくなるまでクレシェンタの身辺警護の任を全う。

クレシェンタは忠実な軍人として彼を気に入っており、統一後は直々に名剣の一つを下賜。

彼が肉体の衰えを理由に暇を告げ、後継者たる子がいないことを理由に剣の返却と願い出た際には、これまでの忠義を讃えてそれを受け入れ、この剣は自身への個人的な贈り物、王国の宝物庫ではなく屋敷の入り口に飾ると彼に伝えた。

今も変わらず彼の剣は屋敷にあり、邪魔な置物、言わなければ良かったなどと文句を垂れつつ、時折クレシェンタがぴかぴかになるまで手入れをしている。

落涙して顔も上げられない、そんな彼の姿を思い出しながら。


――彼女は忘れない。

彼女は一度目にしたものを、耳にした言葉を忘れない。

触れたものも、感じたものも、その努力も忠義も何もかも――いつまでも、永遠に。



●ダズ 『秩序・中立』

何やら不憫なぴりりん系男子。終身名誉ぴりりん班長。終身名誉くろみみ班長。

強面で知られる元第八班班長。

元々酒場の用心棒で荒事にも慣れており、兵士達からは一目置かれる勇猛な伍長であったが、内戦最後の戦いで左腕を失ってしまった結果、第一ぴりりん班の班長を任されることになった。

ぴりりん班の選別業務自体は栄誉ある仕事と捉え、クリシェに強い感謝の念を抱いているが、クリシェ以外の人間がぴりりん班と呼ぶことは許さず、隊員達からぴりりん班長と呼ばれる度に激怒している。

黒旗特務中隊の新規募集が一段落したこともあり、義手や義足の素材等、ネイガルやワルツァ達と改良を進めている。


ヴェズレア戦の後は天極を用いた遠距離諜報通信システム『ぷるるん網』構築に携わる第一くろみみ班長として、各地の重要拠点にある窓の振動から内側の会話を読み取るぷるるん共鳴水晶設置のため、王国諜報部門の長となっていたダグリスと協力し大陸各地を走り回った。

老化が進んでいたこともあって、それの終了後は本来退役であったが、かと言って特にやるべきこともなく、クリシェに願い出て工作班員として復帰。

ネイガル達のがったんごーと製作に協力していたが、数年後その作業中に倒れて目覚めることはなく。

彼の墓にはがったんごーとの模型が一つ、共に埋められた。



●ネイガル 『中立・善』

色々不憫な負傷兵系男子。工作班主任。アルベナリア工廠責任者。

生まれは商人の三男坊で、識字算学を行える黒旗特務では比較的珍しい存在。

一般兵から選別された兵士ではなく兵站部の新兵から選別された人間で、班長ではなかったものの人当たりも良く兵士達からは好かれている。

兵士としても優秀で剣才があり、剣を持ったことがなかった人間としてはめざましい進歩をみせていたが、内戦の最終戦で左手首から先が失われた。

義手を与えてくれたクリシェに対し強い恩義を感じており、生涯の忠誠を誓う。

ジャレィア=ガシェアやバゥムジェ=イラ等、クリシェの作る兵器が戦場にもたらす残酷さについて思い悩むが、抑止力としての兵器という考え方に行き着き、ひとまずの納得をした。

ダズやワルツァとの義肢改良の時間が良い息抜きになっている。


心なきジャレィア=ガシェアはその冷酷な思考回路が洗練され、一瞬で多くの人生を終わらせるバゥムジェ=イラは人間を感知し自動で爆破するようになり――それだけではなく、アルベナリア工廠にはあまりに強力過ぎ、非道すぎることから試作、開発段階で中止された試験兵器がいくつも眠る。

地平線の彼方から街ごと火の海に変える魔力投射機や、生物の持つ体内魔力を暴走させ肉体を弾けさせる力場展開機等、クリシェはあまりに容赦がなかった。

強い力は戦争を抑制し、平和を生み出す。

彼女の考え自体は理解しつつも、彼が間接的に殺した人間の数は優に万を超え、そしてこの後、それで防げぬ戦が起きればどれほどの人間が殺されることになるかを想像すると恐ろしく、魔導兵器の生産中止をクリシェに願い出る。

思い詰めたネイガルの様子もあって、今後しばらくの世界情勢の安定に必要十分と見なしたクリシェもそれを承諾。

熱心な魔術師達へ新規開発や生産を完全に委ねることを決め、眠っていた試作兵器と複製水晶を破棄し、アルベリネア製の魔導兵器を今後作らないことを宣言。

並行していた大陸がったんごーと網計画に彼等を集中させることとし、ようやく彼はその苦悩から解放される。


地獄を生み出す魔界と化していたアルベナリア工廠に張り出されていた図面はジャレィア=ガシェアや様々な魔導兵器から、大陸鉄道の予定図と魔導式軌道鉄輪車の設計図が張り出され、語られるのは効率的な殺人ではなく、将来の平和的利用のための案。

各地の特産や名品が大陸のあらゆる場所へ届き、大陸の西から東までを人々は自由に横断できる。

そんな平和な未来の姿を仲間達と語り合い頭を悩ませることは、いつの間にか苦痛となっていた物作りの楽しさを彼に思い出させた。

多くの仲間達が一人一人と欠けていき、若い職人がその後継に。

いつの間にかネイガルは最高齢になり、それでも彼は死の直前までがったんごーとを作り続け、多くの若者に教え続けた。

――クリシェ=クリシュタンドの最高傑作が、死ではなく幸福を振りまいて、いつか世界中を満たすことを夢見ながら。



●ネッキ 『中立・中立』

初戦でじゃらがしゃ壊した系男子。工作班。大陸がったんごーと網初期メンバー。初代がったんごーと操縦士。

王国北西部の農村の生まれであったが、立身出世を夢見て内戦時、募兵に参加。

何をやらせても人並み以上にこなせる人間であったが内戦での最終戦左足を負傷し、悪化したため切断した。

その後工作班に入り、ジャレィア=ガシェアの製作運用を主任務として行っていたが、その能力の高さと視野の広さを買われ大陸がったんごーと網計画に初期から関わることになる。


自分達の作り上げた試作一号の走る姿に感動し、最初の数台は情報秘匿や運用試験の関係から黒旗特務からの志願を募りたいという言葉もあり、いの一番に志願し、初代がったんごーと操縦士となる。

施工不良による脱輪や強度不足による破損等トラブルが発生し、一度大きな負傷をしたものの、戦場ほどではないと冷静に対処し切り抜け、王国北部への第一路線を仲間達と完成させた。

その後も各重要路線を任され、合流したネイガル達にあれが良くない、これが問題、などと操縦士兼メカニックとして意見を交わし、休暇に工廠を訪れ、改良された最新式のがったんごーとを玩具のように乗り回した。

――足を失って老人となってから、これほど楽しい時間が来るとは思わなかった。

酒を飲む度、彼は愉快げにそんなことを語っていたという。



●ザーカ 『混沌・中立』

戦闘出来る負傷兵系男子。班長。非正規部隊くろしゅたん実働部隊第一班長。黒旗剣術指南所師範。囁きのザーカ。

隊商護衛出身の剣腕優れた隊員であったが、ベルナイクの戦い最終日にて左目を負傷。

体中にも怪我を負っていたこともあって戦場を離れ、療養していたが、左目を失った以外に後遺症なく復帰。

荒くれ者だが部下想いで、班員からは慕われている。


統一後はくろしゅたんの実働部隊班長として活動。

隊商護衛に扮し、占領後間もなく不穏な空気が漂う大陸東部で十年を過ごし、仲間達と多くの不穏分子を確保、あるいは闇に葬りながら仲間を一人として死なせることなく戦い抜いた。

くろしゅたん解散後は任務完了への喜びから、夜明けの三日月で毎晩のように飲んで騒ぎ、黒旗剣術指南所でカルア達と共に指導を行った。

口は悪いが人にものを教えるのは上手く、話も上手いため、黒旗特務中隊に憧れてきた年若い少年達からは非常に人気があり、カルアを悔しがらせた。

――お前達はまだ分かっていない。冗談に聞こえるだろうが、ミアは本気を出せばここにいる誰より強いぞ。アルベリネアに一撃でも加えられたのはあいつの他にいない。

などとこっそり打ち明けるように少年達に語り聞かせるやり方から、『伝説の最強剣士ミアを語り継がせるゲーム』では囁きのザーカと一目置かれる存在であった。


――――黒の百人隊――――


●バグ 『混沌・中立』

悪人になりきれない系男子。第一班。

戦争孤児で貧民街に育ち、幼い頃から盗みを働いていた。

手先が器用で荒事も得意であったが、しかし誘拐や強盗といった仕事ができなかったため周囲からは馬鹿にされており、そのことで悩んでいた時に内戦が始まり百人隊へ。

カルアに一目惚れしており、強引に迫ろうとしたところで返り討ち。

それからは正攻法で彼女を振り向かせるべく努力しており、最近は真面目な軍人を目指していた。

軽業が得意で両利きなこともあって、強引に力でねじ伏せるカルアのフォロー役としてペアを組むことが多かったが、カルアを庇って死亡する。



●アドル 『中立・中立』

酒場に入り浸ってそうな兄ちゃん系男子。第一班。

農家の長男であったが、畑仕事に嫌気が差して街に出てきた。

腕っ節には自信があり、それを活かして隊商護衛をやっていたが、そこでケルスと出会い意気投合。

コンビを組んでからはそこそこ名も売れ、出世も目指せるのではないかとクリシュタンド軍へ。

ケルスと共に隊では最上位の実力者であったが、時間を稼ぐため捨て身でギルダンスタインを押さえに掛かり、死亡する。



●ケルス 『中立・善』

その日暮らし散財系男子。第一班。

アドルと同じく農家の長男で、畑仕事に嫌気が差し村を出た。

アドルと同じ理由で隊商護衛をやっており、偶然出会ったアドルと意気投合。

家を出た理由、金の使い方、仕事のやり方。

それら全てが奇跡的にマッチして、組むならこいつしかいないとコンビを結成した。

剣腕はアドルに劣らぬ実力者であったが、アドルのため捨て身でギルダンスタインに挑み、その隙を作って死亡した。



●キーニッツ 『混沌・善』

殿は任せろ系男子。第十班班長。

一度は軍を引退した身であったが、王女クレシェンタのため立ち上がったクリシュタンドに対し、これまでの恩義を返すためにと復帰する。

昔から優秀な兵士であったが荒っぽい性格で、周囲との能力差から上官や同僚との喧嘩が絶えず昇格は見送られており、それが軍を辞めた一因となっていた。

だが黒の百人隊に来たことで魔力についてを学び、また、自身に当然のように追随する仲間達の姿を見て、ここが自身の求めた居場所であったと骨を埋める覚悟を決める。

その荒っぽい性格が消えることはなかったがそれからは班長として精力的に働き、部下からは慕われる良い班長として活躍していた。

内戦の最終戦ではセレネの時間を稼ぐため、部下と共に殿となりギルダンスタインに殺された。

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