第150話 旅行帰りの変化

 私は起きて制服に着替える。仕事をしないとな。

 きっと大量の書類が積まれているだろうなぁ。


「リリアナ。朝ですよ」

「ん〜…まだ……」

「起きないとキスしないよ」

「ハッ!」


 リリアナがガバっと起きる。起きたらすぐに私の方を向いてキラキラとした目で見つめてくる。

 私はリリアナに口づけをする。


「ふへへ、えへ……ふへへ」

「ほら早く起きなさい。って、こら!また寝ないの!」

「もう一回寝たらもう一回キスしてくれるって事ですよね?」

「しないよ。ほら流暢に喋れるなら起きて」


 そのムスッとした顔をやめなさい。

 私はリリアナのおでこにキスをして寝室を出た。


♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦


 私はセレア様が部屋から出た事を確認したら悶える。


「はあ〜!私の夫可愛い〜!好き〜!」


 キスしないって言ってたのに結局キスしてくれるじゃないですかもう!

 周知の事ですがセレア様が可愛すぎる。寝顔も可愛いし、見た目も可愛いし、仕草も可愛いとか………私の心臓が持ちません!


 セレア様はいつも私の事を気遣ってくれます。私が女の子の日の時だって、直ぐに気付いてハーブティーやココアを持ってきてくれるんです。


 好き…やはりセレア様も女性だからでしょうか。

 女の子の日の大変さを分かっているのからなのか、セレア様は私がイラついて接しても逆に優しく接してくれます。


「可愛くてイケメンとは………罪は人ですねセレア様は」

「私の娘なんだ。当然だろう」

「ゲッ」

「ゲッとは何だ。お義父さんに向かって」

「夫婦の部屋に無断で入るのはいかがと思いまして」

「君がセレアの可愛さに悶えていたのは聞こえてるんだ」

「……………セレア様には内緒ですよ」

「どうせバレるだろう?」

「セレア様にはラエル様の悪評話しますよ」

「分かった。黙ろう」


 ラエル様は相変わらず私に嫌がらせ…というなの自慢を毎回しにくる。

 私の方がセレア様のこと知ってますし?別に何とも思ってませんけど?


 強いて言うならとってもムカつくという事です。

 私はセレア様の妻ですよ?なのに魔術好きだとか、父親というのを使ってセレア様を独占して、ムカつきます!


「何故、私には魔術の適性が無いんでしょうかね」

「君はセレアと共通点が欲しいのかい」

「はい。そうすれば、ラエル様のように魔術の話ができて盛り上がれるでしょう?」


 私がそう言うと、ラエル様は面白おかしそうに笑った。

 どこが変だったのだろうか………。


「何がおかしいんですか!」

「いや……ふっ…くくっ…はぁ、面白いね」

「訳が分かりません」

「ある話をしよう。人と言うのは、匂いで相性が合う合わないを見分けるんだ」

「匂いで?」

「そう。それは人間を作る遺伝子によるものでね。人は自分に持っていない遺伝子を持っている人の匂いを好むとされている。例えるなら苦手な家事を補うような感じだろう。やはり子孫は強い方が良いだろう?匂いが良い人となら自分が持っていないものを持っている…その人と子孫を残せば苦手分野が補える……」

「要は、共通点があるよりも違うものを持っていたほうが相性が良い………と言いたいのですか?」

「人にもよるだろうけどそうだね。特にセレアならそうだと思うよ」

「結構匂いとかに敏感ですよね」


 そうか…………。私は魔法の適性があるがセレア様には魔法の適性が無い。

 だとすれば私とセレア様は遺伝子的に相性が良いという事でしょうか!


 同姓の時ってどうなんでしょうか……。


「まさかラエル様が私を励ましてくれるとは思ってませんでした」

「セレアに嫌われたら立ち直れないからね…」


 その言葉、とても良くわかります。セレア様に嫌いと言われたら二度と立ち直れないかもしれません。


 私は気が晴れ、昼から始まる仕事の為に制服に着替える。

 職場に行ったら新婚旅行について聞かれるかもしれませんね。


「私は仕事に行ってくる」

「気を付けて」


 ラエル様は外に出て王城へと向かった。

 ………アルセリア家には部署のトップが二人いるんですよね…私も頑張らないと。


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 私は術棟に向かうと部下達が私に寄ってきた。

 身動きが取れん!


「所長…!リリアナ様との新婚旅行は…どうでしたか!」

「セレア所長〜!」

「セレア様!」

「所長!」

「頼むから一人ずつ喋ってくれ!」


 私は聖徳太子じゃないんだ!一回で何個も聞けるか!


 部下達は取り乱した事を私に謝り一人ずつ話をする。

 私は質問に全て答え、皆に買ってきたお土産を渡す。


「いいのですか所長。所長の新婚旅行なのに…」

「いいのいいの。私がしたい事をしてるだけだから」

「お人好しですね。そうだ、セレア様…所長室に溜まってる書類はありませんよ」

「あ〜やっぱり溜まっ……え?今、何て言ったタリンさん?」

「だから、所長室に溜まってる仕事はありませんよ」

「え、え?」

「やっぱり…驚きますよね。これもタリンさんが頑張ったおかげなんですよ」

「仕事する気だったのに…無いの?」

「今日の分はありますよ?」

「いや…プラスで、ほら…何かさ」

「何故自ら仕事を求めるんですか。旅行帰りなんですから休んでください」


 えぇ…仕事無いの?まじで?私は驚きで固まる。

 そんな私を見た部下達は笑う。


 いやだって…こんな事今まで無かったじゃないですか。

 嘘…マジで…?

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