第139話  夫側にもライバルが…?

 昼も終わり、リリアナは部下に呼ばれ仕事に戻っていった。

 リリアナとの会話が終わって約六時間経った。

 そして私は仕事に追われている。


「地獄だ。何で私はこんな所で仕事をしているんだろう」

「色んな所から魔道具アーティファクトの修理とか作り方とか頼まれてるんですから、そんな事を言ってる場合ではありませんよ」

「術棟は魔道具アーティファクトの修理屋じゃないんだよ!」

「セレア様が所長になってからこんな事になってるんですから…諦めてください」

「うぇ〜」


 何でだ。所長ってこんな事をするんだっけ?

 もうわからないよ。とにかく今はリリアナに会って癒されたい。


 うだうだ言わず仕事を終わらせよう。


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 珈琲を片手に集中して三時間、仕事を終わらせた。

 リリアナを迎えに行こう。


 私はトボトボとリリアナの居る仕事場に向かう。

 早く癒されたい。リリアナに会いたい。


「今日は早く寝たほうがよさそうだ」


 きちんと睡眠をとろう。明日は休みだし、長く寝よう。


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 リリアナの居る仕事場に行くと、話し声が聞こえた。

 まだ仕事中のようだ。邪魔するわけにはいかない、ここで待っていよう。


 私が壁にもたれかかって待っていると、扉が開きリリアナの部下だろう人が出てくる。


「あれ?所長?こんな所で何をしているんですか?」

「あぁ、えっとリリアナを待っていて」

「なるほどリリアナを待ってるんですね!呼んできましょうか?」

「いやまだ仕事中だろう?遠慮しておくよ」


 私は何か引っかかった。リリアナに敬称をつけない…ただの部下でないのか?

 そもそも部下なのだろうか。


「すまない。君は…リリアナの部下なのか?」

「申し遅れました。俺の名前はリディル・ナトル。リリアナの友であり部下です」


 リディル……そういやリリアナが幼い頃、貴族の友達が居ると話していたな。

 もしやこの人間がそうなのか?


 だとすると、随分リリアナとの付き合いが長そうだ。

 友達の性別を聞いてなかったから女性だと思っていたが、まさか男性だとは。


 何嫉妬してんだ!別に怪しい関係でもなさそうだし…ないよな?どうしよう、裏で実は付き合ってましたみたいな。


「あれ?セレア様?来てるなら言ってくださいよ。直ぐに向かいましたのに」

「話しているようだったから」

「ちょっとした小話をしていただけです。ってか、リディル!セレア様が来てるなら言ってください!」

「ごめんごめん。でも所長が伝えなくて大丈夫だって言ってたから」

「セレア様は謙虚な人なんです!次からはセレア様がそう言っても私に伝えてください」

「はいはい」


 リディルは部屋の中に入り、リリアナはそれを確認した瞬間私に抱き着いてくる。


「セレア様!少し待っててくださいね。帰る準備をしています」

「うん」


 リリアナは部屋の中に入り、準備をしに行った。 


 不安だな。あのリディルっていう友達…リリアナを見る目が少々おかしかった。

 友を見る目というよりかは、執着しているような…まるで好きな人を見る目だった。


 リディルは警戒したほうがよさそうだ。でもここは術棟からは遠いし、私が口を出せる部署でもない。


 ましてやリリアナの友達だ。リリアナにあの人に近づくななどと言えるわけでもない。

 はて、どうしたもんかね。


「セレア様!行きましょう!」


 リリアナが私の手を掴み走る。そんなはしゃがなくても、まぁ私もリリアナと会えて内心浮ついているのだが。


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 馬車の中で私はリリアナに膝枕をされていた。

 癒やされる。幸せ………。


「セレア様…リディルと会った時、何か考え事をしていましたか?探るような目でしたので」

「あー…気にしないで」

「気にしますよ。私は奥さんなんですから、教えてください。私には話せない事なんですか?」


 話して良いのだろうか。

 いや、話そう。こんな事を黙ってても解決策が出るとは思わない。


「実は、リディルがリリアナを見る目が友というよりかは好きな人を見る目め見ていて…不安になったんだ。リリアナは彼との距離感が近いようだし」

「……要は嫉妬という事ですか?」

「…多分。嫉妬だけじゃない、不安もある。リリアナがとられるんじゃないかって、私よりもリディルの方が付き合いが長そうじゃないか。私は時々リリアナと話すぐらいだったから、遊ぶといった事はそんな出来てないし…」


 セントラ伯爵がリリアナを連れてこない限り、私はリリアナと会えなかった。

 当主の仕事があるし、忙してくて自らセントラ家に出向かうことがなかったから。


 でもリディルはどうだろうか。友達、そう言えるのならきっと何度も会って、話して遊んだんだろう。


 ………私が出来ない、出来なかったことを、してあげられなかった事を、彼はリリアナにしているのではと、そう思ってしまうのだ。


「私はリディルの事を性対象として見れません。それに、幼い頃に友達になったからと言えど時々会って話すぐらいでした。セレア様より関わりは少なかったです」

「でも、二人は随分と仲が良かったじゃない。もしかして…」

「私とリディルは付き合ってなんかいませんよ。私はセレア様一筋ですから、セレア様がくれたプレゼントは全て愛用、そして残ってますしセレア様を撮ったアルバムだってあります」

「…リリアナは私の事を好き?」

「勿論です。夫のことを嫌う妻などいませんよ。好きだから結婚したんですから」


 その言葉に救われた。私はリリアナに頭を撫でられながら眠る。

 こんな風に不安になるなんて…格好良くないな。

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