第144話 私達に面倒事は付き物

 寿司を食べ終え、私達は宿に戻って就寝の準備をしていた。


「先にお風呂入る?」

「セレア様と一緒にという選択肢はありませんか?」

「ほしい?」

「ほしいです」

「じゃああげよう」

「なら今すぐ入りましょう!」


 リリアナは着替えを持った私の腕を掴み、風呂場に向かう。

 最近、私達の中では一緒にお風呂に入るというのが習慣づけられていた。


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「ふぃ〜」

「温かいですね〜」


 ニーシャ国の宿には大浴場がある。しかも一部屋にだ。

 良い宿にして良かったな。


 二人で入るにはデカすぎるが…広々使えると考えればいいか。


「明日は温泉街にでも行く?」

「いいですね!行きましょう!サムライ…?も見てみたいです」

「あれは見るものなのかな…」


 侍かぁ。そんな簡単に見れるものなのか?

 ここはオエドだし、江戸幕府に行くか?……そもそも近寄れるのか?


「侍は…いつか見れると良いね」

「えっ、今は居ないんですか?」

「江戸幕府付近に行けば会えると思うよ」

「温泉街は江戸幕府付近では無いですよね」

「そうだね…。でも、寄るくらいは出来るよ」


 私がそう言うと、リリアナは嬉しそうだった。

 侍かぁ。果たして会えるのだろうか。


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 鳥の囀りが聞こえてくる。

 朝か…。私は隣にいるリリアナを起こして支度をする。


 まずは江戸幕府付近だな。


「セレアさまぁ」

「おはようリリアナ」


 私はリリアナにおはようのキスをする。

 習慣になったな、これも。


「ふへへ…♡」

「ほら起きなさい」

「ん〜…」


 寝起きでふにゃふにゃなリリアナが最高に可愛いです。尊い……。

 神様ありがとう。


 私は不器用ながらリリアナの髪をとかす。

 サラサラだな。いいなぁ、こんな髪質になってみたい。


 ぽけ〜としているリリアナの頬をつねり、リリアナを起こす。


「いひゃいれす」

「目は覚めましたか?」

「ひゃい…なのれ、はなしてくらはい」

「仕方ないなぁ」

「ヒリヒリします…………」


 リリアナが頬を手で擦る。強くつねったつもりは無いんだけど…強かっただろうか。


 リリアナが髪の毛を結び、ポニーテールになる。

 可愛い〜!うなじが…うなじがエロい!


 私も着替えてリリアナと宿を出た。


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 江戸幕府付近に行き、私とリリアナは侍探しという名の飯巡りをしていた。


「美味しいですぅ〜!」

「そんな食べて大丈夫?お昼入らなくなるよ」

「大丈夫です!」


 リリアナは美味しそうにパクパクと食べていく。

 よく入るなその量。私には無理だ。


 食べるリリアナを眺めていると、誰か叫ぶ声が聞こえた。


「すまないでござる〜!そこの水色髪の殿方!」


 殿方?いやいや…私は殿方ではないし。

 そう思い、私は無視をするとガシッと肩を掴まれる。


「ぜぇせぇ…殿方よ。何故無視をするでござる」

「…………私は殿方ではない」

「えっ…あぁ!すまないでござる!御婦人でござったか!」

「…まぁいいです。それで、私に何か用ですか?」

「助けてもらいたくて」


 彼から話を聞いた。


 目の前にいる銀髪の男性の名前は天宮楼河あまみやろうが

 どうやら彼は江戸幕府の人間から逃げているらしい。


 何をやらかしたのか聞こうとしたが、彼は一向に口を割らないため諦めた。


「セレア様、どうしますか?」

「分かった。かくまえば良いんでしょ?」

「助かるでござる!」


 私は楼河を見えない角度に隠した。

 リリアナと話をして旅行客を演じる。いや、旅行客ではあるんですけどもね。


 私とリリアナが話をして盛り上がっていると、走ってくる武士たちが見えた。


「そこの客人殿よ。このような銀髪で緑色の目をした若者を見なかったか?」


 武士が楼河の絵を見せてくる。この人達か。

 私は焦りも見せずにこういった。


「すみません。そのような人は見ておりません…お力になれず申し訳ありません」

「そうか…。ご協力感謝」


 そう言い武士達は去っていく。

 武士の姿が見えなくなったのを確認した私は、隠れていた楼河に指示を出す。


「出てきていいよ」

「いやぁ、助かったでござる」

「あの……何故追われていたんですか?」

「実は我が天宮家、江戸幕府反対派の家門でござって、そして拙者は天宮家次期当主でござる」

「要は反対派の家門を潰すために楼河は追われてるって事だね」

「そうでござる!」

「面倒事に巻き込まれた気がしますね」


 同意見だリリアナ。

 人助け…は程々にしといた方が良さそうだな。


「そういえば、お二人は旅行中でござるか?」

「新婚旅行中です♡」

「新婚……旅行?旦那様は何処に…」

「旦那様はセレア様ですよ?」


 リリアナの言葉に楼河が驚いて腰を抜かした。

 そんな驚くことですかね?


「よく考えれば水色髪のセレアと呼ばれる殿方のような女性…そして、黒髪の黄金色の瞳をしたリリアナと呼ばれる女性………あの有名なお二人でござるか!?」

「有名?」

「有名でござるよ!悪の聖女から真実の愛を見つけ貫いた二人……!」

「…何かダサくない?」

「そうでござるか?」


 そんな異名が…要らないな。また変なのつけられたよ。

 翡翠の魔術師の次はこれかよ!


 楼河は謎に興奮気味だったが、それを無視して私は楼河に事情を説明した。


「温泉街なら上州に行けばいいでござるよ。あそこの草津温泉は有名でござるから」


 日本でも聞いたことのある温泉だ。

 私とリリアナは目を合わせ、草津温泉に行くことにした。


「ありがとう」

「いや助けてもらったお礼でござる。次あった時はルーベン国のことを教えてほしいでござる!」

「任せて」


 私とリリアナは楼河に手を振り草津温泉への足を速めた。

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