第129話 錬金術師は光魔法使い

 アイゼアに私の影に隠れてもらう。

 流石にケルベロスを仲間にしましたとは言えないからな。


 私が断罪される側になりかねない。


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 私は皆と合流する。

 随分、イエラと打ち明けているようだ。


 皆…イエラの虜ですか?アイザックさんやティアは距離を取っているようだ。

 二人に魅了は効かないのか?


「セレア所長来ましたか」

「はい。皆さんイエラさんと凄く仲良くなりましたね?何かありました?」

「特にはありませんでしたよ。ただイエラ嬢と話した途端、あの様子で」

「アイザックさんやティアはイエラさんと話して、何か感じたこととかありますか?」


 二人は目を合わせる。

 何か感じたな、これは。


「気持ち悪く感じましたね。強い香水の匂いといいますか」

「あたしも同じです。吐き気がする匂いだったです」


 エルトンさんが感じたものと一緒か。アイザックさんがそう感じるのは分かるが、ティアは何故?


 もしかして光魔法を使えるから?いや…そんな話、聞いたことないが。


 私は一つ気になった事があった。

 アイゼアに私の影に隠れてもらってここに来たが、私が来た時からイエラやティアの私を見る目がおかしい。


 どこか怯えているような顔だ。


「さっきから気になってたですけど、オメェ何つけてきたです?オメェの背後にドス黒いモヤが見えるです」

「あっ!そ、それ!私も見えます!」


 ティアがそう言うと、イエラも賛同した。

 私の背後に黒いモヤ?


 私が疑問に思っていると、脳内に語りかけてくる犬がいた。


『我が主、我の事かと思われます。光魔法使いには我の存在を認知できるのでしょう』


 ビックリした…。聞こえますか?今、貴方の脳内に直接語りかけています…状態だ。


 光魔法使いに見えるか。じゃあ、二人が見てるものは魔物特有の瘴気か。


「何故お二人にだけ見えるのですか?俺には見えませんが………」

「あの、俺は見えます!」


 アイザックさんの言葉に反応するもう一人の光魔法使いが見えると発言する。

 おっ、これを使えば…ティアは光魔法を使えると明かせるのでは?


「もしかして…光魔法使いにだけ見えるとか?」

「でもニーティア様は光魔法使いじゃ無いのでは?」

「ニーティア様、五歳の魔法検査から一度も検査し直した事はありますか?」

「ねぇです。急に変わったって事です?」

「………あっ、確か突然魔法が切り替わるみたいな話ありませんでしたっけ」

「ありましたね。それかもしれませんね」


 もしかしたらティアが光魔法使いかもしれないという話で私達は盛り上がった。

 その時、唯一盛り上がってなかったのはイエラだけだった。


 そして、私は聞き逃さなかった。

 ティアが光魔法使いかもという話が出た時、イエラの歯ぎしりの音が聞こえた。


 随分苛立ってるな。

 イエラは悪く思われたくないのか、周りに合わせて嘘の笑みを浮かべた。


『あの者、聖女と言われているのですか?』

「まだ聖女候補だよ」

『あの者が聖女になることは無いのではと我は思います。何せ、内側が真っ黒ですから』

「腐ってるってこと?」

『そう思っていただいて構いません。聖女は聖なる心を持つ者という事です。あんな暗くては聖女にはなれないでしょう』


 魔物のほうが聖女に詳しいのは何なんだ。

 聖女にはなれないか。そうは言っても、ゲームの強制力があるかもしれない。


 油断は禁物だ。


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 私達は古代遺跡の最深部まで来た。

 道中いろんなトラップ、魔物と遭遇した。


 皆は疲れているが、私やアイザックさん、ティアは古代遺跡の最深部のお宝に目がいって疲れなど吹き飛んでいた。


「セレア所長!見てくださいこれ…古代魔法書ですよ!しかも幻と言われた消えた七巻です」

「おぉ!アイザックさん。これは古代魔術の術式ですよ。解けばもっとお宝が…………」

「歴代の伝説の錬金術師達が研究していた錬金術………こんなのがあるなんて」


 私は地面に描かれた術式を解き、アイザックさんは古代魔法書をひたすら読む。

 ティアは、伝説の錬金術師達がの越した研究を解読しようとする。


 そんな私達の姿を見て、他の探索員達は呆れたような表情をする。


 私が術式を解き終えると、地下への扉が開かれる。


「まだ地下があるのか!」

「よーし!さっそく潜るです!」


 地下の階段を下り終えると、金銀財宝があった。

 なんともまぁ典型的なお宝だ。


 ありがたくもらおう。


 私達は金銀財宝を持って地上に出る。

 古代探索にかかった時間は、約二日だ。


「想定よりも早く出れましたね」

「無事に出れて良かったです」


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 私達は金銀財宝を王城まで運び、屋敷に戻ることにした。

 一個だけ選んでも良いと言われた為、元々アイゼアの物だったらしい首輪を貰った。


 私はアイゼアを連れて屋敷に帰ると、皆が驚いた顔をした。


「それ…ケルベロス、ですか?」

「うん。古代遺跡で仲間ペットにした」

『始めまして。我の名はアイゼアと申します』


 アイゼアは深々と頭を下げる。

 リリアナは心底嫌そうな顔をした。


 想定外の反応だ……犬嫌い?


「ケルベロスって、主人にずっとつきっきりなんですよね?」

『はい。そうです』

「セレア様!早く捨てましょう」

「え、え?」

「私とセレア様の二人きりイチャつきラブラブ生活が…!」


 何だその生活!初めて聞いだぞ!


『もしや我が主の好きな方というのはこの御方ですか?』

「そうだよ、護衛って…」

「私の護衛?」

「そうそう、何かあったら不安だからね。ケルベロスなら影に隠れれるでしょう?」

「もぉ〜何だぁ。私の為ですかぁ」


 リリアナはさっきとは打って変わって心底嬉しそうになる。

 感情豊かだなぁ。


 リリアナの許可も貰い、アイゼアはアルセリア家の飼い犬になった。

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