第140話 夫に似合う服

 私の膝枕でぐっすりなセレア様の頭を撫でる。

 寝顔が可愛いすぎる…私の夫は天使ですか?


「嫉妬だなんて…ふふっ♡リディルも中々使えますね」


 リディルと出会ったのは私が七歳の頃だ。

 最初は彼は私の事を友人として見ていてくれた。だが、何時からか彼の私を見る目は変わった。


 彼は私の事を友人としてではなく異性として見るようになった。

 特に変なことをしてくる雰囲気はなかったが、彼の目は変だった。


 リディルとはなるべく距離は保っていましたが、彼が必要以上に迫ってくるためどうしようかと思っていましたが…セレア様が嫉妬するなら、使えますね。


「私がリディルの事を好きかなんて…セレア様は私の事をまだ知りませんね。私はセレア様の事しか考えていないと言いますのに……」


 セレア様は時折、寂しそうな顔をする。

 そんなセレア様を私は癒してあげるのです。


 そうすればいつか、セレア様はもっともっと私に執着してくれるはずだ。

 セレア様が私なしでは生きられないようになるまで、私は一生頑張りますからね♡


♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦


 目が覚めるとそこは私室のベッドだった。

 ………誰が運んでくれたんだ?


「起きましたか。ここまではこの老いぼれが運んだんですよ?」

「ありがとう老いぼれ」

「セレア様…わたくしの事をそう誂うのはお辞めください。旦那様を思い出してしまいます」

「お父様のことを?」

「そうです。旦那様はわたくしの事をこき使った挙句、よく誂っておりました」

「じゃあ私はお父様に似てるってわけだ」

「この老いぼれ…先が長くないのですから、そう元気に動かれてはこの老いぼれが死んでしまいます」


 セバスチャンとそんな話をしていると、私室の扉が開く。

 そこにはリリアナが立っていた。


「ホッホッホッ…新婚の邪魔をするわけにはいきませんからの、ここでお暇させていただきます」


 セバスチャンが部屋から出ていく。

 リリアナはセバスチャンが部屋から出たのを確認すると、私の腹部にダイブしてくる。


 グボァっ!痛い…。みぞおちが………みぞおちに入った…。

 悶える私にリリアナは純粋無垢な目線を送ってくる。


「セレア様?」

「……大丈夫。何でもないから」


 痛い…。私はお腹を擦りながら、リリアナの頭を撫でる。

 とても痛いです。


「そうだセレア様、新婚旅行は何時にしましょうか」

「うーん…。折角なら長期間の旅行にしたいし、来週とろうか。近いほうがいいでしょ?」

「分かりました!七日の旅行ですね♡」


 リリアナは嬉しそうに王城宛に手紙を書きに行った。

 七日…生活リズムが崩れないといいんだけど。


 まぁいいか。直せるだろ。


♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦


 私はあの後ぐっすり寝た。

 そして今、私はリリアナとのデート中だ。


「セレア様!見てください!あの服屋さんセレア様に似合いそうなものが沢山ありますよ!」

「いや………見た感じどれもワンピースのような」

「セレア様はなんでも似合うんですからワンピースだって似合いますよ!ほら!行きますよ!」


 私はリリアナに振り回されていた。

 何故だ…何故私がワンピースを着なければならないんだ。


 ってかデートが始まってもう服屋、三軒目だよ!?

 何軒周ればいいんだ。


 どうしよう、妻がおしゃれ好きなせいかもみくちゃにされている。


 私はリリアナの言われるがまま、店に入り試着をすることになった。


「これも似合います♡」


 リリアナが楽しそうだし…いいか。

 でもこのワンピースは流石に丈が短いのでは?


 私に似合ってるとは到底思えないのだが…。


「………何、そんなマジマジと見て」

「いえ、丈が短いのでセレア様の下着が見えたら嫌だなと」

「何を考えてるの」

「セレア様の下着を見ていいのは私だけですから!」

「そんな事はないよ!?」

「えっ…他の人にも見せるんですか?」

「そもそも私ってリリアナに下着見せたことあった?」

「……………」


 リリアナは目をそらす。何かやらかしてるなこの子。

 一回だけあるか、私の下着が一回消えた事件で犯人がリリアナだった時のやつ。


 そもそも私の下着見て何になるんだよ。


「リリアナ…リリアナ?」

「なんですか?」

「写真撮るのやめようか」

「なんでですか」

「そんな写真撮っても何にもならなっ…」


 私がそう言いかけると、リリアナは私との距離を一瞬で詰めてくる。

 うわぉ…びっくり………。


「セレア様はなんにもわかっていません!私がセレア様の写真を撮る理由は一人で………したり、セレア様を眺めて癒やされるという目的があるんです!夫の可愛い姿を撮って何が悪いんですか!」

「…お、おう」


 そんな圧かけないで!ちょっ、怖い怖い。


 途中何言ってるか分からなかったんだけど…多分聞いたらいけないやつだから聞かないでおこう。


 にしても結婚してから、リリアナが積極的になった。

 おはようのキスやおやすみのキス、どこに行くにしても毎回キスを要求される。

 私の心臓が持たない…。


 試着が終わり、リリアナが私が試着した服を全て買う。


「いやいや!流石に私が出すよ!」

「駄目です!私に奢らせてください」

「えぇ…でも、妻に出させるわけには」

「ここで奢ってセレア様には私が選んだ服を着てもらうんです!」

「そういう戦略ね」


 そしてリリアナは私に入る隙を与えず、買い物を終わらせる。

 えっ、私………この試着した服着るの?

 私はちょっとした絶望で、先が不安になった。

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