第197話 またもや変態に追われるのか
終戦祝いで私達は街全体を巻き込んで住民達と馬鹿騒ぎをしていた。
アリスは街の子供達と楽しく遊んでいるようだ。一応、アイゼアの魔力封じで魔力を封じているから魔族だというのはバレていないはずだ。
私はお酒を飲むとすぐに酔うため、お茶を飲んでいる。
にしても皆、はしゃぎすぎじゃないか?冬なのに暑苦しいな。
「あいつら、はしゃぎすぎです。活躍したのってオメェじゃねぇんです?」
「ハハ……確かに活躍したのは私…うん、私だね」
「何も言わねェんです?」
「皆が楽しいならいいかな」
「祝われるの嫌いですよね。オメェ、嫌な記憶でもあるんです?」
「祝われるのに慣れてないだけかな。それより、何か用が?」
ティアはそう言えばそうだったと言う身振りをした。
忘れてたのか…。
「オメェが背負ってる武器、少し見せてくれねェです?」
「スナイパーライフル?別に良いけど」
「助かるです」
スナイパーライフルを渡すと重そうな顔をする。
気軽に持ち込む物では無いからな。ドラゴンの鱗で強化されてない人間が持つものじゃないよ。
どうしてスナイパーライフルなんて気になったんだ?
銃が珍しいから?いや、それならアサルトライフル作った時も同じ事をするはずだ。
「何か気になる事が?」
「あーいや、オメェが変なの作ったら調べろって銀髪大犯罪者に言われてるです」
「銀髪大犯罪者……もしやドミニクの事?」
「アイツ、あたしの事をこき使いやがるんです。犯罪者のくせに…」
「それ従ってる方も、あ、何でもないよ」
地雷を踏む行為はやめておこう。ティアは怒ると怖いからな。
ドミニクに頼まれたなんて、何をしてるんだあの人は。
私の発明品なんて調べてどうする気なんだか。
ティアは満足したのか、細かな事をメモして私にスナイパーライフルを返してくれる。
「こんな重い物持って良くピョンピョン跳べるですね。本当に人です?」
「人だよ。ドラゴンの鱗のおかげだから」
「…あんな早くドラゴンの鱗に慣れる奴は人じゃねぇです」
私って人じゃないのか…?良く疑われるんだよな。人だよ。
脇役だったはずなんだけどなぁ。出しゃばりすぎたか?
ティアと別れてまたお茶を飲む。お茶が冷たい。温かいお茶だったはずなのにな。
これが冬か。暑苦しく感じるのにお茶が冷たいなんて、なんだか気持ち悪いな。
ガヤガヤと隊員達の楽しそうな声が常に聞こえる。
ビールジョッキを持って踊る隊員達を見て私はどう思えば良いんだ。
お茶をグイッと飲み干し、防壁の上へと向かう事にした。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
暑苦しい場所に常にいるのは好きじゃないからな。
「…あれは?」
私が見えたのはクロエと私が殺したはずの隊長だった。
何故?あの時、確かに……。魔力を消して近寄ってみるか。
ジリジリと私は二人に近付いて話を聞いてみる。
「結局落とせなかったけど…どうするの?魔王様に怒られちゃうわよ?」
「問題無い。人間は我々を倒したと思っている」
「あー、別の部隊が王都に侵入するって魔王様が言ってたわねぇ。順調なのかしら♡」
「彼等は精鋭だ。見つかる事は無い。不安だとすれば、あの魔術師だ」
「愛しの魔術師ちゃんの事ね♡あの子は凄いわよ。ダミーとは言え、貴方の頭を撃ち抜くだなんて…」
「とにかく、警戒する必要がある」
そんな会話をしている二人。
あれはダミーだったのか。確かに弱いなとは思ったが……どうしたものか。
王都に侵入してくる奴がいる…。それを早く向こうに知らせよう。
遠征中は私達は動けないし、王都にいる人達に頑張ってもらうしかない。
私は立ち去ろうとすると隊長が口を開く。
「我々の作戦を知られる訳にはいかない。誰にも言うなよ?クロエ」
「言われなくとも、分かってるわよ。ねぇ、愛しの魔術師ちゃん♡」
逃げようとする私の目の前にクロエが現れる。クソッ!最初からバレてたか!
「そういう顔…そそられるわぁ♡ふふっ、会いたかったわ愛しの魔術師ちゃん♡」
「会いたかったぞ。魔術師よ」
「私は会いたくなかったよ!」
二対一はヤバイ!隊長の実力は未知数だし、クロエに近接戦で勝てるとは思ってないし。
「闘志を燃やせ魔術師よ」
「生憎、戦闘は好きじゃないんでね。逃げるは恥だが役に立つ!」
私は急いで走る。魔術でとにかく身体強化させ、ドラゴンの鱗の力も全開放した。
実力不明の魔族二体を相手は無理だ。結末が見えてる戦闘はしたくない!
街に逃げ込むのは無しだ!とにかくこの森で撒かないとな。
「あらあら鬼ごっこ?いいわねぇ、お姉さんと遊びましょうか♡」
「強い者を追い詰めるのは中々そそられるな」
隊長あんたも変態だったか!可哀想だなとか思ってた私が馬鹿でした!
こんの変態夫婦め!っていうかこんな時にアイゼアが来ない!
何してるんだあの犬。今度駄犬って呼んでやろうかな。
ケルベロスっていう名捨ててこい今すぐ。
「堂々と遊びましょう♡」
「なら一対一とか…二対一はあまりにも理不尽かと思うんですけど!?」
「魔族は卑怯な種族だ。楽しめるならどんな手を使ってもいいだろ?」
アリスみたいな友好的な魔族は少ないんですね、そうですか。
魔族に追われるなんて最悪だ!とにかく街から離れた所に誘き寄せて、戦闘でも何でもしてやろうじゃないか。
こうなったらヤケクソだよもう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます