第180話 大遠征の始まり
特に何も無く二週間を過ごし、私達は馬に乗り遠征をしていた。
「ここを右に行くと街に出る。そこで資材集めをしよう」
「その後は危険な調査ッスね。いやぁ、何日掛かる遠征なんスかね」
「二ヶ月は掛かると言われたばっかりですよね?オバル様、それでも副騎士団長ですか?」
「いやぁアイザック様、その二ヶ月は目安ッスよ?覚える必要無いんスよ」
「なら根本的に聞くなよ」
「扱い酷いッスよセレア様!」
でもオバルの言う通りで二ヶ月というの目安、長くなるか短くなるかは遠征に行っている私達次第だ。
出来れば早めに切り上げたいんだけどね。まぁそんなのは出来る訳無いんですけど。
「セレアが居る時点で変な事に絡まれるの前提ッスから」
「何だとオバル?私が居なかったら術棟の戦力は無しだぞ」
「君達争わないでくれ。セレアが居なかったら、色々困るんだからオバルは挑発するな。セレアも対抗するんじゃない」
叱られてしまった。
今の私達は、は恐ろしい地に足を踏み入れるとは思えない雰囲気をしていた。
情報収集と足りない資材を調達する時間だからな。ずっと気を引き締めていては疲れるだろう。
他の隊員たちも暗い雰囲気で仕事はしたくないだろうし、今はこんな緩い雰囲気でも良いと思う。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
街に着き、私達はそこで馬小屋を借り宿を取ることにした。
休憩する時間は無い。
私とオバル、アイザックさんとラエルと言う様に各自分かれて情報収集や資材確保をしに行くことにした。
「俺等、服装は外套ッスけどやっぱり警戒されるッスかね」
「今は魔族の侵入が多くて血の気が多い奴が沢山居るんだ。他者である私達は警戒されると思うよ」
「こんな真冬に魔族が活発に動くなんて、前代未聞ッスもんね」
私達が遠征に出された理由は魔族だ。
本来、魔族も冬の寒さは辛く真冬に攻めてくる事は今まで無かった。
だが今回は真冬に魔族が市街地に侵入するという事があり、私達が遠征をし調査をする事となったのだ。
今回の事は何やら裏がありそうなんだよな。魔族の長である魔王の考えで攻めてきたとは思えない。
とは言え、部下の独断の行動とも思えない。
調査すれば分かるだろう。
私達の遠征の目的は、魔族の侵入を防ぎ冬を越し、魔族の行動を監視するのが目的だ。
冬を越す。そう………確定、二ヶ月は掛かるのだ。最低二ヶ月、最高は何ヶ月は分からない。
「今まで大人しかった魔王が動き出したんッスかねぇ。あまり考えられないッスけど」
「魔王の策略では無いと私も思うよ。それは魔族の行動を監視しないと分からないけどね」
「まずは情報収集ッスか。セレア様、そう言うの得意ッスよね?月夜の狼でスし」
「そんな事は無いよ?」
「あぁ……拷問専門ッスもんね」
「拷問専門じゃないよ。変な事言わないでよ」
月夜の狼だからって言うのやめて欲しいんだけどなぁ。
拷問とかした事な……無いよ。
三、四回はもしかしたらあるかもしれないけど、専門では無い。
私ってそんな恐ろしい印象を持たれているのだろうか。
気にせず情報収集をするか。
私とオバルは店の人に物を買いながら近頃の事を聞く。
「林檎二個お願いします」
「銅貨四枚ね」
「どうぞ。そういえば、最近何かありましたか?」
「最近かい?あぁ、北の方で魔族の侵入があったみたいだよ。なんだいあんたら?見ない顔だし、旅行中かい?」
「あー…そんな所です。来たばっかで、何も知らなくて」
「そうかいそうかい!気ぃ付けな!魔族が多くて本当、嫌になっちまうからね!男のあんたが女の子を助けるんやで?」
「アハハ…そうッスね。守るッス」
初めて他者に女の子と言われた気がする。ニーシャ国では、楼河に殿方って言われたし……。
このおばちゃん良い人だ!
私はオバルを誂う事にした。
「頼んだよオバル?私を守るんだ」
「本気で言ってるッスか?」
「なんだい?男は女の子を守るんだよ。こんなか弱そうか子を守らな男として情けない!」
「え、えぇ………」
嘘だろという表情のオバルを連れて、おばちゃんの店から去る。
「本気で守れって言うんスか!?立場逆ッスよ!」
「女の子だしぃ〜魔族こわ~い」
「向こうからしたら、セレア様の方が怖いッスよ。目の前で化け物出てくるんッスから」
そう言われた瞬間、私は強くオバルの頭を叩く。
バコッと強く重い音が鳴り響いた。
「イッッタ!何するんスか!」
「化け物って言うな!お前、エントにも化け物って言えるのか?あの子は私とほぼ同等の実力者だぞ?」
「エントは天使じゃないッスか!やめてくださいよ。ゴリラと猫じゃ全然違うッスよ!」
「おい待て、私の事ゴリラって言いたいのか?」
「イタタタ!その力ッスよ!痛い!耳たぶがぁぁ!」
女の子にゴリラって…ゴリラって………これでも乙女なんだぞ!
酷い事を言うなこいつは!
エントを猫と例えるのはまぁ分かるが、私の事ゴリラって、例えがおかしいだろ!
「ゴリラみたいに捻り潰してやろうか」
「乙女はそんな事言わないッス」
「乙女にゴリラは無いよな?」
「番長の方が合ってるッスね」
バコン!
そう音が街に響く。
オバルは痛む頭に手をやりながら膝をつく。
何で私はオバルと同じ班になるんだろうな。
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