第116話 遠征パーティー

 屋敷に戻ると、私の帰還を初めて知ったメリーやセバスチャン達が驚いた顔で出迎えてくれた。

 何も報告もしてなかったからな。


「お帰りになられたのですね」

「ただいま」

「私も居ますよ?」


 背後から誕生日パーティー帰りのリリアナが顔を出す。

 いつの間に戻ってきたんだ…。


 リリアナはメリーに何か指示をしてメイド達はハッとした顔をして準備を始めた。

 何の準備だ?


 私はリリアナの方を向き何をしているの?という表情をするとリリアナは秘密と言うようにウィンクをした。

 は〜かわいい〜。可愛いすぎる。


「さっ!セレア様も着替えますよ!」

「え?あ、うん…」


 リリアナは私な背中を押して私室に押し込む。

 確かに遠征に行ってから一回も着替えて……ってか風呂にも入ってない!


 臭いかな私。え、今すぐ風呂に入りたい。


 私は着替えて風呂に入りたいと思いながらも部屋の扉を開けると、屋敷がパーティー会場のように華やかになっていた。


 わぁ、何だ何だ?

 私が着替え終えた事に気が付いたリリアナが私を一階まで連れて行く。


「セレア様の為に用意したんですよ。さぁ行きますよ!」

「えっちょっ」


 私は理解が追いつかないまま一階まで降り、アルセリア家だけのパーティーに参加する事になった。


 豪華だな。私が着替える時間に準備したのか?だとしたら早すぎるような。


「セレア様の遠征お疲れ様パーティーです」

「私の?」

「はい!私が帰ってきた時にも行ったので、当主であるセレア様のも無いといけませんよね?それに、セレア様が一番今回の遠征で頑張ったと私は思いますから!」

「ありがとう。わざわざ用意してくれたんだ」


 私はリリアナの頭を撫でる。

 リリアナは嬉しそうに私にくっついてえへへと笑う。


 この撫で回したくなる、愛でたくなる笑みをやめてくれ。

 可愛がりたくて仕方が無い。


「セレア様!この料理はオススメですよ!」


 まるで自分のパーティーかのようにはしゃぐリリアナを見て私は満たされる。

 不安が一気に消し飛ぶなぁ。


 私はリリアナがオススメしてくれた料理を食べて続け腹が満たされる。


「もう、無理……かな…」

「あっ!すみませんセレア様…」


 リリアナは申し訳無さそうな表情をする。いやぁいいんだよ。私が少食だから…。

 良心が痛む、その表情をやめてくれ……。


 こんなに飯を食べたのはいつぶりかな。

 別に貧乏って訳ではないんだけども…元々そんなに食欲が少ないのもあるのかもしれないな。


 私が水を飲み、ぐったりしているとリリアナがあっ!と声を出して何かを取りに行く。

 何か忘れたのかな?


 リリアナは走って部屋に向かい、赤色の箱を持ってきて私のもとに持ってくる。


「これは?」

「開けてからのお楽しみですよ!」


 箱を開けるとそこには懐中時計があった。

 そういや遠征行く前に壊したな…まさか覚えているとは。


 しかもこの懐中時計、良いところのやつでは?


「ありがとうリリアナ。気に入ったよ」

「それは良かったです♡セレア様に似合うよう選んだんですよ」

「だから銀色なんだね」

「セレア様には銀色が似合うと思いまして」


 確かに銀色は好きだしな。流石はリリアナ、私の好みをわかってる。

 大事にしよう。普段から物は大事にしてますけどね?


「そうだセレア様、前の懐中時計はどうして壊れたんですか?まだ使えそうな気がしましたが」

「あー、それね。リオンが時間を確認したいって言ってて私はその時手が離せなかったから、懐中時計を貸したんだけど……リオンの握力が強すぎたのかな、まさかの潰れてね」

「お兄様がそんな事を…すみません」

「リリアナのせいじゃないから謝らないで。元々は懐中時計を持っていないリオンが悪いんだから」


 私は悪くないよな?あれはリオンが悪いんだ。

 そう私は悪くない。


 懐中時計を買える財力があるのに買わないあいつが悪い。

 いや、持ってはいたのか?忘れたとか言っていたような言っていなかったような。


「そういえばリリアナ、誕生日パーティーの時元気が無かったように見えたんだけど」


 私が問うとリリアナは目を逸らす。何かあるな?

 そう私がリリアナを疑いの目で見ていると背後から抱きしめられる。


「セレアー!戻ってきてるなら言ってよーお父さん悲しいなぁ〜」

「…………」

「何で何も言ってくれないの!?私、何かした!?」

「ラエル様、その態度だと思うのですが」


 抱きしめてきたのはラエルだった。

 親ばかが来ちゃったよ。一応、知らせようとは思ったんですけど…報告する前にリリアナに捕まりましてね。


 私は悪くない…。

 私はちらっとラエルを見るとラエルはとっっても寂しかったなぁと言うような表情をする。


「その顔やめて」

「お父さんの事嫌い?」

「その質問は嫌い」


 私が答えるとラエルは膝から崩れ落ちる。そんなに落ち込む………?

 私はラエルが怖いよ。父親に怖いと思うのは初めてだ。


 こう見ると、ラエルって本当の娘ができたら凄い甘やかすんだろうなぁ。

 っと思いながらラエルを見つめる。


「セレア、怪我とかは無いかい?私はそれが一番心配なんだが」

「治療師に診てもらって治してもらったのでありませんよ」

「良かった良かった。あっ、ドラゴンの鱗、ドミニクから貰ったよ」

「ありがとうございます」

「にしても、何に使うんだい?ドラゴンの鱗は普通は武器とかに使うが…違うんだろう?」

「勿論」


 私はドラゴンであるものを作ろうとしていた。

 楽しみだなぁ…二週間休みもらったしその間に作ろうかなぁ。

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