第141話 怖い人間と親しい人間
私はリリアナとのデートを楽しんでいた…そう、楽しんでいたはずだったのだ。
私はある事に気付く。さっきから見られている気がする。
何となく誰なのか予想はついている。私の背中を刺すかのような視線…あいつだろう。
後で会いに行ってみようかな。
「あっ!セレア様…私、今からちょっとした予定があるので」
「少し待っててほしいって?」
「すみません。出来ますか?」
「いいよ。気を付けてね」
私はリリアナにキスをして、リリアナを見送る。
リリアナの予定も気になるが…今はこの時間は好都合だ。
私はリリアナの後ろについていきながら、視線を遮るように裏路地に隠れる。
そして私はサバゲーで鍛えられた隠密を使って、私を見ていた人間の後ろに立つ。
「やぁ………リディル君」
私がそう言うと、彼は驚きよりも恐怖心が勝るのかギギと音を立てるようにゆっくり私の方を向く。
良い反応するね。
役者でも咄嗟にその反応できないと思うんだけど…多分。
「な、何故……いやどうかしましたか?」
「うーん。何か視線を感じてね。辿ったらここに着いたから」
リディルは目を逸らし、私と目を合わせないようにしていた。
嘘つくの下手くそか。
「何で私を見ていたのか知らないが…リリアナとのデートを邪魔しないでくれるかな?」
「邪魔なんてしてませんよ」
「嘘をつかない方がいいと思うけどね。君がリリアナの事を好いている事は丸分かりなんだ」
「そ、それは…」
「それに…私の事を刺すような視線で見ていたからね」
「気のせいかと」
全然気のせいじゃないんだよなぁ。
凄い殺気だったぞ。あれを気のせいと言えるのは無理がある。
私はリディルを問い詰めようかと思ったが、やめた。
何となくだが、リリアナがリディルを利用してそうなんだよな。
あの子は何するか分からないからな。
「……とにかく、私とリリアナに付き纏うのは止めてほしい」
リディルは何も言わなかった。まぁ、次何かしたらそれ相応の対応をしよう。
私はリディルに背を向けてリリアナとの別れた場所に向かった。
背を向けるの案外怖いな。後ろから刺されたりしないよな?
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私はリリアナと別れた場所に向かうが、リリアナの姿はなかった。
早かったか?別の所…いや、リリアナでも探すか?
「さて……どうしたもんか」
「何かあったんですか」
「うわぁ!?」
私に声をかけたのはオリカさんだった。何か久しぶりな気がするけどそうでもないか。
結婚式のときに会ったな。
「そんなに驚かないでくださいよ」
「オリカさんは…ほら、なんかさ」
「私の事を悪く言おうとしてます?」
「イノワさんに殺されかねないから…!」
イノワさんはあぁ見えてシスコンだからな。オリカさんの事を変にイジれば殺されかねないっていうか、殺される。
「そういえばチェス、凄い人気ですよ」
「あ~。色んなところでチェスやってるよね。特に酒場とか」
「カフェでもチェスをする人いますからね。温泉でも…」
まさかチェスがあんな人気になるとは思ってなかった。
それでこの話をするってことは…オリカさんのことだ。また新作の話だろう。
私はオリカさんを疑いの目で見ると、オリカさんはその通りと言うように笑みを見せてくる。
「それで…新作はまだですか?」
「何も考えてません」
「何かありません?」
ゲーム…ゲーム。
ここでは戦略系が流行するらしいし、オセロ、将棋になるのか?
テレビゲームは難しいしなぁ。
あっ…そうだ。大人になって全くやらなくなるけど、久々にやりたくなるものがあったな。
「人生ゲーム…」
「何ですかそれ!」
オリカさんは目をキラキラさせる。商人魂が……!
人生ゲーム…久々にやると楽しいんだよな。友達いなくて全然やれた記憶ないけど。
親戚の人とやってたな。
私は人生ゲームの雰囲気やルールをざっくりオリカさんに伝えると、オリカさんは伝えた内容をメモる。
「また詳しく伝えますよ」
「ありがとうございます!」
元気だなオリカさん。今はカートン家で私の商品を売ったりしてくれているけど…商売が本当に好きなんだな。
私はその後、オリカさんと他愛も無い話をしていると後ろから勢いよく抱きつかれる。
グハッ!い、痛い…背中が………、ボロボロなんだから。
「リリアナさん。もしかして、デート中でしたか?」
「デート中です♡」
「すみません。お二人の邪魔をするおつもりは無かったのですが」
「オリカさんなら問題ありません。オリカさんはセレア様に恋をするわけないので」
「遠回しに私の事を馬鹿にしてたりしませんか?一生独身みたいな」
「してませんよ」
そこバチバチしないで…。間にいる私が気まずくなる。二人が知り合いになった理由、私なんだから!
やめて!
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オリカさんが去り、リリアナは一向に離れようとしない。
いつまで私の背中に引っ付いているんですか。
「リリアナ?そろそろ、離れれたりしませんかね」
「嫌です」
「理由をお聞きしても?」
「だって、セレア様がオリカさんと楽しそうに話すんですもん」
可愛いか?え、リリアナさん…そんな純粋な……嫉妬を…可愛い。
私の妻可愛い。
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