本編外のもの

人物紹介――お屋敷と周辺 ※ネタバレ含む


・属性

秩序――規則と規律、普遍的概念を重んじ、整えられた社会と法を重視する。

混沌――個人とその感情思考を重んじ、社会的規律、道徳よりも意志を重視する。

中立――中間。


善――利他的気質。自身の利益よりも自分の信じる道徳を重要視し、それに殉じる。

悪――利己的気質。自身の利益を重要視し、そのために他者を蹴落とすことを厭わない。

中立――どちらにも振れない中庸の気質。



・王国貴族の名前の見方

例:1,ギルダンスタイン=2,カルナロス=3,ヴェル=4,サーカリネア=5,アルベラン

1,名前:ギルダンスタイン

2,管理する地域の中で最も大きな土地:カルナロス。

本来は管理地域全てが入るため非常に長く、簡略化される。

3,王位継承権を持つ男性の王族はヴェル、女性の王族はヴェラ

4,名誉爵位:サーカリネア

5,姓:アルベラン


正式には4と5の間に元帥や将軍などといった軍階級、宰相など王宮での役職を示す言葉が入ったり姓の後に大公爵などといった爵位を示す言葉が入ったりします。

ただ、既に横文字が長くて目が滑るので、文中ではわかりやすさ重視でその都度必要な階級役職を末尾につけ漢字表記しています。


基本的に姓以外は必ずしも子供に継承されるものではないですが、特に問題ない限り慣習的にその嫡子が土地や爵位を引き継ぐことが多いです。

ただ、戦士としての武功を示す4の名誉爵位だけは引き継がれません。


姓を持たない人間がネア=準騎士の略式叙勲を受けた場合、大抵は出身地を名乗る場合が多いです。

(例)ガーレン=ネア=カルカ。


・プロフィールの身長ワード

男性平均175cm前後、女性平均160cm前後くらいな設定です。

無記入:平均的身長

中肉中背:平均的身長

長身、大柄:平均より10cm程度高い。男性の場合六尺と書かれれば180超え。

小柄:平均より10cm前後低い。

比較的:平均値から見て長身/小柄は下振れ。

非常に:平均値から見て長身/小柄は上振れ。


・身長   大体   曖昧な想像

クリシェ 140後半 147

ベリー  150前半 152

セレネ  150後半 159

クレシ( 140後半(ま、まだ成長は終わってないですわ!) 

カルア  160後半 168~9

ミア   150後半 158

エルヴェナ160前半 161~2

アーネ  >160< >160<

リラ   150後半 157

ミーデリ(150半ば 156

カルシェ(160前半 163






○残るもの

●旅立ったもの


■――幻想界のお屋敷


○クリシェ=アルベリネア=クリシュタンド 『秩序・悪』

神様風味のお子様系女子。クリシュタンド家養女。主人公。アルベリネア。お屋敷の魔性。

『泣かぬ赤子』と呼ばれる王家の忌み子であり、抹消されたアルベラン第一王女。

殺されるはずのところを世話係の使用人ノーラに逃がされ、カルカの村で育つこととなった。

殺人や暴力に対し良心の呵責を覚えない共感性の欠如した異常者であったが、善良な人々に強い愛情を注がれた結果、人並みの倫理感や感情を理解できるようになってきた少女。

基本的に人の言葉を言葉通りにしか受け取れず、感情を読み取ることが不得手。

それを除けばあらゆる面で超人的な才覚を持つ文字通りの天才であり、一目見ればあらゆる技術を容易に吸収、発展させる能力を有する。


どんなことに対しても『自分なら出来て当然である』という考えを基本として行動し、自分の優秀さに対するこだわりが強く、努力家。

人間関係に対しても同様で基本的に損得勘定で行動するが、他人の感情を読み取ることが不得手な彼女は他者から自分に与えられたものを過大に評価し、逆に自分から他者へ与えるものに関しては過小評価する傾向がある。

そのため他者から向けられた純粋な好意に対してはある種過剰な『お返し』を自分に要求することが多く、それに必要な労力を一切惜しまない性質を持つ。

人間関係への苦手意識からの行動であるが、そうした一面は非常に善良と言え、彼女を単なる異常者と見るか純粋に過ぎる少女と見るかで評価が大きく異なる。


個人として敵うもの無き圧倒的な存在であるが、依存体質で精神的に幼く脆い。

周囲との関係を深め人間的幸福を得るほど精神的に弱くなる性質の人間で、精神的に自立し、他者に価値を置かなかった頃から比べると、彼女が望んだ『完璧な存在』からは徐々に離れていってしまっている。

だが自身が完璧であることに対する執着は薄れつつあり、様々なものを切り捨てた完璧よりも普通の人間のように様々なことを感じられる人間であることを望む。

気持ちの上では少し大人になったと思っている節があるが、大体子供。

ベリーの舌に刻んだ味覚の魔術刻印と同様のものを舌に刻んでいる。


竜の血によるベリーの病を切っ掛けに、世界構造のほぼ全てを理解し、魂と根源を見いだすことでその深奥を極め、惑星そのものを魔力で満たす魔力井戸――天極をクレシェンタと共に創造した。

世界を変革させ、その莫大な魔力を用いることで世界と重なり合う幻想界、ふよふよふわん(注:クリシェの呼称)を生みだし、そこへ移り住むことを決める。

なお新天地における第一次クリシュタンド会議によりこの名前はクリスネイト(古き言葉で月の住処)と正式に決定した。


☆お引っ越し後

文字通り神に等しい力を手にしたが、相も変わらずエプロンドレスで家事をする。

世界各地にセレネ手作りの別荘や小屋があり、年々仕事は増えているが特に問題なく、スケジュールを組みつつ家事を満喫。

あまりに容易く神造の一品を量産し市場を乱してしまうため、金銭を目的とした物作りなどは禁じられており、セレネの物作りやベリーの畑や菜園、ワイン造りを手伝うことが多い。

暴れまわる魔獣を狩るのも基本的に彼女の仕事。

数と大きさ的に肉の貯蔵が増える一方なため、その消費のため魔獣の肉での様々な調理法をベリーと研究、確立している。基本的に硬いが旨味が強いらしい。

定期的に暴走することがあり、『甘えクリシェ』状態になると手がつけられない。


△歴史上

歴史上ではアルベランを大陸統一に導いた史上最大の英雄であり、魔術史上ではクレシェンタと並び始原法術師と呼ばれる魔導士の祖。

齢14にして初陣を飾り、アルベラン女王の剣として戦場を駆け回り、文字通り手ずから挙げた指揮官首は大小合わせ、誇張を抜きに千を超えると謳われる。

天才戦術家、発明家としても知られるが、敵味方を問わず多くの記述にはまず個人としての戦闘能力の凄まじさが記されており、投槍による城壁や投石機の破壊等、その当時において絶対的な存在であったことに疑う余地はない。

特にその剣腕は比類なく、小ぶりな曲剣を用いて相手の首を容易に裂く姿から首狩人と恐れられ、多くの将がその刃の前に命を落とした。

戦場におけるその冷酷な数々の逸話から、精神的な欠陥を持った快楽殺人者であったと多くの書物に記されるが、彼女に近しい人間の手記などには一貫して優しい人間であったとも記され、その評価は分かれる。


魔術史上では多くの記述や残された魔水晶から、彼女が宙空に刻む魔術式――魔法を初めて生みだした存在であると語られ、今なおその称号、アルベリネアは魔術師の最高位称号として用いられる。

その芸術的な術式刻印は今なお完全な模倣に到っておらず、ジャレィア=ガシェアのメインコアなど高度な魔水晶に刻印された暗号術式は解かれていない。

それほどに高度な魔水晶の量産が行われていることから、魔水晶を自動的に刻印する術式が存在していたのではないかという考えが主流。

その最期は世界を魔力で満たした天極――世界樹を用いた『天変の大法』によって、アルベラン女王クレシェンタと共に神へと昇華したとも、それに失敗して死んだとも語られているが、世界各地には彼女達と出会い、あるいは助けられたという伝承がいくつも残されている。


★戦闘指揮

戦闘、戦術共に非常に攻撃的。

致命的損害を相手へ与えるための機動力を何より重視し、常に機動によって敵を攪乱し、罠に掛け、決して自分に不利な状況では戦わない狩人の性質を持つ指揮者。

最強の駒である自分を最大限活用し、敵指揮官を優先的に、問答無用に始末する『首狩り戦術』を好み、真っ向からぶつかってくる敵に対しては圧倒的と言えるほどの強さを誇る。

基本的に配下にはその最低限を求め一切の期待をしておらず、その上で勝利できるよう戦術を組み立てるが、にも関わらず常に最大戦果を目指さなければ気が済まないという悪癖がある。

普段は黒旗特務で補われてはいるものの、自身への負担が過剰となって体調を崩すことがよくあり、だというのに本人はいつも平気な振りをするため性質が悪い。

他の人がフォローしてあげないと潰れてしまう系はた迷惑指揮官であり、最強と言える彼女の唯一の欠点は非常に初歩的なところ――意地っ張りに過ぎて自分の体調管理すらまともにできないというお子様な部分にある。


ただしこれは単なる人間であった頃の話であり、魔法を用いた場合において、彼女に対抗できる存在はクレシェンタを除き存在しない。


外見:銀の長髪。紫の瞳。非常に小柄。細身。胸控え目。妖精的。舌に魔術刻印。

鎧:普段着に手甲、補強ブーツ。ガーターベルト。

→自己評価:とても賢くて優秀ではあるものの未熟な部分がまだまだ多い。お馬鹿。ベリーの。少し大人。

得意:魔術。計算。

好き:料理を含め家事全般。甘いもの。甘えること。キスやハグ、スキンシップ全般。お世話。ベリー観賞。お揃いにすること。寝酒。ワイン造り。

嫌い:周囲の平穏を乱すもの。戦争。身内の死。

悩みごと:幸せ過ぎること。





○セレネ=アルガリッテ=リネア=クリシュタンド 『中立・善』

風紀を乱すことは許さない系女子。クリシュタンド家当主。お屋敷の良心。

武門の家クリシュタンドの一粒種。

女の身であることにコンプレックスを抱いており、英雄であり尊敬する父の後を継ぐために頑張る努力家の少女で、数年前までは男ではなく女である自分の身を呪い、圧倒的な才能の持ち主であるクリシェと出会うまでは周囲が不安に思えるほど過剰な努力を自分に課していた。

才能に反して幼く家庭的な彼女の面倒を見る内に、将軍の娘としてしか自分を捉えることの出来なかった彼女の視野も広がり、ささやかな日常を大切に思うようになっていく。


才能があり、努力家であるため非常に優秀ではあるが、基本的に苦労性で無理をしがち。

父である英雄ボーガンとその部下、そしてベリーにクリシェ。

優秀な人間に囲まれて育ったために自分を過小評価するきらいがあり、無理な努力を自分に課してしまうことの多い真面目で責任感が強すぎる性格。

暇になったら暇になったで勉学や執務に勤しむであろうワーカーホリック体質。

元帥になってからは忙しいが口癖になっているが、軍学校の設立など父の希望を叶えられることもあってやる気に満ち溢れていた。


クリシェを妹として非常に可愛がっているが、その異常性に危うさも強く感じている。

彼女を戦わせること自体が自分の不甲斐なさだと思っており、彼女が戦場から離れ平穏な暮らしを送れるようにするのが目標。

クリシェを頼り、利用してしまう自分が嫌いで、しかし与えられる重責と状況がそれを許してくれず、悩んでいる。

ベリーに対し強い尊敬を抱くと同時、その能力や振る舞いにライバル意識や嫉妬心を抱いており、いつかぎゃふんと言わせてやるのが夢。


竜の血によるベリーの病を切っ掛けで彼女に対するコンプレックスと真っ向に向き合うことになり、一時は自分への失望によって彼女達から離れることを考えた。

けれどクリシェがセレネの能力ではなく、セレネ自身の不器用さすらを愛してくれている事に気付き、時間を掛けてそれを受け入れ、共に歩むことを決める。


☆お引っ越し後

幼き神が創る永遠の楽園――その風紀取締委員会執行役員(実質1名)。

放って置くと際限なく乱れて行きかねないお屋敷の風紀を取り締まるべく日々活動するお屋敷の理性。風紀取締委員会では相互監視を含めたお屋敷ルールを多数制定しており、節度ある触れあいを奨励するが、取り締まるのがセレネしかいない上に巻き込まれるため、形骸化と引き締めが繰り返されている。

仕事がないと死んでしまう極度のワーカーホリックなため、剣を打ったり壺を作ったりと有り余る時間を物作りに費やすことが多い。お屋敷の収入源の一つとなっており、時折作者不明、出所の分からない名剣や芸術品が市場に流れる。

最近では良質な鉄鉱石を掘ったり土を探す所からやっており、彼女らの旅行は大抵セレネのそれに付き合うか、ベリーが言い出すかのどちらかが基本。

また家作りにも凝っており、各地に様々な小屋や別荘を設けている。リーガレイブの寝床側に造った立派な小屋は訪問した竜の羽ばたきで計八回壊された。


△歴史上

アルベリネアの姉として一般的にもよく知られており、特に職業軍人であれば軍の母として知らぬものはいない存在。

彼女の父、当時の英雄ボーガン=クリシュタンドが残した参謀部構想を本格的に実用化、普及させた軍人であり、個々の継承的な教育や独学が主流だった指揮官の能力底上げ、平均化を目的とした軍学校の設立にも深く関わっていたことから、後世において天才軍略家アルベリネアの対として天才軍政家と呼ばれることが多い。

今なお軍学書の多くには冒頭に彼女のクリシュタンド家、『雷と鷹の紋章』が記されることが多く、参謀部を組み込んだ軍構造はクリシュタンド式として知られている。

若くして元帥に就いた彼女は当時の戦略、戦術や、アルベリネアの戦略、戦術を解説を交えて書に綴り、その写本や複製本は軍人達の参考書として多くが残された。

原本のいくつかにはアルベリネアが追記したと思われる部分があり、解説に対する口語での指摘、脚注等が隅に記され、その関係が非常に親密であったことを窺わせるものとなっている。

アルベラン王国において実質的な最高位である元帥にまで昇り詰めながら、夫を迎えず子を成さなかったこと、また多くの記述からアルベリネアと姉妹以上の関係にあったという見方が主流。


★戦闘指揮

元々攻撃的気質の持ち主であるが、常に自分の能力を疑っており無理をしない。

優秀な部下達の能力を最大限活かすことを重要視しており、クリシェとは真逆の視点から戦術構築を行なう。

奇策の類よりも兵の質や数で押しきる基本的戦術、連携を好み、戦略段階でその優位を確保することを重視する。

自身の能力を過小評価することは現在の立場からすればある種の美点ともなっており、他人の能力を素直に評価し役割を割り振る姿に政治的な色もなく、純粋な王国武官の長として評価されている。


経験を積むことなく元帥の地位に立ったが故に、やはり戦術家として羽ばたくことはなかったが、戦略面での失敗はなく、優秀な元帥として王国を長く安定に導いた。

引っ越し後も剣を振り続けており、地道に研鑽を重ねている。


外見:金の長髪。青の瞳。細身。胸普通。秀麗。

鎧:銀風銀翼のプレートメイル。

→クリシェ:どうしようもないお馬鹿な子。でも大好き。

得意:剣の鍛造。木材加工。壺作り。

好き:剣術。読書。物作り。クリシェ達を愛でること。

嫌い:戦。ルール違反。竜の羽ばたき。

悩みごと:お屋敷の風紀。



○ベリー=(リプス)=アルガン 『混沌・善』

理性と戦う理性が弱い系女子。クリシュタンド家使用人。お屋敷の魔女。

事業の失敗で没落したアルガン家の娘。セレネの叔母。

元々は病弱であり、そのせいもあって自己評価が極めて低く気性は内向的。

自身の体のことで他人へ迷惑を掛けることを気に病んでおり、幼少の頃は他人が自分を気遣わないで済むようわざと素っ気ない態度を取っていたが、使用人達から嫌われるほど余計にその心を病み、いつからか自分の死を願いながら生きるようになっていく。

家が没落し、クリシュタンドにやってきて体の問題が解消されても彼女の自己嫌悪は募るばかり。

敬愛する姉に真面目過ぎるセレネの面倒を頼まれた彼女は、姉の代わりになるよう明るく振る舞っていたがそれもまた上手くも行かず、何一つまともにできない自分を呪っていた。


クリシェと出会い、その純粋な愛情と好意を向けられることで救われた人物の一人。

表向き穏やかで人当たりが良いものの、アルガン家没落の際に若干の男性不信を患っており、内向的な気性も相まって人間関係には一線を引いている。

天才肌で要領が良く使用人にしておくには惜しい才能の持ち主であるが、その気性もあって使用人としての自分の在り方に満足しており、表舞台に出ることを望まない。

現状はその才能と情熱のほとんどを料理に向けており、ボーガンやセレネなどは常々彼女の才能が勿体ないと感じていた。


見た目にそぐわず頑固で、論理的に見えて感覚派。

良いと感じたことに関しては道理より感情を優先する面がある。

クリシェに対し強い愛情を抱いており、彼女の幸福を一番に考えているが独占欲も強くなってきている。

自己嫌悪が強く、元々内向的な彼女の愛情は依存気質が強いものであるが、対象のクリシェも同様の気質のため手に負えない。


最近では色々と吹っ切れており、クリシェが望むものが自分が望むもの。

それで良いと感じており、そしてそれは大きな間違いではないと信じている。

あるいは彼女と過ごす自分にこそ、求めていた何かを見いだしたのかも知れない。

自身と同じく舌に魔術刻印を施したクリシェに、何やらよこしまな念を抱いている。お揃い。


竜の血によって自分が死ぬことは彼女達にとって悪いことでもないと考えていたが、死んでもなおクリシェが自分を求めたことで完全に吹っ切れる。

――わるいのはクリシェ様。

永遠に彼女を縛る言い訳は、彼女が心の底から求めていたものであった


☆お引っ越し後

幼き神が創る永遠の楽園――その風紀取り締まられ役。

クリシュタンド家に関する業務がなくなった所にひたすら甘えてくるクリシェやクレシェンタを愛でるという実に不健全な業務が挟み込まれており、セレネの説教を躱し自分の理性を保つため、菜園や畑で作物の品種改良をしたり加工品を作ったり、旅行の計画を練ったりして過ごしている。

趣味であった菜園は年々広がり、お屋敷の周辺は世界各地の果実や野菜、香草等が植えられており、これらやその加工品もお屋敷の収入源の一つ。

行商を装い各地で収穫物や加工品を売りさばいており、香辛料と同じく売り物に適しているため、ワイン造りにも力を注いでいる。

だがそのせいで試飲と称して酒を飲み、酔っ払った振りをしながら甘えるクリシェ達の新たな人格、『酔っ払いクリシェ』と『酔っ払いクレシェンタ』という性質の悪い『酔っ払いツインズ』が誕生してしまう結果を呼び、現在は八十七度目の飲酒禁止法案がクリシュタンド会議で審議中。


△歴史上

世界一有名な使用人。通称アルベリネアの使用人。

愛する使用人を救うため、アルベリネアは絶大なる古竜に単独で挑み、盟約を交わした――という逸話は、シンプルで美しいその筋書きからクラインメール時代にも大人気な題材の一つ。絵画や戯曲、それをモチーフに曲まで作られている。

いくつかの手記に残されるその口付けに関しては論争が生まれていたが、その真に迫る一枚の絵画、『聖霊と乙女達』(フィリペーヌ作)を切っ掛けに沈静化の方向に向かった。

その千年後、赤毛の女性を攻撃出来ないというジャレィア=ガシェアの弱点が知られると、連合軍兵士からは愛と幸運の女神として崇められることとなり、その後の魔術師達によるアルベリネア継承が許された(クラインメールの最高位魔術師もアルベリネアを名乗っていた)一因ともなっている。

戦争のすぐ後には生まれてきた赤毛の女の子にベリーと名付けるのが流行った。

戦争から時間が経つにつれブームも去り、『気高き鷹の館にて』と少数の資料、『竜の盟約者』を題材にした劇にしか残されていないベリーという名前は民衆から忘れられ、『アルベリネアの使用人』が固有名詞のように扱われる場合が多い。


外見:赤い長髪。茶の瞳。小柄。胸大きめ。童顔可憐。舌に魔術刻印。

鎧:メイド服 (ガーターベルトオプション)。

→クリシェ:誰より綺麗な存在。わたしのクリシェ様。

得意:料理を含めた家事全般。礼儀作法。屁理屈。護身術。盤上遊戯。

好き:料理を含めた家事全般。教えること。クリシェ達を愛でること。旅行。

嫌い:誘惑に弱い自分。

悩みごと:理性。



○クレシェンタ=ファーナ=ヴェラ=アルベラン 『秩序・悪』

神様風味の犬系女子。アルベラン王国第一王女。お屋敷の犬。

『泣かぬ赤子』と呼ばれる王家の忌み子であったが、ノーラという使用人の機転により一命を取り留め、王女として育てられる。

クリシェと同様高い知性を代償に共感性が欠如しており、利己的な殺人に良心の呵責を覚えない少女。自分が権力を握るために都合の悪い実父や弟、使用人などを様々な手段で殺害しており、保身のため手を汚すことにためらいがない。

生まれてすぐ忌み子として殺されかけた結果、自分が常に命を狙われる立場にあるという強迫観念に支配されている。ある意味クリシェ以上の異常者と言えるが、王宮で育った彼女は病的なまでに演技力が高く、その異常性が露見していない。

実の姉であるクリシェを唯一自分と同列の存在であると認めており、協力し合えると感じた彼女は国王殺害の濡れ衣を叔父ギルダンスタインに被せ、クリシュタンドへ身を寄せた。


クリシェやそれを取り巻くベリーやセレネと交流を持ち信頼関係を築いたことで、彼女の内面にも変化が生じている。

頭を空っぽにして初めて得られる幸福に気付いたこともあって、近頃は随分と丸くなった面があるが、本質的な性質や強迫観念は失われていない。

クリシェ以上に安心と平穏への執着心が強い。

彼女の殺意は安心への強い執着と強迫観念に由来するもので、快楽殺人者というわけではない。

近頃は精神的に落ち着いて来ている。

案の定1/1クリシェで成長が止まった。


ベリーを自らの手で殺してしまったことを後悔し続け、それを忘れられずにいた。

彼女に嫌われることを恐れ、その再会に怯えていたが、それをクリシェに吐き出し再会を果たしたことでようやくその苦しみから解放される。

彼女は人でなくなると同時に、ようやく人となった。


☆お引っ越し後

この世界を創造出来たのは自分のおかげ、自分が一番偉い。お屋敷の主。この世界の神などと、偉そうにするところは変わっていない。

ベリーの仕事に文句を垂れたりセレネの物作りに文句を垂れたりしながら、その後ろをちょこちょことついて回ることが多い。手伝いは気まぐれ。

ベリーにからかわれてはぷりぷりと怒りセレネの所へ、セレネに馬鹿にされてはぷりぷりとベリーの所へ、二人の間を行ったり来たりを繰り返すのがいつもの光景となっている。

言い訳抜きに甘えることができない難儀な性格のため、寝起きで頭が動かない、甘味を人質、お酒に酔った、寒い等々、その優れた頭脳を用いて、様々な言い訳が使える状況を意図的に誘発させる。

意図的にそれを防ぐと我慢(注:小瓶程度の容量)の限界を迎えて拗ね始め、『構ってクレシェンタ』状態の沈静には最低数日の甘やかし期間を要する。


△歴史上

実質的には世界統一(文明レベルとして他の大陸を圧倒していたため)を果たした偉大な女王であり、アルベランの魔王として恐れられた。魔術史上ではクリシェと並び始原法術師と呼ばれる魔導士の祖。

かのアルベラン女王グラバレイネさえも霞むと言われる伝説的な支配者であり、異様なまでの先見性を持ち、様々な国を飲み込みながら大きな反乱を起こさせず、広大な領土を安定させたことから神の目を持っていたと記される。

現存する全ての言語を母国語のように操り、世界各地の街や村に到るまで、その財政状況の全てを記憶していたと言われ、残されている当時の記述にはその異常なほどの頭脳を称賛し、あるいは恐れるものが多い。

少数の記録に残る大粛正を除けば瑕はなく、治世においては国家の繁栄と貧民層の救済を何よりも重視し、その絶世の美貌と相まって民衆から絶大な人気を誇った。

五十年近い間、彼女不在の王国が大きな問題もなく正常に機能していた理由はいくつかあるが、何よりもまず、その絶対的と称されるカリスマあってのものだと考えられている。


闇に葬られた大粛正の存在や、統一後のアルベリネア暗躍。

政治的敵対者には一切の容赦を見せない姿勢と、異常なまでの能力の高さ。

アルベリネアと彼女がいわゆる『アルベランの忌み子』であったいう見方は強く、建国王バザリーシェやグラバレイネ同様、歪な精神性を有していたとする意見は多い。

ただどうあれその偉業は翳ることなく、クラインメール初期から中期に掛けての数百年に及ぶ平和は彼女が生みだしたと言っても過言ではなく、前例なき名君であったことに疑う余地はない。


彼女が完成された王国を手放した理由は不明とされているが、学校の普及と平民からの登用を前提とした改革、議会の制定等の政策から数十年前からの計画であったことは間違いないとされ、今も活発に議論が行われている。


外見:赤みがかった金の長髪。紫の瞳。非常に小柄。細身。胸控え目。妖精的。

→クリシェ:お馬鹿で優しい姉。大分お馬鹿。羞恥心がない。

得意:嘘。演技。計算。言い訳。犬の真似。

好き:自分。甘やかされること。スキンシップ全般。クッキー。ご褒美。指導すること。ワインの味見。

嫌い:蔑ろにされること。

悩みごと:偉そうで出来の悪い者達の躾。




○アーネ=ギーテルンス 『中立・善』

何年経ってもドジっ子系女子。クリシュタンド家使用人。お屋敷の傍観者。

侯爵家生まれの令嬢。様々な家庭教師がつけられ英才教育を施されたが芳しくなく、将来を危ぶんだ両親により王領使用人として行儀見習いへ出された。

が、そこでクリシュタンド家使用人ベリーと遭遇。

彼女に心酔し、両親が頭を下げて取り付けた王領での使用人の立場を投げ捨て、勘当寸前になりながらもクリシュタンド家使用人となった。

頭は悪くなく、不器用というわけでもないが、あがり症、妄想癖、勢い先行の彼女は重要な場面で失敗をすることが多く、周囲をよく苛立たせる。

性格は真面目で善良、家柄、見目も悪くなく、黙って座っていれば引く手数多であるのだが、黙って座っていることが出来ない気質。

近頃クリシュタンド家の背徳的な現実を目の当たりにし、妄想が止まらない。


何かと自分に優しく褒めてくれるガーレンに懐いており、密かに自分と似た雰囲気の漂うミアとお話ししてみたいと思っている。

頭角を現した才女、エルヴェナに危機感を覚えはじめた。

ガーレンが旅立った日から、暇を見つけてクリシュタンドのこれまでを書き記し、『気高き鷹の館にて』を両親に贈った。

下巻には迂遠な表現を用いられた赤裸々なクリシュタンドの日常が描かれると同時、ガーレンという尊敬すべき老人についてが記された。

愛情深い彼の姿について触れ、寿命で旅立った彼に代わり、アーネがその生涯をクリシュタンドで捧げることを決めた理由が書かれている。

本の形式を取った手紙のようなもので、実際の所上巻から下巻のほとんどは前置き。


クレシェンタがベリーを安楽死させたのだと気付いており、そのことで彼女が苦しんでいることを知っていた。

口にするべきかどうか迷っていたが、何年経っても変わらないクリシェの優しさを見て、最終的にはそれを伝えることを決める。


☆お引っ越し後

定期的に皿を割り、割った皿の数は随分前に千を超えた。

エルヴェナと共に使用人として過ごし、ベリー達を手伝うのが常。

何故か一人慌ただしく毎日を過ごしながら空いた時間には童話や物語を書いており、時折買い出しに出た際、孤児院などに寄贈したりしているが、お屋敷の主従愛を描いたものが多く、教育に悪いともらった人を悩ませている。

『気高き鷹の館にて』が有名な歴史的資料となっているなどとは全く思っていない。


△歴史上

『気高き鷹の館にて』の筆者として知られるクリシュタンド使用人。

その仰々しい語り口、登場する偉人達の意外な姿から、最初は後世の創作を疑う声もあったものの、彼女らに近しい人間が残した手記と照らし合わせ、現在は彼女らの真実に非常に近しいものであったと認識されている一冊。

それだけに竜の盟約や五大国戦争などの内容が含まれると考えられる失われた下巻が惜しまれており、実は失われておらず流出していたなどという話と共に偽物の下巻が出回ることも何度かあった。

隙あらば自分語りを繰り返すその内容から、アルベランの研究者達は無駄にアーネの生態に詳しい。

『気高き鷹の館にて』においてはベリーを指し、常人では足元にも及ばぬ天才、使用人中の使用人、美と使用人の女神に愛されたなどと異様なまでに持ち上げており、一時はベリーが彼女に強要した描写ではないかという説も流行っていた。


外見:後ろで纏めた背中に掛かる程度の黒髪。焦げ茶の瞳。中肉中背。かわいい。

→クリシェ:尊敬する使用人の主人であり、心優しい永遠の少女。蠱惑的な無垢。

得意:そこそこの料理。そこそこの家事全般。そこそこの礼儀作法。好意的解釈。間の悪さ。物語作り。

好き:妄想。クリシュタンド家。ガーレン。物語作り。お屋敷の日常観察。

嫌い:自分の集中力のなさ。

悩みごと:不健全な思考。



○エルヴェナ 『混沌・善』

見守る振りして誘導系女子。クリシュタンド家使用人。お屋敷の小悪魔。

王国南部の村出身で、村長令嬢。四姉妹の末子でカルアの妹。

街に出た姉を追って馬車に同乗したが、見失った姉を探す途中運悪く奴隷商に捕まり、見目の整っていたことからその体を売らされていた。

ロランドはその際の客で、今は彼に買われて屋敷の使用人として働かされていたが、クリシェによって救われ、クリシュタンド使用人として仕事を宛がわれる。


善良な気質ではあるが、過ごした環境から倫理感が少し壊れており、小悪魔気質。

クリシェには強い感謝の念と好意を抱いているが、鍋の横で踊る鶏のように無垢無警戒なクリシェを見ると時折悪戯心が湧く。

これまでの経緯から異性に苦手意識を持ち醒めているが、反面そうした行為に対する抵抗感は薄く、スキンシップの範疇が広い。

元々姉のカルアへの執着は強い方であったが、それまでの生活で悪化している。

ジャレィア=ガシェアに関してはクリシェの次に詳しく、知らない間に王国の重要人物。

これまでは使用人という立場を単なる仕事と捉えていたが、最近はベリーという目標が出来、やる気に満ち溢れている。

カルアの翠虎討伐の褒賞金によってクリシュタンドへの借金返済を終えたが、恩義を返せた訳ではないと変わらずクリシュタンド家に仕える。


永遠に関して悩んだが、姉とクリシェに救われた『エルヴェナという自分』を何よりも大切に思っており、生まれ変わりによってそれが失われるのを拒み、彼女達に付いて行くことを決めた。

幸福を感じる今の自分は誰より愛する姉がその華やかな人生を犠牲にしてまで求めたものであり、己という人格を愛することが姉への愛の証明と考え、ミアとは違った形で姉を愛し続けることを誓っている。


☆お引っ越し後

アーネと同様、彼女らの仕事を手伝いながら、空いた時間には趣味で魔術や魔法の研究を行っている。賢く発想が柔軟であるためベリーとは話が合い、二人であれこれ答えのない問題を議論することも多い。

ただ彼女の楽しみはどちらかと言えば彼女達自身の方にあり、『物分かりの良い相談役』という立場を利用して言葉巧みに彼女達の思考を誘導。

セレネやベリー、リラなどの理性を試し、その姿を眺めるのを好んでおり、試飲で酔った振りをすれば甘えられると二人を最初にそそのかしたのも彼女である。小悪魔。

セレネは猫を被っていた彼女の本性やその意図を理解しており、お屋敷の風紀を乱す巨悪の一つと見なしているが、姉に似て逃げるのが巧みな彼女の尻尾を掴めないでいる。

空気の読めないアーネに予定を狂わされることがよくあり、密かな天敵。


生まれ変わったカルアとミアが今も一緒に幸福に過ごしていることを知って喜び、そして心中にそれほどの乱れはなかったことを安堵した。

二人が生まれ変わっても、二人が忘れてしまっても、ここで味わう幸福こそがその続き。

二人との思い出は今もなお、途切れることなく紡がれている。


△歴史上

『気高き鷹の館にて』の筆者として知られるクリシュタンド使用人――のライバルとして微妙に知られている存在。

あのアルベリネアの魔術研究補佐として働いていたこと、そして姉であるカルアの戦場での活躍から、彼女もまたある種の天才であったのではないかとも語られているが、残されている記録は少なく、その多くは謎に包まれている。


外見:肩で切りそろえた黒髪。焦げ茶の瞳。細身。胸大きめ。秀麗。

→クリシェ:恩人。純粋無垢。主従含めて悪戯心が湧くほど可愛い。ベリー依存性。

得意:家事全般。術式刻印。思考誘導。

好き:明るい人。純粋な人。可愛い人。長い髪。掃除。尽くすこと。魔導研究。堕落を眺めること。耽美的な退廃。

嫌い:良いところを見逃す事。

悩みごと:時々絶妙なタイミングで空気を壊すアーネ。




○リラ=シャラナ 『混沌・善』

誘惑の園に紛れ込んだカモ系女子。クレィシャラナの聖霊巫女。お屋敷のカモ。

聖霊に身を捧げるクレィシャラナの巫女であり、聖霊ヤゲルナウスに仕える神官。

アーナ皇国の巫女姫とは宗教上対等、もしくは上位にあり、アーナ皇国の神官からは儀礼上同様の敬意を向けられる少女。

ただクレィシャラナにおいては『女は実りをもたらすもの』という独特の慣習から、普段は他の女達と変わらず普通に働き生活している。

そのように聖霊の巫女は名誉ある役割であるが特に旨味があるわけでもなく、生涯を聖霊とクレィシャラナに捧げる立場。

本心からなりたがる者は多くないが、母を早くに亡くし、先代巫女に世話になったこともあって、彼女の死後それを継ぐことを決めた。

幼い彼女の決断に多くの者――特に同年代の少年達が必死で止めたものの、彼女自身は先代巫女と同じ、クレィシャラナの母とも言える現在の立場に満足している。


平地の言葉を流暢に話し、頭脳に優れるが警戒心が薄く自分の魅力に鈍感。

どこか抜けたところも某副官に似ているが、身につける衣装と備わった女性的な魅力、人を疑わない純朴さもあって色々危ない少女。

ややブラコン気味。

王国訪問の顛末をリーガレイブに報告した後、何か変化がある度報告するように求められ、以前より密に謁見を繰り返し、リーガレイブが直接話をすることも増え、その問いに頭を悩ませ答える日々。

兄の子や同年代の子が生まれて成長していくのを眺めながら、永遠を生きる聖霊と定命の存在である人として、巫女としての在り方について考えるようになる。


クレィシャラナは王国との交流によって徐々にその文化を受け入れ始めており、いつか聖霊の巫女自体が形骸化し、消えていくことは目に見えていた。

聖霊は永遠なれど、人の営みに永遠などはない。

クリシェが天極を作るためリーガレイブの元を訪れた際、改めて彼女の話を聞き、己が最期の巫女として永遠に聖霊へと仕えることを決意する。

欲心ではなく、死を恐れたのでもないことを示すため、村とは謁見に関連するやりとりを除いて交流を断ち、禁域の内側にてその後の数十年を一人で過ごした。

難色を示した父や兄、長老達も次第にその覚悟を受け入れ、彼女を最後の聖霊巫女とすることを認めることになる。


☆お引っ越し後

実に孤独な禁欲生活の後、彼女を襲ったのはどうしようもない誘惑であった。

極上の美食、上質な寝具に洗いっこ、驚嘆せずにいられぬスキンシップの数々。

それに溺れず気にしないでいられたのは最初の十年程度のこと。

清貧を常とし、禁欲節制を守るのは素晴らしいこと。しかしそのように素晴らしい教えをこれまで守り抜いてきたリラ様であれば、この程度で堕落することなどありえません。むしろ誘惑から目を背けず、受け入れた上でご自分を律することこそ本当の禁欲なのではないか――などというエルヴェナの囁きによって順調に堕落中。

エルヴェナは節制と禁欲を頑張るリラを満足させてこそ最高の使用人と呼べるのではないかなどとクリシェの思考も誘導しており、互いを競わせてこっそり楽しんでいる。

定期的に禁欲を誓い直し、節制によって自制心を養い、堕落させられるのサイクルを繰り返しているが、基本的に疑うことを知らない性格のため純真を弄ばれていることを知らない。

最近は禁欲後のご褒美が密かに癖になっている。


△歴史上

アルベリネア達とは個人においても親しい間柄であったとされ、偉大なる聖霊巫女としてクレィシャラナにて伝わっている。

聖霊信仰とそのクレィシャラナの教えは千年経てもなおアルビャーゲルに造られた寺院とクレィシャラナ僧達に伝わっており、最後の聖霊巫女として聖霊に身命を捧げたとされる逸話は今も彼等の心に刻まれている。

死後も霊魂となって聖霊と共にあったとされており、聖霊が消えるまで謁見時に彼女の姿を見た、あるいは彼女との会話を聞いたという話がクレィシャラナに残された。

アルベリネアと共に人の極みにあるものとして深い敬意を向けられ、生涯の修練によって欲を捨てた偉大な女性として知られる。


外見:お下げにした長い黒髪。茶の瞳。引き締まった体。胸はやや大きめ。可憐。

鎧:露出過多な巻き布と腰布。

→クリシェ:純粋な人。とても綺麗で可愛らしい。誘惑の象徴。リラの自制心を試す相手。最近は全く打ち勝てていない。

得意:採取。グリフィンの世話。精霊の相手。聖霊の相手。禁欲の決意。

好き:美味しい食事。洗いっこ。兄。禁欲。ちょっとだけ。頑張ったご褒美。宴だから。

嫌い:禁欲中に見る夢。

悩みごと:そろそろご褒美期間に転がりそう。



○ぐるるん 『混沌・中立』

人慣れした猫系女子。翠虎。

アルビャーゲルの翠虎で、クリシェに餌付けされて懐いた翠虎。

アルビャーゲルでは何不自由ない生活を送り、すくすく伸び伸びと育ってきた一頭で、翠虎としてもやや大柄で知能が高い。

豊かな環境で絶対的強者の位置にあったためか、これまであまり飢えたこともなく野生の獣としては警戒心が非常に薄い。


クリシェが食べきれず残した翠虎の死骸、その内臓を貪りつつ、本能から来る縄張り意識から匂いを辿り彼女を追っていたのだが、後を追えば新鮮な肉が次々と提供されていく状況に謎は深まる一方。

残されているのはしかも、一番美味しい内臓である。

これはもしかすると自分のために残しておいてくれているのではないか――そんなことを考えながらクリシェに追いつけば、やはり提供される藍鹿の内臓。

明確な解を得た彼女はそうして謎の二本足、肉の提供者クリシェと行動を共にすることを決める。

狩りをしないでも何故か肉を与えられる環境を満喫しているようで、現在の生活には非常に満足しているらしい。


段々と知った顔が消えていき、寂しげな顔をするクリシェを少し心配していた。


☆お引っ越し後

なんだかよく分からないものの見なくなった顔が若くなって戻ってきたため、相も変わらず喰っちゃ寝て過ごす。

最近彼女らの言葉のほとんどが理解出来るようになっており、都合によって理解していない振りをしつつ怠惰な日常を送り、悠々自適。

濃い魔力のおかげで大きさの割りに燃費が良いが、やはり関係なく食べることが好き。

体質的に太ると巨大化するため、これ以上太るとご飯を減らすというクリシェの言葉を聞いて無意識に成長を止めた。

荷物運びが唯一の仕事。


△歴史上

アルベリネアが使役したとされる伝説の翠虎。

肉食の魔獣は魔獣の中でも非常に凶暴であり、元より群れを作らない種は人に慣れない。プライドの高い翠虎が檻にも入れられず放し飼いをされ、使用人に世話をされていたという事実が魔獣研究者の間では信じられず、その研究のため多くの犠牲が生じた。

現在まで翠虎を手懐けた成功例はなく、何かしらの不思議な術を用いたのではないかと見られている。

ぐるるんという呼称で呼ばれていたとの記述が残っているが、これまでのアルベリネアの命名から、グラゥルンやグレゥランなど古語が用いられていたと考えられており、書き手の聞き間違えであるという見方が強い。

彼女の愛馬であったとされるベィルランも『気高き鷹の館にて』では記述がぶるるんとなっており、古語の発音を正確に理解出来る人間は少なかったと思われている。


外見:翠の体毛に黒の縦縞。肩高十尺の極めて巨大な虎。

→クリシェ:餌をくれる二本足。名誉翠虎。母性本能をくすぐる。時々厳しい。

得意:狩り。荷運び。

好き:散歩。寝ること。食事。ブラッシング。二本足の玩具。追いかけっこ。魔獣狩りの後のご馳走。

嫌い:お預け。

悩みごと:なし。




■――ご近所さん



○リーガレイブ 『混沌・中立』

昔はぶいぶい言わせていた系古竜。アルビャーゲルのリーガレイブ。ヤゲルナウス。

かつて世界を席巻した種族、竜の生き残り。

古代に起きた縄張り争い、竜戦争では何頭もの竜を殺しその血を大地に振りまいた。

縄張り争いをするほど数がいなくなったこと、皆が戦いに飽き離れて暮らすようになったことで、現在はアルビャーゲルに引きこもり世界の移り変わりを眺めている。

竜の中では比較的人との交流が深い方で、竜の中では変わり者と言えたが、多かれ少なかれ現在生き残っている竜はそのように過ごしている。

竜としても知能は高いが、元々の能力の高さもあってそれを活かすことはあまりなく、日々を哲学的な問答へ捧げることに満足している。

槍を突き立てられながら笑う奇抜な性癖の持ち主としてクリシェからは変態扱いされているが気にしていない。


リーガレイブを守るため、クレィシャラナが戦渦に巻き込まれることを理由にこちらへ移動したが、実際はリラを気遣った面が大きい。


☆お引っ越し後

変わらず思索をして過ごすが、最近は頭を使う遊戯にハマり中。

過去に多数の竜を殺した凶暴さから随分と恐れられており、多くの竜はリーガレイブやクシェナラースを刺激しないよう大人しくしていたが、同時に強い竜は敬意を向けられるべきものであるため、二頭が大人しくなったと知ってからは多くの竜が寝床に訪れている。人気者。

記憶力に優れ、長い年月を経た蓄積があり魔力の扱いに長けるものの、特に竜は瞬発的な思考速度そのものに優れるという訳ではなく、基本的には賢い人間程度。

単純な盤上遊戯程度ならセレネやリラ達とも楽しめるが、クリシェやクレシェンタとは当然ながら勝負にならない。

ただ、常に遠慮なく最適解を示す二人は自分の弱点が分かりやすいらしく、それはそれで楽しめるらしい。


△歴史

アルビャーゲルにおいて信仰されていた古竜。

様々な記述や、大抵竜の住処に存在する世界樹からその実在は疑われていない。

アルベリネアと盟約を行った古竜であると同時に、聖霊協約の古竜として知られており、人の世界に調和をもたらした偉大な存在として有名。

歴史上では最も有名な古竜であり、古竜と言えばまず大抵ヤゲルナウスの名が挙がる。

古竜達がどこに消えたかを知る者はおらず、世界樹と一体化したとする説が比較的主流。

魔竜と称されるクシェナラースと対極の存在として、二頭をモチーフにした物語においては正義の竜として扱われ、決して交わることのない間柄とされている。


外見:赤紫の瞳。岩のような青灰色の鱗。城に等しい巨体。蝙蝠の如き巨大な翼。

→クリシェ:小さきものでも傲慢愉快な一匹。永遠なる盟約者。真理を解き明かした者。謎解きは苦手らしい。

得意:魔力の放出。謎掛け。知恵比べ。

好き:思索。観察。賢しい小さきもの。

嫌い:思索を妨げるもの。

悩みごと:運の偏り。



○クシェナラース 『混沌・悪』

我の眠りを妨げるな系古竜。ドーガルアズのクシェナラース。魔竜。

かつて世界を席巻した種族、竜の生き残り。

古代に起きた縄張り争い、竜戦争ではリーガレイブと共に多くの竜から恐れられた古竜。眠っていたところを槍で突かれた不愉快から、人間を害虫のように嫌っている。

羽ばたく度周囲にある人間の国を執拗に焼き滅ぼすことから、古竜の間で地慣らし竜とも呼ばれた。

操る魔法は竜を相手にするためのものではなく、あくまで掃除用。

効率よく人間を処理するために作られたものであり、クリシェの最初に挑んだ古竜がクシェナラースなら高い確率で死んでいた。


当時エルスレンと同等の国土を持っていた大帝国ルシェランを三日で焼き滅ぼした逸話があり、その名残としてその帝都があった場所にはルシェランと名付けられた巨大湖が存在している。

古竜が恐れられる逸話は複数あるが、大部分は彼が作ったもの。

暴れまわった後の生き残りが何人も命を捨てて彼の慈悲を請いに来ることが段々面倒になり、今後一切の関わりを持たず、眠りを妨げぬことを条件に許し、ルシェランの生き残りはフータリア聖霊国を築いてクシェナラースの眠る山を禁足地として管理することとなった。


クラインメール中期における竜狩りが切っ掛けで再び空を舞い周辺を焼き滅ぼしたが、すぐに面倒くさくなり、クリシェが誘いに来たこともあって、リーガレイブや他の竜のいる幻想界に引っ越しを決める。


☆お引っ越し後

盟友リーガレイブと殺しあい以外の楽しみが出来、満喫中。

最も気が荒い竜であった二頭が殺しあいもせず仲良く顔を突き合わせて過ごしている姿は他の竜達にとっても興味深く、それもあってリーガレイブの寝床は多くの竜の溜まり場となっている。

常に本気、そこそこ歯応えがありつつもそこそこ勝てるセレネが人間の中ではお気に入り。

逆に五分の戦いを演出しつつ接待し、それとなく指し筋を指導するベリーは非常に気に喰わないが、かと言って問答無用、手も足も出させず圧勝するクリシェやクレシェンタもそれはそれで気に食わない。


△歴史上

竜の中でも史上最悪の魔竜として恐れられる存在。

意図的に人間を殺した竜は何頭か存在していたが、クシェナラースはその中でも飛び抜けており、大小合わせ十数の国を滅ぼしたと言われている。

クラインメールの用いた封印結界や対魔力障壁など本気を出した竜に対しては何の意味も持たず、目覚めた竜の恐ろしさと人の限界を知らしめ、眠れる竜を起こす、人の天秤に竜を乗せる、などとそれになぞらえたことわざがいくつも作られた。

今もドーガルアズに眠っているのではないかと恐れられているが、改めて禁足地に指定され、いかなる理由であっても踏み入れたもの、そしてそれを計画した者は問答無用の極刑とされているため、確認はされていない。

多くの竜が似たような扱いを受けているが、クシェナラースの場合は特に範囲が広く、周辺地域では魔法行使やその研究さえ禁じられている。


外見:赤紫の瞳。岩のような暗青灰色の鱗。城に等しい巨体。蝙蝠の如き巨大な翼。

→クリシェ:世界の真理を解き明かした者。生きる叡智の無駄遣い。

得意:対人魔法。

好き:思索。勝負事。博打。

嫌い:思索を妨げるもの。人間。

悩みごと:遊戯の必勝法。




○リナセラ 『中立・悪』

茶目っ気たっぷりな盤上遊戯大好き系古竜。ライナレスのリナセラ。観察者。

かつて世界を席巻した種族、竜でも最古の存在。

古代に起きた縄張り争い、竜戦争では静観していた側で、様々な生き物や人間の生態観察をその頃から行っていた。

魔術を極めんとした多くの竜が根源に飲まれる中、その探究に興味を持たなかった竜であり、現存する竜の中では最も魔術に長ける。

万象を見通す観察者と呼ばれ、世界中のあらゆる場所を見通すことが出来、竜戦争の時代には相手が攻め入る前に咆哮で牽制、あるいは撃ち落とし、若い竜を恐れさせた。

人間と直接交流することはなかったが、遠隔から神を騙り、様々な助言を与えてそれを見て楽しむことがよくあり、そういう意味では交流が一切なかった訳ではない。


向こうで流行っているらしい盤上遊戯に興味を惹かれ、幻想界へ移動した。


☆お引っ越し後

人間達を眺めるのは変わらないまま、遊戯を考える新たな楽しみが増えた。

リラはほとんど気付いていないものの、大抵リーガレイブの遊戯を遠くから観戦している。

遠隔から時折屋敷の人間に話し掛けることもたまにあったが、驚いたアーネが皿を割る、スープをひっくり返す(不思議とそういうタイミングに限ってアーネが何かを運んでいることが多い)ということが多発したためクリシェに禁止された。

クシェナラースに次いで良く顔を出し、考案した新たな遊戯を披露しに来るが、先手後手のバランスが取れていないことが多く、クリシェとクレシェンタに検査させるのが恒例となっており、二人からは面倒くさがられている。

先を読むことには長け、一手に丸一日掛けても誰も文句を言わない気長な竜同士の戦いになると非常に強いが、思考速度はそれほど早くないため、ある程度の時間制限を設けると一気に負けが込む。

ちゃんと付き合ってくれるエルヴェナとリラがお気に入り。

ベリーとは一日一手の勝負で三年を費やし千日手での終了という、どうしようもない戦いを繰り広げたこともあって好敵手と見ており、ルール改正の後、現在は七番勝負三戦目を一勝二敗で終えた所。

その最終戦には多くの竜が観戦に集うと予想されているが、一戦ごとに大抵百年近く空くため先は長い。


△歴史上

竜の中では有名ながら、人間には知られていない。

ただその助言を受けた内の一部が、『神からのお告げを受けた』と動き、その内の何人か歴史に名を残していたりする。


外見:赤紫の瞳。岩のような淡青灰色の鱗。城に等しい巨体。蝙蝠の如き巨大な翼。

→クリシェ:根源の生還者。幻想界の家主。遊戯試験者。

得意:空間魔法。先読み。長考。

好き:思索。観察。人間。お告げ。遊戯作り。

嫌い:急かされること。

悩みごと:次の初手。

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