第128話 新たな仲間
シグルさんは回復ポーションを作って、私に渡す。
「あの、このポーション…なな、何に使うんですか?」
「イエラさんがさっきの戦闘で怪我してるからですよ」
「怪我を…しているようにはみ、見えませんが」
「気付かないうちに怪我をするって結構ありません?それと同じですよ」
私は渡されたポーションをシグルさんに返す。
シグルさんは何故返されたんだという顔をする。
「あの、な、何故返したんですか?」
「シグルさんに渡していただこうかと」
「い、イエラ様にですか?む、無理ですよ!」
「仲間同士ですし、交友を深めると思って…お願いします」
私は有無を言わせずに立ち去る。
悪い事してしまった感があるが、これもリリアナのため許してください。
私達は今、休憩時間に入っている。
言わば魔力回復時間だ。雑談をしたりして交友を深めている。
イエラが一人で周りを見ていると、シグルさんが話しかけた。
何を話しているのかは分からないが、無事ポーションを渡せたようだ。
そしてシグルの顔が少し赤いような気もする。
「セレア、何でガッツポーズしてるです?」
「いや……想定通りで」
「オメェが考えてる事は大抵碌な事じゃねぇです」
酷い!確かにそうかもしれないが、面と向かって言わないでよ。
早くシグルルートに行ってくれないだろうか。
休憩が終わると、二人の距離が少し近いような気がした。
これは…………いけるか?
イエラが何もせずにこのまま行ってくれればいいんだが。
その時、私は気を抜いていた。
「セレア所長!」
アイザックさんの言葉で私は咄嗟に防御魔術を発動させる。
振り返った先には、ケルベロスが居た。
来たか!
このイベントの最難関…ケルベロス!
ゲームで見るのとは違って生で見ると迫力ある〜!
っと、容赦なく噛もうとしてくるか。
「何余裕ぶっこいてるです!」
ティアに心配されてしまう。興奮していたな…。
よし!気合を入れるぞ。
私は距離を置き、魔術ではなく銃を撃つ。
ケルベロスは怯み、私達を睨みつける。
「ケルベロスなんて、戦えるのか?」
「怯むな!必ず勝てる!」
アイザックさんが皆のやる気を出すために声をかける。
イエラは光魔法を撃ち、ケルベロスに大ダメージを与える。流石聖女………。
ケルベロスの体力が徐々に減っていき弱っていく。
私は
オルゴールのような音色で眠ってしまいそうな音。
音楽を聴いたケルベロスはスヤっと眠ってしまった。
「ケルベロスが…人前で寝た?」
「ケルベロスは音楽を聴くと眠るんです」
「倒さなくても…いいんですか?」
「まだ幼いみたいですし、倒さずにいきたいですから」
このケルベロスはまだ幼い。
体格からは考えられないがあの攻撃速度、まだ未熟なケルベロスの動きだ。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
皆は先に進むことにし、私は眠ったケルベロスを移動させる。
私はその場を立ち去ろうとすると、声をかけられる。
『……何故殺さない』
「起きるのが早いね。まだ眠ると思ってたのに」
『ふん。魔術師風情が…それで、何故殺さない。貴様にとって、我を殺すのは利益があるだろう』
「ケルベロスの毛皮の事?私は毛皮を使って魔術を伸ばそうと思わないよ。生贄を必要とする野蛮な魔術師と一緒にしないで」
『人間界は…随分と変わったのだな』
話しかけてきたのは先ほど眠っていたケルベロスだった。
私はむやみに殺したくない。それが例え、魔物であろうと殺傷は避けたいのだ。
にしてもケルベロスがこうも無防備な姿を晒すなんて、死んでも良いと思っているのか?いや、諦めているのか。
『我に戦う力はない。好きにしてくれ』
……………ケルベロス。地獄の門番と呼ばれる犬の魔物…犬、犬………折角、降参してくれているんだ。
頼み事をしよう。
「ケルベロス。頼み事があるんだけど」
『何だ。こんな疲労している我に出来る事か?』
「うん。私の犬になってほしいんだ」
『貴様のか?』
「そうそう。長く生きれるし、甘い物も食べれるよ」
『分かった。なってやろう』
私がそういうと、甘い物という単語に釣られたのか一瞬で承諾する。
ケルベロスが甘い物好きだなんて、想像もしないよな。
私はケルベロスに持ってきた回復ポーションを飲ませて、体の傷を治す。
戦闘にバリバリ参加できる訳では無いが、ある程度は治っただろう。
『…我が主、我に名を授けてください』
「うーん、名前かぁ。アイゼアなんてどう?」
『分かりました。我の名は今日からアイゼアです。ちなみにですが、何故我を飼い犬に?』
「私には好きな人がいるんだけど、その人の護衛みたいな感じで付き添って欲しいんだよね。ずっと側にいれるわけでもないし、影に潜むこともできるケルベロスならいけるかなって」
『なるほど。ですが、我は主の犬。主の身に危険が迫れば、その御方のお側を離れることになりますが』
「分かった。でも私の心配はあまりしなくてもいいよ。自分の身は自分で守れるし」
私はケルベロス、いやアイゼアの頭を撫でながら言う。
モフモフだ………猫派だったが、これは犬派になるかもしれない。
にしても強い仲間をゲットできたな。
リリアナの護衛も任せれるし、突然誘拐されるなんて事は早々ないだろう。
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