第117話 家族との約束そして秘密な場所
私は一日しっかり休み、このもらった二週間を有意義な時間にしようと意気込んだ。
ドミニクから貰った鱗をどう使うかだが、武器でも、防具でもない…私は鱗を体に埋め込む。
人間がドラゴンの一部を食べたりすると能力が急上昇するとされている。
なぜ鱗を体に埋め込むのか…。食べたりするのではなく埋め込む事で魔力量が増えるからだ。
この知識は、ゲームのものだ。それにちょこっと載っていただけだし……覚えておいてよかった。
私は図案を描く手を早める。
「セレア様、その……拷問する用みたいな機械は何ですか?」
リリアナは不安そうな顔をする。
「あー、これはただの制御装置だよ」
「電気椅子にしか…」
「溢れすぎた魔力を吸い取ってくれる装置なんだ」
「ちなみに、誰に使うんですか?」
「私だけど……」
「な、何考えてるんですかセレア様!こんなの、」
「これには理由があるから!ね?一回落ち着いて…!」
こんな拷問器具みたいな機械を作る理由は、私が鱗を体に埋め込むからだ。
ドラゴンの鱗は魔力量が多い、そのため体に埋め込んだ時に魔力暴走が起こる。
その魔力暴走を止めるために魔力吸収装置がいるのだ。
それに鱗を埋め込んだら苦痛が伴う。暴れないための道具でもある。
一人じゃ鱗は体に埋め込まれないし…知り合いの錬金術師に頼むか。
男性に頼むのは、気が引けるからな。
「あの鱗って何に使うんですか?」
「体に埋め込むんだ」
「う、埋め込んだらどうなるんですか?」
「身体が強化される。私が鱗を埋め込む理由は魔力量増加だけどね。その反面、体中が痛くなるけど」
「……セレア様がそこまで自分を強くする理由は何ですか?」
リリアナに聞かれ私は考え込む。
自分を強くする理由…?いつもならリリアナのためとすぐ言えるのに。
何故考え込んだんだろう。
すぐに言葉が出なかったって事は別の理由が自分の中にあるって事だ。
それは何?私は今までの出来事を思い出す。
一番最初に思い浮かんだのは死んだ時の出来事だ。
寒く、暗く、寂しい。もう二度と味わいたくない…。
遠征時、倒れる時に
死ぬんじゃないかって、また一人になるんじゃないかって……。
「そっか…私、死ぬのが嫌なんだ」
「何か言いました?」
「いや、何も」
そうかぁ、死ぬのが嫌なんだな私。
セレアに転生したと分かった時も死ぬキャラで不安だらけだったんだ。
そうだ、折角の機会だ。リリアナに私の秘密を一つ明かそう。
「リリアナ。来てほしい所があるんだけど」
「私にですか?」
「うん、リリアナに」
「分かりました」
私はリリアナの腕を掴んで書庫に連れて行く。
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リリアナは何故ここに?という表情をする。
私はいつものように机をズラして、研究室の扉を開く。
「ここは…」
「さっ、入って入って」
私はリリアナを研究室に招き入れる。
掃除しておいてよかったぁ……。
「研究室へようこそリリアナ」
「私が入ってもいいんですか?メリーさんにも話してないんですよね?」
「リリアナだからここの場所を教えるんだよ」
「それは、私の事をとても信頼してくれているって事ですか?」
研究室の椅子に座り、リリアナを私の足の上に乗せる。
私はリリアナに昔話をする。
「これは私と
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お父様は魔術師になりたい私に専用の部屋を作ってくれた。
「お父様、これ…私の、部屋?」
「そうだよ。これはセレア専用の部屋だよ」
「お父様!私、うれしい。お父様みたいなまじゅつしになるためにがんばるね!」
「あぁ期待しているよ。でも無理はダメだぞ?」
「うん!お母様が心配しちゃうからでしょ?」
誰も、世話係すらも入ってこれない私だけの部屋。
それがとても嬉しかった。
お父様は研究室で私に色んな
ここはまじゅつしだけの空間なんだと。そう思っていたらお母様が研究室の扉を開けた。
「あらあら!こんな所にいたのね〜」
「お母様!あ、開けちゃ駄目だよ!」
「なんでよぉ。お母さん悲しいわぁ」
「こ、ここはまじゅつしだけの部屋なの!」
「なら私も魔術師になっちゃおうかなっ?」
「それはだめ!」
何となく嫌だった。お父様はいつもお母様にべったりで、私はお父様にまじゅつの話をしたかった。
二人の仲を邪魔したくなくて、何も言い出せなかった。
でもここならお父様とまじゅつの話ができる。
なのにお母様が入ってきたら、お父様が取られちゃう。
「ヴィータ、部屋に戻りなさい」
「あら貴方までそんな事言うの?」
「ここはセレアの言う通り、魔術師だけの部屋なんだ。それに、ここはセレアの許可した人だけが入れる秘密な場所だからね」
「なるほどね〜。貴方って案外意地悪なのね。うふふっごめんねセレアちゃん。レディオとの会話、楽しんでね♡」
お母様は私のおでこにキスをして研究室から出ていった。
「セレア、ここは君が許可した人だけが入れる場所だ。君がこの秘密の場所を誰かに明かした時、必ずお父さんのもとに連れてくるんだぞ?」
「?…分かった」
「いい子だ。お父さんとの約束だからな」
「うん、約束」
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当時は意図は分からなかったが、今ならわかる。
あの父親のことだ。この場所を明かす人はどうせ私の好きな人になるって考えていたんだろう。
「なんだか仲睦まじいですね。にしても、セレア様のご両親は隠し事がお好きですよね」
「そういう性格だったからね」
お父さん、いいやお父様。明日、この事を伝えに行くよ。
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