第149話 新婚旅行ももう終わり

 蘭風祭に向けた準備をし終わり、私とリリアナは外に出た。


 リリアナは銀月で仕立てた別の着物を着ていた。

 私は機敏に動ける服装にしてある。風月祭より人が多いとなれば、何があるか分からないからな。


 蘭風祭が開催される場所に向かうと、風月祭と比べて人が断然多かった。

 これは迷子になりかねない。


 私はリリアナと手を繋ぎ、色々と周る。


「風月祭にあった屋台もありますね」

「またあの射的屋のおっさんがいる…今度はズルしてないといいんだが」

「ズル…?」

「気にしないで」


 私は射的屋をしている人を見ていると、物がしっかり落ちていることに気付きズルをしていない事が分かった。

 改心したようだ。


 まだ全ての屋台が開かれている訳では無いみたいだし、先に安くなっているお店の方でお土産を買おう。


♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦


 私達はお土産を買いに街の店を見て周っていた。


「あれとかどうですか?」

「煎餅か。いいね」

「確か、オリカさんが煎餅好きではありませんでしたか?」

「よし。オリカさんのお土産は煎餅にしようか」


 私とリリアナは煎餅を買い、別の店へと移動する。


 煎餅と似たような雰囲気で色んな人、そして私達のお土産を買っていった。


♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦


 買い物も終わり、一回宿に荷物を置いてから蘭風祭に参加した。


「やはり神様を祝うお祭りだから人が多いね」

「ですね。よーし!セレア様!たっくさん遊びますよ!」

「昼のときより元気だね〜」

「えへへ」


 私はリリアナに腕を掴まれ、色んな屋台を周った。

 その時間はとても楽しく、夫婦でお互い自分らしく振る舞えた時間だった。


♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦


「ふぅ〜!疲れましたぁ」

「リリアナ。向こうに行こう」

「えっ、セレア様?」


 私はリリアナをおんぶしてある場所に行く。

 そこは緋花さんから教えてもらった情報の場所だった。


 近くにあった岩に座る。


 私とリリアナが夜の景色を見ていると、ヒュ~と言う音が流れ一直線の光が夜空に消えていく。


「消えてしまいました…」


 リリアナは寂しそうに言い、私はその姿を見てリリアナの頭を撫でる。

 きっと驚くだろうなぁ。


 少しすると、音もしなかった夜空が大きな音を立てながら鮮やかになる。

 それの正体は花火だ。


 リリアナは声を上げて驚いた。


「ちょいちょい!落ちたら大変だから」

「見てくださいセレア様!凄いですよ!」


 リリアナは興奮しながら花火で鮮やかになる夜空を指さして私に言った。

 相当気に入ったみたいだ。


「どう?」

「すごいです!わぁ~って光が上がって、パンッ!って花が咲きました!」

「ルーベン国でも花火を打ち上げることが出来るよ」

「本当ですか!?是非見たいです!」

「可愛い妻の頼みなら仕方が無い」


 いつ作ろうかな。まぁ、職人がいないと綺麗なのは作れないだろうから職人は呼ぼう。

 道中の道具とかなら作ることができるからな。


 実はお土産を買う時に私は手持ち花火をこっそり買っていた。

 ルーベン国に戻ったら手持ち花火をしよう。


「花火というのは人の心をガシッと掴むんですね」

「そうだね」


 私とリリアナはお互い身を寄せ合いながら花火を眺めた。


♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦


 あれから四日…私達は新婚旅行が終わり馬車でルーベン国まで帰っていた。


 今はルーベン国の国境まで来ている。途中は船だったからな、着くのが早いなぁ。


 リリアナは疲れて寝ている。


「充実した新婚旅行だった」


 初めて結婚した人が推しで、初めての新婚旅行も推し………私は恵まれたオタクだな。


 リリアナが令嬢という制限をなくして楽しんでいることが、とても嬉しかった。

 やはり王妃教育を長らく受けていたせいか、デート中でもしっかりした令嬢のリリアナだった。


 だが、この新婚旅行は気が緩んでおり、素のリリアナが見れた。

 良かった良かった。


「当主も寝ていいのですよ」

「妻の寝ている姿を見守らないといけないからね」

「奥様は愛されておりますね」


 馬車を動かしている庭師長のナーセルが話しかけてくる。


 皆はリリアナが妻になるとそう話した時、まるで自分の事かのように喜んでくれた。


 それはリリアナを最初から家族だと思ってくれていたからなのか、私を変えてくれた存在だからなのかは分からない。

 一つ言えることがあるとすれば、それは彼ら本心の気持ちだという事だ。


 私も疲れからか眠くなり、リリアナを起こさないよう私も眠る。


♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦


 私は起きるとベッドの上だった。違う事は、私が普段寝ているベッドでは無いという事だ。


 どこだここ…いや、匂いでアルセリアの屋敷なのは分かるんだけども。


「起きましたか」

「メリー。ここは?」

「ここは私等使用人共がお二人の為に用意した寝室です」

「寝室…結婚祝いって事かな」

「そうですね。普段、お二人はセレア様の部屋で寝ているでしょう?」

「確かに」

「なので使用人が力を合わせて、この部屋を作らせて頂きました」

「ありがとう。嬉しいよ」

「それなら何よりです」


 まさかこんなデカいものを貰えるとは…いつの間に作ってたんだ?

 私達が新婚旅行に行ってる間に?だとしたらこんな豪華な部屋をよく七日で作れたな。


 私は使用人の凄さに驚きながら、使用人に感謝した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る