第195話 私の技術は規格外らしい
私達は宿に戻ってラエル達にアイゼアが見て聞いたものを伝えた。
来週までに今出来ることを全てやらなければならない。
不安なのは人手だ。相手は五百人、対して私達は二十九人…差がありすぎる。
猶予は七日。私達の中では王都から増援を求めたほうが良いのではという話があった。
皆が望むなら私も賛成だが、正直人が来ようがあまり変わらない気がするんだよな。
「やはり王都から人を呼んだほうが良いと思います。この差はあまりにも…そもそもセレア様は何故反対を?」
「私が用意したものが合わないっていう話もあるし、この街にかけてある魔術のせいで、味方もろとも滅ぶかなっていうのがあってね」
「待て待て、君はこの街にどんな魔術をかけたんだ?」
「街から一定範囲内に魔族が入ったのを探知した瞬間、全ての攻撃型光魔術が発動される。そして魔族によって発せられた魔瘴を浄化し、負傷している人を治療する」
「そんな化け物級の魔術を街にかけたんッスか!?これが所長の実力ッスか」
そんなに難しい魔術では無いぞ。
元々存在している魔術を複合しただけだし…あぁでも、魔瘴を浄化する魔術は私が作ったものだけど。
それでも、別にそこまで高度な事はしていない。
皆が驚いている理由が分からない私は首を傾げる。
「セレア、複合魔術は最大でも十個が限界だ。ていうか十個も複合すれば術式が複雑になりすぎて魔力の消費も激しくて、魔術が正しく発動されないんだよ」
「…あ、あれ?そうだったけ?でもお父様は十個の複合魔術を普通にやってた記憶が…」
「彼は他の魔術師とは違う。それを言ったら君もだけど………ちなみに光魔術はどんくらい入れたんだ?全てだと百三十七個あるんだ。しかも攻撃型光魔術の中には競合するものだってあるだよ?」
「百三十七個だよ。競合するものは別の魔術に移して同時に発動するようにしたんだ」
私がそう言うとラエルは膝から崩れ落ちる。
何も変な事してない…してないよ。
競合するやつらがいるせいで、魔術が五重になってるんだよ。本当、大変だった。
これが光魔術全てだと、何重になっていたんだろう。
魔術に詳しくない他の人達も私が言った事が普通は出来ないという事だと分かっていたのか、私を畏怖の対象として見だした。
「負傷した人を癒すなら別に増援を呼んでも大丈夫じゃないんですか?セレア様の魔術なら大怪我でも治せる魔術でしょうし」
「あー、アイザック。光魔術には追尾型があるんだ」
「…なるほど」
「理解が速くて助かる。とにかく、セレアが増援を呼ばない理由が分かったよ。多分、それ以外にも理由があるんだろうけど」
ラエルがチラッと私の方を見る。
バレてたか。ラエルの言う通り、別の理由がある。
「ここに来る軍はここの街を陥落させて、魔族の街にするのが目的だと思うんだ。そして魔族の街にする理由は、ここを中間拠点にするからだと思ってる」
「つまり、ここは本来の目的の場所では無いと言うことですか」
「ここを中間拠点にする…となると、魔族の目標はザディ……妥当と言えば妥当ッスね」
ザディとはルーベン国の軍事都市だ。あそこが占領されれば確実に私達が不利となる。
必ずここを魔族から守らないと最悪な事態になる。
私が大量に魔術をかけた理由でもある。
「必ずここを守り抜こう。気合を入れるぞ!」
ラエルが一言言うと皆が声を揃えて了解!と言う。
さぁ、七日間忙しくなるぞ。
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後日、私はある物を作っていた。この世界にまた新たな銃が……!
私が持っていたのはアサルトライフルだが、今回作っているのは機関銃!弾の消費はアサルトライフルより激しいが、重要なのは火力!
それに機関銃の中でもロマンがある重機関銃!重機関銃及びヘビーマシンガンは重いが、その分メリットが多い。
持続発射を求めているからこそのヘビーマシンガンだ。
それと遠距離といえばの銃…スナイパーライフルも作ることにした。
ある弾薬を使用するものは千メートル先まで正確に狙撃する事が可能だからな、魔法じゃないから魔力で場所がバレることも無い。
つまりは相手は目に見えない敵に一方的に撃たれるのだ。
…ふふっ……楽しみになってきた。六日後が待ち遠しいなぁ。
「何を作ってるんですか?」
「ん?重機関銃と狙撃銃だよ」
「また良く分からない物を作ってますね」
「ロマンあふれる武器たちだよ。良い貢献をしてくれる」
「魔術師なのに魔術師らしくないですよね」
「魔術師は魔術だけじゃないんだよ。物に術式を描きこむのも魔術師のやる事だから」
異世界は最高だな。地球に存在している物をこんな風に作らせてくれるだなんて…!
戦時の技術通りに作れている訳では無いから火力は少し下がるだろうけど、それでもこの世界では中級魔法より強い。
「私はアリスとこの街で待っていますからね。緊急事態には私も参戦しますけど」
「頼んだよ。なるべく怪我をしないよう気を付けるよ」
「はい!それと、ある人に連絡しておいたので一人こちらに向かってくると思います」
「え?誰?」
「内緒です♡」
誰だ?王都の人間なのは分かるが…はて、長く待つしかないか。
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