第130話 勝負時はすぐそこ

 ケルベロス及びアイゼアが屋敷に来てから、セレア様は定期的にアイゼアの散歩で忙しそうだった。

 魔術師としての仕事もあるし、当主としての仕事もある。


 いやいや!ケルベロスのお散歩って意味がわかりません!


 アイゼアが来てからもう二週間……全然イチャつけてません!


『奥様、何を悩んでおられるのですか』

「うるっさいですね!全部あなたのせいですよ!」

『もしや主の事ですか?』

「そうですよ!あの人はいつになったら私とイチャついてくれるんですかね!」

『………引いて駄目なら押してみるのはどうでしょうか』

「イチャつきたいと堂々と言えば良いってことですか?」

『いや…まぁ、それでもいいのでは無いのでしょうか』


 この犬…何気に使えますね。

 そうですよね、引いてるだけじゃセレア様は振り向いてくれませんから。


 私はセレア様の居る私室に向かうことにした。

 今の時間帯なら、当主仕事をしているはずだ。


♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦


 はぁ〜。書類に追われすぎている…………。

 誰か休ませてくれ、疲労でどうにかなってしまいそうだ。


「前世に比べればマシか」


 全く、鈍ってしまったようだ。こんなんでへこたれるとは…。


 私は書類を書く手が止まってしまう。そして、私は机にくっつく。

 このまま寝てしまおうかな…セバスチャンに怒られるだろうか。


「セレア様♡」

「ん?リリアナ?」

「随分お疲れのようですね♡」


 リリアナは癒しの笑みを浮かべる。

 もう少しだけ頑張ろうかな。


 リリアナが私にホットミルクを入れてくれる。

 私はそのホットミルクを飲む。あ~あったけぇ。


「急にどうしたの?リリアナ」

「いえ、最近セレア様とイチャつけてないなと思って」


 ほぉーん?

 私は顔がニヤけるのを我慢し、リリアナを抱きしめる。


 推しが可愛い!


「せ、セレア様!?」

「ん?こういうのを望んでたんじゃないの?」

「……………………はい」


 リリアナは照れながら、抱きつき返してくれる。

 ングッ!可愛い、落ち着け私。仕事で疲れているとは言え、理性を保つんだ。


 ここで襲うのは違う。順序というのがあるんだ。

 まだ結婚どころか、お付き合いもしてないんだ、そんな欲に従って襲うなんて。


 良くない!でも…リリアナを離すのは罪悪感があるし…………耐えよう。


「セレア様、私はいつになったらセレア様の奥様になれるんですかね」

「きっともうすぐじゃないかな?」

「そう、だと嬉しいです」


 婚約破棄イベントまで実は近づいてきている。

 シグルルートに行くのかは分からないが、アイザックさん以外は順調に攻略されてしまっている。


 後三ヶ月と言ったところだろうか。

 対策は練ったが、不安だ。


 そしてこの前イエラが聖女となった。

 アイゼア曰く、それは嘘らしい。そもそも禁忌魔法を使っている時点で聖女になることは出来ないらしい。


 もし、もしだ。もし失敗すればリリアナは殺されるのだろうか。

 いや、その前に庇った私が殺されるか?


「悩み事ですか?」

「気にしないでそこまでの悩みじゃないから」

「気にしますよ。私はセレア様の未来の奥様なんですから!」


 リリアナは私にいつも元気をくれた。

 今もだ、こうやって悩んでいたのを吹き飛ばしてくれる。


 大丈夫だ。きっと成功する。

 悩むのはやめよう。こんなに対策してきたんだ成功するに決まってる。


「悩みが吹っ飛んだよ」

「それなら良かったです。じゃっ!私に構ってください」

「はいはい」


 私はリリアナを構い倒す。

 こんな生活が日常になる日が早く来てくれるといいなぁ。


♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦


 あれから三ヶ月が経った。

 そして今、私はアイザックさん、エルトンさん、オリカさん、ドミニク、ティア達と作戦会議をしていた。


「それで………今日の午後、リリアナ嬢に何か起こるから手伝ってほしいと…?」

「そうなんです!最近イエラさんとアイザックさんは仲が良いじゃないですか!だからちょっとした芝居に付き合ってほしくて」

「それって私が嫌な気持ちにならないものですかぁ?」


 ギクッ………。や、やめてくれそんな目で私を見ないでくれエルトンさん!

 別にアイザックさんをいいように利用するわけじゃないから!


「エルトンさん、そう怒らなくてもいいのでは?別に悪用するわけではないですし」

「オリカさん!?悪用って言うのやめてくれませんか!?」

「おっと、すみません」

「わざとだよね?」


 オリカさんはすぐに私を貶めるんだから。

 やめてくれ本当に。


 私達は話を戻して、会議をすることにした。

 アイザックさんはこの作戦に同意してくれた。

 エルトンさんは不服そうだったが、何とか承諾してくれた。


 アイザックさんはイエラに魅了されたふりをし、リリアナが犯した罪を明かされるタイミングで私はリリアナがそれをしていないという事を証明する。


 そしてイエラが本当の聖女でない事も、明かせれば上手くいくはずだ。


「あたしずっと思ってたですけど、セレアは敵に回したらいけない気がするです」

「我も分かるぞ」

「私も同意見です」

「私もぉ」

「俺も」

「何で!?」

「やる事全てに全力と言うか、復讐とか得意そうだなと…こんなに練ってるわけですし」


 復讐が得意ってそんなに私って悪役顔にみえる?

 全然嬉しくないんだが。これで喜ぶ人とかそもそも居ないか。


 実際向こうからしたら今日、私は悪役になるんだろうなぁ。

 よし!午後、頑張るぞ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る