第146話 新婚、風月祭を満喫する

 お互いの着付けが終わり、私達は祭りに参加しにきた。

 そこには楼河や緋花さんも参加しているようだった。


 そして、私が気になったのは色んな人に囲まれている白い少女だ。

 目は黒く、銀髪ではない白髮の女の子。


 もしかして……彼女が蚕荘大和か?

 私が見ていることに気付いたのか、少女は私の方を見て走ってくる。


 そして私のもとに来た時、ガシッ!と私の手を掴んだ。


「もしかして…セレア様ですか!?」


 少女は黒い目を光らせてそういった。

 ……………何で私は有名になってるの?帝にまで名前轟かせてるんですか?


 ルーベン国からニーシャ国って結構距離あるんですよ?

 地球で言うならフランスから日本ぐらい距離がある。


「セレア様でしょうか!」

「えぇ、まぁ…はい」

「そうなのですね!ということは…お隣りにいるのは奥様であるリリアナ様なのですね!」

「貴方はもしかして大和様ではありませんか?」

「妾のことをご存知なのですね!嬉しいです…!」

「色々と話についていけません。大和様、セレア様に何か用がお有りなのですか?」


 リリアナが聞くと、大和様は懐かしむように語り始めた。

 そんな英雄みたいに語るべき人達では無いと思うんですけども。


「御二方が、聖女イエラを欺き追放…いや、処刑した話は我が国では有名です。そしてその光景を妾は直で見ておりました」

「帝がわざわざルーベン国に……?」

「元々、妾はセレア様に用があったのです。内容は、我が国と契約をしてもらいたかったのです」

「契約?」

「契約の内容は我が国に、セレア殿の発明品を作る会社を建てさせていただきたいというものです」


 それは是非こちらから頼みたいものなんですけども…私の発明品を作る会社か。


 ニーシャ国には様々な職人がいる。

 それにルーベン国の職人達との腕の良さを比べるとニーシャ国のほうが上と言えば上だろう。


「それは私の方から是非と言いたいですね」

「本当ですか!セレア様の商品はカートン家のオリカ様が管理しているとお聞きしましたので、既に連絡を取って許可はもらっていたので、セレア様からそのようなお言葉を頂けて妾は嬉しいです!」

「海外進出…ですかね」

「アハハ……………また凄い話題ができちゃったよ」


 何で毎回こうなんだよ。旅行先とかでこう厄介事ではないが、でかい出来事に引っかかるのは私に何か補正でもあるんですか?


 オリカさんには既に連絡しているって用意周到だな。

 オリカさんが許可してるなら、私も許可するし。


「御二方は、風月祭を楽しみに来たのですよね!是非!楽しんでください!」


 大和様はそう言って呼ばれた方に向かっていった。

 大人しい方だと緋花さんから聞いていたが…随分明るい人だったぞ?


「大和様のお言葉に甘えて、風月祭を楽しみましょう?セレア様♡」

「そうだね」


 リリアナと私は手を繋ぎ、屋台を周ることにした。


 あれは…りんご飴を売ってる屋台か。リリアナは食べるかな?


「リリアナ、あそこにりんご飴を売ってる屋台があるけどリリアナも食べる?」

「食べたいです!」

「オーケー」


 私は屋台に向かって、りんご飴を買うことにした。


「りんご飴を二つ」

「あいよー!銅貨二枚だ」


 私は銅貨二枚を出して、りんご飴を二個受け取った。

 私はリリアナに一個渡し、私はりんご飴を食べる。


「リリアナ…座って食べる?」

「問題ありません!セレア様との長年デートしてますから、食べ歩きが出来るようになったんです!」


 リリアナは嬉しそうに私に自慢した。


 最初の時、かぶりつくのも大変そうだったのに……成長したなぁ。

 この時、私は子の成長を見守る母親のような気持ちだった。


 リリアナとりんご飴を食べながら色んな屋台を見て周った。

 その時のリリアナの表情で、私はリリアナが気になっている屋台にもう一度行くことにした。


 りんご飴も食べ終えたし、屋台で遊ぶか。


「リリアナ、射的屋気になってたでしょ?行ってみる?」

「いいんですか?なら是非行きたいです」


 私とリリアナは射的屋に行き、お金を払った。


「どれが欲しい?」

「………あの狼のぬいぐるみでしょうか」


 私は狙いを定めてぬいぐるみを撃つ。

 ……………が、案の定動かない。絶対当たったのに…仕組んでんなこれ。


「当たったのに倒れませんね」

「まぁまぁ落ちこまないでくだせぇ。もう二回撃てますから…」


 射的屋のおっちゃんにそう言われる。絶対仕組んでる!この反応はそうだ!

 私は全発、ぬいぐるみに当てるが微動だにしない。


「あちゃぁ〜駄目でしたね〜。もう一回やりますか?」


 ふむ………。

 強化魔術をかけるわけにはいかないし、そうだ。

 これは狼に釘を打ってなければ出来ることをしよう。


「リリアナも試してみる?」

「ちょっとやってみたいです!」

「おっちゃん。私とリリアナの分をくれ」

「毎度ありー!」


 私とリリアナは銃を受け取る。

 よーしいっちょやりますか。


「リリアナはぬいぐるみを自分のタイミングで狙ってね」

「……?分かりました」


 私はリリアナの銃の引き金を引く指の動きを見て、リリアナの銃に合わせて私も引き金を引く。


 全発…計六発連続で当てると、狼のぬいぐるみは倒れた。


「やったぁ!セレア様!取れましたよ!」


 リリアナは大喜びしていた。そしておっちゃんは倒れたことに驚いていた。

 やはり仕組んでいたか。全く、帝の誕生を祝う場で何をしてんだか。


 私はおっちゃんにリリアナに聞こえない声量で注意喚起をして狼のぬいぐるみを受け取った。


「どうぞ」

「ありがとうございます!セレア様!」


 リリアナはぬいぐるみをギュウと抱きしめる。可愛い〜尊い〜。頑張って良かったぁ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る