第194話 妻と女たらし魔族
夜になりアリスをオバルに任せて、リリアナとアイゼアと一緒に外に出る。
アイゼアは私の影に隠れてクロエに見つからないようにしていた。
雪は降っているが昼よりかはマシになっていた。
「寒いですね…。息が真っ白です」
「はい。これ、使って」
「これは?」
「カイロだよ。少しはマシになると思うから」
カイロを作っておいてよかった。この世界には無いものだから作ってみたけど…今役に立つとは。
冬といえばカイロだよな。
ひたすら歩き続けて、着いたのは真っ暗な森だ。
多分ここらへんで別れたはずたから…。
「はぁ〜い♡可愛い魔術師ちゃん♡来てくれたのねぇ。お姉さん嬉しいわぁ。もしかして私の事、心配してくれたの?」
カサッと音がして振り返ればクロエがぶら下がっていた。
私がナイフを構えているとクロエの背後に黒い触手のような物が出てきていた。
触手はクロエを捕らえてグルグル巻きにされたクロエは地面に叩き落される。
私が驚いていると、触手の方向からはリリアナが出てくる。
なるほど、闇魔法か。闇魔法って触手とか…あるんだな。
リリアナの足元は真っ黒の円が出来ており、そこから生えている黒い手はハートマークを作ったりピースをしていた。
お茶目な手だな。
「何よこれ…。魔術師ちゃん、私を縛るだなんて♡」
「私じゃない、」
「私のセレア様に手を出すなんて何を考えているんですか?」
「あらぁ。可愛い女の子♡魔術師ちゃんの奥様なのねぇ。ふふっ♡」
リリアナがクロエに向かって魔法を撃つとその瞬間、クロエは黒い触手だけを残して姿を消していた。
逃げられた…訳では無いな。魔力の場所的に、私の背後っ!
ナイフで彼女の攻撃を防ぐと、楽しそうな顔をした。
こんの戦闘狂め!力が強くてナイフを当てる隙がない。
「ねぇねぇ魔術師ちゃん?私はね、貴方を養いたいの♡」
「また理由のわからないことを」
「だって不健康そうなんだもの!養ってあげたいのよ♡お姉さんなら魔術師ちゃんに栄養たっぷりの食事を用意してあげれるから♡」
何だこいつ。私は健康だ!魔族に養われるとか嫌なんだが!?
「魔術師ちゃん、凄く私の好みなのよぉ。お願いよ、本当は攻撃だってしたくないのよ?」
「そんな言葉信じられるか!背後から毎回襲ってくるくせに、」
「だ、だってぇ…」
この魔族変だよ!
リリアナに助けを求めると、リリアナは私の横を通ってクロエの手をガシリと掴んだ。
え、え?あの…リリアナサン?ナニヲシテラッシャル?
「貴方の誠意は伝わりましたけど、私のセレア様をお渡しする事は出来ません。ですので今直ぐ消えてくれませんか?セレア様との距離が近すぎます、離れてください」
「やーん♡愛されてるのねぇ魔術師ちゃん。魔術師ちゃんの奥様も可愛いわぁ」
「待て待て、リリアナにも手を出そうとするな!やめろ!」
リリアナに手を出されたら溜まったもんじゃない!
リリアナを自分に引き寄せてクロエから遠ざけると、リリアナは嬉しそうに私に抱き着く。
よくこんな状況で私に抱き着くなぁ。うっ、可愛い!
「はぁ、今日は諦めるわ。ふふっ♡次は二人きりでね♡」
そう言ってクロエは目の前から去っていった。
嵐という言葉がとても似合う人だな。
緊張がほぐれて地べたに座る。
もう二度と会いたくないな。そんな事を思っていると、アイゼアが出てくる。
『主、クロエは当分来ないと思われます』
「それはまた何で?」
『さっき尾行して来たんですが、今回の隊長に怒られていたので反省するかと。それと来週に魔族が本格的に動き、ここの街を襲うと思われます。そんな話をしておりました』
「分かった。っていうか、隊長に怒られたくらいで反省するの?」
『一応隊長はクロエの夫ですから』
「既婚者だったのかよ!」
「既婚者なら尚更セレア様を狙う意味が分かりませんね」
『政略結婚ですし、隊長の片想いですよ』
誰だか知らんが隊長さん可哀想だな。隊長さんには幸せになってもらいたい所だ。
にしても来週か。皆に知らせよう、準備をする時間は長い方が良いからな。
「来週って、結構近いですね。何人で来るかは分かってないんですか?」
『恐らく五百人で街を襲いに来るかと』
「確実にこの街を陥落させようとしてるね」
「人数に差がありすぎます。王都に援護を頼みましょうか?」
「いや、大丈夫だよ。私にも手はあるんだ」
「変なものを作ろうとしてませんか?」
「絶対役に立つものだから!」
『何気に主は戦闘狂な気がします』
「ナチュラル戦闘狂ですよね」
「何だその造語は…私は戦闘狂じゃないよ」
戦闘はしたくないよ。私の前世は平和な日本だったんだぞ?
平和ボケしてた人間が戦闘大好きなわけないじゃないか。
私はこんな風だけど平和に暮らしたいんだよ。ただ妻と普通な暮らしがしたいんだ。
まぁ所長になってる時点でそんなのは叶わないって分かってるんですけどね。
「私は平和に暮らしたいんだ」
「いつでも監禁してあげますよ?」
「それは平和じゃない。そんな期待した目で見ないで、駄目だよ」
「むぅ………」
独占したいのは分かったが、別に監禁は幸せでは…いや、推しに監禁されるのは幸せかもしれないな。
元々リリアナは愛が重いし?まぁそれも愛情表現みたいな…もういいや。何も考えない方が良い気がしてきた。
リリアナに関することは殆どプラスに考えようとしてしまうんだよ。
私の悪い癖だな。
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