第145話 祭りの詳細

 私とリリアナは上州に来た。

 硫黄の匂いが凄い…!慣れてくるだろうけど、こんなに匂いがするんだな。


「凄い匂いですね」

「草津温泉は温泉の成分、酸性値が高いらしいからね。ひとまず温泉巡りでもしようか」


 私とリリアナはカメラで写真を撮りながら、色んな温泉に入った。


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「あったまります~」

「あったかぁ~」


 温泉巡りいいなぁ。もうこれで六軒目だ。

 夜空を眺めながら私とリリアナは温泉で癒される。


 歩きで疲れたのは久々だな。

 明日はお祭りか…。何のお祭りなんだ?緋花さんに朝一聞きに行こうかな。


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 私とリリアナは温泉街である上州を離れ、宿に戻って就寝準備をする。


「私は明日の朝、銀月にちょっと寄ってくるね」

「銀月ですか?分かりました」

「何も聞かないんだ」

「何かやましいことをするつもりなんですか?」

「いやいや!そんな事はないんですけど」


 変な事を言うのはやめよう。リリアナ相手だと命が危うい。


「さっ!寝ようか!」

「セレア様…逃げました?」

「ほらほら今日は色々あったからね、早く寝ようか!」


 私はリリアナを押して寝るよう催促する。


「寝る前におやすみのキスは無いんですか?」


 リリアナの言葉で私はリリアナのおでこにキスをする。

 こう言われてするのは恥ずかしいというかまだ抵抗があるというか。


 私はそんな思いをしながら、掛け布団をかけて寝た。


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 私は早めに起きてすぐに着替えて銀月に向かった。


「あの〜…………」

「あら…セレア殿。何用でありんすか?着物でありんすか?」

「そうじゃないんだけど、聞きたいことがあって」

「なるほど。何をお聞きに?」

「今日の昼に開かれる祭りについてなんだけど」

「なるほどなるほど!お任せくださいでありんす!」


 緋花さんは頼られるのが嬉しそうに、祭りについての詳細を教えてくれた。


 祭りの名前は『風月祭』

 ニーシャ国の帝の誕生を祝う祭りらしい。つまりは帝の誕生日を祝う祭りだ。


 帝の名前は蚕荘大和さんしょうやまと

 まだ十二歳らしいが実力は他の帝に引けを取らないらしい。


 ニーシャ国の帝は代々、蚕のように白く美しいと称されている。

 そして今までの帝は男性が多かったが、大和帝は女性だ。


 風月祭では護衛はいるが、帝も一般客のように参加するらしい。


「ありがとう。知りたいことが知れたよ助かった」

「いえいえ…そういえば楼河とお知り合いらしいでありんすね?」

「楼河の事を知ってるの?まぁ、私は昨日知り合ったばっかりなんだけど」

「あの人の幼少期を知っているでありんすから」


 あっ、そうか。緋花さんは妖狐だから人間と比べて長生きしてるもんな。


 緋花さん曰く、楼河が幼い頃のお世話をしていたらしい。

 使用人だった…って事か?


「昨日、楼河と会ったでありんすがセレア殿の話が出てきた時は驚いたでありんす」

「私の話が?」

「ふふっ。実は楼河、魔術に憧れていてセレア殿の大ファンなんでありんすよ」

「ファン…………?」

「えぇ、ファンでありんす。ほら、ニーシャ国と言えば刀でありんしょ?魔法が使える人は少ない国でありんすから、魔法が使えなくても磨けば上手くなる魔術に目を輝かしていたでありんすよ」

「魔術は魔法より大変だとおもうなぁ」

「それはあっしも分かっているでありんすから、そう伝えたでありんすが……意志は固かったでありんす」


 大ファンねぇ。だから私と会った時に興奮気味だったのか。

 やっと辻褄が合った。


 私は楼河と出会った時のことを思い出す。

 パッと見、魔術は苦手分野だろうけど…本人の気持ちがやっぱり大事だからな。


「その反応。楼河は魔術には向いていないようでありんすね」

「あ~、分かります?」

「何年生きてると思ってるでありんす」

「でも魔術で大事なのは気持ちもありますから、本人のやる気さえあれば、成長しますよ」


 緋花さんはそう聞いて良かったと安堵したような顔をした。

 保護者のようだな。


 私が緋花さんと色々話していると、銀月の扉がバン!と大きな音を立てて開かれる。


「ちょっと緋花姐さん!セレア殿が来てるなら言ってほしいでござるよ!」

「あら、ごめんなさいでありんす」

「反省してない顔をでござるな!前もこんな事あったでござるよ!」


 ゼェゼェと息を切らしながら緋花さんに訴える楼河。

 会うたんびに息切らしているけど、大変そうだなぁ。


「別にあっしはセレア殿が来たら伝えろと言われてないでありんすから」

「いちいち言わないといけないでござるか?」

「そうしないと伝わらないでありんすよ」


 楼河が本当か?という疑問の目を緋花さんに向ける。長年一緒にいるからだろう、嘘を見破ってるんだろうな。


「そろそろ戻らないとリリアナに怒られる。じゃあ私はここらでお暇するよ」


 私は二人に手を振り、銀月を後にした。


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 宿に戻り、着物の準備をリリアナと一緒にする。

 帝に人目会えたら良いな。


 少し気になるぞ。

 蚕のように美しいかぁ、どんな人なんだろう。


 実力も凄いって話だもんな。魔法の才能もあるらしいし、何やら固有の能力も持っているらしい。


 私はリリアナに着付けをしながら祭りを楽しみにしていた。

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