第153話 若い父

 私は仕事を終わらせ、拗ねて狼のぬいぐるみを強く抱き締めるリリアナの肩をトントンと叩く。


「何ですか?お仕事がお忙しいのでしょう?」

「終わったよ。ほら」

「………それで私に何か用ですか」

「イチャつこうかなと思って、どうする?私の可愛い奥さん?」

「…なら……私はこっちを選びます♡」


 リリアナは私に飛び付いてくる。


「沢山可愛がってくださいね」

「それは、どういう意味かな」

「お任せします♡」


 リリアナは私の頰にキスしクスッと笑う。

 私はリリアナの期待に応えるようにリリアナをベッドに押し倒す。


 リリアナは想定していたのか私の頰に手を添える。お互い体が熱くなるのを感じる。

 なるべく、無理はさせないようにしないと…。


 私は部屋の明かりを消す。

 いつも羽目を外してしまうからな。いや、これもリリアナが可愛すぎるのがいけないんだ。


 私とリリアナは肌を重ねる。

 リリアナの吐息、甘く私の名前を呼ぶ声が愛らしくてたまらない。


 暗い中、リリアナと目が合う。リリアナは恥ずかしいのか目を逸らし頬を赤らめる。


「可愛い」

「だ、黙って…ください…」


 リリアナはそう言いながらも私の背中に腕を回す。

 私はそんなリリアナと唇を合わせる。


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 ぼんやりとした視界、素肌がくっていており少し暖かい。

 私の腕の中でぐっすりなリリアナは小さな寝息を立てていた。


 私はリリアナを起こさないよう起き上がり、朝風呂に入りにいく。


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 チャポンとお湯が音を立てる。


 そうだ、2の話はいつから始まるんだっけか。

 今の私が二十三歳、ルイスは十歳…てことは五年か。


 五年…五年…!?私、二十八歳になってるじゃないか!

 この世界でも三十路になるのを怖がらねばならないのか。


 救いがあるとすれば、やはり乙女ゲーム…老ける様子がない事だな。

 しわとか全然出てこないし、しわと言うのが存在していないのでは?と思えるほどだ。


 でも城下街の店のおばちゃんとかしわがあるし。存在はしてるんだろう。

 一応メインキャラだからか?まだ若い…から出てないだけなのだろうか。


「五年後かぁ…長いなぁ」


 そしてそのストーリーの中でも、年をとるんだ。続編は大規模らしいし、何年続くのかね。


 そろそろ風呂から出よう。


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 タオルを首に巻いて、私は食卓に向かった。

 まだリリアナは起きてきていないようだ。


「おはようセレア」

「おはよう父さん」

「………なんだいセレア。父さんの顔がいくら格好良いからって、そんな見つめないでくれ」

「いや、父さんって何歳なんだろうと思って…お父様と知り合いだったんでしょ?」

「レディオと知り合い…あぁ、そうだね。どこで知ったんだい?」

「ドミニクから」

「なるほど、あいつが…他には何も?」

「うん」


 ラエルは安堵したような顔をした。知ってほしくない事があるのだろうか。


 まさかラエル父さんレディオお父様が知り合いだなんて思わなかった。

 まぁ…でも今考えれば、二人は共通点があったような気がした。


 二人の姿が重なるというか似ている所が沢山あるような…。

 思考が一瞬よぎる。知り合いではなく、血縁なのでは…と。


「私の年齢か。私の年齢は四十前半と言っておこう」

「もう少し若いかと思ってた」

「まだピチピチよ?」

「四十歳がピチピチなわけ…」

「人に年齢を聞いていてその言い草は酷いぞ。ってか、私の年齢を聞いてどうしたの?」

「少し気になっただけだよ。誕生日とかお祝いしてないなとか思ったりしたから」

「私の誕生日かぁ。別にお祝いしなくてもいいよ。お祝いしたらセバスチャンやメリーから怒られてしまうよ」


 ラエルは寂しげに笑う。何故怒られるんだ?

 セバスチャンやメリーはお父様の事をよく知っている人達だ。


 お父様関連なのだろうか…今は考えるのをやめよう。どうせ今考えたって分かりはしない。


 四十前半…には全然見えないんだよな。おかしい…セントラ伯爵と同い年だよな?

 セントラ伯爵には威厳があるのに、ラエルには無い。


 筋肉の量の違いか?セントラ伯爵の方が年上に見えるな。


「おはようございます…」

「おはよう」

「おはようリリアナ」

「ズルいですよ、一緒にご飯を食べるなんて」

「寝坊している君が悪いのだろう?セレアが朝早いのは知っている事だろうに」

「ムムム…………はぁ、セレア様はお仕事に行かれますか?」

「そうだね。会議もあるし、あぁでも今日は早めに帰ってくるよ」

「分かりましたお気を付けて」


 最近は会議なんて無かったが、イエラの件が一段落したからだろうか。

 にしても一体何の会議だ?詳細を教えてくれないし…リオンは最近王城に来てないし、そんなんで会議に参加できるのかだろうか。


「父さんも会議に呼ばれてるんだから、早く準備し て!」

「まだ………まだ時間はある」

「無いよ」

「遅刻しても知らないよ」


 私はラエルを置いて屋敷を出る。大丈夫なのかなあんな風で。

 実績はあるから大丈夫なんだろうけど、遅刻しないか不安だ。


 まだ制服に着替えてもなかったぞ?

 心配するだけ無駄なのかもしれない。


 私は馬車に乗り、王城に向かった。


 リリアナもリオンと会っていないみたいだが、大丈夫なのかな。

 心配しているような素振りは全く無いけど。


 オバルがリオンについて聞きに来るが、何も知らないんだよな。

 来るなって言われてるし…これで元気だったら顔面を一発殴ってやろう。

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