第154話 親友として

 王城に着き、私は会議室に向かう。

 まだ人はおらず私が一番最初に来たようだ。


 早すぎたか?私は会議室にある時計を見るが会議が始まる時間帯だった。

 皆、遅刻…?いやいや陛下は何か用事があるのだろう。


 私は自分の席につき、待っていると扉が開かれる。

 入ってきたのはカラルナ宰相とアザルク陛下だった。


「珍しいな。セレアが誰よりも早く来るなど」

「久々の会議ですから気合が入ったのかもしれません」

「他の者はまだですか………。ラエルが遅れてくるなんて、一緒に来なかったのですか」

「はい。父さん曰く間に合うから…と」

「彼の言うことは信用しなくても良いのだぞ。どうせ嘘なのだから」

「陛下、養子とは言えど、セレアは彼の娘なのですよ?」

「いえいえお気になさらず」


 話をしていると又もや会議室の扉が開き、セントラ伯爵、タリンさんが入ってくる。

 何で二人が………?この会議の詳細は知らされていないが、この二人が来る必要があるほど重大な話ということだろうか。


「陛下、何故この二人が?」

「二人にも聞いてほしい話でな。そうだ、リオンはどうした」

「あいつは後から来る。全く我が息子ながら情けない。騎士団長でありながら時間を守らないなど」


 時間にうるさいリオンが後から来る。いつまで落ち込んでるんだよ。


 その後、ラエルとまさかのラーヴァルさんが来て結構遅れてリオンが来た。


 皆が揃ったことを確認し私達は会議を始めた。


「アルベルトの王位継承権を剥奪しようと思う」


 そう陛下が言った瞬間、カラルナ宰相以外が驚いた。

 あんな騒動があったと言えど、一応被害者なんだ。しかも第一王子の王位継承権を剥奪なんて。


 そんなの許されるのか?第一王子派の奴らが黙ってるとは思えない。


「失礼を承知で申しますが、それは誠ですか?」

「わしは嘘はつかん」

「アルベルト殿下は被害者です。継承権を剥奪する理由をお聞きしても宜しいでしょうか」


 陛下は私達に親切に語ってくださった。


「アルベルトは魅了にかかっていた期間が長く、そしてイエラの事を心の底から愛していたようだ。イエラが処刑された日から立ち直れていなくてな…。部屋から一歩も出てこないのだ」


 あの日から政治にも何にも関心を持たなくなったらしい。

 陛下は何度もアルベルト殿下の部屋に行ったが、暗い部屋の中、毛布に身を隠し一人ブツブツと言っていて、とても王位を継承出来るとは思えない様子だそうだ。


 会議室は重い雰囲気に包まれる。


 陛下はケロッとしていた。

 自分の息子の事で何故そんなに明るくいられるのだと私は思ってしまう。


「ルイスに王位を継がせるつもりだ。政治にも長けているルイスなら誰だって文句は言うまい」

「ルイス殿下は賛成しております。皆さんはどう思われますか」


 誰も否定しなかった。

 ルイスが王位につく…、まぁルイスからしたらヴィルア王女と結婚しやすくなるからいいのかもしれないが。


 そんな事より、今はアルベルト殿下の事が気がかりだ。

 私はイエラを処刑した人間だ。そんな私が心配するのは無礼だろうか。


♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦


 あの後は今後の活動についてを話し会議は終わった。

 皆職場に戻っていく。


 私は訓練場に向かうリオンを捕まえる。


「リオン…少し話をしないかな」

「分かった」


 私がそう言うとリオンはすんなり受け入れてくれた。


 私とリオンは人通りが少ない所に行き、座る。

 ここは王城の隠し裏庭だ。人が全く来ないため私はよくここに涼みに来る。


「話とは何だ」

「私の事を避けているようだけど…それは、私がイエラを処刑したから?」


 リオンは何も言わなかった。それはYESという事なのかそれともNOなのか。


「沈黙は肯定と見なすけど」

「違う。俺はお前にあわせる顔が無いんだ」

「それはどうして?」

「俺は何度も注意された。イエラに近付くなとだが…だが、俺はそんな注意を無視して、」

「好きだったんでしょ?魅了とかそんなの関係無しに、会った時からの一目惚れ…違う?」

「そう、そうだ。俺はイエラに恋をして…こんなざまで…………」

「恋は盲目と言うじゃない。私は責めないよ。あの婚約破棄の時にリオンがあっち側につくことは想定はしていたから」


 想定していた様子とは少し違ったが、間違った事は言っていない。

 知っていた事だ。


 だから私は策を練っていたんだ。何が起こっても対処できるようにと。


「騎士団長なのに…な」

「恋に立場も関係ある?リオンは何も間違ってなかったよ。私の対策不足でもあったんだ」

「何故そうも俺を庇う。リリアナを、妻を侮辱したのは俺だ」

「リリアナはリオンに怒りなんて抱いていないよ。ただ一人の兄なんだ。私は君の親友だ。怒るわけない、親友として庇って何が悪い」

「馬鹿だ。こんな奴の為に」

「初めての友達で、初めての親友だったのはリオン…君なんだよ」


 私がそう言うと、リオンは俯いていた顔を上げ剣を握った。

 そして私に、着けていた手袋を投げた。


「決闘だ。負けたら飯を奢れ」

「いいね、やってやろうじゃない」


 私は手袋を取り、私達は格技場に向かった。

 何だ早く立ち直るじゃない。時間かかるかと思ってたのに。

 勝てるかなぁ。夜飯は居酒屋になるかな。

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