第107話 後半戦に突入

 ペルティアさんから貰った書類に描かれた禁忌魔法の耐性をつける魔術を使って、私は色んな魔道具アーティファクトを作って王城に配置した。


 作り、配置し終える時にはリリアナは学園を卒業し、ストーリーは後半戦である王城編に入っていた。


 イエラの対策は問題ない、はずだ。

 不安があるとしたら、ずっと魅了にかかった人間にこの耐性は意味があるのかと言うことだ。


 無い場合、アルベルト、サイレス、アルテ、ウキオンを敵に回す。

 厄介なのは第一王子であるアルベルト、次期宰相であるサイレスだ。


 王政に関わる人間を敵に回すと、私の首が危うい。

 どうにかしないとな。


「セレア様!行きますよ?どうしたんですか?」

「あぁっ、ごめん。少し考え事をね……」


 リリアナが王城に向かう馬車に乗る。

 忙しく、リリアナと二人きりの時間を取ることが難しくなった。


 婚約破棄イベント及び、断罪イベントまでの期限は短い、それに遠征の話も近づいてきた。

 遠征まで後一週間……。


 私が倒れない程度で頑張ろう。


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 王城に着き、私は遠征の話をするため会議に参加した。


「遠征まで後一週間となった。会議は今日で終わりだ」

「今日は最終日という事で、今の道具や戦力を確認します。まず、騎士団」

「殆どの者がマスタークラスにまで成長しました」


 ソードマスターとは「剣を極めし者」に与えられる称号だ。

 リオンは騎士団長であり、ソードマスター。


 そんなリオンに鍛えられれば、マスタークラスに上がるだろう。


「ふむ、良い傾向だ。では法棟」

「上位魔法を扱える者が増えたかと思われます」

「分かった。次、魔塔」

「魔術の威力は格段に上がってます。魔道具アーティファクトの使い方も様になりました」


 魔道具アーティファクトは主に術棟で作られた物だ。


 私が加入した事で、ゲームには存在しなかった戦闘用魔道具アーティファクトが生まれた為、その扱い方を戦闘部門の魔塔で行っている。


「魔塔も問題ないな。術棟はどうだ」

「援護の魔道具アーティファクトは次々出来ています。不足する事は無いかと…」

「ならば良い。今日はこれで終わりだ。では、解散!」


 私達は国王陛下に敬礼をする。

 国王陛下が退場したのを見て、私達も各部署に戻っていった。


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 私は術棟に戻る最中、イエラ達を見かける。

 相も変わらずイチャつきやがって、仕事しろ!


 こっちは忙してリリアナと全然イチャつけてないんだよ!

 はぁ……落ち着け私。ここで飛び出して怒りを露にしたら首が吹っ飛ぶ。


「セレア所長!」

「ペルティアさん。何か気になることが?」


 ペルティアさんは、古代魔術の書類を渡されてから何度も話すようになった。

 それからだろうか。ペルティアさんの表情は明るくなり、人と話す事に少し慣れたように見える。


 そして、私は懐かれているのか、ペルティアさんは私の所に良く来る。


「た、タリン様が呼んでまして」

「分かった、ありがとう」

「いえ!、おお気になさらず!」


 私はペルティアさんに手を振って、タリンさんの所に向かう事にした。

 にしてもペルティアさんの顔、少し赤かったような……気のせいかな?


 術棟に着き、私はタリンさんに話しかける。


「話って何?」

「来ましたか。先程、ドミニクさんが来てましてね。セレア様をお探しのようでしたので」

「ドミニクさんって今は何処にいる?」

「術棟の応接室に居ますよ」


 私は応接室に向かい、ドミニクと対面する。

 相変わらず輝いている…うっ!眩しい!


「来たか。ドラゴンの話について話そうと思ってな」

「なるほど。だから父さんが居るんですね」

「いや、こいつは勝手についてきただけだ」

「父さん……?」

「セレア、父親をそんな蔑むような目で見ないでくれ………。父さん傷ついちゃう」


 勝手に傷ついとけ、そう思ってしまった。

 なんでドミニクに迷惑かけてるんだ。


 私はちらっとドミニクの方を向くと、面白いのか笑っていた。

 親友ラエルが弄ばれているのが面白いのか?


「本題に入ろう。我が森を探索した所、森にはカーディックドラゴンの巣があった。そこから考えるに襲撃するとしたら子を守るカーディックドラゴンだろう」

「カーディックドラゴン…………全ての魔法を扱うとされるドラゴンですか」

「本当に大丈夫なんだろうな?ドミニク」

「我を何だと思っているんだ」

「酒好きの尻軽」

「引き籠もり金無し」

「親子揃ってそれかい?我に敬意はないのか?」

「半分はありますよ。もう半分はただのヤバい奴だと思ってます」


 ラエルから、ドミニクの話を何度も聞いた。勿論、本人の口からも。


 ドミニクは大の酒好きで酒豪と呼ばれたりするらしい、学生時代では色んな女性を取っ替え引っ替えしたりしていたとか聞いた。


 だが、今は私に話がある以外は屋敷に引き籠もり、貴族だが何もしてない為金が無い。

 結構ヤバイ奴だった。


「働くつもりではあるから気にするでない。話を戻すぞ?あのドラゴンには弱点がある」

「弱点?」

「あぁ、有名ではない為知らなくても仕方が無い。それは光だ」

「光………日光に弱いとか?」

「そうだな。主に夜行性で日光を苦手とする。光魔法の光は通用しないと先人が言っていた」


 ドミニクの言う先人とは、どれほど前の人間なんだろうか。

 光魔法が聞かないとなれば、イエラ達が苦戦した理由も頷ける。


 日光が弱点なんて……どうしたもんか。

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