第131話 舞踏会は想定通り
午後の舞踏会の準備を私はしていた。
私は
部屋の扉が開かれるとそこには着飾ったリリアナがいた。
「おぉ〜!似合ってるねリリアナ」
「えへへ。そうですか?嬉しいです!」
ゲームで見た赤いドレスを着たリリアナがこちらを珍しそうに見つめる。
そうか、いつも王宮魔術師の制服だから護衛用の宮廷服は初めて見たのか。
「あの、その服装は」
「宮廷服だよ。私は護衛として参加するからね」
「じゃあ踊ったりは出来ないんですか?」
「私が休憩時なら踊れるよ。その時は、私から誘わせてほしいけどね」
「はい!」
リリアナはルンルンとステップを踏みながら部屋を出ていく。
ドレスを着ながらステップって出来るんだな。
いや、着崩れちょっとしてません?メリーに怒られるのでは………。
扉が閉まった後、メリーの声だろう。リリアナを叱る声が聞こえた。
あらら……。
『我が主、我は奥様の護衛をすれば良いのですね』
「頼んだよアイゼア」
『お任せください』
アイゼアが黒い霧になり消える。リリアナの影に隠れに行ったようだ
アイゼアには今日は私が合図をした時にだけ出るように頼んだ。
私は使う書類達をまとめて舞踏会に備える。
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時刻を確認し、私はリリアナを呼びに行く。
「リリアナ?」
「あっ、もう時間ですか?ちょっと待って下さいね」
メイド達ひ髪型をセットされているリリアナが部屋には居た。
メイド五人がかりで髪型をセットするんだな…やはり令嬢っていうのはそういうものなのか?
私は外に出て、馬車で待っていると髪型をセットし終えたリリアナがこちらに向かってくる。
「お手をこちらに」
「エスコートしてくれるんですか?」
「勿論」
私はリリアナに手を差し伸べる。
リリアナは手を置く、私は少し掴み馬車に乗せる。
私も続いて乗り、馬車は王城へと走る。
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王城に着き、リリアナを馬車から降ろす。
王城内に入ると既に舞踏会が始まっており、知っている顔がたくさんあった。
「やっと来たか可愛い娘〜」
「うぐっ」
先に来ていたラエルが抱き着いてくる。
うぐぐ…苦しい。ラエルはリボルト家当主として舞踏会に参加している。
ラエルが参加しているということは、ラーヴァルさんも居るのだろう。
「父さん、私仕事が…」
「ちょっとぐらいお父さんに構ってくれてもいいんじゃないか?」
「おいラエル。セレアから離れなさい。仕事があるのは君が一番わかっているだろう」
「げっ。アルス…分かった分かった。離れれば良いんだろう」
「すみませんセントラ伯爵」
「気にするな。ラエルを借りるぞ」
「あっおい!アルス!何をするんだ!」
「当主として働け」
セントラ伯爵に連れて行かれるラエルに手を振りながら私は仕事に戻る事にした。
私は壁際に立ち、挨拶をし合う貴族達を眺める。
イエラ達も話し合っているようだ。
盛り上がってるな、リオンもあの輪の中にいるみたいだ。
リリアナは貴族との対話を楽しんでいるようだ。
伯爵令嬢で第一王子の婚約者だもんなぁ。沢山話しかけられるわけだ。
王城内でもリリアナの根も葉もない悪評が広まっている。
それでもリリアナに話しかけるのは貴族達の興味本位だろう。
踊りの曲が流れ、貴族達が踊る。
リリアナは華麗なステップで皆の目を奪う。
それに引けを取らずイエラも対抗して踊る。貴族達はその光景を見て、悪役令嬢と聖女の対決と言っていた。
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曲が止まる。その時、私は感じた。
ついにこの時が来るか。
イエラを囲む攻略対象達、そして目の前にいるリリアナ。
私は息を呑む、興奮と不安と感動。様々な感情が私を襲った。
「リリアナ・セントラ!今日をもって、お前との婚約を破棄する!」
周りの貴族はワァッと声をあげる。
イエラは涙を浮かべ、悲劇のヒロインを演じる。
「それは…どういう事でしょうか?」
「君にはうんざりなんだ!イエラに悪事を働き、反王国派との結託!他の男との密会!いい加減にしろ!」
「全て身に覚えがありません!」
「嘘を付くな!イエラの母親の形見のドレスを破り、孤立させるようないじめ、イエラに対する嘘の噂を流し、王城でも伯爵という地位を使って反王国派と結託して情報漏洩、様々な男を家に連れ込むなど…君には沢山の悪評…いいや事実がある!」
「証拠はあるのですか?」
「もちろんだ!」
アルベルトは監視カメラの映像を魔法で大画面で映す。
そこには大量の証拠があった。
だが、私は監視カメラを作ったからこそ分かる疑問に気付く。
映像の粗さに私は気付く。所々、映像が乱れている。いくら魔法が下手でもあぁなることはない。
この場合の映像が乱れる原因は一つ、映像の偽造だ。
監視カメラは魔法で映像を塗り替えられないようにしてある。だが、実力のある魔法使いとなれば映像を変えられる。
それでもバレるように映像が乱れるよう設定しておいたのだ。
これを使ってくると踏んでいたからこそ出来るのだ。
「そんな…リリアナ嬢が?」
「なんてことだ……」
「ってことは、今までの事は全て本当だったってこと?」
「ねぇねぇ、リリアナ嬢から勧められたお店行っちゃったんだけど!」
貴族達が慌てふためく。リリアナもあるはずのない証拠に困惑しているようだ。
私は心を落ち着かせる。深く深呼吸をし、強く手を握る。
私は、今から脇役ではなく悪役になってやる!
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