第137話 幸せな二人

 私は誰かに揺さぶられ起きる。

 目を開けると目の前にはムスッとした顔のリリアナがいた。


「おはようリリアナ」

「おはようございます。って、早く起きてください!今日が何の日か忘れたんですか!?」

「今日……?」


 私はハッとする。

 今日は結婚式だ…。誰のでもない、私とリリアナの結婚式だ。


 リリアナは私が思い出した事に気付いたのか、私に抱き着いてくる。


「今日は私とセレア様の結婚式ですよ。もう…早く準備しますよ!」

「そう言われても、リリアナがそこを退いてくれないと私は動けないんですが?」

「私にキスをしてくれたら動きます」

「……仕方ない」


 私はリリアナのおでこにキスをする。リリアナは少し不満気だったが、退いてくれた。

 最近はこんなキスのやり取りが続いている。


 まんまと嵌められているような気もするが、気のせいだろう。


 私は起き上がり、身支度をして結婚式場に向かった。


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 何時間経っただろうか。疲れた……。

 私は呼び出され、会場に向かう。


 会場には私の父であるラエルやリオン、オリカさん、エルトンさん、ドミニク、術棟の皆、魔塔の皆、王族…など、いや豪華!

 人居すぎ!


 私は立ち位置につき、リリアナを待つ。


「新婦の登場です」


 扉が開き、白いウエディングドレスを着たリリアナが入ってくる。

 言葉に表せれないリリアナの姿に私は見惚れてしまう。


「セレアよ。娘を頼むぞ」

「…任せてくださいセントラ伯爵」


 泣きそうなセントラ伯爵に私は言葉をかける。

 リリアナの事なら安心してください。幸せにします。


「汝、セレア・アルセリアはリリアナ・セントラを妻とし生涯愛すと誓いますか」

「誓います」


 リリアナも私と同じように誓った。

 そして、私はリリアナの左手を取り薬指に結婚指輪をつける。


 リリアナはそれを見て嬉しそうに微笑み、私の左手の薬指に結婚指輪をつけた。


「それでは誓いのキスを……」


 リリアナはこの日を待ちわびていたかのように私を見つめる。

 くっ……何だこの緊張!


 私はリリアナを抱き寄せ、キスをする。それはおでこでも、頰でもない口に。


「えへへ…。ファーストキスなんですから、責任とってくださいね♡」

「勿論、心配しないで」


 私達はその後、色んな人と話をした。


「おめでとうございます所長!」

「おめでとうございます、セレア様」

「ありがとう皆」

「いやぁ、所長も結婚かぁ……。俺らもついていかないとなぁ」


 術棟の皆と話しあった後、私はラエルの所に向かう。

 ずっと、泣いてたんだよな…。


「嫌だァァ!セレアぁぁぁぁ…お父さんを一人にしないでぇ」

「泣かないでこんな所で!」

「可愛い娘を離したくないよぉぉ!」

「ラエル様……安心してください。セレア様のことは私がしーっかり幸せにしますので♡」

「ハッ!この女狐め!私の可愛い娘を誑かしおって」

「結婚を承諾してくれたじゃないですかお義父様」

「お義父様って呼ばれたくないわ!」

「頼むから喧嘩しないで……」


 何でこんな日に限って喧嘩するんだよ!

 落ち着いてくれ、頼むから。


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 色々あったが、無事結婚式は終わり私達は初夜を迎える。

 こういうのって凄い緊張する…。


「セレア様、似合ってますか?」

「凄く可愛い。似合ってるよ」

「えへへ♡嬉しいです」


 甘い香りをしたリリアナが扉を開けて入ってくる。

 普段の可愛らしいリリアナとは違って、大人の女性を醸し出していた。


 可愛い…妻が可愛いすぎるのだが!?


「セレア様。私、とっても幸せです。セレア様と結婚できてセレア様の本当の妻になれて」

「私も、リリアナの夫になれて幸せだよ」


 本来なら、私はリリアナの妻。リリアナは私の妻なのだが、リリアナがセレア様は夫だ!と言い張っている為、私はリリアナの夫という立場になった。


 何をこだわっているのか分からないが、必死そうだったしリリアナの事だ、何か考えているのだろう。


「ずっと側に居てくださいね♡」

「勿論」


 私はリリアナと体を重ねる。

 幸せでたまらなかった。リリアナを救えた、そして夫婦になれた。


 私はリリアナを大切にする。これからもリリアナの事を第一に考えて。


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 目が覚めると朝だった。チュンチュンと鳴く小鳥の声、そして隣には幸せそうに寝てるリリアナ。


「可愛いなぁ」


 私がそう呟くと、反応したようにリリアナが起きる。

 ビックリした…。突然起き上がらないで、心臓に悪い。


「今、可愛いって言いました?」

「言ったけど…」

「えへへぇ…。セレア様に可愛いと言われると、凄く胸が躍るんです」

「毎日言ってあげようか?」

「いつものことじゃありませんか?」

「確かにそうだね」


 私とリリアナは笑い合う。

 こんなに幸せでいいんだろうか。いや、問題ない。


 頑張ったんだその分のご褒美だ。

 それにしてもリリアナが可愛い。なんだこの可愛さは、私を殺す気か?


 笑顔が眩しい…好き。


「セレア様!おはようのキスをください!朝昼晩キスしてもらいますからね」

「昼も!?」

「ずっーと私はセレア様とキスをしてイチャつきたいですよ?でも、それを我慢して朝昼晩にしてるんですから承諾してください」

「分かった、分かったからその姿でジリジリ近寄ってこないで!」


 裸で迫られるのは…ちょっと、理性が…。

 結婚したから理性が外れたら何するか分からん。


 あまり刺激が強いのは無しで。

 私はリリアナにキスをしながらそう思った。

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